基調講演Ⅰ

10:10~11:10 基調講演Ⅰ

吉川隆博氏

(厚生労働省 社会・援護局 障害保健福祉部
精神・障害保健課 障害保健専門官)

~プロフィール~

吉川隆博(きっかわ たかひろ)

〈職歴〉
昭和59年4 月
平成18年4 月
平成20年
厚生労働省 社会・援護局 障害保健福祉部
精神・障害保健課 障害保健専門官
現職では主に、精神障害者の地域移行支援、
精神保健福祉士の養成のあり方等に関する検討会、などを担当
〈最終学歴〉  
平成15年3 月 川崎医療福祉大学大学院 医療福祉学研究科保健看護学専攻
修士課程修了
〈社会活動〉  
平成18年~ (岡山県)総社市障害程度区分認定審査委員(平成20年6月まで)
総社市障害福祉計画推進委員(平成20年6 月まで)

 

【基調講演Ⅰ:吉川隆博氏】

 おはようございます。ただいまご紹介いただきました、厚生労働省精神・障害保健課の吉川と申します。本日はよろしくお願い致します。
 障害者保健福祉推進事業というのを今、障害福祉部では行っておりまして、主には地域支援、これまで皆様方がずっと実施されてきた実績を積み重ねて頂きながら、効果・成果、そしてノウハウ等を広く普及していただく目的で事業を行っているところです。21年度の事業につきましても、先日HP で公開させて頂いているところです。
 今回はそういった連絡協議会の主催なので、広く皆様方にこうして集まって頂いて、様々な立場の方がいろいろな豊富なご経験をふまえて、精神障害者の地域生活支援を今後どのように進めていくことができるのか、そういった可能性について、今日は一日有意義な研修会になることを確信しております。
今回のこの研修会の趣旨に沿って、精神障害者の地域生活移行支援に関わる制度についてお話をさせて頂きます。1時間という限られた時間ですので、全てを詳しくお話することはできないのですが、この21年というのは、精神障害者の地域生活支援の制度につきましては、かなり大きな転換期を迎える年になっております。
 まず一つ目は、皆様方もご存知のように、現在精神障害者の施策につきましては、改革ビジョンを基盤として施策を進めていっております。こちらが平成16年の9月に公表されました。その前期の5年が21年の9月までですね。9月からは後期5年の施策に入って参ります。現在その10年計画の後半の5年間、どういう視点で重点的に計画を進めていくかということで、「今後の精神保健医療福祉のあり方等に関する検討会」を昨年から開始しております。一応21年の9月までには方針を出したいと考えております。
 そしてもう一つは、21年の4月からの自立支援法ですね。こちらも18年に施行されまして、3年後の見直しということで、現在作業を進めているところです。精神障害の施策と自立支援法の施策、そういったものの見直し、転換期にあるところで、そこがどう今後変わっていこうとしているのかを中心に、本日はお話をさせて頂きたいと思います。

 

Ⅰ 精神保健医療福祉改革の経緯とこれまでの取り組み

精神保健医療福祉施策の改革に向けたこれまでの経緯について

 

 まず、精神保健医療福祉改革の経緯と、これまでの取り組みということで、簡単にご説明させて頂きます。先程申し上げましたが、そもそも平成14年に精神保健福祉対策本部を設置し、その後特に普及啓発について、精神障害者の地域生活のあり方に関して、そして精神病床のありかたに関して、3つの事項について検討しまして、平成16年9月に精神保健医療福祉の改革ビジョン、「グランドデザイン」とも呼ばれていますが、これが示されました。
 その後平成18年より障害者自立支援法が制定されまして、その中でも進めていくことになりましたが、一部独自にも進めていっているところです。

精神保健福祉施策の改革ビジョンの枠組み

こちらがビジョンの枠組みになります。主に、先程も申しました「国民の理解の深化」、そして「地 域生活支援の強化」、もう一つは「精神医療の改革」が大きな柱になっております。
精神障害者の地域生活を支援するという時にはいくつか注目点はあるかと思うのですが、その中に精神科病院に入院されている方をどのようにして地域移行に結び付けていくか、そこが非常に大きな課題となっていると思います。精神医療の改革も行いながら、医療と福祉がどういうふうに今後連携していけるかが一つの大きな課題となっていると感じております。「入院医療中心から地域生活中心へ」という言葉を掲げて、それを目標として進めていっているところです。「今後10年間で、受入れ条件が整えば退院可能な者約7万人についても、解消を図っていく」、こういった具体的な目標値もお示ししております。

精神保健医療福祉の改革ビジョンと障害者自立支援法・精神保健医療の関係

 これは実際の改革ビジョン、自立支援法と精神保健医療の関係図になっております。一番上が「地域生活の強化」で、主な重点施策として現在かなり、自立支援法で進めているところです。医療の改革・国民の理解、ここも含めまして、精神の「あり方検討会」で検討をしておりますので、そこはこの後ご説明させて頂きます。

「障害者自立支援法」のポイント
精神障害者に対する支援サービス(障害者自立支援法)

 自立支援法のポイント、こちらの方は皆様よくご存知のことだと思います。
精神障害者に対する支援サービスにつきましても、これらの自立支援法のサービスを使いながら施策を進めていくことになっております。

 

Ⅱ 精神障害者の地域移行支援に関する事業

精神障害者地域移行支援特別対策事業の創設

(背景)
受入条件が整えば退院可能な精神障害者の地域移行に向けた支援については、障害者自立支援法に基づく精神障害者退院促進支援事業等において一定の対応がなされてきたところ。

・平成15年~平成17年までモデル事業(26都道府県、4指定都市)
・平成18年4月~ 精神障害者退院促進支援事業(10月から地域生活支援事業として実施)
障害福祉計画における、平成23年度末までの受入条件が整えば退院可能な精神障害者の減少目標値の達成のため、着実な推進が必要

 そして次に、精神障害者の地域移行支援に関する事業ですが、まず最初にご紹介するのは、精神障害者の地域移行支援特別対策事業、これが今年度(平成20年)から創設されました。
 もちろん、精神科病院の経営者・スタッフも、退院支援に関していろいろ取り組みをして頂いているところですが、そこに地域からいろいろな取り組みができるのではないかということで、こうした事業を行いながら精神障害者の地域移行を図っていくといった感じで進めていっております。
 この特別対策事業ができるまでの経緯としては、その前身に精神障害者の退院促進支援事業がございました。ただ、その事業は全ての都道府県で行われているわけではありませんでした。
 今回創設しましたこの特別対策事業につきましては、これまでの実績も踏まえて、ぜひとも全県で実施をして頂くと、国もそういった意気込みで、それぞれの都道府県に実施をお願いしているところです。


精神障害者地域移行支援特別対策事業

 こちらはその特別対策事業の概面図になっております。事業費といたしましては17億円になっております。
 この事業で非常に重要な役割を担って頂く方が、真ん中のところにお示ししております。先程も医療と福祉が相互に一体となって連携をしていけるか、そういったことを申し上げましたけれども、それがなかなか実際現場で見てみると、必ずしも容易に協力したり連携できないという大きな課題が残されます。例えば事業所の方が個人で精神科病院とか、精神科入院中の患者さんに関わるというのはなかなか難しいところがあります。ですからそういったところを、各都道府県もしくは圏域の方で一体的にコーディネートしてもらう、そういった目的でまず地域体制整備コーディネーターを置いて頂く。
 そして、具体的に個別支援をして頂く方として、図の下の方で「地域移行推進員」、以前は「自立支援員」と言われていましたが、そういった二つの役割の方を配置して、病院施設からの退院、地域移行を支援する事業になっております。
 もちろんこの事業を行うにあたりましては、各都道府県で自立支援協議会を設置して頂き、地域づくりとか、こういった事業が推進できるように検討を行なって頂く。こうしたものが全て連携することによって、精神障害者の地域移行が進んでいくということで、この事業を全圏域で実施して頂くことを進めています。

精神障害者地域移行支援特別対策事業のポイント

 ポイントとしましては、医療施設における取り組みと地域における保健福祉策を支援していく。
 今まで連携が必ずしも十分でなかったところを支援していくことを目標としております。変更点としまして、24年度までを集中的な取り組み期間として進めて参ります。
 今年度で始めて、9月の時点で全国の約76%の圏域で実施して頂いており、次年度は全圏域で実施できるように、それを目標としております。


地域移行推進員及び地域体制整備コーディネーター
精神障害者の地域移行に向けた今後の取組の方向性

 

 こちらは精神障害者の地域医療に向けた今後の取り組みの方向性になっております。
 特別対策事業の活用、そして障害福祉計画による計画的な整備、社会資源の確保、そして居住サポート事業とか、まだ他にも事業がありますので、そういったものも活用して頂きながら進めたいと考えております。そして社会資源だけを揃えていきましても、そこにはやはり良質な人材がより多く関わって頂けるというのが、地域医療を進めていく時のポイントとなっておりますので、そういった地域移行を支える人材の確保、そしてノウハウの活用、そういったものに関しても、今回のような事業を通じて進めたいと考えております。
ここまでは特別対策事業のご説明になります。

 

Ⅲ 今後の精神保健医療福祉のあり方等に関する検討会

今後の精神保健医療福祉のあり方等に関する検討会(論点整理)

 

続きましては、今後の精神保健医療福祉のあり方等に関する検討会、この概要を説明させて頂きたいと思います。
最初にご説明しましたように、精神医療福祉の改革ビジョンの前期5年が終了しようという時期に来ております。そこで後期5年計画の方向性について議論していただくことを目的として開催されております。
先年9月には、これまでのご意見を整理しまして、今後、本検討会においてどういったことを重点的に検討していくかという論点整理を行いました。その論点整理が、こちらのスライドです。
二番目を見て頂きますと、精神医療保健福祉にはどのような課題があるのかということが、大きく分けて書いてあります。一つ目は統合失調症の患者さん、そういった方を対象とした地域生活への移行、そして地域生活の支援、これを一層推進していく。そのために何が必要か。そういった視点でございます。もう一つは、近年精神科病院には認知症の患者さんが外来・入院ともに非常に多くなってきておりますので、そういった精神科病院に入院されている認知症の方をどうするか、どういった医療・支援を提供していくのかも大きな課題となっています。
三番目に書いてあるのが、基本的な考え方としてお示ししているものです。下に具体的施策の方向性が書いてあります。一つ目は、地域生活を支える支援を充実させていく、二つ目が精神医療の質の向上で、精神疾患をより早く発見して必要な医療を受けて頂く、そういったことも考えている。三つ目が精神疾患に関する理解の進歩で、医療啓発に関わるところも進めていく。そして四番目、長期入院患者さんを中心とした、地域生活への移行・定着の支援ですね。


4.統合失調症患者を中心とする地域生活への移行及び地域生活の支援

 

ここからはそれぞれ具体的に、先程ご説明したものを個別の論点としてご説明しておりますが、時間の関係で簡単にさせて頂きます。
まず、地域生活の移行と地域生活の支援につきましては、自立支援法の見直しと合わせて議論して頂くこととなっております。
主な検討課題としては、相談支援・福祉サービスの充実、地域生活を支える医療の充実、そして入院中から退院までの支援を特に充実させる。

【地域移行関係の抜粋】
受入条件が整えば退院可能な患者は、入院期間、年齢、疾患によって様々となっており、地域生活への移行のための方策を考えていくに当たっても、この点に十分留意し、患者像に応じたきめ細かい対応を図っていくことが必要である。
病床調査の結果を踏まえ、地域生活への移行に係る施策については、受入条件が整えば退院可能な患者以外の患者も念頭に置いて行うべきではないか。
患者調査では、受入条件が整えば退院可能な患者の約3分の1は入院期間1年未満の患者であるが、精神病床における新規入院患者の87%が入院から1年以内に退院していることや1年以上の長期入院患者の動態が大きく変化していないことを踏まえ、今後、数値目標の設定をはじめ、住まいの場の確保等の施策に関する検討を行うに当たっては、入院期間1年以上の長期入院者群に重点を置くべきではないか。

 

中でも地域移行関係について少し抜粋をしました。
受け入れ条件が整えば退院可能な患者さんには、それぞれ入院期間、年齢、そういった点において様々な状況がございます。こういった点に十分留意して、患者像に応じたきめ細かい対応を図っていくことが必要ではないか、こういったご意見も頂いております。
それと現在、どういった患者さんが入院されているのか、調査も行われております。それも踏まえて、地域生活に移行可能な方については、「受け入れ条件が整えば退院可能な患者」だけではなくて、それ以外の患者さんも念頭において検討を行なう必要もあるのではないかといったご意見も頂いております。
患者の調査ですが、「受け入れ条件が整えば退院可能な患者」の約3分の1は、実は入院期間1年未満の患者さんになっております。また、新しく入院されている患者さんの87%は、入院から1年未満で退院しているという状況になっておりますが、ただ、残り13%くらいの患者さんは、1年以上たっても退院できないという状況がございますので、「新たに長期入院患者さんを増やさないように」、そういったことも課題として、どういった対策が必要かを考える必要もあるのではないかということも言われております。
あと長期入院患者さんの、疾病、入院期間、年齢、などの特性が多様であることから、住まいとか医療福祉サービスとか、特性ごとにきめ細かい議論を行いながら、具体的な施策を講じることになる、そういったことも言われております。


5.精神保健医療体系の再構築

 

次は五番目といたしまして、精神医療保健体制の再構築、医療に関するところでございます。
地域生活支援につきましては、実はすでにこの検討会では中間のとりまとめをさせて頂いております。それを社会保障審議会の障害者部会にご報告をさせて頂いており、自立支援法の見直しに反映をして頂くようになっております。ですから、春からの検討会では、主に精神医療体系についてどう考えるかという議論を集中的に行っていく予定になります。そこで、どういったところがポイントになるのかを、こちらのスライドに示しております。
主な検討課題といたしましては、入院医療、こちらは病棟ですね。病床の機能分化をどのように考えていくのか、それとそういった機能に応じて人員とか構造の基準とかについてどのように考えていくのか。そして、退院されて地域で生活される精神障害者の在宅医療に関して、どう充実させていくのか。あと医療体制・福祉との連携ですとか、関係機関との連携をどう考えていくのか。そういったことが今後の議題となっております。


6.精神疾患に関する理解の深化(普及啓発)、7.今後の検討に向けて

 

そしてもう一つは、精神疾患に関する理解の深化、啓発も含めた検討を進めていきたいと思っ ております。
主な検討課題としましては、ターゲットを少し明確にして啓発をおこなっていくことを考えており ます。

 

今後の精神保健医療福祉のあり方等に関する検討会

精神障害者の地域生活への移行及び地域生活の支援の一層の推進に向けて

個別に対応すべき事項①

 

あり方検討会の「中間まとめ」は、先程少し説明しましたので、こちらもご参考にして頂ければよいかと思います。相談支援とか、地域生活を支える福祉サービスの充実に関しては、障害者部会に報告をさせて頂いております。


個別に対応すべき事項②

個別に対応すべき事項③

 

ここからの資料は、先程ご説明しました、これから検討していく精神医療についての、個別に対応する事項となっております。
ここまでが、「今後の精神保健医療福祉のあり方等に関する検討会」の内容になります。かなり短い時間でご説明しましたので、なかなか十分に伝わらなかった部分もあるかと思うのですが、精神障害者の地域移行に関しましては、あり方検討会で検討していることが一つ。その中でも、福祉に関するところは自立支援法の見直しと非常に関連しているということです。

 

Ⅳ 社会保障審議会障害者部会 報告の概要

(社会保障審議会)障害者部会の報告の説明も、そういった視点で見て頂ければと思います。
障害者自立支援法ですが、施行後3年の見直しということで、障害者部会で色々とご議論して頂きました。そのご議論して頂いたものを、平成20年12月16日に報告書にまとめさせて頂きました。


社会保障審議会障害者部会・報告の概要

 

対応すべき事項、及び今後さらに検討しないといけないという事項については、視点として真ん中の枠の中にお示ししております。
まず一つ目として、障害者にとってよりよい制度となるかどうか、当事者中心に考えるべきということですね。二つ目は、障害者ができるだけ地域で自立して暮らせるようにするという基本理念の下、障害者の自立をさらに支援していくという視点。三つ目は、安定的なサービス提供体制の確保という観点に考慮しながら、不都合については改善を図り、現場の実態を踏まえて見直しをしていくという視点。そして四つ目が、障害者の自立を国民みんなで支え、共生社会を実現するために、広く国民の理解を得ながら進めていくという視点ですね。こういった視点をもって見直しをすべきではないか。
内容としましては七つあります。一つ目は相談支援についてです。二つ目が地域における自立した生活のための支援。三つ目が障害児に関する支援。四つ目が障害者の範囲をどう考えていくのか。五つ目が、こちらはいろいろな立場の方からご意見を頂いているところですが、利用者の負担についてどのように考えていくのか。そして六番目は報酬ですね。これはやはり、社会資源を充実させていくためには、それぞれの事業所が安定した経営体を維持できないと充分確保していけないということで、そういう報酬についてどう考えていくのか。そして七番目は、いろいろな個別の問題点。
こうしたところからの見直しを、ご意見を頂いていろいろ検討した結果、一定程度共通してご理解頂けたところを報告書でまとめて、その主なところだけをこの概要ではご説明しております。


 

まず相談支援については、一つ目に、地域の相談支援体制の強化を図っていく。そして拠点的な機関を設置することを考える必要があるのではないかと、そういったご意見を受けました。
全国でサービス利用計画を作成している方が2,000 人以下、そういった状況もあることから、適切なケアマネジメントを行っていくためには、サービス利用計画の対象者をどんどん拡大していく必要があるのではないか。それとケアマネジメントの、市町村が支給決定する仕組みをもう一度見直すべき必要があるのではないか。
そして二番目には、地域における自立した生活のための支援として、まず一つ目の地域での生活の支援としましては、緊急時に対応できるような24時間のサポート体制がやはり必要ではないのか。それと、グループホームにおいての夜間の支援を充実させる必要があるのと、身体障害者も対象にする必要があるのではないか。二番目は障害者の就労支援に関してです。現在の就労移行支援、継続支援事業を充実させていく。あと、工賃倍増計画とか、そういったものに関しても推進していく。三番目が所得保障に関するものです。社会保障制度全般の議論との整合性、あと財政の確保なども含めて検討すべき。そして住宅費は、高齢者、あと母子の整備も必要になりますことから、十分な議論をしていく。そして地域医療という観点から必要になる支援についても検討すべきではないかと。


そして三番目には、これもいろいろとご意見を頂きました、障害児の支援についてどうしていくのかということについて。まず一つ目は、障害児の施設は多様な障害の子どもさんを受け入れられるよう一元化する、そして保育所等への巡回支援、そういった機能も充実させる必要があるのではないか。そして放課後・夏休みの支援のための、放課後型のデイサービス事業も実施する必要があるのではないか。そして、18歳以降は障害者施策で対応するように見直して、支援の継続を図っていくことも必要ではないのか。
あと四番目、障害者の範囲についてです。発達障害・高次脳機能障害の方々が、今後の対象には含まれることを明確化する必要があるのではないか。そして難病等の方への支援を、どういった制度対応を行うのか。それについては、今後さらに検討していく必要があるのではないか。
そして五番目の利用者負担についてですが、利用者負担のあり方につきましては、いろいろな立場の方から様々なご意見を頂いております。現在の利用者負担の仕組みにつきましては、所得に応じてきめ細やかに軽減措置を現在いろいろと行っておりますが、今後も一定程度継続していくことがやはり必要ではないかと。21年4月以降、さらに継続して実施する必要があるのではないかというご意見をまとめさせて頂きました。




そして六番目の報酬につきましては、障害福祉サービスの質の向上・良質な人材の確保を図る、そういったことも含めて経営基盤の安定のために、この春から報酬改定を実施する必要があるのではないかということで、実はこちらにつきましては、今回のスライドを準備させて頂いた時点ではまだ報酬改定が公にできる段階ではなかったのですが、ちょうど昨日の夕方から公になりましたので、少しそのあたりはご説明ができるかとはと思っております。
そして七番目の個別論点。サービス体系、あと障害程度区分について、そして地域生活支援事業、サービス基盤の整備、あと虐待防止・権利擁護と、精神保健福祉施策の見直し。

 

Ⅴ 障害者自立支援法の見直しと報酬改定のポイント

こういった障害者部会での議論を踏まえまして、厚労省では、自立支援法の具体的な見直しの作業を、現在も行っているところです。報酬改定につきましては昨日公にさせて頂きましたが、自立支援法の法律自体の見直しにつきましては、これから国会で審議をして頂く段階になりますので、残念ながら今日はあまり具体的なところはお示しできる段階ではございませんので、ご理解頂きたいと思います。


障害保健福祉関係主管課長会議資料抜粋

こちらは障害保健福祉関係の主管課長会議の資料の抜粋になっていますが、実は今からご説明させて頂くものを含めまして、自立支援法に関する見直し、障害保健福祉関係に関するものはHP からダウンロードできるようにさせて頂いておりますので、皆さんの方で確認して頂ければと思います。

 

報酬改定について
報酬改定では全体で+5.1%の改訂

●良質な人材の確保
専門性のある人材への評価
●サービス提供事業所の経営基盤の安定
事業の実状・実績を踏まえた経済基盤の安定を図る為の措置
●サービスの質の向上
重度者への対応を含め、各サービスの目的・機能に即した良質な支援や障害特性への配慮等質の向上を図る措置
●生活支援の基盤の充実
GH・CHにおける支援体制の充実など地域生活支援機能を高める
●中山間地域への配慮
中山間地域等規模の拡大を図ることが困難な地域への配慮
●新体系への移行の促進
新体系移行への円滑な移行のための環境を整備

 

その中でも今回の報酬改定は、+5.1%の改定という、新聞でも報道されていますように、一応こちらが要求したとおりの改定になりました。この改定の中身はどういった構造になっているかというのが示してあるような項目で、かなり多岐に渡るところで、いろいろと報酬について、加算をしたり、今までなかったものを新設したり、今までの点数をさらに踏み込んだ内容とか、そういう意見をまとめさせて頂いております。まず一つ目は良質な人材の確保、二つ目にサービス提供事業者の経営基盤の安定、そして質の向上、そういったものそれぞれの合計5.1%の加算となっております。
具体的に4月からの報酬改定について、こちらもすでにHP からダウンロードして、それぞれの単価についてもご覧になることができますので、細かいところにつきましてはご確認をぜひして頂きたいと思っております。いくつかの改定に分けて、それぞれ特徴について少し時間を割いてご説明を加えたいと思います。


平成21年4月の障害福祉サービス報酬改定について(抜粋)

 

 まず今回の報酬改訂について、共通した事項としてはどんなことがあるのかというところが、最初の枠の中に書いてあるところです。一つ目として日中活動系サービス、20人以下の単価を創設しております。そして事業運営配慮加算も新設したのと、新聞もかなりここを取り上げておりましたが、福祉専門職員の配置に関する加算を今回新設させて頂いております。こちらは良質な人材の確保と、サービスの質の向上を図るという観点から、一応三つの大枠に分けて要件は設定させて頂きました。一つ目の要件は、研修の計画的な実施、もしくは研修を修了された方を配置する、そういった考え方と、もう一つは社会福祉士等の割合、あとは常勤職員によるサービス提供時間の割合、そういった考え方を含ませております。この福祉専門職員というのがどういった方々になるのかというと、「社会福祉士等の資格を持つ人」と考えておりますので、そういった方々を25%以上雇用されている事業所、と考えて頂きたいと思います。それと、常勤職員の割合が75%以上の事業所、または勤続年数が3年以上の常勤の職員の方が30%以上いる、そういうことも考えております。
 それから、医療連携体制加算の新設もございます。そちらは、指定基準上は看護職員の配置を要しない施設に関しても、医療的なケアを要する障害者の方々が利用されているところもありますので、そういった場合には、医療機関との契約に基づいて、看護職員等の訪問を受けて提供された看護についても評価するものです。
 次の二番目の枠が、就労継続支援になっております。こちらは、基本報酬サービス費Ⅰ,こちらが7.5:1 という職員配置について単価を新設しております。それと施設外就労は意義があるということで、報酬を新設しております。それと、B 型のみの目標工賃達成指導員配置加算。
 就労移行支援につきましても、同じように施設外就労加算を設けております。


 

 自立訓練に関してですが、基本報酬について、利用開始から2年間の単価を一定にするという形、それと地域生活定着支援のための支援員の配置加算、地域移行支援体制の強化加算ですね、そういったものを設けております。
 次の共同生活援助、いわゆるグループホームにつきまして、4:1 あるいは5:1 単価を設けております。それと体験利用を行えるように、287単位を設定させて頂いています。また夜間防災体制加算も創設しております。それと利用者が心身の状況等において日中活動系のサービスを利用できない場合の日中支援活動も入ります。それともう一つ、医療観察法に基づく利用者につきましても、地域生活移行個別支援加算というものも設けさせて頂きました。
 次の共同生活介護についてですが、同じように4:1、5:1 ですね。また体験利用についての単価、同じように夜間支援体制の加算、それから日中支援の加算ですね。そういったものについて設けさせて頂きました。


 

 次が施設入所等の支援になりますが、まず一つ目に基本報酬の考え方を、これまでの平均障害程度区分に基づく評価を見直して利用者個人の障害程度区分に基づく評価にということで、一日あたりの単価を設定しております。それと、夜間の看護体制加算、夜間職員の配置体制加算も新たに設けさせて頂いております。それと日中活動サービス、こちらを算定しない入所施設におけるサービス提供についても、重要性に鑑みまして、基本方針に加えてさらに加算により評価をしております。それと栄養士の配置に対してと、医療観察法に基づきます通院医療の利用者に対する支援についても評価を行うということで、地域生活個別支援特別加算、そういった加算を設け、ただこちらは継続3 年以上、そういった条件もございます。
 短期入所につきましても、夜間のみを利用する場合の区分と、医療連携体制加算、それと単独型の加算に関しまして、今回設けております。
 訪問系サービスにつきましては、こちらに書いてある通りとなっております。


 

こちらが報酬の構造表の抜粋になっていますが、こういった構造にそれぞれ報酬を新たにつけておりますのでご覧ください。

 

Ⅵ 障害者自立支援対策臨時特例交付金による特別対策事業の実施方法

最後に、障害者自立支援特別対策事業の中で特に精神障害者・地域移行支援に関するものを少し抜粋しております。

(6)地域移行支度経費支援事業(新規)

地域移行支度経費支援事業の助成対象

 

 まず一つ目に、地域移行支度経費支援事業が新たに事業となりました。補助加算についてはまだ出てないのですが、事業の目的としましては、入所施設の入所者や精神病院等の入院患者が地域生活に移行するときに、地域での生活において必要になる物品の購入について、いわゆる支度金というような意味合いですが、そういった部分を支援していく事業でございます。対象施設や対象者、あとどういったものが実際に支度金として対象になるのかについて、地域生活を開始するに当たって必要になるもの、布団であるとか枕・シーツ、そういった身の回りのものですね。
 実施年度につきましては、今のところ21年度から23年度です。


(10)障害者地域移行体制強化事業

 

それと、障害者地域移行体制強化事業、こちらは従来からあるものですが、新たに新設したものが5つほどございます。まず一つ目が、こちらの地域移行支援事業、それから障害者地域移行に対するモデル事業、それから触法障害者地域移行支援事業、医療観察法地域処遇体制強化事業、そして精神障害者の家族に対する支援、こういったものが新たな支援として加わりました。

 


(別紙4)エ障害者を地域で支える体制づくりモデル事業(新規)

障害者を地域生活を支える体制づくりモデル事業~イメージ~

 

障害者を地域で支える体制づくりモデル事業というのは、目的としましては、入所施設または病院から地域生活に移行した障害者が安心した生活を送れるようにする、そのためには地域の中で様々なサポートが必要となってくるので、そういった社会資源を組み合わせて活用する支援体制を構築していくことに視点を当てております。事業内容につきましては、関係機関の連携による24 時間のサポートのための体制作り、それと既存の相談支援事業者、ショートステイ等を組み合わせた体制づくりが事業の中に含まれております。


(別紙7)キ精神障害者等の家族に対する支援事業(新規)

 

 そして、もう一つが新たに加わりました、精神障害者の家族に対する支援事業。精神障害者等が地域で安心して生活するためには、ご本人だけではなく、ご家族の方に対する支援も非常に重要になってまいります。お互いの悩みを共有したり情報交換をする、そういった交流活動とかに関しても助成を行っていくということです。具体的には、精神障害者等の家族同士の交流スペースの整備、そして精神障害者の家族同士の交流の催し物に対する運営料の助成、こういった補助を検討しております。


(11) 一般就労移行等促進事業

 

 それと、こちらは一般就労に関する新事業です。事業内容としまして、新たに障害者一般就労・職場定着支援事業、それと復職再チャレンジ助成事業、あと目標工賃達成助成事業、こういったものそれぞれが新規事業となっております。

 以上が今日用意したスライドに基づいたご説明です。途中報酬のところでご説明が至らなかったところもあるのですが、具体的な報酬につきましては厚生省のHP に用意しておりますので、そちらのほうをぜひとも、皆様自身でご確認頂ければと思います。
 何かご質問等ございましたら、少しお時間がございますので。

 

質問者: 大変詳しいお話をありがとうございました。
精神保健相談について、規定の改正のことがあるのですが、それはどのような形でなされているのでしょうか。
吉川: 皆さん、今のご質問のことがだいたいお分かり頂けますでしょうか。
地域の方からの精神保健および精神福祉に関する相談を、現在窓口として対応しているのが、市町村と、保健所と、精神保健センターとございます。ただ、精神福祉相談につきましては、何が法律の根拠になっているかといいますと精神保健福祉法においてで、現在市町村において相談を受けることになっております。
ただ皆様もよくお分かりになるかと思うのですが、障害者のご家族の方が精神福祉相談に訪れた時に、自分は福祉に関する相談をしているんだとか、そうではなくて自分は精神保健の病気に関する相談をしているんだとか、そこをご自身が区別して、私は福祉の相談、私は保健の相談と、区別するのが難しい状況があるのではないかということが、いろいろな調査などにより、課題となっているのですね。したがって、市町村でも精神保健に関する相談の役割を担って頂きたいというのが、検討会の意見の趣旨ではございました。
ただ、市町村それぞれいろいろな状況がありますので、市町村にただ「精神保健をして下さい」と言う、そういった見直しではなくて、保健所とセンターと市町村、それぞれがうまく連携をして、重層的にとよく言われるのですが、それぞれ3機関が連携をして、地域の人からの精神保健に関する相談に対して行政として役割を担っていくように、何とかそういう連携体制をうまくサポートできるように、見直しができればいいと考えております。

 
(終了)

 

 

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