基調講演Ⅲ

12:00~12:40 基調講演Ⅲ

木住野(きしの)一信氏
(三鷹市健康福祉部地域福祉課長)

 

【基調講演Ⅲ:木住野一信氏】

 

 ただいまご紹介頂きました、三鷹市健康福祉部地域福祉課長の木住野と申します。
 実は私、福祉の現場に戻ってきたのが7年ぶりでございます。昨年4月から地域福祉課長になりまして1年に満たない状況でございますけれど、この間第2期障がい福祉計画検討市民会議を立ち上げて、その中で多くの市民の方からいろいろなご意見を頂いたことも含めて、今日は発表させて頂ければと思います。
 福祉の現場に戻って非常に感じることは、「踊る大捜査線」ではありませんけれども、刑事役の織田裕二さんが言っている「事件は現場で起きているんだ」と、日々そんな状況で動いております(笑)。どうぞよろしくお願い致します。


三鷹市の概要

 まずは三鷹市の概要についてお話させて頂きます。
 三鷹市は、昭和25年に市制施行され、来年ちょうど60周年を迎えるところでございます。先ほど大きな東京都全体の地図がございましたけれども、三鷹は都心から西へ18キロぐらい、東京都のほぼ真ん中に位置しております。東は杉並区、それから西は小金井市、南は調布市、北は武蔵野市に隣接しております。面積は16.5平方キロの住宅都市です。
 人口は今年21年1月1日現在で178,920人。微増している状況です。高齢化率は18.1%。全国平均がおよそ21%といわれておりますので、比較的高齢化率は低くなっております。
 特筆すべきところは、男性の平均寿命が全国3番目です。横浜市、川崎市、三鷹市、実は男性の場合は都市部が高いんですね。女性の場合では沖縄が全国的にはトップに挙がっていますけれども、この辺の要因は、非常に活発に活動される方が多く健康的で元気ですので、平均寿命も高いのだと思います。
 障害者の皆様の実数ということで、ここに記載されておりますのは手帳所持者の数で、昨年の4月1日でおよそ全体が5,550人。手帳所持者ということですから、精神障害者の方は実質的には自立支援医療申請者を含め、およそ3千人程になるのかなと予測しております。
 今後は、ある面では障害者の方も高齢化、重度化、こういうことが課題になってくるのではないのかと考えております。皆さんご存知のように、平成18年度から施行されました障害者自立支援法は、三障害の一体化、障害保健福祉の総合化、自立支援を追求したシステムへの転換、制度の持続確保、就労支援や退院促進など、障害者の社会的自立支援、社会参加を指向するサービス体系となっております。
 そういう中で三鷹市としては、自立支援法の中で定められております第2期障がい福祉計画を策定するに当たりまして、障害当事者はもちろん、ご家族の方とか事業者の方、関係団体の方も含めて、現状の課題や今後のあり方などを協働して取り組んで参りました。


三鷹市における精神障がい者支援の取り組み

 次に、三鷹市における精神障害者の支援の取り組みの経過ですが、ちょうど私も80年代から90年代への5年間くらい、障害担当係長をさせて頂いて、措置の時代から支援費制度になって、自立支援法になって、その辺の時の流れは非常に速くて、ある面では前進したのではないかと思うんですけど、今現在私もこの表を作って、だいぶ変わったのだなと実感しております。
 まず1980年代から90年代にかけましては、入院医療中心から地域生活へと精神障害者の施策が転換された時代でございまして、日中活動・生活の場としての共同作業所・グループホームが、関係者の努力もあり、多く開設されるようになりました。市としても運営費や家賃助成、それから設置や運営の支援などをして参りました。
 2002年になり、先ほどお話もありましたけれども、障害者プランで国の施策目標として、受け入れ条件が整えば退院可能な入院患者の退院と社会復帰が明記されましたので、それにともない東京都も同じ2002年、東京都より市へ精神障害者の関連事務の一部が移管されました。先ほどご質問もありましたけれども、市と都と国との役割というか、一般相談は市でやるということになっておりますが、その辺の連携はまだ大きな課題と私は認識しております。
 2004年、三鷹市心のバリアフリー推進事業、これは現在障害者週間のイベントとして実施しておりますけれども、やはり障害者の方にとっては地域での理解ということが一番大事ですので、啓蒙啓発を図ろうということで、こういう事業を立ち上げました。
 それから2005年にはピアサポート事業、巣立ち会さんを中心に立ち上げて頂いておりますが、もう一歩先に進む事を考えたときに、この事業がうまく絡んでくれればなと考えております。


2006年~

 次に、2006年に地域活動支援センターⅠ型ができました。
 2007年になりまして高齢者・障がい者入居支援・居住継続支援事業ですが、精神の方々の総合的な地域生活の支援をするということは、衣食住という生活の質のバランスと、特に精神障害者の方の場合には「い」は医療の充実の確保であり、「しょく」は職業であり、「じゅう」の住まう場所が大事だと思いますので、この事業を開始しました。
 この年には、今現在進めている計画を作るにあたり、実態調査もおこないました。
 それから、いろいろな方と協議をしながら施策を進めていくことが三鷹市の大きな特徴でありまして、2007年(平成19年)に41名の皆様、障害当事者を始め多くの方の参加の下に、自立支援協議会を立ち上げました。
 それで今年2008年は、すでに2005年から巣立ち会さんが東京都の退院促進事業は実施していたわけですが、市として今年から精神障がい者退院促進事業を、まずは生活保護受給者を対象にして、支援相談員を配置しました。まずは生活保護受給者から始めて、そのノウハウ、課題・問題点を踏まえながら、今後広げていきたいと考えております。
 それからぴゅあネット事業、これは事業所等の工賃をアップしようということで、駅前の通りに「星と風のカフェ」を開いて、各事業所さんから自分たちの自主製品を持ち寄って頂いて紹介をすることで、この事業も充実して、工賃アップにつながればと考えております。
 それから、先ほども地域生活支援の「担い手」という話がありましたが、精神障害者のホームヘルパーのフォローアップ講座を、昨年7月に実施させて頂きました。
 そして、第2期障がい福祉計画の市民会議を設置、ほぼパブリックコメントも終わりまして年度内に確定する予定です。


高齢者・障がい者等の生活と福祉実態調査

 ここで、第2期障がい福祉計画に生かすためにニーズ調査をした、その説明をします。
 目的、対象者はこういう形で、入院していた方は除きました。調査項目では、暮らしに関する項目、ケアに関する項目、そして施策への要望ということでおこないました。
 残念ながら回収率は6割弱という状況でした。


生活と福祉実態調査から

 次に、実態調査から見えてきたところとしまして、まず経済的には非常に厳しいということが見えてきました。それから、年金や生活保護の方が多く、月10万円以下の方が4割ということです。
 低収入の状況は就労形態と密接に関係しておりまして、就労している方は4割以下、半数以上の方が未就労ということがわかりました。
 福祉サービスについては、未利用者の方が非常に多い。これはサービス事業の啓発等が不足していることであり、今後相談事業を充実させていかなくてはならないことが、この調査からもみえてきました。
 医療については、定期的に通院している方が非常に多い。特に精神の方の通院率が高い。


精神障がい者の傾向

 次に、同じ実態調査から精神障害者の方の部分だけを取り上げてみますと、まず就労してない方が非常に多い。単身世帯の割合が4割を超えている。それから大部分の方が医療機関に頻繁に通院している。それから、比較的若い方については活発に活動されておりまして、仲間との交流等も見られるところがありますが、年配の方については、健康上の理由等から医療機関等へよく通っていて、なおかつ単身の割合が高い。それで結果的に家庭に引きこもりがちの人も多いということなので、今後については障害者の重度化と高齢化に対してどう施策を展開していくかが、大きな課題になっているということです。
 最後に災害時のことで、三鷹市では17万人の人口を7つの住区に分けていまして、その中で地域で共に支えていこうと、地域ケア事業を推進しております。今現在、3つ目が立ち上がりまして、その中で、今後の災害時のありかたについても議論しているところです。特に避難場所での医療の確保というところですね。このあたりが課題になってくるかと思います。


障がい者施策の現状と課題

 次に、今現在の三鷹市での障害者施策の現状と課題ですが、まず障害者の地域生活を支える相談支援体制と機能強化ということです。具体的には、身近にあって多様な相談窓口の整備です。
 情報の提供や、総合的・専門的な相談体制の確立を図らなければならないということです。
 それから障害者の自立と就労。具体的には、「三鷹市障がい者就労支援センターかけはし」の機能を充実・強化することによる一般就労の促進とともに、福祉的就労の充実、生きがい・自己表現を図れるような支援体制を整備していかなければならない。
 次に、障害者の地域生活移行支援。病院や施設からの地域移行支援としまして、居住の場であるグループホームやケアホームの充実と、地域で暮らすための居住サポートや居住継続支援、こういうものが必要だということです。
 それから、障害者の自立と地域生活を支援するための移動支援やリハビリテーション、家族支援などが必要です。
 またサービス利用者支援と事業の円滑な運営という視点で、具体的にはサービス利用者の負担軽減策をおこなってきました。今まで応益負担、1割負担が、実質的には特別対策等で3%になったと。この応益負担は、最近の話の中では応能負担にするということなので、この辺は多少解消になるのかなと期待しております。そして良質のサービスを利用者に提供できるように、事業者、事業運営に対しての支援をしていかなければならない。
 そして、このところ発達障害者や高次脳機能障害者については、明確に自立支援法の中で定めていくということですから一歩前進したのかなと思いますが、まだまだ難病患者に対する支援というのは具体的になっておりませんので、三鷹市としては充実させていかなければならないのかなと思っております。
 それから、障害をお持ちのお子さんへの支援。成長過程に応じた対応をしていかなくてはならないということで、教育委員会との連携も一つかなと思います。
 障害者を地域で支える担い手の発掘と養成ということも、具体的にはボランティアさん、当事者や家族グループの育成と活動の支援、こういうことを今後やっていきたい。
 最後に、バリアフリーの地域社会を目指す活動。三鷹市では「全ての人が生き生きと暮らせるバリアフリーのまちづくり」ということを謳っておりまして、「バリアフリーまちづくり基本構想」や、「健康福祉総合計画」に定めた福祉のまちづくりを推進・発展していきたいと考えております。


障がい者施策のビジョン

 これらの現状と課題を踏まえて第2期障がい福祉計画を策定する際に、第1期の二つのビジョン「だれもが住みなれた地域で安心して暮らしていけるまち」、「だれもが地域社会の中で個性を生かしつつ社会の構成員として自立して生活できるまち」、これを実現するための視点として、「当事者ニーズに基づいたサービス提供体制の構築」、まずご本人のことを考えるのが一番大事なことでしょうということです。また障害がどんなに重くても、ご本人のニーズがあれば地域生活が可能となるような地域社会の実現を図っていきたい。それから、「バリアフリーの地域社会づくりと社会参加の推進」、「障害者が主体的に自己実現が図れる地域社会の実現」、こういうことを市民の参画と協働によって、皆さんとともに進めていきたいと考えております。


基本目標

 ここに基本目標、ビジョンをどう組み立てていくのかということを、精神障害者施策の場合で二つ挙げさせて頂きました。
 退院可能精神障がい者の地域生活への移行ということで、東京都からは、三鷹では先に話がありました人口の按分ということで、70名ぐらいの方が退院可能ではないかという通知を頂いております。三鷹には3つほど大きな病院がありますので、それを踏まえて100人を目標として退院促進を図っていきたいと考えております。
 その場合にはやはりケアホームとかグループホームの居住、それからピアサポート、相談機能の充実、こういう中で関係機関と協力し地域生活への移行を進めていきたいと考えております。ただここで、既存の施設を使ってグループホームをつくるといった場合、以前から消防法がありましたけれども、その他に平成18年からバリアフリー法の新法ができまして、建築基準法との絡みの中で整備するのが厳しい状況になってきていると、事業者の皆様から寄せられております。本来バリアフリー法というのは、誰でも多くの方がその施設を利用できるということ、車いすの方、視覚障害の方、つまり入り口の幅の問題だとか点字ブロックを付けるとか、それが逆に足かせになってしまっている。限られた予算の中で整備していくということで、この辺を考えていかなくてはならないかなと。
 それから24時間のサポート体制。それといきなりケアホーム・グループホームではなくて、体験の場の確保。こういうものが地域移行には必要ではないかと、市民会議の中でも議論されました。
 そして、福祉施設から一般就労への移行。この点については、報酬単価が上がると言われておりますけれども実質的には日払い方式は変わらない状況のなかで、就労継続A・Bや就労移行のサービスがありますが、障害をお持ちの方々が知識・能力が高まり一般就労に移行することは良いことだと思うのですが、利用者の退所後のその間運営側は定員が確保されるまで日払い方式のため非常に運営上厳しいということを言われていますので、どうしたらいいのか対応を考えなくてはいけないかなと。
 それから工賃アップということであれば、官公需、公けのところがなるべく仕事を出して工賃をアップしようとした場合、どういう仕事が事業所の皆さんに提供できるのか、なるべく早めに考えていかなければならないのかなと。
 ただ、実際は就労は難しい方もいますので、体験の場の確保ですとか、居場所づくり、デイケア等も含めて充実していかなければならないと考えております。


計画の実現に向けての方策

 最後に、計画の実現に向けての方策ですが、今後高齢者も障害者も、先ほど言いました難病の方々も、全ての人がそのニーズに応じて、できるだけ身近なところでサービスが提供されるよう、自立と共生の考え方に立ちまして、総合的に取り組んでいく必要があると。その実現に向けて、次のようなことを挙げさせてもらいました。
 この場合の基本的な視点は、障害をお持ちの方一人一人のライフステージに応じて、児童期・未成年期はこれからの長い人生のための基盤作りの視点が必要でしょうし、若者の場合は働くことでの社会参加・社会貢献、高齢の障害者にとっては健やかな老い、そういうものを迎えられるような視点が必要であると考えております。
 障害者自立支援法の施行や雇用促進法等の改正によりまして、精神障害者の「地域で住み、働きたい」という思いは、可能性は徐々に充実してきたと考えております。ただ、まだ一般就労は厳しい状況で、雇用をめぐる社会情勢の悪化を考えると、非常に懸念されているところです。
 また、採用されても、それを継続するためにはやはりジョブコーチとか、就労後の生活支援や医療との適切な関わりが不可欠であると感じております。
 このような計画を推進していくためには、三鷹市の場合では自立支援協議会を始めとして、多くの市民の皆さんと協働して障害者福祉充実の実現に努めていきたいと思っております。これからも皆さんと共に進めていきたいと思いますので、よろしくお願いします。
ご清聴ありがとうございました。(拍手)

 

(終了)

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