はじめに

今回のこの調査の趣旨について、少しご説明させて頂きます。
 厚生労働省では、平成20 年度の4 月から「今後の精神保健医療福祉のあり方等に関する検討会」という会を設け、今後5 年間の「精神保健医療福祉の改革ビジョン」の骨子を作ろうとしています。私も構成メンバーとして参加しておりますが、云うまでもなくその中で一番大きな課題として私どもが感じているのが、「受け入れ条件が整えば退院可能」と云われる、いわゆる長期入院者、社会的入院者の地域への移行の問題であります。
 平成16 年の「精神保健医療福祉の改革ビジョン」では、7 万床の精神科病床の削減を謳っていましたが、現実には病床削減は実施に至らず、社会的入院者の数はあまり減っておりません。平成15 年度から始めた精神障害者退院促進支援事業でも、5 年間で実質1,000 名程度の退院者を出したに過ぎません。この体制のままでは、精神科病床の削減はおろか、社会的入院者の地域移行が目標値に達することはほとんど不可能です。
 そこで、私の願いとして、これまでの「精神障害者退院促進支援事業」や「精神障害者地域移行支援特別対策事業」といった、有期限で限定の事業ではなく、障害者自立支援法下での事業として恒常的で包括的な事業として位置づけていけないかと提案して参りました。
 その為には、相談支援事業の充実・強化とともに、今現在地域移行を担っている地域移行推進員(コーディネーター、自立支援員)が、どのような業務を行っているのか実態を把握し、それをどのように制度の中に取り込んでいくか、報酬化していくのか、といった検討および提案が必要になってきます。今回の調査は、それを行う為の資料として、活かしていくことを目的としています。
 病院の中で、皆様の支援を待っている社会的入院者を一人でも多く、地域へ呼び戻す為に行った調査研究です。少しでもこの調査結果を成果に繋げられるように、そして具体的な政策提言できるように考えております。
 それでは、調査、分析の結果についてまとめたものを、ここに報告させて頂きます。


平成21 年春
田尾有樹子


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