2.問題と目的

 精神保健福祉領域において、社会的入院問題が着目されるようになって久しい。平成15 年度から精神障害者退院促進支援事業(以下、退院促進支援事業)が施行され、平成18 年10 月からは地域生活支援事業、平成20 年度からは精神障害者地域移行支援特別対策事業(以下、地域移行事業)が施行されている。
 国策として対処が進められてはいるものの、日本の精神病床数が、世界各国の中で非常に多い状況は現在も変わらず20 年以上続いている。
 退院促進支援事業や地域移行事業は、有期限のものであった。地域移行事業では、「平成24 年度までに退院可能な精神障害者が退院することを目指す」とされている。しかし、精神障害者の支援は、退院によって終了するものではない。地域移行を円滑に進め、その後の地域生活を安定して送れるよう支援を行なっていくには、地域での生活を継続して支援していく必要がある。また、現時点での長期入院者だけでなく、長期入院に移行する可能性のある者に対する支援体制を整えなければならない。地域移行支援は、「精神保健医療福祉の改革ビジョン」で示された「約7万人」の社会的入院が解消された時点で終了するものではなく、今後も継続して必要とされていくものである。
 したがって、退院促進や地域移行には、障害者自立支援法下で、恒常的で包括的な事業とすることが期待される。また、これまでの事業では成果が出ていないことから、効果的な支援を行う為に事業の体制整備が必要である。事業の充実・強化、および恒常的で包括的な事業とするには、事業を行なうことに伴った報酬が必要であると考える。
 そこで、地域移行事業における地域移行推進員の支援内容について、質問紙を用いて実態を把握する。この結果を基に、支援の実態から適切な報酬化について検討し、提案していくことを目的とする。

menu