資料

<実施要綱>

Ⅰ.精神障害者退院促進支援事業実施要綱

Ⅱ.精神障害者地域移行支援特別対策事業実施要綱

 

精神障害者退院促進支援事業実施要綱

1.目 的

 本事業は、精神科病院に入院している精神障害者のうち、症状が安定しており、受入れ条件が整えば退院可能である者に対し、活動の場を与え、退院のための訓練(以下「退院訓練」という。)を行うことにより、精神障害者の社会的自立を促進することを目的とする。

 

2.定 義

(1)対象者
「対象者」は、精神科病院に入院している精神障害者のうち、症状が安定しており、受入れ条件が整えば退院可能である者をいう。

(2)協力施設等
「協力施設等」は、精神障害者に対する理解が深く、退院を目指す精神障害者に活動の場を提供し、退院訓練を行うことを通じてその社会的自立を促進することに協力する精神障害者社会復帰施設、精神障害者地域生活支援事業所、小規模作業所をいう。

(3)自立支援員
「自立支援員」は、精神障害者の福祉に理解を有するものであって、精神保健福祉士又はこれと同等程度の知識を有する者をいう。

 

3.実施主体

(1)本事業の実施主体は、都道府県及び指定都市(以下「都道府県等」という。)とする。

(2)実施主体は、本事業の一部を、希望する精神障害者地域生活支援センターの運営主体に委託して実施するものとする。

 

4.自立支援の委嘱

都道府県知事及び指定都市市長(以下「知事等」という。)は、対象者の退院訓練を支援するため、自立支援員の委嘱を行うものとする。

 

5.運営委員会の設置等

(1)知事等は、以下に掲げる業務を行うため、精神障害者自立支援事業運営委員会(以下「運営委員会」という。)を設置するものとする。
①対象者(利用見込者数)、協力施設等の数等に係る数値目標の設定
②6に規定する自立促進支援協議会からの報告の受領及び自立促進支援協議会への助言
③実績報告を受けての事業効果の評価
④その他本事業の実施にあったて必要な事項の協議

(2)運営委員会は、以下に掲げる機関の責任者で構成する。会の長は、都道府県本庁の精神保健福祉部局の責任者とする。
①都道府県等本庁、精神保健福祉センター及び保健所の精神保健福祉部局
②市町村の精神保健福祉、生活保護及び公営住宅の各部局
③精神科病院
④精神障害者社会復帰施設
⑤精神障害者居宅生活支援事業における運営主体
⑥小規模作業所
⑦地域の医師会
⑧地域の精神科病院協会
⑨地域の家族会
⑩地域の当事者団体
⑪その他知事等が適当と認める者

(3)運営委員会は年2回以上開催するものとする。

(4)本事業を複数の地域生活支援センターで行なう場合であっても、運営委員会は都道府県・指定都市ごとに1か所とする。

 

6.自立促進支援協議会の設置等

(1)本事業の委託を受けた精神障害者地域生活支援センター(以下「地域生活支援センター」という。)は、支援の進歩状況の把握、具体的な支援の方法等について協議し、円滑な支援をより迅速に実施していくため、自立促進支援協議会(以下「協議会」という。)を設置し、当該協議会の事務を担当するものとする。

(2)協議会は、対象者の退院訓練及び対象者への支援に直接関わる者(協議会を設置する地域生活支援センター・市町村・保健所・精神保健福祉センターの職員、主治医、協力施設の担当者及び自立支援員等)で構成するものとし、会の長は互選とする。なお、協議の対象者によって構成員を変更できるものとする。

(3)協議会の業務は以下のとおりとする。
①対象者の選定
②対象者の自立支援計画の決定(退院訓練中及び退院後の生活のためのケアマネジメントを実施するものとする)
③対象者ごとの協力施設等の決定
④事業の進歩状況の把握、事業効果の評価並びに自立支援計画の見直し
⑤地域における社会資源の把握
⑥その他本事業の実施に当たって必要な事項の協議

(4)協議会は、原則として月1回以上開催するものとする。なお自立支援計画を策定する場合その他の必要と認められる場合においては、当該対象者の同意を得て当該対象者の意見を聞くことができる。

 

7. 手続等

(1)利用の手続等
①当該精神科病院の管理者は、対象者の承諾を得て、主治医の意見書を添付の上、申込書を協議会に提出するものとする。
②協議会は、対象者の適否を協議の上、その協議の結果を当該精神科病院の管理者及び申込者に通知するものとする。
(2)協力施設等への依頼等
①協議会は、本事業の実施につき、地域の精神障害者社会復帰施設等協力施設等として相応しい者に対象者の受入れを文書にて依頼するものとする。
②協議会は、①について、その可否を文書にて受け取るものとする。

 

8.退院訓練の実施

(1)対象者は、自立支援計画に基づいて、協力施設等における訓練(精神障害者通所授産施設における授産活動、精神障害者地域生活援助事業(グループホーム)における体験入居、小規模作業所における作業等)、日常生活を営むのに必要な活動等の退院訓練を行う。

(2)自立支援員は、当該対象者が退院訓練を実施するにあたり、必要に応じて次に掲げる業務を行うものとする。
①開始時における対象者への訓練内容の説明及び対象者との信頼関係の構築
②当該対象者が入院している病院から当該協力施設等までの同行支援
③当該対象者の訓練中の状況確認及び必要な支援
④協議会の構成員に対しての支援方法の協議並びに支援に必要な情報の収集
⑤その他当該対象者が安定的に訓練するために必要な支援

(3)退院訓練の期間は原則として6か月以内とし、必要に応じて更新することができる。ただし、対象者の症状の悪化の場合にあっては主治医が、その他の場合にあっては協議会が、本事業の継続が困難になったと判断したときは、退院訓練を中止し、この旨を当該精神科病院の管理者及び当該対象者へ通知するものとする。なお、中止は再開を妨げるものではない。 また、地域生活への移行にあたって引き続き自立支援員による支援が必要と協議会が認める場合には、退院後1か月間に限り、支援を継続することができる。

(4)協議会は、協力施設等へ退院訓練の経過等の報告を求めるものとする。

 

9.退院訓練終了時の取扱い

(1)退院訓練は、当該対象者が退院若しくは訓練を中止することにより終了するものとする。

(2)協議会は、関係機関と連携を密にし、当該対象者が円滑に地域生活を継続できるよう支援に努めるものとする。

(3)協議会は、退院訓練を中止した場合にはその要因分析を行うものとする。

(4)自立支援員は、退院訓練終了後、協議会に対し、当該対象者に係る退院訓練についての報告書を提出するものとする。

(5)協議会は、毎年度末までに運営委員会に事業実施報告書を提出するものとする。

(6)運営委員会は、毎年度末に知事等に事業実績報告を提出するものとする。

 

10.費用の補助

 国は、都道府県等に対し、本事業に要する費用について、別に定める「精神保健費等国庫負担(補助)金交付要綱」により補助するものとする。

 

11.その他

(1)協議会の構成員は、その業務を行うにあたっては、対象者の人格を尊重してこれを行うとともに、対象者の身上及び家庭に関して知り得た秘密を守らなければならないものとする。

(2)都道府県等は、本事業の実施について、地域住民及び関係機関に対して周知を図るとともに、精神疾患及び精神障害者に対する正しい理解の促進を図るものとする。

(3)地域生活支援センターは、本事業に係る経理と他の事業に係る経理とを明確に区分することとする。

(4)協議会は、保健所が実施する地域精神保健福祉連絡協議会の場を活用する等により、精神保健福祉センター、保健所、市町村、福祉事務所、精神障害者社会復帰施設、精神障害者居宅生活支援事業の事業所、医療機関等関係機関と連携して本事業を実施するものとする。

(5)自立支援員は、支援にあたって、定期的に主治医に状況を報告し、指示があった場合にはそれに従うものとする。

(6)都道府県等は、本事業に係る実績報告書を、別に定める様式により翌年度の4月30 日までに提出すること。

 

精神障害者地域移行支援特別対策事業実施要綱

1.目的

 障害者福祉計画に基づく受入条件が整えば退院可能な精神障害者(以下、「退院可能精神障害者」という。)の減少目標値の着実な達成を目指し、病院・施設等と連携し、精神障害者の地域生活への移行に向けた支援を推進する。

 

2.実施主体

本事業の実施主体は、都道府県とする。
なお、指定都市又は中核都市に事業の一部を委託することができるものとする。また、事業の全部又は一部を団体などに委託して実施することができるものとする。

 

3.圏域

都道府県は、本事業を行うにあたり、二次医療圏域などを踏まえ、適切な圏域を設定することとする。

 

4.事業内容等

(1)協議会の設置
都道府県(委託して実施する場合は当該委託先の実施主体を含む。以下同じ。)は、以下に掲げる業務を行うため、都道府県、市町村、精神科病院の医師、福祉サービス事業者、ピアサポーター等で構成する協議会(既存の協議会を活用することも妨げない。)を設置するものとする。
なお、協議会を運営するに当たっては、都道府県自立支援協議会や地域自立支援協議会との連携を図ることとする。
(ア)客観的な視点に立った対象者の決定(病院・施設等と退院・退所について合意を得るなど十分に調整を図った上で行うこと。)
(イ)体制整備のための調整
(ウ)困難事例の解決に向けた調整
(エ)事業の評価(地域における支援体制等に関する課題が明らかになった場合には、地域自立支援協議会に報告するなど、課題解消に向けた方策を検討するように努めること。)
(オ)その他本事業の実施にあたって必要な事項

(2)地域体制整備コーティネーターの配置
都道府県は各圏域に1名以上精神保健福祉士又はこれと同等程度の知識を有する者のうち精神障害者の地域生活への移行に必要な体制整備の総合調整の能力を有する者を地域体制整備コーディネーターとして相談支援事業者等に配置し、主に以下のような業務を行う。
(ア)圏域の市町村病院及び福祉サービス事業者等の関係機関に対する周知等、本事業の円滑な実施のための体制整備に向けた調整
(イ)病院・施設等の関係機関に対する本事業への参加等、必要な協力の要請及び、地域の資源に係る情報提供、資源開発等に関する病院・施設等からの要請への対応
(ウ)下記(3)の地域移行推進員(以下同じ。)と連携した各圏域市町村における必要な事業、資源(インフォーマルなものを含む)の点検・開発に関する助言・指導
(エ)地域移行推進員が作成する個別支援計画(以下「個別支援計画」という。)への必要な助言・指導
(オ)個別支援計画に基づき地域移行推進員が実施する支援に対する必要な助言・指導
(カ)複数圏域にまたがる課題の解決に関する助言
(キ)関係者と協議した研修、シンポジウムの企画、調整など地域移行に向けた普及啓発の推進等

(3)地域移行推進員の配置
対象者の個別支援等に当たる精神保健福祉士又はこれと同程度の知識を有する者を地域移行推進員として相談支援事業者に配置し、対象者の入院・入所する精神科病院等の精神保健福祉士等と連携を図るとともに必要に応じ当事者による支援(ピアサポート)等を活用しつつ、退院・退所及び地域定着に向けて主に次の支援を行う。なお、個別支援計画については、地域体制整備コーディネーターの助言・指導を受けながら策定及び支援を実施するものとする。
なお、入院・入所中から一定期間関与することとし、退院・退所後の支援期間は原則6ヵ月を上限とする。
(ア)利用対象者に対する退院・退所に向けた相談・助言
(イ)主治医との調整に基づいた医療・福祉にまたがる個別支援計画の作成
(ウ)個別支援計画に基づく院外活動(福祉サービス体験利用、保健所グループワーク参加等)に係る同行支援等
(エ)対象者、家族に対する地域移行に関する情報提供及び相談・助言
(オ)地域体制整備コーディネーターと連携した、退院後の生活に係る関係機関との連絡・調整等
(4)個別支援会議の開催
協議会において選定された対象者について必要に応じ適宜支援内容の検討や地域移行個別支援計画に見直しを行うための個別支援会議を当該対象者を担当する地域移行推進員が中心となって地域体制整備コーディネーター及び必要な支援関係者を集め、開催するものとする。
(5)その他の事業
地域移行支援のため特に必要と認められる事業。実施に当たっては、個別に厚生労働省社会・援護局障害保健福祉部精神・障害保健課に協議すること。

 

5.留意事項

(1)関係機関への周知
都道府県は圏域内の市町村、精神科病院及び福祉サービス事業者等の関係機関に対して広く周知し、本事業の実施に係る対象者の申請、協力施設の拡充及び支援体制の充実等事業の円滑な実施を図ること。

(2)関係機関との連携
都道府県は対象者の円滑な地域移行を図る観点から、相談支援事業者、その他福祉サービス提供者、保健医療サービス事業者等と連携を図ること。また、4.(2)のほか、地域体制整備コーディネーターは、医療観察法に基づく指定入院医療機関に入院中の対象者について、社会復帰調整官が行う退院に向けた生活環境の調整に必要な協力を行うこと。

(3)精神保健福祉センター及び保健所の役割
精神保健福祉センター及び保健所は、地域体制整備コーディネーター及び地域移行推進員に対して、地域の社会資源等の地域移行のために必要とされる情報や医療機関との連携に必要なノウハウ等を提供するとともに、医療機関への働きかけを行う際などにおいて必要な協力を行うこと。

 

6.報告

地域体制整備コーディネーターの活動については、月単位で都道府県に報告することとする。
なお、様式は別途定めることとし、報告については、報告様式を定めた日以降とする。

 

7.国の助成

国は、都道府県がこの実施要綱に基づき実施する経費については、厚生労働大臣が別に定める「精神保健費等国庫負担(補助)金交付要綱」に基づき、毎年度予算の範囲内で国庫補助を行うことができるものとする。

 

調査票

<調査票>

a.事業所に関する調査

b.利用者に関する調査

c.支援員に関する調査


a.事業所に関する調査
b.利用者に関する調査
b.利用者に関する調査
b.利用者に関する調査
b.利用者に関する調査
b.利用者に関する調査
b.利用者に関する調査
b.利用者に関する調査
b.利用者に関する調査
b.利用者に関する調査
b.利用者に関する調査
c.支援員に関する調査
c.支援員に関する調査
c.支援員に関する調査
c.支援員に関する調査
c.支援員に関する調査
c.支援員に関する調査
c.支援員に関する調査
c.支援員に関する調査
c.支援員に関する調査
c.支援員に関する調査

 

謝辞

 本調査にご協力頂きました方々に、調査期間が年度末も近い忙しい時期であったにもかかわらず、快くお引き受け頂きましたこと、改めて御礼申し上げます。ご意見の中には、お気遣い頂く事もあり、厳しいお言葉を頂く事もありました。皆様からのご意見、ご指摘につきましては、真摯に受け止め、今後の糧としていきたいと思っております。本当にありがとうございました。

 

巣立ち会 富田美穂

 

<執筆者>

1.背景  
 1-1.日本における精神保健医療福祉サービスの歴史と課題 ……… 田尾有樹子
 1-2.精神保健福祉における社会的入院問題と施策    
  (1)社会的入院 ……… 富田美穂
  (2)精神障害者退院促進支援事業 ……… 富田美穂
  (3)住宅入居支援事業(居住サポート事業) ……… 富田美穂
  (4)地域生活支援事業 ……… 富田美穂
  (5)精神障害者地域移行支援特別対策事業 ……… 富田美穂
  (6)今後の精神保健医療福祉のあり方に関する検討会 ……… 田尾有樹子
 1-3.サービスに対する報酬 ……… 田尾有樹子
2.問題と目的 ……… 富田美穂
3.方法 ……… 富田美穂
4.結果 ……… 富田美穂
5.考察 ……… 富田美穂
6.今後の展望 ……… 富田美穂

<調査担当者>
富田美穂・星山桂・田尾有樹子

<校正>
富田美穂・星山桂・鴨志田祥子・赤沼麻矢

 

平成20年度厚生労働省障害者保健福祉推進事業
障害者自立支援調査研究プロジェクト
平成20年度精神障害者の地域生活移行及び定着支援推進事業

精神障害者の地域移行支援における
地域移行推進員の支援活動に関する調査

(精神障害者地域移行支援特別対策事業地域移行推進員の実態調査)


平成21年3月発行
著者 富田美穂・田尾有樹子
編集・発行 社会福祉法人巣立ち会
東京都三鷹市野崎2-6-6
TEL&FAX 0422-34-2761
http://sudachikai.eco.to/
印刷・製本 社会福祉法人新樹会創造印刷
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