施設の生活は、障害者自立支援法としてみると、日中活動を行う昼の体系(生活介護事業)と、夜間の食事や排泄を中心とした夜間体系(施設入所支援)をあわせたものが1日の体系として位置づけられている。いわゆる「障害者支援施設」と呼ばれる施設である。利用者の入所定員は50名で、現在日中活動(生活介護事業)では、デイケアユニットを行っているということは先ほど述べたとおりである。今回、独居体験を行った方々のプロフィール日中活動や生活状況を紹介したいと思う。
Aさんのプロフィール
Aさんは、現在入所している施設では、就労支援ユニットに所属しており、活動のあるときは施設から車でおよそ30分の近隣にある作業場まで施設の車両を使用して通っている。作業内容は、輸入されてくるペットボトル入りの飲料水にネックハンガーをかける作業やスーパーなどで販売している野菜を入れるビニールに、商品のシールを貼るような作業を行っている。多いときには1週間に4回ほど作業場まで通勤し、1ヶ月の工賃は1~3千円程度である。その工賃の使い道は、ほとんどが施設内の自動販売機で買うジュースである。良く好んで買っているのは、缶コーヒーやココアなど甘いものが多い。また、週に1回は就労支援ユニットのミーティングがあり、その中で仕事に関する内容やユニット内での行事等について話し合いを行っている。Aさんは就労経験があり、就労に対するやる気もあるようだが、複雑な仕事やパソコンを使うような仕事に関しては、少々厳しいものがある。趣味は特になく、性格は温厚であるが、家族に対しては時々攻撃的な一面を見せることがある。家族とのつながりが非常に強い方で、入所しているAさんのところへ毎晩のように父親が面会に来て、起立訓練やマッサージ、発声練習などリハビリ的なことを中心に取り組んでくれている。母親も非常に協力的で、母親の友人と一緒に施設の中にある喫茶室で月に1回程度ボランティア活動を行ってくれている。
Aさんの障害は心臓機能障害と脳血管障害が主な障害で、施設内で生活するための日常的な動作には常に見守りや直接的な介助が必要な方である。コミュニケーションに関しては、おおむね言語で行っているが、言語機能に障害があるため、ゆっくりとした口調で喋る。
話をするときには、以前の手術で気管切開した穴から空気が漏れてしまい話がしにくいため、その穴を指で押さえながら喋ることが多い。また、Aさんは療育手帳(中度)を所持しており、複雑な質問に対しての返答は難しい場合がある。例えば、“何をしたいですか?”や“何が好きですか?”など開かれた質問の中で、ライフスタイルを組み立てることは、Aさんにとって苦手な傾向にある。しかし、施設生活においてライフスタイル自体がパッケージ化されているような、現在の施設において“6つの生活スタイルがありますが、どれがいいですか?”というような狭い質問に対しては、比較的簡単に答えることが出来るため、施設のようなパッケージ化された日課の中で生活することは、大きな問題とならない。したがって、主観的に見ると、Aさんが現在生活している施設は、利用者全体の平均的なニーズによって職員が作り出した日課にライフスタイルで、Aさん個人のニーズがあまり反映されていない与えられた人生を送っているのが現状となっている。現に、先ほども性格的なところは述べたが、温厚な性格であるがゆえに、周囲の環境に流されやすく、例えば「○○さんが××に行きたい」と言えば、Aさんも「××へ行きたい」と言い、○○さんが△△をもっていれば、Aさんも「△△が欲しい」というように流されやすいタイプである。
Aさんが施設に入所した経緯は、長期間社会的入院をしていて、病院から退院を迫られたが、両親の住んでいる家はバリアフリーになっておらず、Aさんが住むために大規模な住宅改修をしなければならなかった。そのため、住宅改修の調整が出来るまで短期入所の長期利用という名目で施設の利用が開始された(平成17年10月)。その後、様々な理由があって、改修するはずの家を他人に貸し、Aさんの住む場所がなくなってしまった。Aさんの介護度は区分6という最重度にあり、実際問題として家族だけでの介護ではかなりな負担が生じてしまう上、両親の高齢化なども相まって、Aさんは施設生活をそのまま送ることとなった(平成19年5月)。簡単に言えば、本人の希望ではなく、家族の都合による入所であった。当時、このような背景にあるAさんの気持ちをインタビューしたことがある。そのとき聞いたことが“Aさん、本当はどのような生活がしたいのですか?”という質問に対して、「お母さんと、お父さんと一緒に今までの場所で住みたい」という答えだった。他人に貸してしまった部屋は、入院する前までAさんが住んでいた場所で、色々な思い出がそこにあったと家族の方が話していた。Aさんは、車椅子生活になったことで、自分の部屋や家族との生活から切り離されてしまった。
Bさんは中学卒業後近隣の工場でしばらく働き、国の仕事を4年間、鉄筋工の仕事、パチンコ店、土建屋、派遣会社など職を転々と変え、次の仕事を探している最中に糖尿病が悪化し、両足の切断を余儀なくされた方である。BさんもAさんと同様に、病院生活を送っていたが、社会的入院により退院を迫られた方である。Bさんは、現在短期入所を長期間利用しているが、両足を切断されてしまい、自分で今後どのように生活をしていけばよいか分からなくなっていた。病院より退院を迫られたとき、Bさんはこの先どうすればよいか分からず、平成18年5月より市役所から進められた身体障害者療護施設でしばらく生活することとなった。
Bさんは、現在の施設において、支援を受けているのが食事の準備やベッドメイク、入浴時の洗髪や洗身等の介助である。Bさんの性格は少々せっかちで、人の話を最後まで聴いてくれないときがある。また、少々感情的な方で、利用者同士あるいは職員と時々喧嘩をすることもあった。気分の良いときには、自ら話しかけてくるが、気分の乗らないときは、返事もしないときがある。趣味は、鉄道に関することで、特に電車を見たり、乗ったりすることが大好きである。鉄道関係の話しをすると止まらなくなるほど鉄道好きで、施設に入所中も電車のゲームをしたり、鉄道模型を作ったり、電車に乗って遊びに行くこともしばしばあった。また、工作等が好きで、時々折り紙で人形を作成している。意思疎通は全く問題なく、ご自身でライフスタイルを作れる方なので、施設内の環境(ハード)であれば、おおむね自立した生活を送れる方である。施設職員から見れば、車椅子での生活だが、非常に自立度は高く、バリアフリーの環境であれば、独居生活は問題ないのではないかと見立てていた。しかし、先ほど述べたように感情の起伏が激しい方なので、自分で出来ることも時々職員にやらせようとすることが見られていた。実は、この独居体験を希望した直前に、他の授産施設へ入所の申し込みをされていた。Bさんは、入所施設へ入所しながら働こうと考えていたのだ。4年前に両足を失ってから、自分ではどのように生活をしたら良いか分からなかったBさんが、「授産施設へ入所したい」と言い出したことは、スタッフにとって大変うれしいことだった。
*Bさんが入所授産施設で実習をしている風景
しかし、選考の結果、授産施設へは入所することが出来ず、かなり落ち込んでいた。今回入所できなかった理由は、実習のときに見せてもらった仕事の様子では、授産施設で働くことが出来ないと授産施設から判断されてしまったからだった。このときBさんは、残念な表情を隠しきれなかった様子だった。この後、しばらくあまり元気がない様子で過ごしていたが、ある頃よりBさんは地域での生活をしてみたいという気持ちに変わっていた。喫煙所では、実際に自分が地域の中で暮らすことが出来るかという話しを時々職員としていた。そして、Bさんは今回の独居体験に参加することとなった。Bさんは、障害を負った当時、退院したらどのように暮らしたらよいかが全く想像できなかったという。家族からもBさんの面倒を見ることが出来ず、施設で生活をして欲しいという願いから、現在の施設生活を送る結果となった。今回の独居体験も、Bさんの実姉は拒否的で、施設から追い出されてしまうというイメージをもたれたようだった。Bさんは、なぜか実姉に対して恐怖を感じていた。「姉さん怖いから俺は黙っていよう」と話し合いの前に言っていた。何で怖いの?とBさんに尋ねると、「昔から姉さんは俺に対して怒るんだよ。俺のことを絶対に信用してくれないんだよ」と話していた。
Cさんのプロフィール
Cさんは、Aさんと同様に就労支援ユニットへ所属している。Cさんの障害はウイルソン病といって、体内の銅代謝機能異常で肝臓や腎臓、脳に銅が蓄積することによる障害を持った方である。施設の中では、出来る限り自分で活動してもらっているが、動作が非常にゆっくりで、トイレなどの失敗も多く見られている。移動には車椅子を使用しており、ベッドなどの移乗に関しては、出来る限りCさん本人で行ってもらっているが、動作が非常にゆっくりである上、転倒してしまうこともしばしば見られているため、見守りや一部介助が必要となっている。Cさんは、就労支援ユニットでは、ユニット会議のまとめや出納長の管理、行事等の起案作成などを行っている。このような面から見ると、リーダーシップの取れる責任感の強い方ということは、ある程度イメージをすることが出来るだろう。
*Cさんが所属している就労支援ユニットの作業風景
Cさんは、もともと普通の暮らしをしていた方で、高校卒業後一般の企業で就労していた。しかし、病状が悪化し、入退院を繰り返すようになる。父親が主な介護者であったが、その父親も高齢で体調も思わしくなく、通院や入退院を繰り返していた。このような背景があり、家族や親戚とともに行政に相談した結果、身体障害者療護施設の短期入所としてはじめて施設生活を送ることとなった。Cさんも施設に入所したきっかけは、家族の支援が受けられなくなったことによるものだが、当時の本人の気持ちとしては、施設入所に対してあまり拒否的には思っていなかったようだ。どのような気持ちだったかCさんに聴いてみると、「生まれてから自宅でずうっと過ごしていたため、他の場所でも生活がしたかった」とのことだった。施設は、自宅との生活とは違い、団体での生活となるが、それに対してCさんに聴いてみると、「僕はどこでも順応できるから大丈夫だと思っていた」とのことだった。したがって、Cさんは、前者の2者とは少々違い、きっかけとなったのは確かに家族の支援が受けられなくなってしまったことによる入所であるが、本人の興味本位的な部分も見られているため、多少本人の望んでいる生活の場だったのかもしれない。
Cさんは、最初に入所した身体障害者療護施設から、現在の施設へ移動されてきた(平成10年7月)。Cさんは、言語機能障害があり、コミュニケーションをとる際には、主に文字盤やトーキングエイドを使用している。言語でも多少聴き取ることは出来るが、慣れた人でなければ、非常に聞き取りづらい。先に述べたように、Cさんは就労支援ユニットでリーダーを負かされている。ユニット活動での起案書などは、主にCさんが作成してくる。Cさんはパソコンを所持しており、以前より手紙を書くことが好きだったため、このパソコンで手紙を作成している。手紙を出す相手は、専ら施設職員で、以前短期入所利用していた施設の職員や元職員などに手紙を書いていた。Cさんの趣味は音楽鑑賞や写真を取ることで、現在は廃部となったが、施設でも写真クラブに属していた。写真クラブの活動は、現在の就労支援ユニットのミーティングと同じような仕組みをとっていた。このころ(今から8年くらい前)にクラブ活動の事業計画や事業報告の作成をするために、パソコンを購入していた。
Cさんの性格は、「神経質で頑固」と本人が話してくれた。第三者から見てもその通りであると思わせるような行動は時々見受けられた。基本的には穏やかな方で、とても社交的でもある。ただし、自分の気に入らないことがあるとかなりそれに固執する傾向は見られる。現在、Cさんの家族は、平成10年に父親が亡くなってから、叔父が月に1回くらい面会に来てくれている。
Dさんのプロフィール
Dさんは、中途障害の方で、脳血管障害を受傷するまで主に食品関係の仕事をしていた。Dさんは、施設生活の中で以前やっていた仕事の内容を時々利用者や職員に話をしていた。職員を扱う仕事をしていたこともあり、施設で出される食事に関しては、様々な意見を出されていた。Dさんはセルフユニットに所属しており、意思の疎通も問題なく、施設内のハード的な設備であれば、職員が直接介助することもほとんどなく、毎日自分の中で組み立てたスケジュールで生活されていた。しかし、入浴だけは、座位式機械浴を利用し、ある程度の介助を受けながら生活されていた。
Dさんは、平成5年に脳血管障害を受傷し、平成10年までのおよそ6年間、社会的入院を繰り返していた。Dさんは、家庭を持ってはいたが、金銭の使い方が少々荒く、たびたび借金をしては、配偶者へ負担をかけていたようだ。そのせいか、入院してから妻はほとんどDさんの面会に来なかったそうだ。また、病院に入院中は、借金を抱えていた関係でお小遣いがもらえなかったため、入院している患者さんからタバコなどを貰う行為がしばしば見られ、トラブルも引き起こしていたとのことだった。
Dさんが入所したのは平成10年12月で、今までいた環境から大きく変わってしまったことが原因で、当時色々な介助をしていた。特に環境が変わって本人が怖がっていたものが、入浴の際の機械浴である。多少の変化がDさんの精神的な不安を大きくするということが以前より見られていた。入浴に関しては、1年くらいかけて普通に入れるようになった経緯がある。
性格は、普段は大変穏やかに見られる方だが、実は気が短くて、何か気に入らないことがあると人に手を出してしまうことがあるくらい感情的な部分がある。また、Dさんは面倒なことは大変苦手なようで、ゴミを捨てたり、靴をはいたりするような自分で出来ることも施設のスタッフへ頼むことが日常的に見られた。Dさんは団体生活が苦手と言っており、施設で生活するよりも一人でのんびり暮らしたいということをたびたび話していた。施設での過ごし方は、居室が個室で、普段より部屋でパソコンゲームをしたり読書をして過ごすことが多かった。
1)対象となる施設の理念
前提
「私たちは、平和を愛し、思いやる優しさと、暖かい感情を持ち続けます。
人は絶えず成長を願い、努力し、可能性を見出していく。人生は、躓いたとしても自己の選択により切り拓くべきで、他人に左右されるものではない。その経験が、社会の中でたくましく生きぬく精神を養い,共に支えあい、生きがいややりがいを持った生活を享受することにつながる。私たちは自己実現を達成する為、愛他的感情を持ち、社会正義を突き動かす事を使命とし、絶えずサービスを受け取る側の立場で考え、自分がされたくないことを人に押し付けないよう努めます。」
2006(平成18)年3月に上記、基本理念を対象施設は打ち出した。2003(平成15)年以前の措置制度時期にも、地域移行、自立のための支援は社会福祉関係法の目的等に定義付けられていたが、実質的には、施設は終の棲家としての機能重視に傾倒していた。本来通過施設としての機能重視であるべきであったが、そうなっていなかったのは多くの入所型施設の現状であると言える。2007(平成19)年4月、新体系に移行し、施設の方向性を打ち出すべきとした対象施設は、まず施設の基本理念の再構築に取り組んだ。対象施設は、本法律の自立支援を方針に定め、本来の通過施設としての機能重視をその理念に掲げ、すべての方の地域での生活を目標にした理念の構築を行った。生活介護事業の生産活動を積極的に取り入れ、施設外の場所で行うこと。逆ディサービスの手法を取り入れていくこと。そのための支援として、必要な新事業を行うことなどを計画した。
【法人理念】
自分らしさ・・・・・・自分らしく生きる権利
自立心・・・・・・・・生活主体者としての自己の管理下における日常生活
望ましい暮らし・・・・個々人の生活の重視
入所施設利用者が、施設生活から地域生活へ移行することが、利用者の自己実現であり、施設の大きな使命として捉える。地域生活を支援するために、我々福祉施設従事者が、生活主体者としての利用者の側面的支援を行うことが大きな役割である。
【法人基本方針】
家庭のような・・・・・心豊かな生活へ
家庭とは、愛他的精神によって形成される。人を思う心は豊かな生活を導く。家庭において身につけたもの(責任感・思いやり)は、生涯ずっと生き続けます。また、居室は、多くのプライバシーが存在し心安らぐ場所でなければならない。
しあわせあふれる・・・・・人は人間としての尊厳を持ち、人権を尊重される。
自己実現と社会参加を促進する事が、幸せの追求につながる。そして、それぞれの人の幸せを認め合えるような環境をつくる努力が必要である。
のびやかな・・・・・・自己選択を基本に人格的自立を目標とする
のびやかとは、成長・発達など物事が伸びてゆく様を表したものである。障害を持った利用者が「できない」という考え方から、のびのびとした角度から「できる」という動機付けを支援することが重要になる。つまり、利用者の潜在する可能性を実現に向け、QOLの向上を目指し、自己選択、自己決定ができることが求めらる。
共生の家・・・・・・・共(協)生の家
ともに生きるという考え方は、一人一人が持てる力を発揮して、支えあって生活していく、そしてそこには皆が1人の市民として差別や偏見を受けず、与えず暮らしていく事です。そうした社会の構築の為に、施設として努力して行く。かしの木に集う私たち1人1人が必要だと社会に認められるため、責任感を持って行動し、社会参加(自立心)を超えた社会貢献へと結びつく努力をしなければならないと考える。
2)対象施設の主な事業内容
①敷地、建物
かしの木ケアセンター(障害者支援施設及び地域活動支援センター)
住所 〒 354-0044埼玉県入間郡三芳町北永井381-3
℡ 049-258-0515 FAX 049-258-0989
ホームページ http://www.kcc.or.jp/index.htm
敷地面積 7733.40㎡ 建物面積 3649.82㎡ 鉄筋コンクリート2階
建 1人部屋 20部屋 2人部屋 20部屋
食堂・浴室(一般浴・リフト浴・特殊浴) 医務室・訓練室・洗濯室・多目的ホール
全館ガス冷暖房完備・非常通報装置
スプリンクラー設備・エレベーター設備介護リフト設備・床暖房設備(一部食堂)
すてっぷ(共同生活援助・共同生活介護一体型)
住所 〒 354-0044埼玉県入間郡三芳町北永井381-3
℡ 049-292-0055 FAX 049-292-0055
敷地面積施設:建物259.20㎡ 土地684㎡
木造平屋建 全室個室10部屋完全個室:5.2帖
食堂・リビング 浴室2・トイレ3・非常通報装置
②事業種別等
障害者支援施設(生活介護・施設入所支援事業) かしの木ケアセンター
生活介護 利用定員 50名 入所支援 利用定員 50名
対象者 障害福祉サービスの受給者等で、地域生活できなくなった方々が、支援を受けながら再び地域生活や就労を目指すことを目的とする施設である。夜間は入所支援事業、日中は生活介護事業を行う。
身体障害者(児)短期入所事業(ショートスティ) かしの木ケアセンター
利用定員 10名
入所支援事業の生活の流れに沿って、1週間から2週間程度の利用が可能な短期間の入所である。基本的なサービスは施設入所支援(セルフプログラム)に準じている。
地域生活支援事業 地域活動支援センター かしの木
利用定員 20名/日
営業日 月曜日~土曜日(日曜・祭日・年末年始を除く)9:00~15:45
対象者 三芳町・ふじみ野市・富士見市在住の障害者(児)で、創作活動入浴、給食、送迎、機能訓練などのサービスを選んで利用する。地域活動支援センターは、障害者自立支援法に基づく市町村事業である。
指定相談支援事業(県) かしの木
営業日 月曜日~金曜日(日曜・祭日・年末年始を除く)8:30~17:30
対象者 在宅生活をしている身体障害者・児、知的障害者・児
障害者居宅介護事業(重度訪問介護事業) ヘルパーステーションかしの木
事業実施区域 三芳町・富士見市・ふじみ野市
対象者 在宅生活をしている身体障害者・児、知的障害者・児
福祉サービス内容:身体介護、生活介護、家事援助、通院等乗降介助、
共同生活援助・共同生活介護一体型事業 すてっぷ
利用定員 10名
対象者 日中に就労又は就労継続支援等のサービスを利用している知的・精神障害者に対し、地域生活を営む住居において、日常生活上の相談、介護等のサービスを提供する。入浴、排せつ又は食事等の介護(ケアホーム)相談援助 日常生活上の支援 日常生活上の支援 サービス利用計画の作成 その他の自立支援 調理、洗濯等は、利用者と従業者が共同で行うよう努めている。
移動支援事業 ヘルパーステーションかしの木
事業実施区域 三芳町・富士見市・ふじみ野市
営業日 月曜日~土曜日(日曜・祭日・年末年始を除く)
障害者自立支援法に基づく市町村事業・地域活動支援事業です。
対象者 日中において介護する者がいないため、一時的に見守り等の支援が必要と認められた障害者・児
日中一時支援事業 かしの木ケアセンター
営業日 8:30~17:30(原則)内の8時間以内
利用定員 5名
対象者 日中において介護する者がいないため、一時的に見守り等の支援が必要と認められた障害者・児
その他の事業
福祉有償運送事業
営業日 月曜日~金曜日(日曜・祭日・年末年始を除く)8:30~17:30
3)対象施設の利用者状況について
① 障害者支援施設利用者状況
対象の施設は、2007(平成19)年4月に障害者自立支援法へ移行したが、それとともに利用者がサービスの支給を受ける際に障害程度区分(利用者の生活状況を評価し、その障害者等に必要と思われる介護量をスケール化したもの)が必要になった。旧法(身体障害者福祉法)の中では、これと同様のものがあったが、前者は6段階の区分に分かれているが、後者は3段階で表されていた。また、そのスケールを評価するものも、大きく違っていた。対象となる施設では、下表のように区分6が全体の67%となっており、重度な利用者が多いということが分かるだろう。
現在、対象施設では、表2-1-2で1998(平成10)年より利用者の年齢を見ることができる。この図表と表2-1-4を見て分かるとおり、入所してから退所する人がほとんどいないため、年々高齢化していることがよく分かる。このことからも本来は通過施設として位置づけられなければならない入所施設が抱える問題として1度入所すると、長期入所となり、結果として高齢化を招いているということが分かるだろう。また、障害者支援施設は、介護保険適応除外施設となっており、65歳になったからといってすぐに介護保険の介護認定を受け介護保険施設へ移動することが出来るわけではない。さらに、障害者支援施設と介護保険施設の利用料金を比べてみても、介護保険の施設の方が利用料は高いため、ただでさえ経済的負担に対して神経質になっている利用者は後ろ向きになるのも仕方がないことであろう。
対象施設では、図2-1-2から見て分かるように、脳血管障害の利用者が全体の約4割を占めているのが特徴となっている。また、先天性障害者は全体の約2割となっており、約8割の利用者は、中途障害(後天性)だということが分かる。歴史のある身体障害者療護施設では、脳性まひの利用者が多い傾向にあるが、最近出来た身体障害者療護施設は、脳血管障害の利用者が多い傾向にあるようだ。
【2009年3月現在の利用者状況】
・入所者52名(男性30名、女性22名)平均年齢57.2歳(男性55歳、女性59.4歳)
・身体障害者 52名
・車椅子使用者49名
・知的障害者(身体障害者との重複)12名
・精神障害者(身体障害者との重複)3名
2009年3月1日現在の障害程度区分一覧表 表2-1-1
障害程度 区分認定 |
区分6 | 区分5 | 区分4 | 区分3 | 区分2 | 合計 |
---|---|---|---|---|---|---|
男 | 19 | 7 | 4 | 0 | 0 | 30 |
女 | 16 | 2 | 4 | 0 | 0 | 22 |
計 | 35 | 9 | 8 | 0 | 0 | 52 |
割合 | 67.3% | 17.3% | 15.4% | 0.0% | 0.0% | 100.0% |
平均程度区分 | 5.52 |
過去10年間における年齢別利用者状況 図2-1-1
②障害者支援施設利用者障害別状況
表2-1-2
過去10年間における年齢別利用者状況表 (人)
1998 | 2001 | 2002 | 2003 | 2004 | 2005 | 2006 | 2007 | |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|
20未満 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 |
20~29 | 4 | 3 | 3 | 2 | 2 | 1 | 1 | 2 |
30~30 | 5 | 0 | 0 | 0 | 1 | 2 | 3 | 4 |
40~49 | 13 | 7 | 6 | 5 | 5 | 5 | 5 | 6 |
50~59 | 23 | 28 | 24 | 18 | 20 | 18 | 15 | 9 |
60~69 | 2 | 12 | 17 | 19 | 20 | 22 | 23 | 28 |
70~ | 0 | 0 | 0 | 1 | 1 | 1 | 1 | 1 |
合計 | 47 | 50 | 50 | 45 | 49 | 49 | 48 | 50 |
過去10年間における男女別利用者平均年齢表 (歳)
1998 | 2001 | 2002 | 2003 | 2004 | 2005 | 2006 | 2007 | |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|
男性平均年齢 | 45.8 | 52.0 | 53.5 | 53.9 | 54.4 | 55.3 | 56.2 | 54.0 |
女性平均年齢 | 51.9 | 54.4 | 55.0 | 58.1 | 58.6 | 59.7 | 58.6 | 58.7 |
男女平均年齢 | 47.9 | 53.2 | 54.3 | 56.0 | 56.5 | 57.5 | 57.4 | 56.3 |
2009年3月1日現在の利用者入所年数 表2-1-4
入 所 期 間 の 状 況 |
1年 未満 |
1年以上 ~ 3年未満 |
3年以上 ~ 5年未満 |
5年以上 ~ 10年未満 |
10年以上 ~ 15年未満 |
15年 以上 |
計 | 一人当たり 平均入所期間 |
||
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
年 | 月 | |||||||||
男 | 2 | 3 | 6 | 4 | 15 | 0 | 30 | 8 | 1 | |
女 | 0 | 4 | 2 | 6 | 10 | 0 | 22 | 7 | 6 | |
計 | 2 | 7 | 8 | 10 | 25 | 0 | 52 | 7 | 10 |
障害別利用者状況表
表2-1-5
1998 | 2001 | 2002 | 2003 | 2004 | 2005 | 2006 | 2007 | |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|
脳血管障害 | 19 | 20 | 19 | 18 | 21 | 21 | 21 | 20 |
頚髄損傷 | 3 | 2 | 2 | 2 | 3 | 3 | 3 | 3 |
脊髄損傷 | 1 | 2 | 2 | 2 | 2 | 2 | 2 | 2 |
脳性麻痺 | 5 | 5 | 5 | 5 | 6 | 7 | 7 | 9 |
頭部外傷 | 1 | 1 | 1 | 1 | 2 | 2 | 2 | 2 |
脳腫瘍 | 0 | 1 | 1 | 1 | 1 | 0 | 0 | 0 |
脊髄小脳変性症 | 0 | 4 | 5 | 4 | 2 | 2 | 1 | 1 |
リュウマチ | 1 | 1 | 1 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 |
筋・神経性難病 | 8 | 3 | 3 | 3 | 3 | 3 | 2 | 2 |
視聴覚障害 | 0 | 1 | 1 | 1 | 1 | 1 | 1 | 2 |
その他障害 | 9 | 10 | 10 | 8 | 8 | 8 | 9 | 9 |
47 | 50 | 50 | 45 | 49 | 49 | 48 | 50 |
3.新体系移行までのプロセス(利用者の意識調査)
1) 新体系への移行
①身体障害者デイサービス事業の移行
2006年10月、対象施設は、同日、障害者デイサービス事業を地域活動支援センターに移行した。デイサービス事業は経営的には採算性が伴わず、2009年に廃止する予定であった。 支援制度による、極端な収支の悪化が原因としてあった。そのため福祉圏域である3市利用者は、センターの介護機能である入浴サービスとリハビリを積極的に利用し始めることとなった。
在宅にて、入浴等に要する介助や、設備が困難であった障害者が社会資源の情報を知り、活用する機会が増加したといえる。施設利用者は今までの余暇活動を主体としていた活動ら生活上の介護を重視する形態へと変化し、重度の方の利用が増加した。
②身体障害者療護施設の移行
対象施設は、2006年11月より法律の施行における新体系移行への調査を開始した。療護施設について、どの事業が最も利用者の生活に適しているか、施設経営として安定が得られるかを調査した。当初、多機能型を選択し、就労移行支援とも視野に入れて、利用者のニーズ、報酬単価を計算していった。しかし、利用者の重度化、高齢化、そして介護に要する介護職員の配置基準での適正、また利用期間の設定や、利用対象者の条件等を比較検討していった結果、選択できる事業は限られたものであった。調査後、身体障害者療護施設の選択する事業は最初から誘導されていたともいえるような結果であった。2006年11月、最終的に2007年4月での新体系移行を施設内で決定した。報酬単価、職員配置基準は、今回導入された障害程度区分による基準により大きく左右されるため、11月までに計4回、施設内での、障害程度区分調査を行った。その結果、もっとも重度である生活介護サービス費(Ⅰ)及び施設入所支援サービス費(Ⅰ)が対象施設の平均程度区分であると推測された。12月に県へ新制度移行へ向けた意志を伝え、翌2007年1月より、各市町村による、障害程度区分認定調査が開始された。3月ごろよりその結果が示された。その区分が明らかになるにつれ、市町村での認定結果の格差が明らかになっていった。施設内調査との理解の基準の相違も数箇所現れた。相違点の多くは、生活モデルとして考えた場合の「日常生活の定義」と自立、そして、生活環境の範囲であった。対象施設は、利用者5名の認定結果に、説明を求め再調査の依頼をした。その際、以上の3点に対し施設の考え方を十分に理解してもらうため、協議を行い、調査するその視点の統一化を、双方で調整した。結果4名の方の区分変更が認められ、2007年4月1日、障害者支援施設へと移行した。
2007年3月に出されたシミュレーション結果
障害区分認定 | 予備調査 | 調査後予測 | 結果 |
---|---|---|---|
区分6 | 37 | 35 | 35 |
区分5 | 4 | 5 | 5 |
区分4 | 1 | 6 | 8 |
区分3 | 5 | 2 | 0 |
区分2 | 1 | 0 | 0 |
区分1 | 0 | 0 | 0 |
非該当 | 0 | 0 | 0 |
合計 | 48 | 48 | 48 |
障害者手帳等級 | |
---|---|
障害1級 | 36 |
障害2級 | 11 |
障害3級 | 1 |
旧障害程度区分 | |
---|---|
障害程度A | 29 |
障害程度B | 19 |
障害程度C | 0 |
前年度より、新体系に移行した場合を想定し、基本理念等を再構築した対象施設は、本法律の自立支援を施設の方針に定め、本来の通過施設としての機能重視をその理念に掲げ、すべての方の地域での生活を目標にした。施設内で行っていた食品、雑貨等の施設内への出張販売を中止し、施設外への買い物支援に切り替えること。生活介護事業の生産活動を積極的に取り入れ、施設外の場所で行うこと。逆デイサービスの手法を取り入れていくこと。そのための支援として、居宅介護事業、移動支援事業、共同生活援助、介護事業等の新規事業を行うこと、地域に居宅介護つきアパートを建設し、地域移行を促進していくこと、そして、就労移行支援事業を行うため、その作業工場を建設することなどを計画した。施設支援の具体的支援方法にデイケアユニット体制を取り入れた。
2) デイケアユニット体制を取り入れた目的等
目的:地域の中で生活することを目指す。(地域移行へ向けた取組) 5年先を見よう
意義:地域移行するためには、個別支援を行うことが重要であり、それを集団生活の中で効率的に行うためには小規模化が有効である(集団生活の中で個別支援を効率的に行うため の代表的な手法を採用した)
対象施設は2006年からこのように、施設の建物(ハード面)と施設職員(ソフト面)の両方に対して限界を把握し、お互いの限界の中でどのように個別支援を展開することが出来るかを課題として取り組むこととした。また、これらの個別支援を展開する中で、利用者・スタッフが地域へ目を向けていくことが出来るかあるいはそれをどのように現実化していくかがその次の課題としてあった。
3)生活介護事業での取り組み
対象施設は、生活介護事業を選択し日中活動に目的別ユニットケアを組み入れた。利用者・家族へのアンケート調査により、どのような生活を望んでいるかを分類化し6つのユニットを決定し、約10名単位でのユニットを形成した。その際、利用者の希望が地域での生活を実現することと、どのように整合していくかを慎重に検討した。そのため、利用者とその家族に、障害者自立支援法の説明会、アンケート調査を実施した。以下の図表がその結果の一部である。
日中活動の利用者ニーズ 図2-1-3
対象施設資料(2006) ユニットケア導入に向けた利用者意識調査のお願い
ユニットケア導入に向けた利用者意識調査 (資料参照)アンケート調査
・調査期間 平成18年6月下旬~7月上旬
・調査場所 施設内、他
・調査対象者 ①施設利用者(入所・ショートステイ) ②利用者家族等
・調査方法 アンケート方式
・その他 意思疎通が困難な方は、職員が専門的ニーズを反映
趣味とは、絵画や、パソコン、散歩等、自分の生活の質の向上を望んでいること。リハビ リは、身体的なものだけでなく、生活リズムや、意思決定が困難な方への規則正しい日課の提供、家庭は、買い物、調理、洗濯等、施設ではすべて職員が行っている作業であるが、普通の家庭では、本人たちが普通に行っている日常生活上の行為。就労は、生産活動、自由は、特に意識のしっかりしている方で、自分の生活は自分で組み立てていただくという、セルフ型として分析カテゴリー化された。 調査結果として現れた利用者のニーズを、地域移行への施設方針と合致する支援方法を協議し、以下のユニット【図2-1-4】を決定した。
ユニットケアのイメージ 図2-1-4
この対象施設のユニットの特徴は、「地域」との接点を多く設定しているところにある。就労支援は日中を施設外で過ごし、他のユニットも買い物や、散歩、あるいは地域行事への参加が増加している。それぞれのユニットは以下の通りである。
①自立生活ユニット
目的 自立生活へ向けた支援
活動場所 施設リビング
活動日 毎週 月~金
活動時間 10:00~16:00
活動内容 自分の部屋・共有スペースの清掃、自分の衣装の洗濯、買い物、食事の準備、後片付け、入浴等
②デイサービスユニット
目的 潜在能力の開発と余暇の活用
活動場所 多目的ホール
活動日 毎賞 月~金
活動時間 10:00~16:00
活動内容 個別活動(絵画・写真・パズル・ゲーム・手芸等)リハビリ他
③やすらぎユニット
目的 心やすらぐ環境づくり
活動場所 デイルーム
活動日 毎週 月~金
活動時間 10:00~16:00
活動内容 リラクゼーション、散歩、音楽、MT、体操、入浴
④生活訓練ユニット
目的 普遍的な生活を目指す
活動場所 多目的ホール
活動日 毎週 月~金
活動時間 7:30~16:30
活動内容 朝食・昼食、歯磨き、トイレなどの生活訓練、洗濯、ごみ収集、散歩、レクリェーション
⑤就労支援ユニット
目的 働くための支援
活動場所 近隣の倉庫(施設外)
活動日 毎週 月~金
活動時間 9:00~17:00
活動内容 生産的活動(ペットボトル、野菜のシール貼りや野菜の袋詰めなど)
⑥セルフユニット
目的 自分でライフデザインする
活動場所 Free
活動日 毎日
活動時間 Free
活動内容 自分で決める
その他 このユニットには日中活動に関する職員は配置されない
今回対象となった4名の方々に対して、1分間タイムスタディの手法を用いて24時間の調査を行うこととした。1分間タイムスタディ調査は、以前介護保険が導入される前、全国で約4000人分の介護量を出すために使用されたものと同じ様式を使用して行うこととした。
この調査の目的としては、対象者4名の施設での介護量が24時間のうち実際にどれくらいあるのか、あるいは介護の内容はどのようになっているのかを調査することであった。 今回の調査結果として出てきたのが、施設における一人ひとりの介護量は、想像していたほど多くはなかった。一般的に施設では、「24時間365日いつでも介護が受けられ、安心して生活をすることが出来る」といわれている。しかし、実際には限られた職員で、かな り合理的な介護体制にあるため、施設職員から直接的な介護(声かけや見守りを含む)を受けられる時間が24時間のうち1割にも満たないおよそ2時間ということだった。施設は常に介護が受けられ、職員が常に話をしてくれるというイメージは、この結果より覆され、以外にも施設を利用している障害者は、独居生活に近いものがあるのかもしれないということが分かった。
Aさんの1分間タイムスタディ(支援内容別累計)
[食事]
配膳の介助と摂食の際の見守りの支援が行われている。下膳の際は準備があれば、自力で下膳できる。
[入浴]
入浴は、全介助で行われる。浴槽(リフト浴)につかっている際も見守りを行っているが、危険を考えられる場面はない。これは施設での集団としての支援に含まれているからであり、不必要な支援時間といえる。(図2-2-1参照)
[全体的考察]
Aさんの支援内容で多かったのが、見守りの支援であった。見守りの内容としては、ほぼ入浴時における見守りと食事における見守りで、食事の際に時折、咽込んだりスプーンを落としてしまうことがあるため、食事中は常に見守りの支援が入った。次に多いものは介助で内容は、入浴時の介助と排泄時の介助が殆どである。
夜間(22:00~6:00)の介助として、排泄介助が3回、巡回による見守りが2回行われ、起床介助(4時)が行われている。それに要した時間は合計17分であった。
Bさんの1分間タイムスタディ(支援内容別累計)
[食事]
配膳の介助と摂食の際の見守りが行われている。施設から提供される給食に関しては自立して摂食・下膳ができるが、給食を食べずに個人持ちの食べ物を摂取したり、下膳を行わなかったりするため個別の介助も行われる。
(図2-2-4参照)
[入浴]
このグラフに使用したタイムスタディ調査の日に入浴はなかったため、普段の様子を参考までに記述するが、Dさんには衣服の着脱方法・洗体方法などで残存機能を活用しようとする意識がみられないためもあり、ほぼ全介助である。
[全体的考察]
Dさんに関して普段から支援を行っている施設職員の立場で見ると、ほとんど自立した生活を送れる利用者であると思われる。しかし、実際の生活の内容を確認してみると、24時間の介護体制において、自分で必要なときだけ部屋のナースコールで介助を依頼したり、直接施設職員に声をかけて依頼をしていた。つまり、Dさんに関しては、自分のやってもらいたいときに少し手を貸してもらえば、トータル的に見て多くの介助量が必要となっているわけではないということがいえる。しかし、ここで見るように累積した介助量は少ないもののその頻度は今回の調査では出てきていないが、頻繁に依頼することも見られているという話しが、施設職員からあった。
施設生活は、住宅生活での支援体制とは異なる。なぜなら、そこに住んでいるひとは、全ての人が障害者だからである。しかも、在宅のように家族という単位で少数(1~2人程度)の障害者を見るのではなく、50名~60名という障害者を1つの生活体として複数の支援者がみているからである。旧法の身体障害者療護施設では、50名の利用者に対して22~3人の職員が支援することが規定されている。実際には、直接介護職員は、24時間体制で支援を行うため、夜間は3名で、日中は10名前後で支援を行うこととなる。単純に計算しても日中1人の職員は、5~6名くらいの利用者を常に支援することになる。つまり、1時間当たり1人の利用者にかけられる支援の時間は、10分程度となる。1人の職員は日中1日8時間働くため、α=10分×8時間=80分が利用者1人の日中職員が介助に入れる時間となる。また、夜間に関しては、1人の職員が常に20名前後の利用者を見ることとなるため、1人あたり1時間につき3分の時間しか入ることが出来ない。つまり、夜間帯の16時間は、β=3分×16時間=48分が職員の支援を受けられる時間となる。これら日中と夜間をあわせたものを見てみると、θ=α+β=128分となる。このように、施設では1人あたりの1日の介護時間は、平均128分ということが計算できる。
Aさんは1日149分、Bさんは1日68分、Cさんは1日153分、Dさんは※51 分であった。これらと先ほど算出した基準を比べると、AさんとCさんは基準時間以上に支援を必要としていることが分かる。また、BさんとDさんは平均に満たないことが分かった。 施設では、多量の支援を効率的に実施するため、日課というシステム化された支援体制となっている。前者で算出した介護時間は、あくまでも直接介護職員が入った時間であり、「支援していない時間」には、食事の準備・調理・後始末に関しては外注業者がはいっているため、ここには含まれていない。また掃除に関しても、その大部分を外注業者が掃除という介助を行っているため、掃除に関する支援もここには含まれていない。その他、入浴の準備・後かたづけなど多くの支援が実際行われているにもかかわらず、今回の24時間タイムスタディでは見えてこなかった。これによって、先に出された介護時間よりも実際には更に多くの時間がかかっているということがいえるだろう。また、施設というひとつの建物の中には、夜間でも最低3名の支援者はいるものの、建物の空間が非常に大きいため、普通の在宅での生活空間とは全く異なり、常に見守りをしている環境ということには決してならないだろう。これらの結果より、施設における利用者の生活支援に関しては、役割分担を行いながら仕事の幅としては狭いが、仕事の量による人員配置をしているため、非常に合理化された中で利用者が生活をしているということとなる。また、生活空間という環境が、在宅の中ではありえないほど大きな空間で行われているため、見守り体制が取れない環境であり、家族とともに住んでいる在宅障害者と比べ、実は支援者が近くにいない状態が意外にも多いということが今回の調査より明らかになった。