第1章 調査研究の概要

Ⅰ 調査研究の背景と目的

 平成18 年、障がい者が地域で暮らせる社会の実現をめざし、「障害者自立支援法」が施行、三障がいのサービス体系一元化や、地域生活支援・就労支援のための事業の創設が行われた。
 障がい者が施設から地域生活へ移行、あるいは地域生活を継続するためには、そのニーズに対応した住まいとサービスが必要であるが、それらの基盤整備は充分に進んでいるとはいえない状況にある。
 とりわけ肢体不自由者の場合は、知的障がいや精神障がい等が伴っていなければ、現行の制度上、グループホームやケアホームの利用ができない(平成21年3月現在)。特に重度の肢体不自由者や知的障がいのある肢体不自由者などでは、単身生活が難しいケースがほとんどであり、地域における生活の場をどのように確保するかが課題となっている。
 また、今後、障がい者の親世代の高齢化が進むにつれ、地域で安心して暮らし続けられる住まいへのニーズは一層高まることが予想され、地域で何らかの支援を受けながら、小規模な住まいで暮らす方策を探ることが求められている。
 そこで、本調査では、①北海道内の施設や地域で生活する肢体不自由者本人とその家族に対して肢体不自由者の生活と住まいに関するアンケートを実施し、住まいをはじめ地域生活をすすめるうえでの現状と課題について調査するとともに、②肢体不自由者の住まいについて、地域の中で創意工夫しながら暮らしている取り組みについての情報を全国から収集し、住まいの運営主体に対する調査・ヒアリングを行い、土地や建物の確保、制度の活用状況、運営の状況等の現状と課題についてまとめ、今後、地域生活への移行を検討している当事者または家族が参考にできる基礎資料をとりまとめる。

 

Ⅱ 調査研究の方法

1 肢体不自由者の生活と住まいに関するアンケート調査の実施

 肢体不自由者本人や家族に、現在の生活状況、サービスの利用状況、地域生活に対する希望などをうかがい、障がいのある方が地域生活を開始・継続する際の課題や問題点などを把握した。

(1)調査対象:財団法人北海道肢体不自由児者福祉連合協会の会員 904 世帯
  障がい者本人とその家族のそれぞれを対象とした調査票を作成(2 種類)

(2)調査方法:財団法人北海道肢体不自由児者福祉連合協会の道内各支部を通じて発送、
  郵送にて回収

 

2 肢体不自由者の住まいに関する調査(情報収集のための調査)

 全国で展開されている身体障がい者を対象とした小規模な住まいについて、住まいの名称や居住している障がい者の概要、運営主体などについて、可能な限り情報を収集する。

(1)調査対象:①「社団法人全国肢体不自由児・者父母の会連合会」の各支部
         ②「財団法人北海道肢体不自由児者福祉連合協会」の各支部と会員

(2)調査方法
 各地で行われている身体障がい者を対象とした小規模な住まいの状況などについて、支部および会員が把握している情報や資料を提供してもらった。

①「社団法人全国肢体不自由児・者父母の会連合会」の都府県各支部
 ・各支部あてに調査票を発送、郵送にて回収した。
②「財団法人北海道肢体不自由児者福祉連合協会」の各支部および会員
 ・財団法人北海道肢体不自由児者連合福祉協会主催の全道研究大会の場で、道内各支部および会員に調査票と返信用封筒を配布、郵送にて回収した。

 

3 住まいの運営主体に対する調査

 「2 肢体不自由者の住まいに関する調査」で把握された事例について、実際に住まいを運営している主体(法人や個人)に対し、具体的な取り組み内容や課題などを調査するとともに、当該事例に関する資料やパンフレットなどを提供してもらった。

(1)調査対象:「2 肢体不自由者の住まいに関する調査」で情報提供があった、肢体不自由者を対象とする住まいを運営している主体(41 件)

(2)調査方法:郵送により発送、回収

 

4 住まいの運営主体に対するヒアリングおよび視察調査

 「2 肢体不自由者の住まいに関する調査」および「3 住まいの運営主体に対する調査」で把握された住まいのうち、特徴的な取り組みをしているもの、設立の経緯に特徴があるものなどなどについて、運営主体に直接話を聞き、住まいの運営を始めた経緯や、成功要因、課題などについて調査した。

(1)調査対象:全国の肢体不自由者の住まいの運営主体 12 ヵ所

(2)調査方法:ヒアリング調査

 

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