【調査報告】聞取調査報告・千葉県

1. えるワーク(NPO法人千楽chi-raku) 市川市

事業所の特徴 一般の民家(理事の家10万円/月)を活用し多機能型の事業所として運営。
えるは得る。仕事を得るの意味。
手帳は必須ではなく、認定調査を受け、市の受給者証があればOK。
事業所又は地域での取組の成功事例 社会人として必要な行動・知識を学び、求人誌の見方や履歴書の書き方、郵便物の区分けの練習、パソコンの練習などその方の希望に沿ってカリキュラムを組み就労に向けた勉強をしている。内職をすれば工賃が払えることは分かっているが、それよりもキチンと就職したほうがいいと言う判断から、内職などは行っていない。したがって工賃も発生していない。
引籠り・うつ・精神疾患といわれる方たちの実態 精神の方が増えてきている。ひとつのところだけではなかなか満足ができず、他の事業所と並行して利用されている方もいるので連携をとっている。
相談支援 就労と生活についての相談は受けているが、家庭内での問題が多く介入できない。親と話して欲しい、という相談もあり一人暮らしさせたいが難しい。こういう場合、ケース会議を開いているが、本当に困難なケースほどそのあとのフォローができていない。
誰が支援すべきか 身近な人がはじめに対応し、情報の提供をした上で連携、という流れがいいのではないか。
地域の理解者の存在も必要なので、近所への説明会もあるといい。
親亡き後に備えていること できることを少しずつ身につけられるように活動している。
経験を積むことが大切。
その他 移8人(知2人、精6人)

 

2. ぴっころ(社会福祉法人いちばん星) 市川市

事業所の特徴 市川市の市立図書館内にある喫茶店。地域のなかで多くの市民と直接顔を合わせられる環境にある。
事業所又は地域での取組の成功事例 市川市手をつなぐ親の会が運営していた市立図書館内の喫茶店を、移譲してもらった。
管理・運営・接客・調理・片づけ・洗いをやっている。
週に1回店内で市民参加型のコンサートを実施。好評を得ている。
工賃は30000円~50000円。
引籠り・うつ・精神疾患といわれる方たちの実態 他の精神の事業所から、実習や居場所として使わせてほしいというニーズはあるが、長続きしていない。
相談支援 電話相談など相談を受ける場所は用意されているが、知られていなかったり、敷居が高かっりするので、入口を多く、見つけやすくすることが大切。
※市の委託先で中核支援を行っている「がじゅまる」というところがある。
誰が支援すべきか 家族や友人など身近な人の協力(外につなげる役目)が必要。
親亡き後に備えていること 親を亡くされた方がいるが(兄弟が面倒をみると)事前に十分話し合っていたので問題ない。
その他 B6人(知)

 

3. 第2レンコンの家(社会福祉法人市川レンコンの会) 市川市

事業所の特徴 一人暮らしの障がい者を支援するために立ち上げたボランティア団体が前身。
GH4か所14人。
事業所又は地域での取組の成功事例 下請け作業としてスポイトやタレビンのバリ取りなどを行っている。
一般就労していたが挫折してきたという就労経験のある方が多いが、ここのほうがいい、という声もある。
工賃は10000円~20000円
引籠り・うつ・精神疾患といわれる方たちの実態 (逆説的にいうならば)こういうところがあるために(家族が依存してしまって)本人の能力の芽を摘んでしまっている。
引籠りの方には、メンタル的なケアが必要。
相談支援 家族に問題がある場合が多く、意見を言うことはできてもそれ以上の介入ができない。
県の委託を受けた中核地域生活支援センター「がじゃまる」があり、紹介されてくる。
行徳のNPO法人「ニュースタート事務局」が引籠りを対象とした支援をしている。
誰が支援すべきか そもそも定義が定かではない。手帳をもたない人をどう支援すべきか?
親亡き後に備えていること 住まいと日中活動の場としてのGHだと思うが、借りるまでの苦労や、世話人の問題など、借りるまでの苦労がある。
その他  

 

4. 市川市障害者地域生活支援センター(市川市福祉部就労支援係) 市川市

事業所の特徴 国の障害者プラン事業の一環として位置づけられた相談支援事業所。
事業所又は地域での取組の成功事例 行政的な対応はしていない。引越しの手伝いや掃除なども時間外で行っている。
夜間の問題行動(消防車を何度も呼ぶ)にも対応した。
予算措置がつけば、民間でも対応できる、ということで実施を検討中。
引籠り・うつ・精神疾患といわれる方たちの実態 高次脳機能障害で10数年歩けないでいるにもかかわらず、歩けるようになって仕事がしたいという希望をもつ方がいたり、物忘れの激しい方に対してボードに次の目標を貼って確認することでできるようになり、本人に自信が生まれたり父母の励ましで前向きな考えを得ることができて将来を考えるきっかけづくりになっている例がある。モデル事業として行ってきた例。月に1回ケース会議を開催している。ただし誰にでもあてはまるものではない。
相談支援 家族は施設入所を望んでいるのに、本人は出たいと思っている。
高次脳機能障害:行き場がない、交通手段がない、手帳は精神だが身体で対応している。
身体:身体の養護学校がなかったから、日中活動の場がない、送迎ができない。
近隣とトラブル:ヘルパーからの報告、消防自動車を何度も呼ぶ
誰が支援すべきか 使える制度の中でしか支援できない。
親亡き後に備えていること 自立支援協議会の「居住部会」で話し合われている。
知的の方にはGHやCHを、精神の方は一人暮らし、身体の方はGH的なものもあるが、アパートでも可とする方もいる。
その他 必要に迫られてから対応するので余裕がない。行き当たりばったりの支援体制から、しっかりとケアマネジネントしてその方のライフサイクルを支えていかなければならない。
この場合、ケアマネの自己評価の視点も大事。
統一したシートの活用が望ましい。

 

5. ほっとハート相談支援事業所(NPO法人ほっとハート) 市川市

事業所の特徴 1995年「市川の精神保健を考える会」が前身。小規模作業所からはじまったが、GHの必要性を意識し、完全個室、ワンルーム型、4か所を設置している。
事業所又は地域での取組の成功事例 市やNPO、社会福祉協議会などで構成するケアマネジメントに関する調査研究事業(精神の方で一人暮らしを希望される方の生活実態を見ながらサービスを提供するモデル事業)を行っている。※生活訓練650単位。訪問190単位(週2回が限度)。
モチベーションのある方や能力のある方、50~60代の方の行き場ない。
訓練的なところには向かない。
引籠り・うつ・精神疾患といわれる方たちの実態 精神の方は「でて来られる方」と「でて来られない方」に分かれる。
「就業・生活支援センター」が圏域にはあるが、市川市にはない。身近なところで敷居の低いところがあるといい。
相談支援 制度の中でのサービス利用計画を立てているが、8500円の対象にならないサービスが多いのでアウトリーチで対応している。補助金があれば問題なくカバーできる。
行き場を作っても、その方に合わなければ意味がないし足りないことには変わりがない。
※中核地域生活支援センター「がじゅまる」047-300-9500
誰が支援すべきか インフォーマルなサービス。
親亡き後に備えていること そうなる前に一歩踏み出しましょうと常に言ってきている。家族会で話し合われる苦労話もいいが、使えるものは使ってください、頼ってください、と言ってきている。
偏見や差別との戦いも必要。
その他 個人の力量に頼っていると、○○さんはやってくれたのに○○さんはやってくれないという不満が出てくる。互助会的ボランティアが辞めた時には、サービスの質の引き継ぎがされない。障害者だけに、何故行き場を作らなければならないのか? だったら、誰でも相談できるところでいいのではないか。
マスの部と個の部。

 

6. いちかわ若者サポートステーション(NPO法人ニュースタート事務局) 市川市

事業所の特徴 全国77か所ある事業所の1つ。障害の有無は関係なく支援。
その方をそのままそういう方として受け入れる。
事業所又は地域での取組の成功事例 自分で何とかしようという気持ちをもつことができるように支援している。
共同生活寮7か所80人を支援して(保護者から支援金としてお金をもらって)いる。
相手との距離をつかむ、多様な人たちとの出会い、デコボコ感はあっても認め合うなどから
本人の気づきを促すことで、問題を抱えていても生きていける、ということがわかる。
引籠り・うつ・精神疾患といわれる方たちの実態 手帳の活かし方を知らない。
本人の意思だけでは自立できないので保護者から支援金を貰って「親が決めたことだから」と無理やり本人を納得させている。※親に責任を取らせることで「親が逃げ出さない」ように仕向けている。
大事なものを学んできていない。
相談支援 役割分担させることで責任感や達成感を経験してもらう。
誰が支援すべきか あまり深刻に考えると壺にはまってしまう。どう生きていくかと就労は別問題。
人にはそれぞれ役割がある。専門家が連携していけばいい。
親亡き後に備えていること いろいろな方たちが混在していない世界がおかしい。
若者が福祉に頼る国はおかしい。
その他  

 

7. オリーブハウス(社会福祉法人オリーブの樹) 千葉市

事業所の特徴 地域で暮らしたいという筋ジスの方3人が淑徳大学のボランティアの支援24時間を受け自立生活をはじめたのが前身。そこに行き場のない方たちが集まり始め、就労のニーズが生まれてきたため活動を分離させて作業所を立ち上げ支援者を増やしながら現在に至っている。
事業所又は地域での取組の成功事例 就労移行支援は就労させることが目的、実績となるのだからそのことを優先させるべき。
相談支援まで行うと片手間になるし、いまは手が回らない
工賃は移行12000円、B型時給370~400円。
引籠り・うつ・精神疾患といわれる方たちの実態 把握はしていない。
利用者は知的・身体の手帳保持者を対象にしている。精神との重複のある方は7人。
自分の気の向いた時にしかこない方への対応では、現在支援体制がとれておらず、声かけ程度で終わっている。今後はスタッフに専門の資格を取得してもらい、キーパーソンとして育成していく。
相談支援 千葉市の施設長会(育成会)の「デイさくさべ」が困難ケースの窓口になっており、ネットワーク作りを行っている。
市内に50か所ほどある作業所が身近な相談機関として機能すればいい。
誰が支援すべきか 自傷行為など(アブナイ方)を抱えるリスクを一施設に押し付けるのではなく、行政が主導して困難事例に対応できる場を作ってほしい。
親亡き後に備えていること GHやCHを地域の中に増やしていきたいが単価が問題。人員基準を満たせない。
行政が問題として認めるならキチンとした戦略(問題点の整理と手当)をするべき。
公営住宅の転用は市が認めない。トップの考え方次第で地域格差が生まれている。
その他 移35人、A20人。

 

8. 畑町ガーデン(社会福祉法人斉信会) 千葉市

事業所の特徴 ドラッグストアー千葉薬品経営者が引退を機に赤字だった県設置の通勤寮を引受け、経営者の視点で特例子会社を設立。独自の福祉観で運営。隣接の国有地を取得して移行支援開始。
どうしたら就労させられるか?という理想と、どう多機能化させられるか?を考えている。
事業所又は地域での取組の成功事例 ないものねだりをしていても仕方ない。あるものをどう有効に使うかが問題。
事業の内容は公開している。利用者からの寄付は求めず公的費用ですべて運営している。
引籠り・うつ・精神疾患といわれる方たちの実態 新法旧法がまだ混在するなかで、選択を迷っている。
相談支援 シェルター機能を持たない相談支援事業者や自立支援協議会からの連絡があり、相談は増えてきているので、短期入所との組み合わせによる支援を行っている。離れ感覚で若いうちから他人とかかわる体験を積むことができている。
いま、この時に、どう一晩過ごすか、という緊急の要請に応えるための制度がほしい。
誰が支援すべきか 今ある制度にどう乗せるかが問題なので、網に引っ掛けるしかない。
今の生活を変えたくない、認めたくない、という方にどう認めてもらうか。その様な居場所をどう提供(演出)できるのかが問われている。
親亡き後に備えていること 生活を急に代えることは困難なので、早期の対応が必要。
本人の希望を優先させたアパート形式のようなGHの設置予定があるが、世話人や管理者の雇用が難しい現実もある。
その他 区分2以上の方でB型にいたが就労には向かなかったので再判定をしてもらい3になった。
障がい者が迷わない店作りを目指している。それはそのまま誰もが迷わない店になるはず。
困っていることが認めてもらえないもどかしさを抱えているのが発達障がい者。

 

9. コスモス(社会福祉法人つどいコスモス) 千葉市

事業所の特徴 千葉市のワークホーム制度を活用した小規模通所授産施設が前身。NPOでGHを立ち上げた後社会福祉法人。NPOは存続。障害者だからと言って甘えは許されない。自分たちの努力の前に補助金ありきはない。企業からの献金は甘受している。
事業所又は地域での取組の成功事例 放送大学の売店の運営を行っている。日配品や伊藤園と直取引の飲料等の手数料10~15%。
工賃は2~7万円。施設長の講演のときには利用者を帯同し受付をしてもらうことで、講師謝金を利用者の工賃に繰り入れている。実習費も本人に渡している。
就労した方へのフォローは、定着支援を行いながら、それとは別にも訪問している。
引籠り・うつ・精神疾患といわれる方たちの実態 あきらめを強いられている。
サインを読みとる力が必要。
相談支援 親と一緒に来てもまず別室で本人の希望を確認する。その後実習を経て、受け入れする。
親の過小評価、又は過大評価を指摘し、受容と共通理解を求めている。
朝礼のたびに自己を表現することができるように「できません」「わかりません」と言うように伝えている。そのことで我慢しなくてもいいという安心感が生まれて生き生きとした表情なってきている。
誰が支援すべきか 地域が育つこと。その方が必要で役に立って認められること。
地域の理解は得られているので、この地域の商店全てから採用を! を目指している。
親亡き後に備えていること 地域の熟成。
その他 本人たちだけで開催する「コスモス会議」があり、報告書も自分たちで作り提言してくる。
かなり無茶な意見もあるが、とにかくほめて存在を認めている。
近隣に、実習に行く前の支援を行っているNPO法人キャリアセンター(藤尾代表)があるのでぜひ紹介したい。
移行12人(知のみ)、B型19人(知14、精2、身3)

 

10. 千葉障害者就業支援キャリアセンター(NPO法人ワークス未来千葉) 千葉市

事業所の特徴 県・市委託事業。3か月~1年で就労を目指す。生活習慣( (1)自力通勤、(2)同意、(3)触法行為がないこと)の確立。過去5年間の定着率70%
※コスモス江國さんからの紹介。
事業所又は地域での取組の成功事例 循環させる仕組みがない中で無理に就労に出すことに抵抗がある。十分に社会性を身につけることが先。時間はかかるが就労していく仲間を見ていて自分がやる気を出してくるのを待つ。養護学校で培われてくるべき経験値が不足している。限界を知ることが必要。
引籠り・うつ・精神疾患といわれる方たちの実態 支援しようとする作業所の熱い思いもわかるが、色々な方の手を借りる方法も教えていかなければならない。余計な支援は本人の力をそいでいる。
地域移行(いったんは出る)という強制力はあっていい。やってみてから再構築すればいい。
療育手帳には「真に手帳を必要とする者」とあって、働く上でサポートを必要としている方を対象としている。※雇用率の算定に使われているだけ。
相談支援 発達障害の診断がはっきりしていない中、そのくくりをどこに置くのかが問題。
地域の受け皿がない。
知識も必要だが知識が先行してしまう怖さもある。AさんはAさん。存在全体を認める。
誰が支援すべきか 大抵の障害は何らかの物理的支援でカバーできるが、コミュニケーションスキルは難しい。
支援者の「力」が強くても困る。
地域の資源としてセンター的なものがあればいい。
親亡き後に備えていること 就労というキーワードで地域意見交換会を開催していて、垣根をなくし、共通の言葉で話しできる環境を作ってきている。「Aさんがね」{ああ、Aさんね」という共通認識のある会話。コーディネーターが法人から分離していない。
その他 県立養護流山高等学園は1学年60人定員から120人に増やしている。
精神保健福祉手帳も雇用率の算定に用いられるようになったのも大きい。
自立支援協議会は員数合わせ。機能していない。
児童の延長線上に就労がある。そのために必要なことを継続していく。
相手を批判することから入ったら、話が前に進まない。
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