【調査報告】聞取調査報告・福岡県

1. おおほり苑  福岡市

事業所の特徴 「暮らし、楽しみ、働く」をテーマにH20年4月に自立訓練から就労移行支援と就労継続B型に移行した。請負作業として箱折り、クッキー作りなどを行なっており、外部実習ではビル清掃や観光会館の売店で配膳や商品の袋詰めなどを行なう。
事業所又は地域での取組の成功事例 クッキー作りは他の事業所と連携して共同作業で行なっている。
年に1回のお祭りは隣の学校のグラウンドを使用したり、空き缶潰しの作業のための空き缶を地域から回収している。地域清掃も行なっている。
クラブ活動としてアフリカ太鼓をやっており、地域のイベントに参加することもある。
制度外でレスパイトを行なっていたが、経済的な理由から昨年度で終了している。
引籠り・うつ・精神疾患といわれる方たちの実態 集団の作業が苦手な利用者については個別のスペースで対応することで、落ち着いて活動できている。
行動障害の強い方や、昼夜逆転している方は、受け入れ体制が整っていないため、どこの事業所からも利用を断られ、在宅になっているのが現状。
相談支援 法人内で相談支援事業を行なっているところがあり、利用者との間に入って調整を行なっている。他の相談支援事業所は、法人の相談支援事業所と連携しているので、事業所に直接の利用相談が来ることはない。
作業内容が物足りない方については、別の事業所を紹介してもらうよう事業所から相談することもある。
誰が支援すべきか 相談の窓口はいつでも開けておくようにして必要な時に相談できる体制を作っておきたい。
親亡き後に備えていること 法人ではCHを運営している。今後、短期入所を立ち上げて地域生活の練習のために利用をすすめる予定。ヘルパーを利用しながらの自宅での生活も可能であればすすめたい。
その他 障害が重い人ほど事業所から受け入れてもらえず、引きこもりになるケースが多いが、福岡市では支給決定に関して特例などは認めてもらえないので、もう少し市役所の職員に家族の大変さなどを理解してもらい、柔軟に対応してほしい。

 

2. 福岡療育支援センター いちばん星 福岡市

事業所の特徴 児童デイと訪問看護ステーション(障害児者のみ)を併設している。来年度事業所を移転予 定で、移転後は日中一時支援などを開始する予定。相談も児童期の相談が主。
事業所又は地域での取組の成功事例 事業所の隣にある小児病院と連携しており、発作やけいれんを起こしたお子さんはすぐに対応してもらえる環境にある。
引籠り・うつ・精神疾患といわれる方たちの実態 知的と精神の重複で、作業所に通えなくなったという方からの相談が2件。
近くに発達支援センターや地域活動支援センターがあり、成人は相談に行くケースが多い。
福岡市は、就学前の児童は全て通園センターに通わせているので、児童デイという制度自体が存在しない。特別支援学校の児童については放課後対策事業が始まり、放課後預かりがあるが、特別支援学級に通う児童は使えないことと、長期休暇中の児童の利用先がない。
相談支援 主に児童について、通うところがないという相談が多い。
成人は近くにある2か所の相談支援事業所に行くケースが多い。事業所でも対応は難しいので、別の相談支援に引き継いでいる。
また、訪問看護を利用している方については、医療のみで終わってしまい、福祉に結びついていかないため、なかなか相談には来ないことが多い。
誰が支援すべきか 発達支援センターで現在支援を行なっていると思う。
発達障害については、まだ理解がなされていないので、学校の先生や相談支援の事業所などにも研修会を開催して、啓発活動に努めてほしい。
親亡き後に備えていること 生活介護(通所)をいずれ始めたい。訪問介護と組み合わせて自宅で暮らせるようにしたい。
その他  

 

3. 公房 陶友 福岡市

事業所の特徴 1992年陶芸を活動内容に無認可作業所として設立。陶芸の他、紙すき、豆腐の仕入れ販売、豆腐を使った団子、豆乳ソフトなどの加工販売を行なっている。
事業所又は地域での取組の成功事例 地域での販売を店舗にくわえ、リヤカーを引いて販売も行なっているので、その場で地域の住民との交流ができている。地域の方で構成された応援団があり、事業所でのイベント等企画してもらえたりしている。 商店街、学校、福祉関係の事業所などで協力して、認知症の高齢者の徘徊などの見守りや、情報共有などに取り組んでいる。
引籠り・うつ・精神疾患といわれる方たちの実態 まずは事業所に来ることを評価することから始め、作業も強制せず自由度を確保することによって、徐々に集団活動ができるようになってきた。それぞれ他の利用者に対して、「○○ が嫌」などということもあるが、話し合いの場を設けて困っていることの理解をしてもらい利用者が助け合う集団作りに努めてきたため、通えなくなった利用者はいない。
相談支援 外部からの相談は受けているが、相談支援に特化した事業所は持っていない。
相談支援事業所から利用についての相談が来たことはない。
新しい利用者は利用者からの紹介や、地域で応援してくれている住民からの紹介で来ることがほとんどである。
誰が支援すべきか ヘルパーだと部分的な関わりしかできないが、同居の家族の支援もしていかなければならない家庭も多く、家族機能を支える制度を作ってほしい。
親亡き後に備えていること 暮らしの場所の確保。現在ヘルパーを入れながら一人暮らししている利用者が2人。自立域に近い人はGHを考えている人が多い。法人内には入所更生施設もあるが、一人一人の暮らしを大事にできて、本人がそれを望むなら入所でもいいのではないか。
その他 利用者の個性を活かす事業所運営が必要であり、大変な人を受け入れるほど、事業所の実力もつくので、可能な限り断らずに受け入れたい。
制度は、それなりに合った制度は使うけど、制度になくても必要があればやるしかない。

 

4. サニーすぽっと 福岡市

事業所の特徴 法人自体は病院や高齢者施設が多い。利用者は精神がほとんど。
高齢者施設の衣類の洗濯や清掃作業、箱折りなどを行なっている。
事業所又は地域での取組の成功事例 法人内の援護寮と協力して地域との交流を図っている。
地域の店舗からは声をかけてもらえている。
引籠り・うつ・精神疾患といわれる方たちの実態 利用者の8割は統合失調症。以前は精神科に入院していたり、デイケアや職親制度を利用していた。周りにも事業所が多く、かなり選択できている様子。
旧法からの利用者がほとんどいないため、利用者負担への戸惑いは少ない様子。
精神科からの紹介で利用となることが多いため、何かあれば連絡を取れる体制にある。
相談支援 地域生活支援センターとの連携は有り。
援護寮や精神科からの受け入れ相談も有るので、連携をとれている。
相談支援事業所からは今のところ受け入れ相談はないが、認定調査などで連絡を取り合うことはある。
誰が支援すべきか 自立支援法の中で、日中活動の場と暮らしの場の両方について、発達障害のためのサービスを作るべき。
親亡き後に備えていること 元々家族と疎遠な利用者ばかりなので、ほぼ全ての利用者が単身生活もしくはGHで暮らしている。成年後見制度の活用も進めており行政機関や社協ともより連携をとっていきたい。
その他  

 

5. 福岡市立心身障がい福祉センター 福岡市

事業所の特徴 H11年より障害者生活支援事業としてスタート。
身体中心だったため、PT、OT、STが相談員として勤務していたが、3障害が一緒になり、知的などの相談も出てきたため、社会福祉職もスタッフに加えた。
事業所又は地域での取組の成功事例 就労支援センターや発達支援センターは法人内にあり、就労のための取り組みはさかん。
意思伝達装置の調整や使用方法のサポートなどをしており装置に関する問い合わせが多い
引籠り・うつ・精神疾患といわれる方たちの実態 精神については、保健福祉センターで働きかけをしている様子。
重度の方は、在宅になっている方は保護者が介護できなくなってから発見されるケースもあり。
身体の方は、医療が必要な人の外出支援をなかなかしてもらえない状況で、短期入所も受け入れしてくれる事業所がないので、何かあれば入院するしかない。
相談支援 実際相談に来るのは身体の相談が主。他事業所とは連携をとりながら支援できている。
3障害一緒になっているが、今まで身体中心であったため、知的・精神については細かに対応できないことが多いので、自立支援協議会で顔を合わせている知的や精神の事業所に相談をつなぐことが多い。
サービス事業所からPT、OT、STに対して相談が来ることもある。
誰が支援すべきか 地域の人に支援してもらうのは難しいと思うので、専門職で支援していくのが望ましい。
学校と家庭で一貫した対応をしようという意識作りや、就学前検診などで早期に気づいていけるように学習会などは必要。
親亡き後に備えていること 当事者や保護者に対する成年後見制度の活用に関する研修会の実施。
専門的な医療ケアがなければ、福岡市はヘルプの支給量は他の市町村より多いので、一人暮らしも可能だと思われる。
その他 サービスを利用していない人たちの中には、制度を知らないために支援を必要だと感じていない人も多いと思う。もっと周囲に認知されるように取り組みたい。

 

6. 出会いの場 ポレポレ 久留米市

事業所の特徴 前身は共同作業所で、保護者や学校の教員が協力して設立した。精神科からの紹介で精神の利用者が増え、A型は精神の利用が主。
事業所又は地域での取組の成功事例 事業所では送迎を行なっていないので、地元のタクシー会社と契約して送迎の必要な利用者に対応している。地域の調理教室やダンス教室のために事業所のスペースを開放している。
法人のお祭りは近くの小学校2校と一緒に運営しており、売り上げは町内会の備品購入などで還元している。そのため、地元の主婦がパートや中学校で実施しているタイムケアのスタッフとして活動してくれ、資格を持たない近所の方にもゴミ出しなど協力を得ている。
引籠り・うつ・精神疾患といわれる方たちの実態 事業所として精神科との連携ができたので、服薬管理などの相談もできるようになり、現在利用者の状態は良好。働くことや生きがいについて、きちんと役割を持ちたいという願いがあり、スタッフとしても認識を改めているところである。
知的の利用者と相性が合わないことがあるので、作業の場所や時間などを分けて配慮している。
相談支援 新しい法人は連携を重視する傾向にあり、自分の事業所で解決できない問題は積極的に相談しているが、歴史の古い法人は家族経営で運営してきたところが多く、他事業所との連携に理解を示してもらえないことが多い。
実際は相談が多すぎて、対応しきれていないのが現状。
誰が支援すべきか ピアカウンセリング。地域の人や学校の職員など、専門職以外の人からの理解をもっと広めていけるように啓発活動は必要。暮らしについては、地域で利用者を下宿させてくれている人がいるので、管理人にヘルパーをとってもらいGHとして活用できないか交渉予定。
親亡き後に備えていること 暮らしの場の確保。具体的にはGHやCH。
親が亡くなる前に準備してもらわなければならないので短期入所を利用して練習している。
学齢期の卒後のことを考え、学齢期の利用者を対象に通過型のGHを検討中。
その他 支援者は与えられた仕事をこなすだけでなく自分で考えて対応できるようになってほしい。
新しい利用者にも対応しなければならないので、勉強は必要。
精神(A型)と知的(B型)は活動時間に対して工賃が比例していないことについては、スタッフの中での葛藤はある様子。生活介護はスタッフ数も多く、「何かしてあげなくては」という意識になりがちだが、もっと利用者の力を活かす視点で支援をしていきたい。

 

7. 公房きずな 福岡市

事業所の特徴 無認可作業所として活動していたが、H18年に法人格を取得し、昨年度より事業開始。
自動車工場の下請けと、店舗を構えて焼き菓子の製造販売を行なっている。
来年度よりブルーベリー農園、緑化センターでグループ就労が内定している人もいる。
事業所又は地域での取組の成功事例 事業所の周りには空き畑があるので、その土地を借りてラッキョウ作りを行なっているが、周りの農家の人から教えてもらえる。また地域の行事には声をかけてもらえている。
「ありがとう」だけでは通じないものもあると思うので、何かあった時の協力など、何らかの形でお返しをしていくことで、地域からの理解を得られている。
引籠り・うつ・精神疾患といわれる方たちの実態 月に1回、臨床心理士に入ってもらい、利用者の相談にのってもらっている。スタッフには聞かれたくない話もあるようで、利用者からの評判は良い。
相談支援 利用者からの相談を、スタッフからも臨床心理士に相談したりはしている。
相談支援事業所との連携はなし。相談支援はほとんどが母体となる法人の利用者からの相談を受けているだけで、外部からの相談は少ない様子。
特別支援学校からの進路相談は多い。
誰が支援すべきか 店舗が街の中にあり、相談受付の案内を置いておくことにより、相談に来ることはある。
人の目につくところに、相談支援の案内は必要。
親亡き後に備えていること 月に1回、CHの学習会を行なっている(H22年に開設予定)。
その他 福祉関係の学校からの実習生は、助かる上にお金も入ってくるが、特別支援学校の実習は支援が必要なのに、無報酬のためにスタッフも増やすことができないのが現状なので、何らかの補助を考えてほしい。

 

8. 第一野の花学園 福岡市

事業所の特徴 制度に先立って施設や地域生活の場を作ってきた歴史があり、就労についてはS51年から取り組み、200名程度一般就労に結びつけている。
事業所又は地域での取組の成功事例 地元の行事や清掃活動、研修会などには積極的に参加。地域の学校や高齢者を巻き込み、陶芸や和太鼓などの活動を施設を開放して行なっている。
まだ参加者は少ないが、地域住民を対象にGHの説明会などを行ない、地元の主婦に調理など一緒に活動してもらいながらの啓もう活動を行なっている。当事者だけの家には、民生委員がキーとなって関わってもらうことにより、地域との関わりができている。
引籠り・うつ・精神疾患といわれる方たちの実態 精神と重複して嚥下障害などのある方で、精神科や老人ホームを断られ、行き場がなくて来た人がいる。引きこもりについては主にヘルプの事業所で対応。一人暮らしが大変な人はGHに制度外の部屋を併設し、家賃2万5千円ぐらいで生活している。何か困ったことがあった時には、GHのスタッフが対応している。
相談支援 相談支援事業所同士の連携はあるようだが、施設との連携が薄く、結局コーディネーターが一件ずつまわって調整するしかない。
受け入れの相談についても、個人情報保護の関係で制限された情報しか伝わってこないことが多い。実際に支援すると話で聞いていた以上に大変なケースが多く、調整が難しい。
誰が支援すべきか 地域生活支援センターが生活面の調整に取り組んでいる。発達障害の支援センターもあるので、有効活用できるといいと思う。
親亡き後に備えていること GHやCHなどの暮らしの場の確保と成年後見制度の活用。一人暮らしをして、支援から外れる時間が多くなると就労の継続が難しくなり、福祉に戻ってくることも多く、一人暮らしのフォローをしてくれる仕組みが必要。本人が若ければ障害の理解についての教育も有効?
その他 相談できる場所の充実はもっと必要。
また、利用者を含めた家族全体の支援が必要な家庭も多い。

 

9. こころ 久留米市

事業所の特徴 最初は入所施設の中に通所部があったが通所として独立し日中活動の支援をしていた。
現在は会社の下請けとして農薬の箱詰めや企業で使うカレンダー製作、ろうそくの箱詰め、
果実を入れる紙袋の製作、パン作り、高齢者施設の清掃作業などを行なっている。
事業所又は地域での取組の成功事例 職員の知り合いを通して仕事を受注できたり、周りの施設を見学に行った際に、施設から仕事を受託できたりしている。
地域のお祭りや文化祭に参加したり、法人のお祭りにも毎年500名程度の集客がある。
引籠り・うつ・精神疾患といわれる方たちの実態 精神のみの利用者が2人いるが、1人は同年代の知的と精神重複の利用者から頼りにされ、良好な関係を築けている様子。もう1人は周りの利用者と合わず、配慮を必要とする。
地域の中には本人に行く気がなく、どこも利用しない人や、昔の考えが強い地域だと障がい者を家から出さない所もあり、地域に埋もれている人もいる。
相談支援 利用者の受け入れについては主に市から相談される。精神科が積極的に福祉サービスの利用の連絡調整を行なっている。
相談支援事業所との連携はなし。母体の法人での相談が主だと思われる。
誰が支援すべきか 福祉関係のほうが理解者は多いが、近くにできた発達障害の支援の事業所は通っている人は少ない様子。
発達障害について、理解者をもっと増やすところから始めるべきではないか。
親亡き後に備えていること 成年後見制度の利用や、身寄りのない利用者のためにお墓を建てることを検討。
若いうちはGH、CHを利用し、体力が衰えてきたら生活介護の入所などを利用する。
その他 自立支援法自体は悪い法律ではないと思うが、報酬の面ではもう少し上げてほしい。
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