【調査報告】聞取調査報告・埼玉県

1. さいたま市北区障害者生活支援センターベルベッキオ(医療法人大壮会) さいたま市

事業所の特徴 スタッフは久喜市すずのき病院の社員。行政からの委託を受けて開始した生活支援センターが前身。地活では内職(ブッカー、音の出る本の解体など)を行っている。
就労へ向けてのステップの場。
事業所又は地域での取組の成功事例 GHを3棟持っているが、人員基準や予算の関係から解体の方向で検討している。
そもそもGHではやはり「一生の居場所になってしまう」という懸念。法人の理念(※)に照らしてもそうすべき、という判断。
引籠り・うつ・精神疾患といわれる方たちの実態 精神の方は、自分の本音を語れない、勝手に行動する、コロコロ変わる、振り返っての反省次の行動に生かせないなどの傾向がある。言って聞かせても無理なので、自分で気づかせる意外に社会復帰の道はない。失敗させることも必要。こちらがレールに乗せてしまって失失敗したときは「あなたがこう言ったからじゃないですか」と責任をおしつけられて終わってしまう。
相談支援 登録者数170人。電話相談(10~15分以内)20件/日。来所50~60件/月。
相談はできるだけ「出て」来てほしいので来所をお願いしているが、訪問するときは必要に応じてて2人1組で行っている。担当制を敷いていて、井戸端会議的に、日に4~5回行っている。対人関係や、つい働きすぎてしまってしまうなど働きながら悩みを抱えている方多い。うつの方は自分は障害者だとは思っていないので相談には来ない
誰が支援すべきか うつの方には、こう生きればもっと働きやすくて楽になるよ、という予防活動や啓蒙が必要だが、人やモノが不足している。事例を積み重ねて基盤整備をしていかなければならない。
ゲートキーパー(お?っと気づいてつなげていく人)を増やすことが大切。
親亡き後に備えていること から外れることがゴール。
自立支援法の質はいいが、サービスの量が不足している。
その他 サービス調整会議(ケースに対してかかわっている方、ニーズの掘起し、関係者の召集、など)が第1次相談窓口で、コーディネーター会議を経て、自立支援協議会につなぐ、という組織ができてきている。また、担当者の意識レベルによって利用者に影響がある。
地域への啓蒙啓発活動で障害にスポットを当てるのは間違い。それでは自分とは違う人なんだという再認識になり引いてしまう。自分と同じなんだと知ってもらう啓蒙啓発が必要。

 

2. 多機能型事業所大宮ゆめの園(社会福祉法人ハッピーネット) さいたま市

事業所の特徴 老人ホームが前身。障害の種類・軽重を問わない一環性のあるライフステージの提供を目指して同一敷地内に7ブロック5グループの活動の場がある。ビルメンテ、ベッドメイク、配膳など。
工賃月15000円~20000円。ボーナスあり。
事業所又は地域での取組の成功事例 家族の意向もあり、就労を希望する方を止めるものではないが、ここで就労してもらっている。パン焼きは400~500個/日。お中元やお歳暮に使ってもらっている。
隣接する特養老人ホームでの配ぜんやベッドメイクでは軽度の障害者と高齢者はいい関係性が築けている。
※重度の方同志は無理。
ヘルパー2級講座を主催しているのでチャレンジさせている。
引籠り・うつ・精神疾患といわれる方たちの実態 通所では日割りになるので経営ベースで考えると支援できない。
支援するには高いスキルが望まれる。退院促進事業は仕組み作りにすぎない。
相談支援 ネットワークのつくり方など、圏域での包括と地域の役割を明確にして即応性を求めたい。
全て解決してほしいとは言わないが、調整紹介してくれると対応が可能。
地域コーディネイトが機能するとよい。
誰が支援すべきか 情報の開示とインセンティブ。
地域資源の有効配分。
親亡き後に備えていること 2025年問題を考えると障害者の(老人介護施設への)入所も視野に入れていかなければならない。事業所がすべてカバーできない。
その他 事業団系の天下りがあったところなど、そもそもの成り立ちが違っていて地域格差には大きなものがある。
給付型では数値化せざるを得ないが、担当したケアマネによって格差が生じている。
※回答者は渡島コロニーに7年間勤務していた方。
移行定員25人、利用者25人。

 

3. 就労継続支援施設のびろ作業所(社会福祉法人まりも会) さいたま市

事業所の特徴 社会福祉事業法の社会事業授産施設が前身。親の世話にはならない、を理念に自分たちで稼いで金を出し合い、預かったからには墓場までを合言葉に活動してきた。下請け作業550万円/年。
工賃は能力に応じて20~100%。
事業所又は地域での取組の成功事例 S53年自分たちで2800万円貯めてGHを作った。その後街頭募金や古紙の回収をはじめ、S60年からは古紙回収システム(※)を作り、多い年で年間1000万円、計1億7千万円を貯めて現在の事業所と向かいにあるGHを建設した。
古紙回収は毎日2人で日中2000件をまわっている。
引籠り・うつ・精神疾患といわれる方たちの実態  
相談支援 婦女暴行、窃盗、万引きを繰り返している方がいる。警察に何度も捕まってその都度反省しているが、また繰り返してしまう。今回は起訴されて禁固6ヶ月執行猶予3カ月の判決を受け、さすがにおとなしくしている。
誰が支援すべきか NPOなど関わり合いをもった人が支援の必要性を訴えていくべき。
公はやらないのだから、気づいた人が社会問題化させていくべきだ。
親亡き後に備えていること 生活の場の確保が私たちの出発点。親や家族に迷惑をかけないで生きていこうと10人が集まった。30過ぎて親の世話にはなりたくない。
その他  

 

4. 障害者支援施設しびらき(社会福祉法人邑元会ゆうげんかい) さいたま市

事業所の特徴 高齢者福祉施設が前身。開所するにあたって地域の不安感を取り除くため内覧会を土日に3回行った。消しゴムの袋入れ、履歴書の袋入れ、クッキー作りなど。
工賃月10000円
事業所又は地域での取組の成功事例 就労が全てではない。特養での掃除機かけをとおして利用者の目の色が変わってきている。
特養はあちこちにあるので、部屋のごみ回収や、体操を一緒にやるなど、彼らの出番はまだまだある。市の公園の清掃作業も週に3か所3回行っている。
環境のなかで周りに引きずられて本人が変わってきている。
※職員は変わってないけどね。
引籠り・うつ・精神疾患といわれる方たちの実態 通ってきていた作業所に来なくなり、家の中にバリケードを作ってこもってしまった例。
せめて週に1回でも出てきてもらい、徐々にその回数を増やしていく支援をしたいが、利用者を多く集めなければ運営でいないので大変な思いをしている。
長野県では収入の不足分を補助していたので交渉して2年かかってやっと認めてもらえた。
居宅サービスの利用が増えているが、こういう方は大勢の中での支援は向かない。
相談支援 障害者支援センターが各区に設置されている。
家族は疲弊しきっている。
誰が支援すべきか スタッフには余裕がない。
親亡き後に備えていること まわりの理解者をいかに増やしていくかにかかっている。
そのため法人内で特養を作ってしまった。
その他  

 

5. どうかん(社会福祉法人ささの会) さいたま市

事業所の特徴 育成会が中心になってH17年設置の知的入所更生。できたとたんに移行。障害の種別・軽重・年齢ともに幅広く「残っていた」方たちが集まっている。軽作業を中心に行っている。
事業所又は地域での取組の成功事例 基本方針 → 障害程度区分で暮らす場所が決まるのはおかしい! → 制度に合わせるのではなく、利用者を中心にした支援を → 暮らす場所、働く場所を決めるのは利用者 → どうかんで暮らしたい人はどうかんで暮らす、どうかんを出て地域で暮らしたい人は地域で暮らす
引籠り・うつ・精神疾患といわれる方たちの実態  
相談支援 以下全て計画書参考
誰が支援すべきか  
親亡き後に備えていること  
その他 自立支援法は制度設計が甘いのでどのようにでも解釈が可能な部分をうまく利用する。

 

6. さいたま市桜区障害者生活支援センターさくらとぴあ(社会福祉法人邑元会) さいたま市

事業所の特徴 さいたま市10区14か所設置の相談支援事業所のうちのひとつ。さいたまコーディネーター連絡会を2か月に1回開催。
事業所又は地域での取組の成功事例 コーディネーター連絡会では3つのワーキンググループ( (1)調査研究=困難事例の検討、(2)教育研修=ケースカンファレンスや公開講座、(3)広報委員会=法律相談やパンフ作成)を作り連携して自立支援協議会につないでいる。
引籠り・うつ・精神疾患といわれる方たちの実態 6~7割が軽重を含む精神。そのうち2割が手帳をもたないが福祉サービスを望んで手帳をもつ方はほとんどいない。お金を稼ぎたいがどうしたらいいかという単純な相談。
相談支援 クローズでいて働きづらくなってから相談に来る。
児相から18歳になったからと言っていきなりまわされてくるケースがある。
今まで何をしていたのか! と思う。
※療育の必要性は認めているが、現状では週1回の療育指導が精いっぱい。家庭では好き勝手にふるまっているのだから意味がない。
誰が支援すべきか 施設はもう限界にきているのだから地域で支えなければならないのだが、都会では人間性が失われていて(地域が死んでいて)、そうなった場合は「囲う」しかない。入所は必要悪。
※GHは家賃が高く4人埋まっていないと経営できない。いつか心もくじけてしまう。
親亡き後に備えていること 支援センター単独ででは無理。地域で支えたい。
成年後見もなり手がいない。同居の兄から搾取されているが、同居では犯罪にならないと言われた。
その他  

 

7. 所沢しあわせの里(社会福祉法人安心会) 所沢市

事業所の特徴 特養施設、身体デイが前身。18年の3障害統合から精神の方の利用が増え、現在は1/3が精神。
事業所又は地域での取組の成功事例 ピアカウンセリングを週1回(参加1~2人)実施。月に2回は精神病院へ場所を移動して (参加6~7人)実施している。
この中から相談につながってくる方が増えてきており、居住サポートや福祉用具などの福祉サービスの利用の仕方や、退院後の一人暮らし支援やアパート探しなど生活面での困りごとに関する支援も増えてきている。
引籠り・うつ・精神疾患といわれる方たちの実態 包括支援センターや社協からの通報があるが、家族が介入を望んでいないなどの壁もある。
精神の方の困りごとはそれぞれに違っている。その様に自分の障がいを抱えてストレスの中で生きていくことへの支援が望まれている。
所沢でも3障害+社協が一体となって支援していく拠点的な場所の設置を検討している。
※その他に入間市や東松山市の例もある。
相談支援 もともと行き場所や相談をする場所もなかった人たちがいた。
誰が支援すべきか 地域(民生委員、自治会、市など)とのつながりを持ち、相談支援につなげていく。
高齢者については進んでいるのに、障がい者の分野では遅れている。
親亡き後に備えていること 相談支援を活用して一緒に考えていきたい。
GHはそう増えていくとは思えないので、成年後見などの体制を整えれば可能だと思う。
その他  

 

8. さぽっと(社会福祉法人藤の実会) 所沢市

事業所の特徴 埼玉県からの受託事業。
知的者入所通所が前身。
事業所又は地域での取組の成功事例 社会のルールを学んだり、手帳で使えるサービスについてなどのマナー教室を開いている。
履歴書の書き方も学んでいる。
それぞれの目的・目標・個性を見て、敢えてそれぞれの苦手な課題を設定してチャレンジするように支援している。
短期入所を利用して(6床)受入、昼夜逆転の改善をしている。市には緊急避難の場がない。
引籠り・うつ・精神疾患といわれる方たちの実態 5年引きこもっていた方のケースでは、やはりもともと発達障害があったにもかかわらず、小中高と普通に卒業し、社会に出て不安感を感じ相談にきた。その間家族からいわれのない非難を受けており、ウィークリーマンションを用意し、親から引き離した。
このようなケースは増えてきている。共通するのは外に出たいのに自信がないという不安な態度が見て取れること。
相談支援 ケースバイケースだが手帳がとれると思う方はとれるように、ダメな人には病院で診断書を書いてもらい、職業リハビリテーションセンターを利用。支援が必要な方は受けられる。
診断で支援の幅が広がるので医療の面も大切。ここを起点に外に出る事ができるし、出す。
往診してくれる医者がいるのでその医者に自宅に来てもらって診断を受けることもできる。
可能な限り知恵を働かせて社会資源と連携し活用する。
誰が支援すべきか 福祉の枠で考えなければ資源はいくらでもある(アブナイ資源もあるが)ので現存するのは何でも使う。相談できる場所はGHの近くでみんなが自由に出入りできるようなプチ支援センター的なたまり場がいい。
親亡き後に備えていること 自立訓練のため市の建物を活用したGH体験入居を行っている。集団の力もあなどれない。
※子ども支援部=一貫した情報の管理
その他 生活課題と就労課題はつながっているので分けられない。生活課題はひとつひとつ解決していく。彼等はそれなりの能力を持っている。社会への不適応が問題なのでその克服を狙う。
マネジメントについては支援計画の中に「自分がどううごくか?」の視点を持たなければならない。プロとしてどう生きていくかが問われている。保護者の教育も必要。
市内26か所の学童クラブを巡回して思うのは「気づいていない子」が多いこと。

 

9. 国立身体障害者リハビリテーションセンター 所沢市

事業所の特徴 現在、国のモデル事業として就労移行支援を行っている。
事業所又は地域での取組の成功事例 子どもの早期発見はかなり進んできているが、成人期についてははじまったばかり。
2か月に1回程度の事例検討会で病例を積み重ねていくことで生活課題解決の解決を図っていくしかないのではないか。
※地域格差のモデル事業としては東松山、滋賀、北九州などで行われている。
引籠り・うつ・精神疾患といわれる方たちの実態 まだまだ顕在化してきていない。2次障害から精神疾患に陥る。
生活のリズムや、例えば通うところなど、個別性があり数値化しにくい。
診断だけついてそのあとはどうするのか?
相談支援 手帳が必須であり、現行の制度の中で当事者のニーズにあったサービスをうまく使えるように支援することが責務。3障害別の視点で。
支援する側の専門性が問題。+インセンティブ。
当事者のニーズをデータにする → 数値化(難しい)
現場がどう読み取るか? にかかっている。
誰が支援すべきか そのときのキーパーソン。
障害特性を知ったうえでの対応が必要。その人の困りごとは環境によって変わる。
生活モデルでは数値化できない → だからなおさら細やかな対応が求められる。
親亡き後に備えていること この障害が、というのではなく、「Aさんの生活課題」と捉える。
その他  
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