【調査報告】聞取調査報告・和歌山県

1. くじら共同作業所(社会福祉法人くじら福祉会) 和歌山市

事業所の特徴 当初はろう重複障がい者支援だったが、現在はろう10人知的10人で、パン・クッキー・パウンドケーキの製造販売とアルミ缶処理、割り箸の袋詰めなどを行い、地域に密着した活動を行っている。移転当初から、地域を意識して地域を巻き込んで活動をしてきている。
事業所又は地域での取組の成功事例 知的障がい者を受け入れるときはうまくいくか? と心配したが、ある日知的障がい者がろう者に、「空き缶を洗ったよ・つぶしたよ」と身振り手振りで話しかけていてその動作がろう者に通じた。以来、この作業所独自の手話が生まれてきている。仲間同士のみがきあいがある。糖尿病が多かったので昼食前にキャベツを湯がいで食べさせたところ、体重を6kg落した方がいる。健康管理も成功している。文字を書くようになった知的障がい者もいる。
引籠り・うつ・精神疾患といわれる方たちの実態 診断がつけばサービスの網の中に入る。
昼夜逆転している程度では診断を受けるのは難しいが、それが当事者にとっての悩み。
精神の方がスタッフ気取りで「~へ連れて行ってあげる」、「○○さんを見ていてあげる」などというので、その都度「一緒に行く」、「一緒にいる」と訂正して助言している。
本人も親も障害を認めていない。
相談支援 主任が会議に出席している程度。
誰が支援すべきか  
親亡き後に備えていること 施設は必要だと思う。
和歌山市は中核都市なので県の制度を使うことができない。
市に相談しても「予算がない」といわれる。
その他 報酬単価が安すぎる。看護師を週2日配置することになっているが、実際は毎日いてもらわないと機能しない。正職員3人、パート5人。
通所20人。内GHから7人、自宅から13人。送迎は7人。
B型定員20人、登録20人。

 

2. 和歌山県発達障害者支援センターポラリス 和歌山市

事業所の特徴 肢体不自由児の支援施設として40年の歴史を持つ。H17年から毎年300人程度の発達障がい児者の相談を受けている。成人と児童の割合は半々。学校、施設、労働局、ジョブサポーターとの連携はあるが、企業や民間法人(含NPO等)との連携はない。
事業所又は地域での取組の成功事例 手帳を持つことを入り口としているため、親支援が最大の課題。成人してからの診断名を受けることの大変さを感じつつも、親を説得して、現状を理解してもらう努力を続けている。
施設内での体験作業を見守り、出来ていること、出来ていないことを親に伝え、そのギャップに気づいてもらうようにしている。
引籠り・うつ・精神疾患といわれる方たちの実態 本人が対人関係に悩み相談に来るケースや、友達がいないと通ってくるケースが見られる。
経験の少なさが、新しいことに対しての恐れを招いている。
ADHDでうつの方が多い。
相談支援 本人の意思確認が一番大切。
情報は守らなければならない。
親の同意を得るのがBEST。
前述したとおり、施設内での就労体験をとおして社会参加の難しさを本人と親に認識してもらっている。
誰が支援すべきか 自分のことは自分でできることが当たり前だという体験を持つことを優先している。
親亡き後に備えていること 社会との係りを持つことが大切だということを認識してもらうことからはじめている。
その他 集団に属させたいが行く場所がないのでそういう気楽に行ける場が必要だと思う。
※精神の方にはそういう場が用意されている。
就職に関しては専門の機関に任せているので関知していない。

 

3. はぐるま共同作業所 和の杜(社会福祉法人一麦会) 和歌山市

事業所の特徴 1977年ろう学校の教師が開設。3障害を受け入れる。以来「その人のニーズに応え」事業を拡大。社会福祉法人一麦会として24の事業所を持つ。
納豆・ゼリー・健康せんべい・粉茶などの製造販売。
事業所又は地域での取組の成功事例 「追い出し」があったため、当事者が話をするなど、地域に溶け込む努力を続けてきた。
映画「ふるさとをください」のモデルとなっている。
引籠り・うつ・精神疾患といわれる方たちの実態 エルシティオが実態を把握している
相談支援 法人内の別の部署で行っている。
誰が支援すべきか ニーズにあった分野の人たちが、ネットワークでその人を囲みこんでいく。
介護保険の手法(ケース会議)を活用すればよい。
親亡き後に備えていること 高齢の保護者のところには介護支援専門員が行っており、対象以外にも目配せをしている。
ヘルパーから連絡があり、ケアマネが判断している。
GHまたはヘルパーのサポート導入。
その他  

 

4. 障害児者サポートセンター「麦の郷」(社会福祉法人一麦会) 和歌山市

事業所の特徴 1977年ろう学校の教師が開設。3障害を受け入れる。以来「その人のニーズに応え」事業を拡大。社会福祉法人一麦会として24の事業所を持つ。
事業所又は地域での取組の成功事例 「追い出し」があったため、当業者が話をするなど、地域に溶け込む努力を続けてきた。
映画「ふるさとをください」のモデルとなっている。
引籠り・うつ・精神疾患といわれる方たちの実態 様々な人たちが相談に来るが、彼等は「支援があれば地域で共に暮らせる人」。
医療モデル(全体の中ではわずかな時間)から生活モデル(大半を占める生活場面)に変換。
障害特性(のこだわり)を共通理解する人を増やし、その人にあった工夫をすればいい。
家族は支援者ではない。家族を含めて支援すべき。支援されることに慣れる教育も必要。
20歳を過ぎたらGHなどで自立。そのための賃金(経済支援)保障が必要。
相談支援 学校に卒業生のその後を伝え(情報提供と共有)、協力してもらっている。
もう・ろう・養護学校や訪問介護ステーション、地域や親にしかできないことをそれぞれが 責任をもって連携し、色々な体験や経験を積ませる。そのために作業所は必要。
保護者の高齢化に戸惑う前に、対処する経験を積ませることが大切。
「稼いだ金を有意義に使う」
誰が支援すべきか 気づいた人が支援すればよい。考え始めること(想像力)と行動力が必要。
「知ってもらう」、「こういう動きがあれば地域で生きていける」。
親亡き後に備えていること 親から自立をするんだよ、と教えていく。
その他 働いて得たお金で充実した人生を送る。
青年学級(知的自助グループ隔週土曜日)を当事者が主催して行っている。
一般企業からつぶされてきた当事者の話や、余暇活動、遊びの経験の保障を行っている。
仲間同士で司会をするなど、参加者も多く、継続しており、効果は大きい。

 

5. ソーシャルファーム ピネル(社会福祉法人一麦会) 和歌山市

事業所の特徴 病院の基準寝具7点セットの下請け、病院の白衣、老人ホームの衣類、おしぼり等のクリー二ング作業をとおし、適材適所の判断、空いた時間に逃げ腰になりがちになるところにあえて目を向け、支援することで「力」をつけてもらえるように工夫している。
事業所又は地域での取組の成功事例 「クリーニング工場」と位置づけし、常に計画性をもたせ、充実した1日を送ってもらっている。基本工賃は低いが頑張りによって2年間で月10万円を稼ぐようになった方もいる。
目標の立て方や、細かいことの積み重ねが必要で、それがスタッフの使命。
引籠り・うつ・精神疾患といわれる方たちの実態  
相談支援  
誰が支援すべきか 受け皿が必要。受け皿があるのならそれをしっかりと作ってほしい。
ピアカウンセリングのサークルはある。
報酬単価の改定が必要。
親亡き後に備えていること 本人の高齢化も問題になってきている。
共同生活できない方もいる。
その他  

 

6. けいじん舎(社会福祉法人一麦会) 和歌山市

事業所の特徴 精神の福祉工場として95年開設。冷凍コロッケ、おにぎり等の製造販売。オープンカフェ「風車」運営。単に働いて賃金を得る場ではなく社会から認められる場として機能するように「本物」を用意している。
事業所又は地域での取組の成功事例 工業技術センターとの連携によってパッケージ開発などをおこなっているがまだ発展途上。
引籠り・うつ・精神疾患といわれる方たちの実態 吃音で接客に向かない利用者がいるが、本人は人と触れ合うことを求めており、必ずしもこちらの思う仕事の内容と本人の希望は一致しない。お金だけの問題でもない。
仕事に生きがいを見いだせる人には希望がある。
精神の方には、働ける場所の確保より、年金のほうが良い方もいる。
相談支援  
誰が支援すべきか 平等と権利擁護が柱。仲立ちは行政の仕事。しかし実行は民間に任せてほしい。
親亡き後に備えていること 成人したら独立した生活をさせなければならない。親からの分離。そのために生活費の保障が必要。その人がいられる場所をたくさん作っていく。できないことを無理にさせるのではなく、不足することは誰かが支援すればいい。
その他 支援を求める人に柔軟に対応すべき。使えるところは使いできるところは自分たちで行う。
B型には一定の設備資金が必要。
働く場所、能力を伸ばす場所、ライフステージの提供、経済的保障 → それができるのが施設職員の役目。

 

7. ほかほか共同作業所 和歌山市

事業所の特徴 スポンジの袋詰や、栞などの内職作業が主体で、工賃も月額3000円程度と低い。
知的10人、身体4人。(作業できる人は6人)
全体にゆったりとした時間の中で軽作業を行っている。
事業所又は地域での取組の成功事例 移行前はのんびりしていたが工賃設定ができて頑張る姿勢を求めたら悪化した方もいる。
また、事業を拡張したい思いはあるが、B型では財政的に無理。
引籠り・うつ・精神疾患といわれる方たちの実態 隣に引きこもり支援を行っているNPO法人「エルテシオ」がありそちらで対応している。
相談支援 土日の利用のニーズがあったが対応できなかったために入所へ行ってしまった。
GHやCHがほしいと思った。
誰が支援すべきか 地域の中では受け入れられていると思う。
ボランティアもいる。
親亡き後に備えていること  
その他 送迎車両を整備したい。

 

8. たなかの杜(社会福祉法人ふたば福祉会) 田辺市

事業所の特徴 1977年、養護学校卒後の就労の場・居場所、として開設。現在はクッキーの製造販売箱折り、公園・トイレ掃除などを行っているが、自立訓練に専門課程(短大のようなもの)を取り入れ、パソコン、農作業、ジャズダンス、陶芸、調理等を行っている。工賃2万円。
事業所又は地域での取組の成功事例 必要なプログラムに沿って支援をしているため、人前で自己紹介できるようになったなど発達の成果が見られるようになってきている。 集団になじまない方には個別の対応をとっている。
引籠り・うつ・精神疾患といわれる方たちの実態  
相談支援  
誰が支援すべきか 通えるところがあればいい。 → 発見 → 次のステップへ →
親亡き後に備えていること GHなどの整備。
自宅で暮らしたい方にはヘルパーの利用。
地域の理解とつながりが必要。
その他 自立訓練7人
移行定員6人、登録6人。A型定員10人、登録7人。B型定員10人、登録12人。

 

9. エルシティオ(NPO法人エルシティオ) 和歌山市

事業所の特徴 精神通所共同作業所が前身。県委託。引きこもりの方を対象に支援活動を行ってきた。
制度外で支援してきたが、昨年10月にA型事業所としてスタートしている。
※発達障害という概念の定義がわからない。
事業所又は地域での取組の成功事例 メンバー同士で年は聞かない過去は聞かないをモットーにそのままの姿を受け入れている。
仕事をしていなくてもとがめられない。
生活のしづらさは、もともとその方が持っていた資質からか、支援が良かったからなのか、克服できている。
引籠り・うつ・精神疾患といわれる方たちの実態 仕事=できるけどしたくないのか、できないのか、きっちりできないと困るのでそれが怖くてできないのか。
同和教育の上に成り立っている=障害者としてではなく「人間としての尊厳の問題」として
相談支援 市財政部の理解。厚労省への提言。
誰が支援すべきか  
親亡き後に備えていること  
その他  
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