現在お住まいの地域はどこですか?
図表 4-1 利用者の居住都道府県(単数回答)
利用者アンケートの回答者は、全数1,891人。うち、東京都250人(13.2%)、大阪府191人(10.1%)、神奈川県139人(7.4%)、福岡111人(5.9%)の順に多い。
性別と年齢を教えてください。
図表 4-2 性別(単数回答)
図表 4-3 年齢(単数回答)
利用者アンケートの全回答者1,891人中、男性1,218人(64.4%)、女性626人(33.1%)である。
全体は40歳代・536人(28.3%)、30歳代・535人(28.3%)とほぼ同数で、次いで50歳代・405人(21.4%)の順に多い。男性は40歳代・371人(男性に占める割合30.5%)、30歳代・343人(男性に占める割合28.2%)、50歳代・278人(男性に占める割合22.8%)の順に多く、女性は30歳代・182人(女性に占める割合29.1%)、40歳代・156人(女性に占める割合24.9%)、50歳代・122人(女性に占める割合19.5%)の順に多い。
現在、主に利用している事業所の種類はなんですか?
図表 4-4 主に利用している事業所の種類(単数回答)
図表 4-4 主に利用している事業所の種類(単数回答) の内容
全回答者数1,891人のうち自立支援給付事業を主に利用している人は547人(28.9%)で、次いで地域活動支援センターⅠ型496人(26.2%)、地域活動支援センターⅠ型以外の368人(19.5%)である。
〔自立支援給付事業所の方〕利用しているサービスの種類はなんですか?
図表 4-5 自立支援給付事業所で利用しているサービス種類(複数回答)
図表 4-5 自立支援給付事業所で利用しているサービス種類(複数回答) の内容
自立支援給付事業を主に利用している547人のうち、419人(76.6%)は就労継続支援B型事業を利用し、次いで就労移行支援事業を61人(11.2%)が利用している。
質問3で、〔1.自立支援給付事業所〕〔2.地域活動支援センター〕と答えた方におうかがいします。あなたが現在利用している事業所は、障害者自立支援法による新体系の事業ですが、以前は何の事業所でしたか?
図表 4-6 以前の事業所(単数回答)
障害者自立支援法新事業体系移行後の事業を利用している人のうち、移行前の事業は小規模作業所を利用していた人が582人(41.2%)、地域生活支援センターを利用していた人が472人(33.5%)、小規模通所授産施設を利用していた人が175人(12.4%)の順に多い。
同じく質問3で、〔1.自立支援給付事業所〕〔2.地域活動支援センター〕と答えた方におうかがいします。障害者自立支援法による新体系の事業に移行してから変化はありましたか?
図表 4-7 事業所の種類×新体系の事業移行による利用料の変化(単数回答)
合計 | 減った | 変わらない | 増えた | 無回答 | |
---|---|---|---|---|---|
全体 | 1,411 100.0 |
175 12.4 |
670 47.5 |
232 16.4 |
334 23.7 |
自立支援給付事業所 | 547 100.0 |
118 21.6 |
188 34.4 |
174 31.8 |
67 12.2 |
地域活動支援センターⅠ型 | 496 100.0 |
23 4.6 |
280 56.5 |
32 6.5 |
161 32.5 |
地域活動支援センターⅠ型以外 | 368 100.0 |
34 9.2 |
202 54.9 |
26 7.1 |
106 28.8 |
注:上段は実人数(単位:人)、下段は比率(単位:%)
全回答者1,411人のうち、「変わらない」と回答した人が670人(47.5%)、「増えた」と回答した人が232人(16.4%)、「減った」と回答した人が175人(12.4%)であった。
うち、地域活動支援センターⅠ型利用者の半数以上を占める280人(56.5%)、同じく、地域活動支援センターⅠ型以外の利用者の半数以上の202人(54.9%)は「変わらない」と回答し、「増えた」または「減った」という回答とは大きな差が認められた。
一方、自立支援給付事業所利用者においては「変わらない」と回答した188人(34.4%)と、「増えた」と回答した174人(31.8%)には割合としては大きな差はなかった。自立支援給付事業所利用者の118人(21.6%)は「減った」と回答している。
また、「無回答」の人数割合を比較すると、地域活動支援センターⅠ型利用者の161人(32.5%)及び地域活動支援センターⅠ型以外の利用者の106人(28.8%)は、自立支援事業所利用者の67人(12.2%)の倍以上の差が認められた。
地域活動支援センターの利用料や自立支援給付事業利用料の自己負担上限額を独自に決める自治体の特性や財政事情などによって、様々な変動が生じ、利用者負担の変化が生じたことが推察できる。自由回答においては、全体的に利用料に対する反対や不満の声が多く認められた。また、地域活動支援センターや自立支援給付事業所の利用に係る交通費が負担との記述が多数であった。さらに「自立支援医療(申請のための診断書)の毎年提出は無理」との回答が複数あることから、総じて経済的負担が増大したといえる。利用料についての無回答の割合から考えると、自立支援給付事業所利用者の方が地域活動支援センター利用者より自分の負担額の変化等について理解している割合が高いと推察される。
図表 4-8 事業所の種類×新体系の事業移行による工賃の変化(単数回答)
合計 | 増えた | 変わらない | 減った | 無回答 | |
---|---|---|---|---|---|
全体 | 1,411 100.0 |
228 16.2 |
573 40.6 |
178 12.6 |
432 30.6 |
自立支援給付事業所 | 547 100.0 |
158 28.9 |
224 41.0 |
101 18.5 |
64 11.7 |
地域活動支援センターⅠ型 | 496 100.0 |
12 2.4 |
140 28.2 |
25 5.0 |
319 64.3 |
地域活動支援センターⅠ型以外 | 368 100.0 |
58 15.8 |
209 56.8 |
52 14.1 |
49 13.3 |
注:上段は実人数(単位:人)、下段は比率(単位:%)
全回答者1,411人のうち、「変わらない」と回答した人が573人(40.6%)でもっと多く、次いで「増えた」と回答した人が228人(16.2%)、「減った」と回答した人が178人(12.6%)であった。地域活動支援センターⅠ型利用者のうち319人(64.3%)が「無回答」となっている。
自立支援給付事業利用者で「減った」と回答した人の割合が18.5%(101人)である。工賃アップのためのさまざまな事業が展開される中で、「減った」という利用者の実感に、新事業体系のあり方や、それを後押しする事業に疑問を感じざるを得ない。その他、自由記載欄では「給食費と利用料がかかるのでもらえる工賃が減った」「利用料が高く工賃が思うようにもらえず±0くらいなので、もっと利用料を少なくしてほしい」などの意見があり、「工賃」を「必要経費を抜いた金額」と認識している人がいること、昨今の経済状況による作業の減少、利用者が増えたため工賃を全体で配分するので結果として手元に入る金額が減少したなど、さまざまな理由が推察できるが、今回の調査では明らかにされていない。
図表 4-9 事業所の種類×新体系の事業移行による活動内容(作業)の変化(単数回答)
合計 | 良くなった | 変わらない | 悪くなった | 無回答 | |
---|---|---|---|---|---|
全体 | 1,41 100.0 |
339 24.0 |
615 43.6 |
50 3.5 |
407 28.8 |
自立支援給付事業所 | 547 100.0 |
177 32.4 |
283 51.7 |
23 4.2 |
64 11.7 |
地域活動支援センターⅠ型 | 496 100.0 |
65 13.1 |
120 24.2 |
10 2.0 |
301 60.7 |
地域活動支援センターⅠ型以外 | 368 100.0 |
97 26.4 |
212 57.6 |
17 4.6 |
42 11.4 |
注:上段は実人数(単位:人)、下段は比率(単位:%)
全回答者1,411人中、「変わらない」と回答した人が615人(43.6%)、「良くなった」と回答した人が339人(24.0%)、「悪くなった」と回答した人が50人(3.5%)いた。地域活動支援センターⅠ型の利用者のうち「無回答」の割合は60.7%(301人)で、自立給付事業利用者の11.7%(64人)と地域活動支援センターⅠ型以外の利用者の11.4%(42人)に対し、5倍以上の差が認められた。地域活動支援センターⅠ型の利用者が作業についての「無回答」率が高いのは、移行前の精神障害者地域活動支援センターが作業を中心とした活動をしていないことの表れなのか、地域活動支援センターを利用している人たちの興味の対象が作業ではないことに重点が置かれているのか、今回のアンケートでは明らかにできない。
図表 4-10 事業所の種類×新体系の事業移行による活動内容(作業以外)の変化(単数回答)
合計 | 良くなった | 変わらない | 悪くなった | 無回答 | |
---|---|---|---|---|---|
全体 | 1,411 100.0 |
309 21.9 |
706 50.0 |
46 3.3 |
350 24.8 |
自立支援給付事業所 | 547 100.0 |
140 25.6 |
303 55.4 |
19 3.5 |
85 15.5 |
地域活動支援センターⅠ型 | 496 100.0 |
80 16.1 |
201 40.5 |
12 2.4 |
203 40.9 |
地域活動支援センターⅠ型以外 | 368 100.0 |
89 24.2 |
202 54.9 |
15 4.1 |
62 16.8 |
注:上段は実人数(単位:人)、下段は比率(単位:%)
全回答者1,411人のうち、「変わらない」と回答した人が706人(50.0%)、「良くなった」と回答した人が309人(21.9%)、「悪くなった」と回答した人が46人(3.3%)であった。
自立支援給付事業利用者と地域活動支援センターⅠ型以外の利用者の回答に大きな差は認められなかったが、地域活動支援センターⅠ型利用者においては「良くなった」と回答した人が16.1%(80人)と自立支援給付事業所利用者の25.6%(140人)、地域活動支援センターⅠ型以外の利用者の24.2%(89人)より少ない結果となっている。また、「変わらない」と回答した人も地域活動支援センターⅠ型利用者は40.5%(201人)であるのに対し、自立支援給付事業所利用者の55.4%(303人)、地域活動支援センターⅠ型以外の利用者の54.9%(202人)と少なくなっている。
このことから、地域活動支援センターⅠ型利用者は「良くなったとは」「変わらない」と感じている人が自立支援給付事業所利用者と地域活動支援センターⅠ型以外の利用者より少ない傾向にある。
事業の移行先によっては作業以外の活動に制限が現れ、利用者の意見として表れるのではないかと予想したが、意外にも「悪くなった」と回答する人は3.3%と少なかった。
図表 4-11 事業所の種類×新体系の事業移行による職員の対応の変化(単数回答)
合計 | 良くなった | 変わらない | 悪くなった | 無回答 | |
---|---|---|---|---|---|
全体 | 1,411 100.0 |
515 36.5 |
739 52.4 |
37 2.6 |
120 8.5 |
自立支援給付事業所 | 547 100.0 |
213 38.9 |
274 50.1 |
19 3.5 |
41 7.5 |
地域活動支援センターⅠ型 | 496 100.0 |
173 34.9 |
257 51.8 |
12 2.4 |
54 10.9 |
地域活動支援センターⅠ型以外 | 368 100.0 |
129 35.1 |
208 56.5 |
6 1.6 |
25 6.8 |
注:上段は実人数(単位:人)、下段は比率(単位:%)
全回答者1,411人のうち、「変わらない」と回答した人が739人(52.4%)、「良くなった」と回答した人が515人(36.5%)、「悪くなった」と回答した人が37人(2.6%)である。
「変わらない」と「良くなった」を合わせた回答者数は全体の88.9%で、職員の対応に対して好意的に受け止める声が多く、地域活動支援センターⅠ型利用者と地域活動支援センターⅠ型以外の利用者、また自立支援給付事業所利用者に大きな変化は認められない。
しかし、自由回答においては「悪くなったところ」に対する回答数は少ないものの、「職員が忙しそう(3人)」「職員が事務作業に追われているように感じる」「スタッフはキツソウ」「職員の数が減り、皆が忙しそうに見えます。相談したいと思っても、声をかけて良いものか迷うことがあります」など、職員の対応そのものではなく、事業所の人員配置の少なさと事務量の多さに対する不満、それによって多忙な立場に立たされる職員を気遣う声が見受けられた。反面、事業移行したことによって、これまでの対応の質を落とさないよう職員が一層の努力していることを利用者が評価していることがうかがえる。今後の課題として検討が求められる。
一方、「職員と定期的に相談できるようになった」など、これまでにはなかった個別支援計画作成時の面接などを評価すると思われる意見もあった。
図表 4-12 事業所の種類×新体系の事業移行による居心地の変化(単数回答)
合計 | 良くなった | 変わらない | 悪くなった | 無回答 | |
---|---|---|---|---|---|
全体 | 1,411 100.0 |
499 35.4 |
728 51.6 |
61 4.3 |
123 8.7 |
自立支援給付事業所 | 547 100.0 |
187 34.2 |
292 53.4 |
27 4.9 |
41 7.5 |
地域活動支援センターⅠ型 | 496 100.0 |
182 36.7 |
239 48.2 |
19 3.8 |
56 11.3 |
地域活動支援センターⅠ型以外 | 368 100.0 |
130 35.3 |
197 53.5 |
15 4.1 |
26 7.1 |
注:上段は実人数(単位:人)、下段は比率(単位:%)
全回答者1,411人のうち、「変わらない」と回答した人が728人(51.6%)、「良くなった」と回答した人が499人(35.4%)、「悪くなった」と回答した人が61人(4.3%)である。
「良くなった」もしくは「変わらない」と回答した人は87.0%で、これまでと同等以上の場作りに向けて利用者と職員が努力していることがうかがえる。しかし、少なからず「悪くなった」と訴える利用者もいる(自立支援給付事業所利用者の4.9%(27人)、地域活動支援センターⅠ型利用者の3.8%(19人)、地域活動支援センターⅠ型以外の利用者の4.1%(15人))。事業移行に伴う活動の変更や登録者の増加、事業所の合併などよって、利用者が増減したことなどへの不満と不安などが考えられる。このような環境の変化に対する脆弱性を持つ精神障害者にとって、他の障害者以上に負担は大きかったものと推察される。
図表 4-13 事業所の種類×新体系の事業移行による仲間との交流の変化(単数回答)
合計 | 良くなった | 変わらない | 悪くなった | 無回答 | |
---|---|---|---|---|---|
全体 | 1,411 100.0 |
517 36.6 |
729 51.7 |
51 3.6 |
114 8.1 |
自立支援給付事業所 | 547 100.0 |
199 36.4 |
285 52.1 |
26 4.8 |
37 6.8 |
地域活動支援センターⅠ型 | 496 100.0 |
193 38.9 |
236 47.6 |
14 2.8 |
53 10.7 |
地域活動支援センターⅠ型以外 | 368 100.0 |
125 34.0 |
208 56.5 |
11 3.0 |
24 6.5 |
注:上段は実人数(単位:人)、下段は比率(単位:%)
全回答者1,411人のうち、「変わらない」と回答した人が729人(51.7%)、「良くなった」と回答した人が517人(36.6%)、「悪くなった」と回答した人が51人(3.6%)である。
「良くなった」もしくは「変わらない」と回答した人は88.3%で、これまで以上のグループワークや仲間作りに向けて利用者と職員が努力していることがうかがえる。しかし、若干ではあるが「悪くなった」と訴える利用者もいる(自立支援給付事業所利用者のうち4.8%(26人)、地域活動支援センターⅠ型利用者のうち2.8%(14人)、地域活動支援センターⅠ型以外の利用者のうち3.0%(11人))。事業移行に伴う登録者の増加や、事業所の合併などよって、利用者が増減したことなどへの不満と不安などが考えられる。このような環境の変化に対する脆弱性を持つ精神障害者にとって、他の障害者以上に負担は大きかったものと推察される。
図表 4-14 事業所の種類×新体系の事業移行による雰囲気の変化(単数回答)
合計 | 良くなった | 変わらない | 悪くなった | 無回答 | |
---|---|---|---|---|---|
全体 | 1,411 100.0 |
525 37.2 |
706 50.0 |
63 4.5 |
117 8.3 |
自立支援給付事業所 | 547 100.0 |
199 36.4 |
282 51.6 |
26 4.8 |
40 7.3 |
地域活動支援センターⅠ型 | 496 100.0 |
195 39.3 |
235 47.4 |
16 3.2 |
50 10.1 |
地域活動支援センターⅠ型以外 | 368 100.0 |
131 35.6 |
189 51.4 |
21 5.7 |
27 7.3 |
注:上段は実人数(単位:人)、下段は比率(単位:%)
全回答者1,411人のうち、「変わらない」と回答した人が706人(50.0%)、「良くなった」と回答した人が525人(37.2%)、「悪くなった」と回答した人が63人(4.5%)である。
「良くなった」と「変わらない」と回答した人の合計は87.2%で、これまで以上の場作りに向けて利用者と職員が努力していることがうかがえる。しかし、若干ではあるが「悪くなった」と訴える利用者もいる(自立支援給付事業所利用者のうち4.8%(26人)、地域活動支援センター利用者1型利用者3.2%(16人)、地域活動支援センター1型以外の利用者5.7%(21人))。事業移行に伴う登録者の増加や合併などよって利用者が増減したこと、作業内容や量の変更による雰囲気、事業所の環境、設備の変更などへの不満と不安などが考えられる。このような環境の変化に対する脆弱性を持つ精神障害者にとって、他の障害者以上に負担は大きかったものと推察される。
図表 4-15 事業所の種類×新体系の事業移行による全体の変化(単数回答)
合計 | 良くなった | 変わらない | 悪くなった | 無回答 | |
---|---|---|---|---|---|
全体 | 1,411 100.0 |
528 37.4 |
690 48.9 |
66 4.7 |
127 9.0 |
自立支援給付事業所 | 547 100.0 |
208 38.0 |
264 48.3 |
32 5.9 |
43 7.9 |
地域活動支援センターⅠ型 | 496 100.0 |
184 37.1 |
244 49.2 |
17 3.4 |
51 10.3 |
地域活動支援センターⅠ型以外 | 368 100.0 |
136 37.0 |
182 49.5 |
17 4.6 |
33 9.0 |
注:上段は実人数(単位:人)、下段は比率(単位:%)
全回答者1,411人のうち、「変わらない」と回答した人が690人(48.9%)、「良くなった」と回答した人が528人(37.4%)、「悪くなった」と回答した人が66人(4.7%)である。
「良くなった」もしくは「変わらない」と回答した人が86.3%で、移行後の地域活動支援センターと自立支援給付事業は概ね問題ないと利用者に評価されているようである。
全回答517人のうち「良くなったところ」に対して「わからない・不明」「特にない」とした人は約129(25%)人。「悪くなったところ」より回答に積極的な姿勢がみえる。
すべての回答は、ア:職員の対応について、イ:活動内容について、ウ:雰囲気や人間関係についてに分類することができる。
ア:職員の対応について(回答内容抜粋)
地域活動支援センター利用者、自立支援事業給付事業所利用者のそれぞれに共通しているのは職員の対応への評価、雰囲気の良さなど。「職員が親切に対応してくれる」と従来からの対応への評価と受け止められる声が多数あった他、「事業移行をきっかけとしてよくなった」「スタッフの対応がよくなった 優しくなった」とする声もあった。
地域活動支援センター利用者においては、活動プログラムやレクリエーションの内容を高く評価がする声が多いのに対し、自立支援給付事業所利用者では作業面などで今回改善された点(メニューや仕事量、工賃の増加、設備の充実、効率アップ)などを評価する声が多い。
また、地域活動支援センター利用者は相談業務を評価の声があるのに対し、自立支援給付事業所利用者は職員対応の親切さなどを評価する声はあるものの、特に「相談」や「面接」を取り上げて評価する声は今回なかった。地域活動支援センターには旧地域生活支援センターが含まれているため、利用者も相談援助が職員の重要な役割と認識している可能性が高いこと、相談支援事業を担っている地域活動支援センターでは職員も積極的に相談支援を行っている可能性が高いことなどが想定される。その他、就労支援に対する取り組み、職員の勤務態度の変化、個別の支援計画を評価する声、送迎への評価などの声もある。
イ:活動内容について(回答内容抜粋)
大きく、作業内容(量・種類が増えた)や工賃アップに対する評価、レクリエーションやプログラム、行事などの活動に対する評価に大別できる。活動内容における利用者の関心領域について理解できる。また、活動中の雰囲気や、感じる充実感が良いとする意見も複数あった。利用する上で、雰囲気の良さ、仲間との関係性を非常に大切な要素としてとらえていることがここから理解できる。その他、作業面全般への見直しと(工程、内容、工賃、設備面、時間、連続性など)など作業内容の充実を歓迎する声がある。
ウ:雰囲気について、人間関係への評価(回答内容抜粋)
友人関係、所内の雰囲気を高く評価する回答が多かった。雰囲気の良さ、利用者同士の人間関係などについて、利用者はとても大切な要素として受け止めていることがわかる。
事業移行に伴う合併や登録者増員などの影響か、メンバー増員についての記述もいくつかみられた。利用者は新たなメンバーの参加について、仲間ができたと概ね好意的に受け止めていた回答が多いが、メンバーの増加という環境変化を不満とする声も他方ある。一方、仲間と過ごすことでコミュニケーション能力がアップした、緊張が低くなったなど、自分自身にとってなんらかの具体的なメリットがあったことを認識しているとする回答もあった。
全回答414人のうち「わからない・不明」「特にない」は159人(40.8%)。「良くなった点」への回答ほど積極的記載はなかった。大きくは、ア:職員の対応について、イ:利用料、通所にかかる費用について、ウ:作業内容・工賃などについて、エ:所内の雰囲気に関すること、オ:その他 手続き上のことなどについて分類される。
ア:職員の対応について(回答内容抜粋)
「悪くなったところ」の全回答に占める割合のうち、職員の対応を不満とする回答が多かった。特に「スタッフの数が少なくなった」「忙しそうで声をかけにくい」「相談しにくい」などの意見のほか、忙しそうな職員を気遣う意見等も目立った。それぞれの利用者は職員の多忙ぶりから、声をかける、相談を求めるなどの対応を遠慮している可能性があることが懸念される。
事業移行とその利用に際しての提出書類作成、また自立支援給付事業移行後においても毎月の請求事務や支援計画の作成など、利用者とゆるやかな時間の中で交流の時間を持つことが困難な状況が浮き彫りとなっている。
イ:利用料、通所にかかる費用について(回答内容抜粋)
利用料に対しては、利用料が発生したことや金額の高さへの不満のみならず、支払手続きの複雑さなどに対する不満の声も多い。また、交通費がかかるようになったなど利用に関連して生じた費用への不満もある。工賃から利用料などを支払う形式の場合、利用料の増加が工賃日の喜びを半減させている可能性もある。
ウ:作業内容・工賃などについて(回答内容抜粋)
工賃倍増計画への対応などから、多忙になったとする声が多くなることが予想されたが、作業内容については意外にも「作業が減った」「ヒマになった」などの声が多い。さらに工賃額については「以前と比べて安くなった」とする声も多かった。理由として不況、工賃から給食費や利用料を差し引いて渡す場合があること、作業従事者が増えたことによる配分額の低下などが推察される。他方、作業が増えたことにより所内の雰囲気や利用者のペースに影響が生じたなどの声もある。
エ:所内の雰囲気に関すること(回答内容抜粋)
事業の移行によって所内の雰囲気に多少なり影響が生じ、そういった環境の変化に対する戸惑いの声が聞かれる。利用者の増減に対する不満、作業内容の変更による雰囲気や施設環境の変化、施設内設備の変更などへの不満などが挙げられる。こういった環境の変化に対し脆弱性を持つ精神障害者にとって、他の障害者以上に負担は大きいと考えられる。
オ:その他 手続き上のことなど(回答内容抜粋)
上記各項目のほか、特に自立支援医療の診断書提出について不満とする内容の回答が複数、その他事業利用上の手続きの複雑さを指摘する声があった。
さらに利用に際して「遠くなった」との声がある。地域活動支援センターや自立支援給付事業所の移転や合併、利用条件が合わなくなったことで他の事業所へ移ったためと推測される。これらの理由のほか、今後は本人のニーズを尊重し、市区町村をこえた利用なども増加する可能性は高い。交通費を負担とする声が複数あったことから考えても、今後利用に伴って発生する交通費負担への配慮は必須といえる。今後早急に検討されるべき課題といえる。
質問3で、〔3.小規模作業所〕〔4.小規模通所授産施設〕と答えた方におうかがいします。あなたが現在利用している事業所は、障害者自立支援法による新体系の事業に移行した方がよいと思いますか?
図表 4-16 新体系の事業移行への意向(単数回答)
図表 4-17 事業所の種類×新体系の事業移行への意向(単数回答)
合計 | 移行した方がよい | わからない | 悪くなった | 無回答 | |
---|---|---|---|---|---|
全体 | 450 100.0 |
93 20.7 |
132 29.3 |
204 45.3 |
21 4.7 |
小規模作業所 | 229 100.0 |
38 16.6 |
68 29.7 |
106 46.3 |
17 7.4 |
小規模通所授産施設 | 221 100.0 |
55 24.9 |
64 29.0 |
98 44.3 |
4 1.8 |
注:上段は実人数(単位:人)、下段は比率(単位:%)
全回答者450人のうち、「わからない」と回答した人は204人(45.3%)、「移行しないほうがいい」と回答した人は132人(29.3%)、「移行したほうがいい」と回答した人は93人(20.7%)であった。
「移行した方がいい」と回答した人93人のうち、希望するサービスを「就労継続B型」と回答した人が27人(29.0%)、「就労継続A型」と回答した人が22人
〔1の方〕移行してほしいサービスの種類はなんですか?
図表 4-18 移行してほしいサービスの種類(複数回答)
図表 4-18 移行してほしいサービスの種類(複数回答)の内容
図表 4-19 事業所の種類×移行してほしいサービスの種類(複数回答)
合計 | 地域活動支援センター | 就労移行支援 | 就労継続支援A型 | 就労継続支援B型 | 自立訓練(生活訓練) | その他 | 無回答 | |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|
全体 | 93 100.0 |
16 17.2 |
9 9.7 |
22 23.7 |
27 29.0 |
6 6.5 |
5 5.4 |
8 8.6 |
小規模作業所 | 38 100.0 |
5 13.2 |
2 5.3 |
13 34.2 |
10 26.3 |
3 7.9 |
2 5.3 |
3 7.9 |
小規模通所授産施設 | 55 100.0 |
11 20.0 |
7 12.7 |
9 16.4 |
17 30.9 |
3 5.5 |
3 5.5 |
5 9.1 |
注:上段は実人数(単位:人)、下段は比率(単位:%)
(23.7%)、「地域活動支援センター」と回答した人が16人(17.2%)、「就労移行支援」9人(9.7%)、「自立訓練(生活訓練)」と回答した人が6人(6,5%)となった。日中活動の事業所には「就職がしたいので」を利用目的とする人が多いが、意外にも「就労移行支援」を希望する人が少なかった。現在、既に何らかのサービスを利用し、希望と自分の能力のすり合わせをしている人たちが回答したことからではないかと考えられる。
同じく質問3で、〔3.小規模作業所〕〔4.小規模通所授産施設〕と答えた方におうかがいします。質問6でお答えになった理由を教えてください。
図表 4-20 新体系へ移行に関する意見
件数 | 内容 |
---|---|
ア:制度がよくわからない | 89 |
イ:利用料の負担がいやなため、移行しないほうがいい | 41 |
ウ:移行しないほうがよい | 85 |
エ:移行してほしい | 44 |
オ:その他〔特に理由はないを含む〕 | 47 |
合計 | 306 |
以下は、ウ・エの自由意見の一覧である(基本的に原文のまま掲載)。「ア:制度がよくわからない」「イ:利用料の負担がいやなため、移行しないほうがいい」は、記載された内容がほぼタイトルどおりの内容であるため、具体的記載内容の掲載は省略している。
ウ:移行しないほうがよい(85件)
エ:移行してほしい(44件)
移行に対し積極的な意見として、一般就労への足掛かりとしたいとの考えが最も多い。特に世代間での優位差はみられず、就労に対する意欲を持った人たちは世代に関わらず存在していると考えられる。また、少数ながらこれまでのスタイルを維持するための手段として移行して欲しいとの声のほか、収入アップ・安定への期待から移行してほしいとの声がある。
移行をしない方が良いという意見には、使用料に対する懸念の声の割合は高い。ただし「よくわからないけど増えたら困る」「仮に増えたら」など、「なんとなく増える」という漠然とした印象から、移行に否定的な利用者もある。さらに「障害者自立支援法そのものがよくわからない」との声もある。制度が理解しにくいため、それぞれの給付事業に対するイメージを持ちにくく、その結果として、移行に対して否定的な印象をもつ結果となっている可能性がある。
その他、現状に満足しているので活動内容や雰囲気が変化することへの懸念から移行に否定的とする意見もある。
最後に、障害者自立支援法について感じていること、ご意見等をご自由にお書きください。
自由意見 | 件数 |
---|---|
ア:利用者負担に反対 | 148 |
イ:改善・見直ししてほしい | 78 |
ウ:法律がわかりにくい、わからない | 76 |
エ:よくなった | 57 |
オ:医療費負担の増額に反対 | 46 |
カ:事務手続きの改善 | 28 |
キ:改善点あり | 27 |
ク:利用期間等の制限をなくしてほしい | 10 |
ケ:自立を妨げている | 10 |
コ:三障害を一緒にしないでほしい | 5 |
サ:平等といえない | 3 |
シ:特にない | 116 |
ス:その他 | 164 |
セ:工賃アップを | 18 |
ソ:働く場を作ってほしい | 15 |
合計 | 801 |
以下は、ア~サに関する自由意見の一部抜粋である(基本的に原文のまま掲載)。
全回答者801人のうち、地域活動支援センター利用者345人、自立支援給付事業利用者192人、小規模通所授産施設利用者119人、小規模作業所利用者88人、自立支援給付事業+地域活動支援センター利用者18人、地域活動支援センター利用者9人、地域活動支援センター+小規模通所授産施設利用者3人、自立支援給付事業利用者2人、自立支援給付事業+地域活動支援センター+小規模作業所利用者1人、自立支援給付事業+小規模通所授産施設利用者1人、地域活動支援センター+小規模作業所+小規模通所授産施設利用者1人、回答なし22人から障害者自立支援法に関しての自由記載の意見があった。
制度の理解の困難さ、手続きの難解さについての記述が多数あった。「法律が変わるたびに不安になった」「毎年変わるのでできるだけ統一してほしい」など、度重なる修正が混乱を一層助長しているという現状がうかがえる。
利用料、生活費に対する記述も多数あった。さらに分類すると、単に利用料増加への不満のほか、今後増えるのではないかという点への危惧を訴える人もいた。働くために利用料を払うことへの不満、施設利用に対する意欲が低下することへの不満、応益負担原則への不満、自立支援医療費と利用料それぞれが高くなったことへの不満が目立つ。また、自立支援医療申請のための1年ごとにかかる診断書料に対する不満の声も多かった。一方で、現状のままでよい、当然すべき負担との声もある。
施設の存続への不安を感じている人が多い。有期限サービスへの不安などの記述も認められた。一方、就労支援への期待の意見もあった。
今回の調査にあたって全国1,891人もの利用者の方々からアンケート回答をいただくことができた。自由記載欄にはひとりひとりの率直な意見や想いが述べられており、制度や施設に対する切実な想いが伝わってくる内容が多かった。また、今回の調査対象である比較的小規模な事業所においては、利用者はサービスの受け手という一方的な役割ではなく、その事業所を職員と共に作り上げている構成員の一人であるということが再確認できた。
利用者の回答は、いくつかの特徴を取り上げることができる。ここでは5つに分類してまとめてみる。
事業移行において、移転、合併にともなう利用者の増減のほか、施設整備や職員配置など、何らかの変化が生じたとする事業所は多い。工賃や作業の増加、施設整備などの環境の変化を歓迎する声がある一方で、環境、とりわけ雰囲気の変化に対して反応する声、難色を示す声が目立った。さらに「今後生じるであろう変化に対する不安」として、就労移行支援事業などの有期限サービスについて、期限切れを心配する声があった。
精神障害の特性として、変化・不安に対する脆弱性が強調されるが、そういった利用者に対し、事業所側の適切な配慮も特徴的である。それぞれの事業所は移行に際して経営面・運営面での最大限のメリットを追求する一方、変化・不安に対する脆弱性をもつ精神障害者の障害特性に配慮しながら、利用者の負担を可能な限り軽減しようとする配慮が利用者の意見からも随所にうかがえた。
脆弱性を持つ利用者に対する配慮などの職員の姿勢を理解してか、職員の対応について好意的に受け止めている意見が多かった。また、これまでより業務量が増えたことからか、よくがんばっているとする声、ねぎらいの声なども多かった。 その一方、「職員が多忙で声をかけにくい」「相談しにくい」とする意見も少なからず見受けられた。
否定的な意見として経済的負担に関するものが目立った。利用料増加のみによる経済的負担を訴える声は多くなかったが、自立支援医療費や自立支援医療申請のための診断書の費用、工賃の減少、さらには通所に関する交通費など、他のさまざまな支出との関連から、複合して生活上の負担になっているとする声があった。
手続きの煩雑さに関しての不満も多い。サービスを現状利用しているものの、具体的な手続きの方法や、全体の仕組みについて理解していない、難しいとする声は非常に多かった。さらに、度重なる利用料の上限額の変更、時限付きの改正のほか、自治体ごとの独自対応など、それでなくともわかりにくい制度であるのに、いっそうの混乱と不安をきたしていることが自由記載の意見からうかがえた。
今後、さらなる制度整備、見直し等にあたっては、以下のようなことを提案したい。
①のような、変化や先行きの見えなさに対する不安が大きな反応となって出現する精神障害者の特性について、十分な配慮が求められる。特に有期限サービスについては、個々の利用者の状況に十分配慮し、自己実現への過程が円滑に図られるよう、柔軟な制度運用がなされるべきである。
③については、利用者にとって安心して相談できる環境を保障するために、職員の増員ができる報酬単価や補助金額の設定が必要であろう。また、職員が利用者と関わる時間を保障するため、運営に関する事務処理等の簡略化などが考慮されるべきと考えられる。
④に関しては、医療と福祉の両方を必要とし続ける精神障害の特性を考えると、医療費と福祉サービスの合算の事項負担額の上限額設定が必要になると考える。また、これまで作業所等の利用にあたっては、それぞれの自治体内での利用が多かったと思われるが、今後はより自分に見合ったサービスを求めて、市町村域をこえて利用するケースが増加することが予想される。移動の際の交通費負担が利用を制限することにならぬよう、負担軽減策は早急に講じられるべき課題である。
⑤のような手続きの煩雑さに対する不満に対しては、行政担当課などからの十分な説明のほか、安心して声のかけられる環境での身近な職員による細やかな対応が不可欠と考えられる。④と重複するが、現場のマンパワーの更なる充実が望まれる。
今回のアンケート対象となったこれまで小規模な事業を運営してきた事業所からの視点では、障害者自立支援法は今までより大規模な事業を展開しないと経営は安定しない仕組みに変化したと受け止められている。今回の利用者アンケートはそれらの事業所を利用している人たちが対象となっているので、小規模な事業所に適応してきた彼らにとって、プラスの方向に作用する制度とはどのようなものであるか、今後も考えて行く必要があると考える。つまり、移行の第一段階においては、利用者の経済的負担と手続きに関しての課題が残るものの、日々利用者に対応している職員らの尽力によって、混乱は最小限に抑えられた。しかし、事業安定化にむけての今後の展開こそが、これまで利用してきた人たちのニーズにあったサービスとなるかどうかが大きな鍵になるのではないかと考える。現場の利用者と職員、そして運営者の工夫と努力で対応するだけでなく、そのような利用者群のニーズにも対応できる障害者自立支援法に発展することを期待する。