III.貸与方式導入に関する利用者ヒアリング調査

1.目的

 障害者自立支援法に基づき支給等される「補装具」や「日常生活用具」は、利用者に対する適切な情報提供と、利用者ニーズを適切に踏まえた効率的な支給方法等の在り方について、その検討が求められている。

 本ヒアリング調査では、現に補装具や日常生活用具等を利用されている方を対象に、その利用実態や現行の支給方式等に対する課題、要望等について、実情把握することを目的として実施するものである。

2.実施内容

  • (1)調査対象 検討委員等からの紹介により、以下のとおり選出した。
    ヒアリング対象者
      障害状況 区分 対象者 年齢 対応者 市町村 調査日
    調査1 脳性麻痺 障害児 Aさん 8歳 母親 福岡県北九州市 11/21
    調査2 脳性麻痺 障害児 BさんCさん 15歳12歳 母親 福岡県宮若市 11/20
    調査3 脳性麻痺 障害児 Dさん 17歳 母親 佐賀県佐賀市 12/ 4
    調査4 脳性麻痺 障害者 Eさん 18歳 ご本人及び母親 東京都中野区 12/16
    調査5 脳性麻痺 障害者 Fさん 25歳 ご本人及び母親 東京都世田谷区 12/11
    調査6 脳性麻痺 障害者 数名 - ご本人他 愛知県名古屋市 12/12
    調査7 ALS 障害者 Gさん 50歳 ご本人他 東京都練馬区 11/17
    調査8 ALS 障害者 Hさん 56歳 ご本人 大阪府和泉市 12/ 2
    調査9 無痛無汗症 障害者 Iさん 26歳 母親 東京都狛江市 11/18
    調査10 色素性乾皮症 障害者 Jさん 30代 母親 神奈川県横浜市 11/13
    調査11 頚椎損傷 障害者 Kさん 50歳 ご本人 佐賀県佐賀市 12/ 5
  • (2)調査期間 11月~12月(1名あたり、1時間30分程度)
  • (3)調査方法 現地にて、聞き取り調査
  • (4)調査内容 第2部資料編 資料3「ヒアリング調査票」参照

ヒアリング調査概要

ヒアリング調査概要

3.実施結果(まとめ)

(1)耐用年数前の修理又は再交付等の理由

 ヒアリング調査の結果、「耐用年数前に修理又は、再交付等を行っている補装具等の共通点」として、以下の点が挙げられた。

  1. 成長や状態像の変化等によって体に合わなくなった
  2. 使用頻度が高く、耐用年数前に故障してしまう
  3. 操作方法等に不慣れで、故障させてしまう など

 また、共通点ではないが、痛みを感じない無痛無汗症など重度な障害を有している場合、製品を壁等にぶつけていることに気がつかず、製品にゆがみや亀裂等が発生することがある。同様に、電動車いす等操作に習熟を要する補装具等の利用初期において、操作方法の不慣れから製品を破損させてしまう確率が高いことも確認できた。

(2)貸与方式に向いている補装具等

 貸与方式に向いている補装具等の要件として、以下の点が共通的に挙げられた。

  1. 肌に直接触れないもの
  2. 一時的に利用するもの
  3. オーダーメイドでないもの
  4. 介護保険でレンタルがすでに実施されているもの など

 例として挙げられた中には、「電動介護ベッド」や「スロープ」等があった。

 ただし、障害の種類や程度によっては、長期に使う必要性があるので、負担する費用面から言えば、必ずしも貸与方式のみが良いとは限らないとの意見もあった。

 また、製作にあたって、かなりの費用と期間を要する、座位保持装置については、座面やクッション部を除く、フレーム本体の部分は、再利用できるのではないかとの意見があった。

(3)貸与方式に向いていない補装具等

 貸与方式に向いていない補装具等の要件として、以下の点が共通的に挙げられた。

  1. 肌に直接触れるもの
  2. オーダーメイドでないもの

(4)貸与方式の活用

 貸与方式を活用したい場面として、以下の点が共通的に挙げられた。

  1. 補装具等が故障したための修理の間や、旅行に行った現地で利用する間等、一時的に当該補装具等が欲しい時
  2. 「補装具等を作製したが上手く利用できなかった」ということを避けるために、当該補装具等を試用したい時
  3. オーダーメイドの製作には時間がかかるので、急ぎ補装具等を利用したい時
    (例1)進行性の病気等の場合は、現行の給付制度では追いつかない。短期間で状態像が変化するので、状態像の変化に合わせて、その時々の状態像に合った補装具等を利用したい。
    (例2)早く退院して自宅に戻りたいので、早く自宅で生活できるための準備を行い たい。
  4. 貸与制度なら新しい製品が出る度に変更することができる

(5)貸与制度に求められるもの

 貸与制度に求められるものとして、以下の点が共通的に挙げられた。

  1. 手続きが簡単で、迅速にサービスが受けられること
  2. 地域差がなく、全国的に均一のサービスが受けられること
  3. 利用者負担が現行の給付制度に比べて安価であること

(6)その他(要望等)

  1. 利用者負担や公的なお金を節約する観点から、補装具等パーツの共用性を高めて、一部故障をしてしまった場合でも、当該補装具等の全部が使えなくなってしまうのではなく残りパーツは流用が可能にして欲しい。(例:車いすのフレーム、吸引器等)
  2. 成長や状態像の変化によって利用ができなくなった補装具等で、まだ耐久度に問題がないものは、貸与制度のような流通経路を設け、当該補装具等を利用したい他の方の手助けになるようにして欲しい。
  3. 貸与期間が長くなると、料金も高額になる。利用者負担分が高額にならないようにして欲しい。
  4. 現在の補装具費支給制度が申請後速やかに支給されることや、試用が認められるなど、弾力化して欲しい。そうなれば貸与方式の導入も限定的で良いのではないか。
menu