VI.検討委員による主な意見等

1.障害児に対するレンタル事業の展開

 現状では、公的なレンタル給付制度がなく、利用者の全額自己負担で利用している。

 利用者への機器の選定、適合状況の確認等については、療育センター等の医師、セラピスト、リハビリテーション工学技士等にお願いしている。

 レンタル料金の設定は、商品の仕入原価(輸入原価)と、製品が廃棄になるまでの概ねの期間を基に試算している。

【レンタル事業創設の背景】

  • 申請から交付までに一定の時間を要するため、正式に給付されるまでのつなぎとしてレンタルサービスを提供すること
  • 特に成長・発達が著しい児童の場合、希望品では適合できなくなるケースも多く、状態に応じたフレキシブルな対応が求められること
  • 交付基準内で提供できる機器には限りがあり、本人の希望に沿わないケースがあること。また、市町村によっては、特例補装具として認められない場合もあること
  • 輸入品の座位保持装置等高額用具は、特例補装具として認められないケースも あり、対象者に適合していても使用できない場合があること
  • 補装具費の対象品目以外は、基本的に自費での購入しかなく、使用するにも試 すこともできないこと 等

【利用者へのメリット】

  • 必要な時に必要な期間だけ、利用することができる
  • 選択の幅が広がる
  • 安価な料金で利用できる
  • メンテナンス等は、事業者が行うため、機器の安全性が保たれる 等

2.学齢期前の児童に対するレンタルについて

 学齢期前の児童に対する移動機器による支援は、将来、自立心を持った人間として育つ可能性を秘めるものであり、単に移動の自立だけではなく、脳の発達にも大きく寄与していると思われる。学齢期前の児童に対する貸与方式についても検討すべきである。

3.ライフスタイルに合わせて対応できる給付システムの構築について

 利用者の身体状況の変化や、使用環境・生活様式の変化に、臨機応変に対応できる給 付システムの在り方について検討する必要がある。

 発達の問題や障害の状況、状態の変化、生活の拡大に社会参加、就労、就学をどうす るかなど、利用者の生活環境を総合的に考えながら、その人に最も適した機器が提供さ れるようなシステムが必要である。

 また、貸与方式を導入することにより、機器が定期的にメンテナンス(機器の保守点 検等)されると云う点で、安全利用の推進に大きな効果が期待される。

4.介護保険法における「特定疾病に該当する人」へのレンタルについて

 介護保険法における特定疾病(例えば、「ALS疾患」などの場合)に該当する人については、介護保険からレンタル給付を受けることができる。

 この場合には、介護支援専門員や福祉用具専門相談員において、機器の選定や適合性の判断、さらにモニタリング等が継続的に行われており、利用実態や要望(ニーズ)を定期的に確認するとともに、機器の安全利用にも役立っている。

5.生活環境を踏まえた補装具製作とセラピスト等の関与の必要性について

 特に座位保持装置について、リハビリ現場では適合していたとしても、在宅等その人の生活環境では合わないケースがある。製作にあたっては、利用者の生活環境を十分に踏まえたものであるとともに、適合性の判断については、療育センター等のセラピストの関与が必要不可欠である。決してパンフレットだけを見て決められるものではないことに留意する必要がある。

 また、医療・福祉・介護の連携が必要であり、そのうえで、補装具の判定については 更生相談所の果たすべき役割が大きい。

(セラピスト等には、医師やリハビリテーション工学技士を含む。)

6.施設に対する機器のレンタル等について

 児童に対する歩行器など、近年高額なものの申請が増加している。施設用であった訓練用で必要であったりと、その都度、使用目的や使用場面(環境)によって、機器が必要とされることが多く、施設側に対する機器のレンタルや、施設が機器を導入するにあたって、助成されるような仕組みがあるとよい。

7.貸与方式の有効活用について

 ターミナルケアや、NICU(新生児特定集中治療室)から人工呼吸器をつけて退院されるような児童の場合には、早期に在宅環境を整える必要があり、機器の導入など迅速な対応が求められる。現行の仕組みでは、基本的にオーダーメイドであり、給付決定までに時間を要してしまう。

 全ての種目をレンタルと云う訳にはいかないものの、より多くの商品の中から必要に応じて、必要な期間、レンタルできる仕組みが必要である。

 また、レンタル方式を通じて、利用者に対して、いろいろな方々が関わり、社会の中で孤立せず、より多くの人の目の中で見ていけると云う、セーフティーネットにも繋がる。

8.給付品目の有効利用について

 利用者の状態や状況の変化によって、給付された機器がすぐに使用できなくなることもあり、資源を有効活用する観点から、不要となった機器を、別の人が再利用できるような、リサイクルシステムの検討が必要である。

9.長期化した場合のレンタル料について

 レンタル機器の利用期間が長期化する場合には、購入した方が安くなる場合がある。 貸与方式を導入した場合のレンタル料金の設定あたっては、貸与方式に要するコストを 十分に考慮したうえで、利用者にとっても、事業者にとっても、不利益が生じないよう な、経済的で合理的な仕組みにすることが望まれる。

10.手続き・制度の簡素化について

 貸与方式を導入することによって、制度・手続が複雑となり、利用者側の手続が、いままで以上に面倒になることは避けなければならない。

 障害者やその家族にとっては、機器の相談、適合判定、調整等の業務を身近に行うような「福祉用具センター」のようなものが設置され、窓口が一本化されるとありがたい。

11.貸与方式導入に伴うリスクとコストについて

 貸与方式を導入することによって、

  1. 一時的な利用(試用、適合状況の確認、訓練、旅行等に利用)
  2. 状態の変化に対応(成長や病状の変化等)

 など、利用者側にとって利用効果は大きいものの、最大のメリットである「必要な時に、必要な機器を、必要な期間だけ借りられるシステムを構築する」ことは、サービス提供者側とって、大きなリスク(在庫・保管・消毒・メンテ・搬入搬出)を伴うことでもあり、適切で妥当なコストが反映されたレンタル料金と給付額にすることが重要である。

 また、導入相談やモニタリング、アフターフォロー等については、一定のサービスの 質が保たれ、かつ平準化されるような仕組みの検討が重要である。

12.給付方式の選択について

 現行の制度を踏まえ、給付が基本であること。一部の品目がレンタルされることによって、支給等がされなくなることは避けるべきである。むしろ、長期使用が想定されるケースが多いことから、原則給付とし、貸与も可能というスタンスが望ましいのではないか。

 選択の幅を広げるという視点での整理検討が必要であり、貸与や給付の選択は利用者の希望も採り入れるべきではないか。

 また、貸与方式の導入に伴い、特に「車いす」など、価格面だけみて単に安いものや安易にレディメイドを入れて、姿勢保持の重要性が無視されることの無いよう、個別製作や適合調整等の重要性を伝達普及する必要がある。

13.専門職等の設置等について

 障害者に対する補装具については、古くから義肢装具士が関与してきたところであり、義肢装具のみならず、座位保持装置や車いす等についても、その役割が拡大してきている現状がある。また、補装具としての支給(貸与又は給付)である以上、更生相談所が判定機能をもち適切な供給がなされる必要がある。ただし、「障害児」の場合、更生相談所では、専門知識や経験が不足している場合が多いため、療育センターなど障害児のリハビリの専門機関との連携が必要である。

 また、財団法人テクノエイド協会における福祉用具プランナー研修や、その他関係団 体が行う講習を受けた人など、民間レベルで人材養成していくことも大変重要である。

14.一時利用の定義と範囲

 貸与方式の検討にあたって、一時利用の定義や範囲を明確化する必要がある。特に一時的な外出や旅行まで、公的給付するかについては検討の余地がある。

15.重度障害者用意思伝達装置の給付に際して

 障害者自立支援法の施行に伴い、現在、市町村では、補装具費の種目に取り入れられた重度障害者用意思伝達装置の適合判定に苦慮しており、給付決定までに、かなりの時間を要している。スイッチ部分や設置方法は、利用者の身体状況や使用環境によって異なるものであり、機器を給付するだけではなく、実際に使用することができるまでの訓練も重要である。

16.重度障害者用意思伝達装置の適合判定について

 市町村によっては、重度障害者用意思伝達装置の支給決定に際して、日本ALS協会が行う、貸し出し事業の利用を前提としているところもあり、利用者に機器が適合するか判断するための材料となっている。

 機器利用にあたって、最も大切なことは、きちんとフィッテング(適合)ができる人材を養成し、また、操作スイッチ等の製作にあたっては、地域のボランティアなどとも適切に連携できるようなシステムが必要である。

17.重度障害者用意思伝達装置の適切な給付と知識等の普及について

 重度障害者用意思伝達装置が必要とされる場合、まず、利用者の身体機能を評価し、その後対応可能な事業者を探し、そして実際に機器のデモを行いながら、操作スイッチ類の検討を行うと云う手順があり、実際には、かなりの時間を要することとなる。特にスイッチ類については、その時の状態に、一番適したものを選んだとしても、すぐ合わなくなる場合もあることから簡単に交換できるような仕組みがあると便利である。

 試用期間への対応、さらに使いこなすための支援を適切に行ったうえで、ハード部分を「レンタル」とし、スイッチ等のソフト部分は「給付」とするなど、分けて考える必要があるのではないか。

 さらに、重度障害者用意思伝達装置は、利用者の状態に合わせて、適宜導入していくことが極めて重要な機器であり、障害者福祉の現場担当者に対して、正確な知識と適合技術を普及・伝達していくことが重要である。

18.電動車いすのレンタルについて

 電動車いすのコントロール部分を除く、モーター部分やフレーム等であれば、レンタルが十分に可能であり、分離した活用の仕方についても検討すべきである。一部を加工したりする場合、PL法の絡みもあることから、メーカーと供給事業者が協議しながら慎重に進めなければならない。

19.児童に対する「車いす」や「座位保持装置」のレンタルについて

 児童が使用する「座位保持装置のシート部分」などの体が密着する部分については、オーダーメイドで対応することが多く、この部分のレンタルは難しい。しかし、「車いす」や「座位保持装置の構造フレーム部分」等については、レンタル可能なものもあるのではないか。

20.調整機能を有した座位保持装置(既製品)について

 最近、本人の状態にフィッティングできる、調整機能を有した座位保持装置が開発・販売されている。

 児童の場合、成長に合わせて、適宜適切に調整することが重要であり、これらの機器についてもレンタルを可能にすべきである。

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