支給判定は、当該対象者に対して、意思伝達装置を補装具として支給することが適切か(指針の要件が満たされているか)を確認するものです。
指針においては、申請時の身体状況(重度の両上下肢及び言語機能障害者に該当するかどうか)をもって判定することになりますが、障害原因が急速な進行である筋萎縮性側索硬化症(以下、ALS)等の方に対しては、判定時の身体状況が必ずしも支給要件に達していない段階であっても、急速な進行により支給要件を満たすことが確実と診断される場合は、早期支給について柔軟に取り扱われることとなっています。
例えば、先に四肢体幹機能障害1級を受けていて、後日、音声言語障害3級に近い状態になっている場合にも、支給の判定を行うことなどが考えられます。
しかし、原則として、要件を満たさない対象者への支給や、制度の趣旨に合わない機器は、本人にとって有効であっても、補装具費の支給対象外となります。
指針では、書類判定が可能とされているところですが、指針の趣旨は、直接判定を必要に応じて行うことを否定するものではありません。意思伝達装置の判定において、当該対象者の状態や使用環境、身体適合性を詳細に確認する必要がある場合には、直接判定を行うことが必要と考えます。
判定依頼を受けた更生相談所は、申請のあった身体障害者について
(出展:平成18年9月29日 障発第0929006号「補装具費支給事務取扱指針について」、最終改正:平成20年3月31日 障発第0331003号)
直接判定には、身更相まで直接判定を受けに行くこと(以下、来所)、または身更相が最寄りの会場を設定し、会場まで判定を受けに行くこと(以下、巡回)、それらが困難な場合は、身更相職員(医師、理学療法士、作業療法士等)が、自宅や施設まで訪問すること(以下、訪問)での判定方法があります。どの判定方法であっても、できれば市町村職員が同行することが望ましいと考えられます。
既に、補装具にて意思伝達装置の支給を受けている方からの、再支給の申請や、スイッチ適合が不要な修理申請においては、直接判定でなくても、書類判定で十分に対応できると考えます。しかし、補装具費として新規の申請の場合(※)には、当該対象者の使用環境を知り、その条件下での評価のためにも、直接判定(訪問等)を行うことが望ましいと考えます。
ここでは、直接判定・書類判定それぞれのメリット・デメリットを整理してみました。
※過去に、旧制度の日常生活用具給付等事業や難病患者等日常生活用具給付事業により給付されていた場合や、本人が自費購入あるいは他人からの譲渡によって入手していた場合を含みます。
直接判定 | 書類判定 | |
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メリット |
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デメリット |
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このほか、
などについても考慮する必要があります。
以上を踏まえ、安易に書類判定とせずに、直接判定も視野に入れることで個々の対象者への適切な支給が促進されます。
なおデモ機に関しては、取扱業者に依頼することが多いようですが、操作スイッチの適合は、多くの業者はノウハウが蓄積していない現状もあり、専門的な技術的知識を有する、身更相の職員、若しくは病院の理学療法士、作業療法士等が、身体状況等の評価を行った上で、適切な操作スイッチを選定することが重要です。
デモ機としての意思伝達装置一式を、適合評価用備品として、すべての身更相で整備していない場合が多いようですが、身更相が判定に必要なデモ機や操作スイッチに関しては、ある程度の適合評価と選定が出来る範囲の整備は必要と考えます。
⇒ 詳しくは、「3.2 調査書・事前評価のポイント」をご覧下さい。
◎ 直接判定の場合
◎ 書類判定の場合