現在、補装具の本体としては次の2種類の製品群に別けて考えると理解し易いようです。
以下に、それぞれ説明します。
専用機器の考え方は本編第1章にも記載しましたが、「意思伝達装置の機能を有するソフトウェア」が起動する装置を、外部の操作スイッチ等の入力装置で操作するものといえます。
ここでいう「意思伝達装置の機能を有するソフトウェア」とは、入力装置を用いての「ひらがな等の文字綴り選択による文章の表示や発声、要求項目やシンボル等の選択による伝言の表示や発声等の機能」を制御するソフトウェアといえます。
操作方法としては、「画面に表記された文字や単語が、一定時間間隔で点灯する中から、入力したい文字や単語が点灯した時に、操作スイッチを操作することでその文字や単語を選択する方式(=スキャン入力方式、あるいは、走査入力方式)により、その操作を繰り返すことで言葉を綴る」操作であると考えます。
この機能を備えた多くの製品は、予めソフトウェアが組み込まれたパソコン・PDAを、専用機器として販売されています。またコミュニケーションに特化した専用機器もあります。利用者のやりたいことと身体状況、周囲のサポート体制を含めて選定することが大切です。
パソコンに組み込んだ機器を要望するケースが多いと思われますが、意思伝達装置が障害者自立支援法扱いに移行しており、現在の扱いとしては、旧制度の日常生活用具のワードプロセッサの機能としてのパーソナルコンピュータ(パソコン)として給付が可能であったパソコン単独の給付は、パソコンの一般的な普及率を鑑みて、公費で特別に支援することは適切ではありません。よって、利用者が意思伝達装置を求めているのか、パソコンを求めているのかについての明確な線引きが身更相には必要となります。
この機器の中には、付加的機能としてパソコン操作ができる製品もありますが、公費対象は、あくまでも文字生成による意思伝達の部分ですので、パソコン操作に関することでの修理・設定等は、自己負担が原則です。
一方、パソコンを用いない専用機器である意思伝達装置の場合は、パソコンのような高機能な文章作成や通信機能を有していない反面、コミュニケーション機能に特化されていることから、操作が単純であり機器の苦手な利用者への導入も比較的容易です。また機器の起動・終了も簡単で安定性が高く取り扱いも容易なため、利用者本人、支援者共に導入後の負担も軽減されます。
以下に、本体と修理項目とを、模式的に示した例と接続イメージ図を示します。
現在市販されていない製品でも、以下の模式図のどこにあてはまるかを身更相が判断することができれば、適合することが可能です。
また、パソコンを自費購入し、意思伝達装置の機能を有するソフトウェアをインストールして、意思伝達装置として利用することも可能です。現状として申請数が多い製品の一例の「オペレートナビ」などは、特例補装具審査会での議決を経て、特例補装具費の支給(公費負担)することが公正・適切と考えられます。
例えば、埼玉県・さいたま市などでは、特例補装具審査会で決定し、オペーレートナビソフトウェア・スイッチコネクタ・スイッチのみの申請の場合は、特例補装具審査会に毎回かけることなく、オペレートナビ・スイッチコネクタのみ、本体同等として判定し、スイッチは修理項目から選択することを可能にしています。つまり特例審査会の開催される間隔である最長3ヶ月程度の保留期間も存在しません。
⇒ 特例補装具費での取扱いは、「2.2 特例補装具費としての判定」をご覧下さい。
商品としては、エクセル・オブ・メカトロニクス製の、「心語り(こころがたり)」が該当します。
ひとつの質問に対する「はい・いいえ」の判定結果が、画面で表示されるだけなので、周囲の人的対応についての可否の検討も必要になります。
導入可否の見極めとしては、相反する既知の課題を順に提示して、それぞれの結果がどう出るかの記録をすることが、一助となると考えられます。機器の特性上、必ずしも100%本人の「はい・いいえ」の意思が反映された回答が得られるものではありませんが、同一の質問を繰り返し、答えてもらうことで正答率を上げることも可能であり、質問の方法など、周囲の人的対応も含めて、身更相として導入可能と判断できるようならば、支給(公費負担)も可能です。
当初に設定する「はい・いいえ」のデータが、以後のコミュニケーション結果に大きく影響するため、初回の設定時には、メーカーに問い合わせを十分にすることが必要です。
商品としては、テクノスジャパン製の、「MCTOS(マクトス)」シリーズが該当します。
「はい・いいえ」の判定結果が、電気的に出力されるために、理論的にはスキャン入力方式の(1)の機器との組み合わせで、支給(公費負担)することも可能です。ただし生活の場面で本人が本当に利用できるかどうかを身更相が評価することが必要になります。
(参考情報)
例えば、埼玉県では試用が必要と判断しているため、平成20年度からは、身更相で備品として整備し、一定期間貸し出すことによって、判定に利用しています。
埼玉県の判断としては、身更相を支援している福祉工学担当に評価指標は委ねられています。
福祉工学担当では、身更相を支援できる15条指定医でかつ、神経内科専門医等と共に、出ているデータの解釈として脳波学的判断と共に、介助者がどれだけ機器試行に関われるかの時間的分析を基としています。
判定基準に関しては、機器の完成度と、利用者等の期待度との乖離がまだあるため、身更相として十分に説明ができるだけ、機器を十分に理解する必要があります。
機器の理解・脳波学的検討に関しては、今後とも検討が必要です。
【判定における注意事項】
人工呼吸器装着に伴う申請の場合も、装着が一時的なものか、長期的(永続的)なものか等の見極めが必要です。
人工呼吸器も、気管切開を伴うか、そうでないかをしっかりと区別することが必要です。
(2)に該当する機器を公費負担した場合、(1)に該当する機器を再度申請してきた場合には、身体的機能・病気の進行からして、逆行案件と考えられますので、多くの場合は検討する必然性さえありません。ただし病気に関しての誤診の可能性は払拭できない場合もあるので、特例補装具審査会での審査を経ることが適切と考えます。
(2)に該当する機器では、病気の指定をしている場合、特にALSについても、大脳の活動の評価は、主治医の意見書に、いわゆる脳の活動についての説明を求めるようにして下さい。脳波の出現がいわゆる脳波学的に困難な場合や、前頭葉障害がある場合などは導入が困難な場合があります。
(2009年3月20日現在、価格には設置料・運送料等は含めていません)
製品名 | メーカー | 価格 | 写真、備考等 |
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ソフトウェアが組み込まれた専用機器およびプリンタで構成されたもの ( (1) ) | |||
伝の心 | 株式会社日立ケーイーシステムズ | \450,000(非課税) 「パソコン+ソフトウェア」のセット |
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みてらCS | 三菱電機コントロールソフトウェア株式会社 | \760,000(非課税) 「パソコン+ソフトウェア」のセット |
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レッツ・チャット | ファンコム株式会社 | \120,000(非課税) 専用機 |
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ルーシー | ダブル技研株式会社 | 式会社 \450,000(非課税) 専用機 |
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タッチ&スピーク | 株式会社アクセス・インターナショナル | \409,500 (税込) 「パソコン+ソフトウェア」のセット |
![]() 外部スイッチによるスキャン入力にも対応 |
ハートアシスト | 明電ソフトウェア株式会社 | \207,900(送料、税込) 「PDA+ソフトウェア」のセット |
![]() ※送料は、補装具費の対象外です |
生体現象(脳の血液量等)を利用して「はい・いいえ」を判定するもの( (2) ) | |||
心語り | エクセル・オブ・メカトロニクス株式会社 | \470,000(非課税) | ![]() |
マクトス | 株式会社テクノスジャパン | \399,000(税込) | ![]() |
ソフトウェアをパソコンに組み込むことで専用機器となるもの ( (1) ) (一部の市町村では特例補装具費の対象になる場合があります) |
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オペレートナビEX | 日本電気株式会社 | \62,790(税込) ソフトウェアのみ(別途パソコン、コントローラ等が必要) |
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ディスカバープロwithインテリスイッチ | 株式会社アクセス・インターナショナル | \147,000(税込) ソフトウェア+コントローラ(別途パソコン等が必要) |
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SwitchXS日本語版 | 有限会社エーティーマーケット | \44,520(税込) ソフトウェアのみ(別途パソコン、コントローラ等が必要) |
![]() ※オンライン(ダウンロード)版もありますが、 補装具では対応不可です |
ボードメーカーwithスピーキングダイナミカリプロ | 株式会社アクセス・インターナショナル | \98,000(税込) ソフトウェア(別途パソコン・CD-ROMドライブ等が必要) |
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※この他にも、意思伝達装置となるものもあります。
また、詳しい仕様等は、ホームページ等を参照して下さい。
⇒ URLは、「B.重度障害者用意思伝達装置について参考になるホームページ」をご覧下さい。