1.はじめに

視覚障害者の情報取得環境はIT機器の開発で、情報収集量が加速しています。視覚障害者の望む情報は、地域生活におけるチラシ広告や飲食店のメニューなど生活に密着したもので、その分野は多岐にわたります。このような地域生活情報の取得は、大方は家族や代読ボランティアなどに依存しなければ取得できない状況です。外出先での視覚障害者の情報取得は、代読、点訳などが考えられます。しかし、日常生活程度の資料ならだれでも情報提供ができますが、専門的な資料となると外出先では時間を要することたびたびです。

また、点訳となると一定のルールに基づいて伝達しなければならず、習得しても時間を要することがあります。そこで伝達者はメモ書きや資料そのものを持ち帰り、2~3日後に希望する形態(テキストデータ、点訳、音訳)で送信することになります。

いずれにしても、墨字入力の即時性とデータ記録媒体機器の開発が望まれていました。近年、こうした要望にこたえてデジタルペンの出現を見ました。本事業の「デジタルペンを用いた視覚障害者向け文字情報提供の実証」は、まずは伝達を送る側の利便性を考え、次に使用するデジタルペンを比較検討し、最後は誤認識の少ないペンに絞りました。その結果、慣れれば検者は自由なスタイルでメモがとれるため、同行の被検者の行動を妨げることはありません。また、手書き文字データサンプルを収集することにより、誤認識の少ない情報取得が可能になります。今後は、手書き文字データサンプルの精査および機器改良、被検者の希望するデータ送信の在り方を検討すると共に、視覚障害者の情報取得の即時性を高めることに寄与したいと考えています。

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