12.まとめ

デジタルペンによって提供された情報は、晴眼者にとってはごく日常的に得られるもので、図書や雑誌とはまた違ったもので、視覚障害者にとっては得がたい情報ばかりであることがわかった。

利用者と支援者による活動で、今までの移動支援等だけでなく、コミュニケーション支援も併せ持つサービスの提供が必要であることが提言された。課題として次の三点が解決できれば多くの情報提供を可能にできると考える。

(ア) 支援者が必要であること

墨字による情報入力となってしまう為、利用者1人ではできないという限界。また、プライベートな情報内容の場合は支援者と利用者とが親密でないと躊躇されるケースがある。さらに今後高齢化と独居が増加することも合わせて考えると、必要な支援策を早急に講じなければ、情報から取り残される危険がある。

(イ) 記入している間のコミュニケーション

支援者がデジタルペンでの記入をしている間、利用者は何もすることが無く、気を使うという声があった。その場ではメモ書き程度にし、支援者が帰宅してからも記入ができる仕組みがあっても良いのではないだろうか。また情報提供施設において、多くの個人情報を扱えるような機器整備と事業を考える必要がある。

(ウ) 取り込んだデータへの修正が必要

デジタルペンからパソコンに取り込み、デジタルデータに変換する際、支援者の筆跡によっては正しい文字に変換されない場合があり、ノートと照合して修正する必要がある。しかし利用者が点字などに比べ容易に取得できることを考えると、今後のデジタルペンの技術的進歩に期待したい。

生活用具としてデジタルペンを持つことで、訪れた方や外出先でも書いてもらうことにより記録ができる。そのデータを携帯電話やメールなどのファイルとして情報提供施設に送ることで速やかな修正と変換をする。即時にメールなどのファイルにして送信されることで情報取得手段としての有効な機器となる。さらに次の項目の改善を行うことにより、利用者自身がストレスのない文字情報取得が可能になる。

(ア) 情報提供の拡大

①従来の点字・音訳を中心とした情報提供の更なる細分化により、データでの提供、各種メディアなど様々な形で提供をする必要がある。さらに図書などの情報提供はもちろんだが、日常における情報提供のシステムを早急に提供する。

②細々と行われているファックスサービス(注1)による情報提供をさらに拡大し、聴覚障害者と同様に見えるサービスが必要である

(イ) 移動支援事業の拡大

①移動支援事業でのガイドヘルパーの役割は従来の移動支援に増して、情報提供も含めた支援が必要である。同行支援においては、移動の提供をする必要がある

②視覚障害を理解した研修を受講したヘルパー(ガイドヘルパー等)が外出先だけでなく、自宅において必要と思われるサービスを提供する

(ウ) 当事者の情報取得手段の確立

①点字やパソコンなどの情報機器の習得支援を積極的に進め、情報格差をなくす

②中途の視覚障害者にとって、記録する方法は点字・音声・パソコン・携帯などがあるが、高齢視覚障害者の方々には点字やパソコンを習得することは困難である。従来「書いていた」ことを考えると、見えなくても書ける、書いたものが理解できるという状況であれば、それが一番容易であること

(エ) 視覚障害者情報提供施設の在り方

①従来の提供だけにこだわらず新しい情報提供を試みていくことも障害者サービスである。視覚障害者施設はその整備を進め、さらに視覚障害者に対する情報格差を是正する役割を担っていることを理解する。

②最低限文字を書くことができれば、多くの方々が視覚障害者の支援にかかわれる。支援者、ヘルパー、ボランティアなどの開拓も可能になる。

視覚障害者への情報提供の必要性を明らかにできたことは本来視覚障害者に対する情報提供の在り方そのものを見つめなおすきっかけとなり、充実した障害の情報補完を考察する上で重要な資料となることができた。

さまざまな障害に合わせたの補完や、運用に活かされることを期待する。

注1:ファックスサービス…視覚障害者宅にある墨字情報を、fax してもらいそれを音声や点字など、利用者の適した文字情報で提供するサービス

menu