III. 活動報告 1.避難訓練

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今年度は、津波による被害の可能性がある標高10メートル以下に立地する、べてるの活動拠点と住居すべてにて避難訓練を行った。平成20年度の事業では、地震発生に伴う津波被害を想定し、悪天候などの、より過酷な条件下においてメンバーが自ら命を助け、避難後、24時間安全に過ごすための方策を開発した。

日中の活動拠点:ニューべてる、べてるセミナーハウス、4丁目ぶらぶらざ

住居 グループホーム(GH):フラワーハイツ、ぴあ、セミナーハウス

共同住居:みかん、ひかり、おざき荘、レインボーハウス

住居からの避難訓練

いずれの住居も、避難訓練前の住居MTにて昨年度の避難訓練を振り返り防災グッズの点検を行なった。また改めて避難マニュアルをDAISYにて作成した。

避難訓練当日は、先頭、後方確認者を定め、DAISYにて避難経路を確認した後、防災みなみ体操で体をほぐした。新しい入居者も具体的な写真と知っている人の声による非難マニュアルを見た。

図 避難経路

活動事例 その1
レインボーハウスからの避難訓練(通常期避難訓練)

レインボーハウスは大通りにある4丁目ぶらぶらざの2・3階にある、女性のみの共同住居である。海岸や防波堤まで数10mと間近にあるため、津波発生の際には自分たちで逃げられるよう準備しておく必要がある。昨年度の防災事業でも、入居メンバー全員が避難訓練に参加し、非常持ち出しリュックをモデル的に準備するなど防災の取り組みへの意識は高い。今年度も継続的に避難訓練を行い、短期間では解決しにくい避難する上でのニーズの洗い出しを行なった。

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避難訓練の様子

避難訓練

10月30日(木)13:30~

参加者9名 レインボー6名、メンバー2名、国リハ1名

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避難場所で集合写真

<よかったこと>

今年はじめての避難訓練で、色々なことを思い出した。新潟中越地震の被災地視察で災害がどんなに大変なことか感じてきたので、避難訓練はずっと続けていかなくちゃと思った。

新潟に行ってきた人の話を聞いて、大事だと思った。

先頭だったけど信号で待たずに進んで、全員が10mを4分でいけるようになりたい。

初めて共同住居の避難訓練に参加した。役割があってみんなが10mのところへ早くたどり着けてよかった。

去年から続けていて、災害を身近なものに感じることができてよかった。

個室への部屋にトントンと叩くのが早くてよかった。

<さらによくする点>

寝てたら起きるかな、不機嫌になりそう。居室にいるときのことが課題かなと思う。

防災グッズを確認したら、賞味期限が過ぎている非常食が複数あることに気づいた。ときどきチェックすることが大事だとわかった。

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防災グッズの確認。賞味期限も大事。

避難訓練では、最後尾の人が標高10mを過ぎるとき4分以上かかっている。最後尾を歩くとこれが不安なので、もう少し工夫して早くたどりつけるようにしたい。

交差点の信号でばらばらになるので、国道を渡ってからでもまとまれるように決めると良い。

活動事例 その2
おざき荘・ぴあ からの避難訓練(通常期避難訓練)

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おざき荘・GHぴあは浦河赤十字病院に近く、入院仲間が退院先と考えていたり、しばしば退院にむけて外泊訓練が行われている住居である。退院促進支援事業において地域生活の活動拠点となり、入居者であるピアサポーターが彼らの応援に活躍している。浦河赤十字病院を退院し、新しく入居したメンバーとともに、通常期の夕方の避難訓練を行った。

平成15年の地震では浦河赤十字病院へ避難しようとしたメンバーもいたため、津波浸水による孤立を避け、安全に過ごす場所として、おざき荘では、ふれあい会館が避難先であることを確認した。そして4分以内に10m以上の高さまで避難すること、おざき荘の位置、高さ、避難先・ふれあい会館の位置と安全な避難経路を確認した。

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DAISY避難マニュアルで避難経路を確認する

図 避難経路

避難訓練

10月28日(火)16:30~

参加者9名:メンバー6名、スタッフ2名、国リハ1名

<よかったこと>

避難訓練をして、ふれあい会館まで行ってよかった。

年1回やると、いざっていうときの避難経路や準備ができてよかった

去年はみんなと色々意見をいって、細かいことをいっていたけれど、今年になったら忘れてて。参加したことがよかった。

今回で2回参加したけれど、定期的に続けていくことが良いんだと思う。自分でも、だんだんそんなに。地震がおきたら「さあっ」て気持ちになったが、それが1年おきとか2年おきになるとまずいかな。毎年やっぱりきまった時期になっておくと、個人の捉え方によるけれども、それが積み重なって、いざというときの対応も間違わないできてくるようになると思いました。

常に右に曲がって、(ふれあい会館が)あいていなかったら役場に連絡をするということを忘れないようにしていきたいと思います。分かってよかったです。

初めての参加。後ろを安心してついていきました。

実践に近い状態の訓練と思った。メンバーだけのときにどうやって逃げるかという状態に、去年より近く、うまくできてよかったなと思いました。

最初にディスプレイをみて、塀とか車が出てくるところとか、駐車場に気をつけてくださいと言っていたから、塀は崩れてくるかもしれないとか考えて、なるべく地震を想定しながら避難しました。

<苦労したこと、さらによくする点>

ふれあい会館前の駐車場を去年はまっすぐ行ったように思う、どの道がいいでしょうか?話し合いの結果、いつ車が来るかわからないので、一番安全な経路として歩道を通ることにした。

ふれあい会館に集まって、さらに別の状態になったら別のところへ移動というのはいいと思うし、今回の避難訓練はそれでよかったと思うけれど、誰かが調子悪いときとか動けないときの設定だったらどうか。そういうとき誰かがきちっと連絡とるということもできるといいかなと思います。

災害時伝言ダイヤルの練習をしてみたい。

避難場所に着いたことを、生活支援スタッフへどのように伝達すべきか、誰に伝えるべきかも練習したい。

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住居MTの様子

避難してから病気になる人が多いと聞くから、トイレとかもすぐにいっぱいになってしまいには使えないというところがあると聞く。トイレなんかもうまく使えない状況だったらどうなるのか、心配だ。

衛生的にも良くないし、体にも負担が多いので、トイレ対策は大事。リュックの中に携帯用トイレが1つ入っている。おむつは衛生的にも良いということだった。おむつはずっと履いているのか?必要なときに履くのか?慣れる練習が必要かもしれない。

お金よりも水が大事。防災リュックの中にある1本では足りないと思うし、災害時のときは、水道の水だって色がついたりするので、上流で衛生的な水をとったとき蒸留できるようなセットとか欲しい。

町は2、3日しないと動けないらしいので、自分たちで備えておく必要がある。共同でリュックの中に1本、個別に1本なら1日はもつだろう。今度試してみるといい。

※都合がつかず避難訓練に参加できなかったメンバーが、後に個人的に避難訓練を実施した。経路を確認して安心したと言う。

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避難場所での集合写真(上)、ひとり避難訓練でも撮影(下)

活動事例その3
セミナーハウスからの避難訓練(通常期・夜間・雨天避難訓練)

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セミナーハウス外観

セミナーハウスは、小規模授産所浦河べてるの活動拠点として製麺作業をしたり、大人数の研修施設としてお客さんを迎えたオリエンテーションを行ったりする施設と、2つの共同住居のある複合施設である。

住居MT中に浦河沖地震発生に伴う津波警報発令されたという想定で、住居メンバーを中心に避難訓練を行った。当日は、通常期・雨天・夜間の避難訓練となった。傘をささずに避難をしてみたいという提案があり、メンバーがウィンドブレーカーを着て、フードをかぶって避難訓練に参加した。

発達障がい傾向の強いメンバーがいたが、DAISY避難マニュアル作成にかかわり、避難先と標高10mを4分でという目標を覚えることができた。入居者の顔ぶれは昨年と異なっていたが、避難経路を実際に歩いたことで、助からないという不安から歩けるという自信が出た。

事前にGHメンバーとともにセミナーハウスからの避難経路を踏査し、DAISY避難マニュアルを作成していた。手順に従い、体調気分の報告、DAISYを用いた避難経路の確認、役割分担をした後、「防災みなみ体操」にて準備体操をした。

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防災みなみ体操で体をほぐす

図 避難経路

避難訓練

10月31日(金)17:00~

参加者9名:メンバー7名、スタッフ1名、国リハ1名

<よかったこと>

雨が降って寒かったけれども、お互いに周りの人に気を配りながらまとまって歩けたのが良かった。

実際、雨の場合は傘をさすよりウィンドブレーカーが実用的であった。

寒い冬には、防寒着やアルミのシートが役だった。

<さらに良くする点>

先頭の人と後方の人との距離が出ていたことを調整できるようになると良い。

リュックを背負うとき、肩かけのバンドがはずせなかったので、あらかじめ背負えるようにしておくと良い。

リュックの場所は手すりにあるので、今度は背負ってみると良い。

いつ地震があるかわからないので、雨の日のためにカッパが準備できると良い。

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雨の中の避難訓練

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避難場所で集合写真

活動事例 その4
フラワーハイツからの避難訓練(通常期避難訓練)

フラワーハイツは東町地区の海沿いにあるグループホーム・共同住居である。幻聴や妄想の世界が強く影響しているメンバーたちもおり、入居者・支援者が皆で助け合いながら暮らしてきた。その苦労は、今年度の幻覚妄想大会にて表彰された。

避難場所である浦河高校に行く途中には、狭い階段があったり、標高2mの場所で、ちのみ川の水位に留意しながら国道を渡らなければならない。避難訓練にも仲間同士の助けあいが大事である。この日は通常期という設定で、浦河沖等を震源とする地震による津波警報発令を想定し、住居(居室)から避難場所(浦河高校)への避難訓練を行った。

図 避難経路

避難訓練

10月28日(火)16:30~

参加者10名:メンバー4名、スタッフ3人、ATDOスタッフ3名

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フラワーハイツから出発

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避難場所で集合写真

<よかったこと>

道なりに沿っていくようにDAISYで作られていたから安心してできました。

フラワーハイツでDAISYで確認して、浦河高校へ歩くのを2,3回した。そのおかげで地震が来た時に、浦河高校の玄関まで逃げた。町民の人は来なかったけれどもよかった。

日中活動の場からの避難訓練

活動事例 その5
4丁目ぶらぶらざからの避難訓練(冬期避難訓練・メンバーのみ)

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4丁目ぶらぶらざは浦河町内の大きな商店街、大通り4丁目の3階建ての1階にあり、べてるの商品や町内の他店の商品を売っている。誰でも気楽に立ち寄ってぶらぶらしてもらう場所という意味で「ぶらぶらざ」と名づけられた。時には視察に来たお客様とともにお茶をしながら交流している。

通常、店番はメンバーが担当している。店舗としての性格上、メンバー以外にお客様がいる可能性が高いので、非常時には安全に避難場所までお客様を誘導する必要がある。近年では海外からの来客者も増えているため、言葉が通じなくても、また別の障がいを持っていても安心して避難できるよう準備することが急務になった。

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当日はどのスタッフも用事があり、メンバースタッフを中心にメンバーのみで避難訓練を行なうことになった。また前日の降雪により、避難経路は国道を離れるとすぐに雪に覆われ、滑りやすくなっていた。

最も注意が必要な雪上での避難訓練を、車椅子に乗った海外からの訪問者とともに、誰も怪我することなく、メンバーだけで無事に成功させることができた。このことは、訪問していただくお客様にとっても、また地域社会で生活するメンバーたちにとっても、実践的な備えに向けた力が備わってきた点で貴重な体験となった。

当日の流れ

a)会場の準備

DAISYチームのメンバーを中心に、映像資料を見るための機材準備をした。

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司会をするメンバースタッフたち

b)避難経路の確認・避難訓練の役割を分担

4丁目ぶらぶらざにて避難訓練の事前MTを開いた。メンバースタッフが司会を行い、DAISYチームによって4丁目ぶらぶらざの避難マニュアルが上映され、全員で避難経路と注意点を確認した。

防災事業担当のメンバースタッフが避難訓練での役割分担の司会を行い、先頭、最後尾、車椅子を押す人、撮影者を決めた。この日、英語話者であり自閉症を持つスティーブン・ショア氏が避難訓練に参加してくださった。彼は腰を痛め、車椅子を使っての避難訓練となった。安心して避難できるよう、車椅子を押す男性4名には、ゆっくり注意しながら進むことを確認した。

なお避難経路は滑りやすいことがわかっていたので、避難の目的地を浦河測候所とし、全員は参加せず、歩くのが苦手な人たちは4丁目ぶらぶらざで待機していた。

c)防災みなみ体操で体をほぐす

参加者全員で、転ばないように準備体操を行なった。

d)避難訓練

12月22日 15:00~

参加者16名:メンバー13名、車椅子を利用している訪問者(英語話者)1名、見学者1名、国リハ1名

先頭のメンバースタッフが後方を注意し、まとまって全員測候所まで上ることができた。ビデオ撮影もメンバーが担当した。

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避難場所まで、最後の坂道を登る

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避難場所で集合写真

e)振り返り

<よかったこと>

最後尾の人が10mを4分10秒でたどり着いた。迅速に逃げられてよかった。

雪があったが、凍ってなくてよかった。

雪があったので、声を掛け合って、お互いに周りをみて協力的に避難していたところが良かった。

4ぶらで避難訓練を、僕ら(メンバー)の力だけで協力してできてよかった。なんとか助かるかなと思えてよかった。

<苦労した点>

雪の上を、車椅子を押すのに力が必要で、4人がかりで押したけれども大変だった。

<さらに良くする点>

冬の避難訓練は初めてだったが、雪があると、夏と全然避難が違うことがわかった。

冬の避難訓練はよく滑ることがわかったので、滑りにくい工夫を地域の人と考えてみてはと思う。

車椅子を押してくれてありがとうございました。

活動事例 その6
ニューべてるからの避難訓練(通常期避難訓練・津波注意報下)

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ニューべてるは現在のべてるの家の中心的な活動拠点であり、法人本部および二つの作業所の事務所もここに置かれている。毎朝行われる「朝ミーティング」をはじめ、「SST」、「金曜ミーティング」、「グッズミーティング」など様々なプログラムが行われる。また昆布詰めやTシャツ作成などの作業の場所でもある。

9月11日 9時20分 十勝沖を震源とするM7.1の地震が発生し、浦河町でも震度4を観測、沿岸には津波注意報が発令された。朝ミーティング中であったべてるメンバーたちも、いったんミーティングを中断し、注意報発令のものでの避難訓練を行うことにした。

前年度より避難訓練の練習をつんできた成果があり、警報が広報される中も全員が落ち着いて避難場所まで歩くことができた。

図 避難経路

参加者およそ25名:メンバー21名、スタッフ3名、研修生1名

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避難訓練の様子 どちらも津波注意報が流れていた

<よかったこと>

大勢いたけれども訓練どおりできた。

みんなといたので避難訓練もしやすかった。

いつもとおり冷静にできないかなと思う。

<さらによくする点>

ニューべてるには、階段もあるし、みんなの靴も無造作においてあるので、怪我したりしたら困るので、靴をゆっくり履く練習とかしたらいいのかなと思いました。

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