2.地域自治会との協力・発達障がい傾向の強いメンバーへの情報伝達支援

浦河町は全国的に見ると精神障がい者が地域で暮らすことが受け入れられている地域と評価されているが、まだべてるの家と各自治会との協力関係は十分とはいえない。昨年度は、浦河町役場(保健福祉課、総務課(防災担当者所属課)、社会教育委員会)と、浦河町主催の防災訓練の対象地域であった築地自治会、べてるとの合同防災訓練を実施することができた。

今年度は、町役場(総務課、障害福祉課、社会教育委員会)、町内自治会、社会福祉協議会、要援護者施設の代表者による合同防災連携会議を7回実施し、参加組織により津波防災先進地(徳島県美波町)への視察を実施した。この視察を通じ、広域の地域防災事業を目指した連携防災対策の基盤が作られた。

東町第5自治会とともに、東町連合自治会が主催する避難計画策定に向けた話し合いを進め、地元住民組織と福祉施設の連携について協議が始められている。

イラスト 津波ちゃんも体調気分拡大図・テキストデータ

自閉症専門家スティーブン・ショア氏による講演・ワークショップ

12月18日(木)~28日(日)

べてるの家の利用者は主として精神障がいをもつ人であるが、発達障がい傾向を持つ人も相当数に上る。昨年度のスティーブン・ショア氏の招聘時に得た助言より、そのような傾向のある利用者へは、新たな対応方法の開発が可能であることがわかっていた。一方で、まだ実際の避難訓練時に他のメンバーと一緒に避難することが難しい利用者もいるため、適時の避難と避難先での生活に対応できるための発達障がい者向けのノウハウを蓄積する必要性も出ていた。

そこで本年度はショア氏を再度招聘し、実際の日中活動の場をモデル事例として、自閉症傾向の強いメンバーの状況に応じた行動の選択を支援するプログラムを試験的に実施した。他のメンバーたちとの輪区ショップ(ミーティング)を通じて、自分の安心を得るためのノウハウや、避難時の安心感を得るための具体的な働きかけ方の開発に着手した。

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町民向けの発達障がい理解のための講演

◇発達障がいについての講演会・ワークショップ

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発達障がい傾向の強いメンバーの作業に関するワークショップ

ワークショップでは、予測不可能な状況に加重のストレスがかかる発達障がい傾向の強い人々にとって、災害時の避難には①状況の説明、②自分の行動と周囲の人びとの反応、③信頼できる人/解決方法を個別にまとめた「パワーカード」を準備し、自分の行動が周りの人との間でどのような状況を導きやすいのか、自分が安心を得るために効果的な対処方法は何か、そのときにわかるようにしておく方法が有用であるとわかった。

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安心のための備え方についての懇親会

◇はまなす学園でのミニ講演・ワークショップ

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自閉症傾向の強い子どもたちが通う児童デイサービスセンターである。今年度、正規職員が配置され、防災事業への本格的な取り組みが端緒についた。避難時の支援者、家族の関わり方について最先端の知見を学ぶミニ講習会を開催し、具体的な解決方法の開発を始めた。はまなす学園では、教員によって普段とは異なる経路で安全な場所へ避難する際に、子どもたちに事前にどのような準備が必要か、スティーブン・ショア氏の知見などを参考に話し合いがなされた。

◇浦河浦河向陽園への訪問と情報交換

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音楽好きな利用者、全盲で自閉症を抱える利用者などと直接会話を交わした。お互いに緊張感もあったが、会えたことへの自信もでてきた。集団生活の約束事から外れてしまうようなこだわり行動にも、自分の好きなこととみんなで守ることのバランスをとりながら、このときはこうするという情報を視覚化すると良いのではないかという意見交換を行なった。

◇ハートMT(異性の安全を図るワークショップ)

浦河保健所の企画で、社会生活を送る上で最も身近なパートナーの人と、どのように過ごしているのかお話をいただいた。自分の苦労を把握し、コミュニケーションの方法を学習して、相手の人がどのような気持ちになっているか体のむき方や距離などから学んだということを教えてもらった。そして最も自分がリラックスする方法を見つけておきその場を楽しむことが大事だとわかった。

◇就労MT(働くことと安心を得ることについてのワークショップ)

働く場で起こる苦労、手続きをどうしたらいいのか、誰に聞いたらいいのかということをあらかじめ想像しておき、それに対して事前に準備しておくことが長続きする秘訣の一つだということを具体的に話してもらった。そして、メンバーからの働きに行くのが辛くなり逃げ出すことがあるがどうしたらいいと思うかなどと具体的な質問があった。

◇浦河小学校スタディーツアー

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特別支援学級の様子を見せていただき、情報交換を行なった。日米の障がい児特別支援教育に対するソフト面の差異を中心に話し合われた。

発達障がい者が使う情報は誰にもわかりやすい

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発達障がい傾向の強いメンバーへの情報伝達の方法は、だれにもわかりやすく、状況も予測しやすいようにできている。地域の、防災対策を初めて挑戦する人や高齢者、子供たちにも使いやすい工夫が凝らされているとわかった。個別ケースにあわせ、楽しめる情報カードを準備していきたい。

※今年度事業の期間は、発達障がい傾向の強いメンバーと防災事業との接点を得る機会が少なかったので、今後も継続して行っていきたい。

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