3.他地域の視察と防災イベントの開催

浦河町ではこれまで大きな地震に見舞われながらも、幸い甚大な被害を受けたことが少なく、長期に避難生活を強いられた経験も少ない。浦河町で想定される災害と類似した津波による災害体験を持つ地域にて、地域住民が自発的に防災対策に取り組み、障がいを持つ子どもも安心して避難できるように工夫されたプログラムがある徳島県美波町を訪問視察した。また自閉症を持ち、自閉症児の生活スキル向上のための様々なプログラムを開発してきた専門家、浦河沖地震の専門家、自主防災組織の活動が盛んな美波町住民の方を浦河町にお招きし、町内役場職員、自治会会長らとともに防災事業について話し合う防災フォーラムを開催した。

1)中越大震災被災地への訪問視察

2008年10月23日~27日

新潟県中越地震の被災地(川口町、小千谷市、魚沼市)を防災担当のメンバースタッフ2名と国リハ職員1名が訪問し、被災地の復興状況と被災直後の様子を地元の方にうかがった。特に小千谷市の知的障がい者グループホームの世話人さんや、魚沼市の社会福祉協議会の職員の方には、大きな揺れが続いたとき、どのように地元の方が避難し、障がいを持つ人はどのような状況になったのか、どんな道具が役立ったのか具体的に聞くことができた。被災直後は誰もが不安を抱えていて、皆で助け合ってきたことが分かった。また、薬が欠かせないひとは、普段から薬の場所を定めておき、家屋が損壊して自宅に帰れない状況でも誰かに取ってきてもらえるように事前に工夫しておくと良いというお話もあった。

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避難所になった広神老人福祉センターを見学

2)徳島県美波町への訪問視察

11月27日(木)/28日(金)※~30日(日)

※浦河町から美波町は長時間の移動となるため、出発は2班に分かれた。休憩を十分に必要なメンバーは27日に出発した。

参加者13名:東町第5自治会1名、浦河町社会教育委員会1名、浦河町社会福祉協議会1名、浦河町浦河向陽園2名(園長・生活指導担当)、国立がんセンター1名、浦河べてるの家メンバー4名、スタッフ4名(理事長・就労担当・生活支援担当・GH世話人)

徳島県美波町への視察には町内自治会、町教育委員会、浦河べてるの家、浦河向陽園が参加し、養護学校の避難訓練、日和佐地区防災施設、津波避難タワーなどを見学した。

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助かるタワー6m 避難場所確保のため人工的に設置

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避難場所に設置された備蓄庫

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地元の方が作った避難経路

自主防災組織が設置した避難場所・備蓄庫・避難用の階段・過去にあった津波被害を示すために電柱や神社の階段に貼られたしるしなど、数十箇所を見学した。

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助かるタワーにはたくさん人が避難できるし、上の倉庫に簡易トイレがおいてあり、安心感があった。助かるタワー以外にも避難場所や備蓄倉庫がたくさんあり、通常は宿泊施設で、非常時には避難施設になるところがあった。備蓄庫には布団、なべ、ガスコンロ、日用品トイレットペーパーなどが備蓄されていた。

防災ディナーということで楽しく非常食を食べながら、交流した。身の回りにあるものを食事に利用することや、非常食の期限前に利用するなど知恵を学んだ。

阿南養護学校ひわさ分校に行き、生徒たちが安心して避難対策に参加できるように開発されたノウハウを学んだ。例えば、視線が気になる生徒たちがダンボールで自分の避難場所を作り、体育館で防災キャンプ(宿泊)を実施するなどである。

精神障がい者を中心対象とした富田ケアセンターを訪問し、情報交換を行なった。

人と未来防災センター
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神戸市で人と未来防災センターの、語り部の人に話を聞き、役立った(ラジオ、懐中電灯)こと、困ったこと(食料、水、家族用の備蓄、安否確認には携帯メールがつながりやすかった)を学んだ。

地域防災活動に主体的に取り組む姿勢に触発され、浦河町内でも、行政・自治会・町民でできることなど具体的な取り組みを参考に、視察参加者による応用的な活用が、各所で始まった。東町第5自治会では、高齢者も一時避難が可能になるように、住宅地に程近い場所に自主避難場所と避難経路を設置する試みが始められた。

3)浦河町防災フォーラムの開催

2月23日(月)

浦河町立文化会館 ふれあいホールにて

浦河町教育委員会と協力し、浦河町近辺の地震活動について島村英記先生に講演していただいた後、べてるの家のこれまでの試み、他地域を訪問して得た情報、他の要援護者施設との協力関係で得られた普遍的な要素のほか、浦河地区の地震発生メカニズムと特徴について専門家による講演、地域防災事業の先進事例の報告(徳島県美波町)等を町民に報告する、防災フォーラムを開催した。聴衆には、保健福祉関係者、民生・児童委員、自治会長等が参加し、活発な質疑応答がなされた。

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