安心の秘訣~働く場としての防災プロジェクト

今年度は防災プロジェクトでは、DAISYチームや防災担当チームなど、数名のメンバーが就労グループとして働いた。防災プロジェクトは他地域や他施設と情報交換をしたり、防災事業を進めるための準備をするなど、これまでにない新しい体験や出会いがたくさんあった。一人で仕事をしていると、自分の中のマイナス思考や幻聴さんが強まり、ひきこもってしまうメンバーも、みんなの安全、安心につながる大事な仕事だからと毎日ニューべてるに通っているうちに、仕事のやり方や気分体調のことなど、仲間と話す機会が増え、現実の苦労が多くなった。その結果、防災プロジェクトで仕事を担当したメンバーたちは、自分たちの苦労を仲間と分かち合いながら、働き続けたのである。

仲間とのコミュニケーションを大切に、自分たちを助ける方法を、地域の方も含めてみんなで練習していく防災事業は、精神障がいを持つメンバーたちの安心して働く場を広げる、すばらしい機会になった。

備えることは、練習すること

防災プロジェクト当事者スタッフ 秋山里子

浦河べてるの家20年度福祉推進事業に半年間携われたことに感謝します。防災活動を通して、私はとても貴重な体験をさせてもらうことができました。視察においては・要援護施設・地域とのつながりを感じることができました。そして、定期的に行われる防災合同会議では教育委員会の方、役場関係の方、自治会の方など集まり毎回、防災活動の取り組みを話し合いました。

この事業を通してたくさんの出逢いがあり、様々な経験に恵まれました。本当にありがとうございました。

"防災"というのは、非日常と日常の狭間にあるものだなと感じています。

べてるの家のプログラムの中にSST(生活技能訓練)というものがあります。日常生活において困ったり、コミュニケーションをはかる上で練習したいこと、感謝の気持ちを伝える。断るなど様々な場面を設定し、みんなが役を演じロールプレイで練習します。それの積み重ねを、実際の場面で練習したように対処します。

べてるの防災の取り組みはそれと重なりました。非日常的な出来事に普段から備えたり、避難訓練などの練習を積み重ねる。備えることは練習を積み重ねることです。SSTも実際の場面で使うための練習、そして避難訓練も実際に災害が起きたときに備えての練習だと思いました。

実は、防災事業の取り組みと当事者スタッフになることが同時にスタートしたことは、お客さん(※自分の考えや意見に影響を及ぼすマイナスの思考)体質の私にとって大きな変化でありチャレンジでした。

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当事者スタッフの秋山さんと清水さん

私は浦河に来る以前の8年間、転職とうつを繰り返しました。人間関係を築いていくことが難しく、自己肯定感も低くて自分を責めるモードに陥ると職場にいる自分の存在が受け入れられなくなる、というサイクルを繰り返してきました。もう日本で働くのが怖くなり、海外で生活していた時期もあります。

いま、こうして働き続けていられるのは「仲間の力」があるからだと思います。そして、毎日行われているMTに何らかの形で参加し続けていられるからだと思います。身体(からだ)がマイナスの反応をしても、場に居続けるのが今の課題です。そして、どんな自分も受け入れていく練習をしています。

すべては"言葉"から始まるというのが、私の大切にしたい見方です。“言葉”はコミュニケーションを豊かにする力があります。そして普段のコミュニケーションが豊かであればあるほど、いざというときに役立ちます。周りの声かけ、ご近所同士のお付き合いを大事にしていきたいです。

また、精神障がい者はただ助けてもらうだけの存在ではなく、災害時に備えての"自分を助け方"を練習しておくことによって仲間の力があれば、"誰かを助ける存在"にもなる可能性があることを伝えたいと思います。

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