はじめに

平成20年度障害者保健福祉推進事業の助成により「発達障害児に対する早期からの地域生活を効果的に行うための調査研究」を行った。

昨今、発達障害についての法律が作られその対応の基盤が整ってきているが、その対象数の多さ・多彩さに対し、専門機関での介入や対応は必要がない程度に判断される軽症例 についての対応は十分ではないといえる。 地域に根ざした身近なところでの対応の要のひとつに、専門家の育成がある。そこで本研究は、チームで対応を続けてきた障害児施設の立場からその経験を踏まえながら、実践的な効果的な内容を提示するためのものの必要性 に根ざして研究をまとめたものである。

この研究には、研究の内容上、主に当センターに関わる、医師、作業療法士、心理士に協力をいただき精力的に調査研究に取り組んでいただいた。また、研修会への参加には保育士、幼稚園教諭をはじめ当センター周辺地域で発達障害児とその親への支援や広く子育て支援に携わっている保健師他の多職種のスタッフにも参加いただき、研修を受けていただくと共にアンケートなどを通じて地域での現状やご意見をいただいた。 その結果に基づいて地域生活における「発達障害児」への具体的支援のあり方の一つを提言できた。

保育園等における発達障害児の対応の現状と支援のあり方─ペアレントトレーニングの手法を用いた保育実践の効果と啓蒙─、感覚統合療法の手法を用いた保育園等における発達障害児への支援、 早期の発達障害児に対する地域での支援の現状の調査研究の三つの内容としてまとめた。

そして、それらの要旨をまとめた「ペアレントトレーニング」の手法と作業療法の立場からの乳幼児のための遊びと生活の支援リーフレット(「子どもたちに肯定的な注目を」 「乳幼児のための遊びと生活の支援─作業療法ってなぁに?─」) および乳幼児のための豊かな遊びと便利なグッズを紹介したガイドブック(「乳幼児のための豊かな遊びと生活支援グッズの紹介」)を作成し、 関連諸機関に配布した。

また、この分野での第一人者お二人による本研究への評価、アドバイスをいただいたものも掲載した。 ひとつは奈良教育大学特別支援教育研究センターの岩坂英巳教授による 「ペアレントトレーニングの手法を用いた保育実践の効果と啓蒙」の意義についてであり、 もう一つはお茶の水女子大学子ども発達教育研究センターの榊原洋一教授による「本調査研究について」で、貴重なご意見を頂き、この場を借りて謝意を呈したい。

この研究が、平成21年度、障害者自立支援法の改定やその中で重要視されてきた「発達障害者支援法」に沿った、保健、福祉、教育、医療現場での今後の支援や連携のあり方、 さらに地域行政の施策の参考となればありがたい。尚、報告の詳細については、各分担研究者の報告を参照されたい。また成果物は、センター近隣保育園、幼稚園、行政、療育機関さらに全国児童館等へ配布したが、それについても報告書に掲載したので参照されたい。

平成21年 3月31日

心身障害児総合医療療育センター 所長  
君塚 葵 

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