2章 分担研究報告

1.当センター周辺の保育園・幼稚園の発達障害をもつ子どもとの関わりの状況、また支援のあり方について把握する

<実施前アンケート結果 保育園・幼稚園 参加者33名対象)

Q1 発達障害について聞いたことはありましたか?
発達障害について聞いたことはありましたか

 

 

 

 

 

 

 

Q2 どの発達障害について聞いたことがありますか。
どの発達障害について聞いたことがありますか

 

 

 

 

 

 

 

 

Q3 これまでに発達障害の診断をうけているお子さんの保育に関わられたことはありますか?(32名中)
発達障害の診断をうけているお子さんの保育に関わられたことはありますか

 

 

 

 

 

 

 

Q4 特別な支援はされましたか(Q3で関わったと回答した25名中)
特別な支援はされましたか

 

 

 

 

 

 

 

Q5 どのような支援をされていますか?(いましたか?)

  • 専任の補助をつけている。
  • 個別に声をかけたり、介助・援助していた。
  • 現在、隣のクラスの3歳児にADHD傾向の子がいて、年齢別保育と異年齢保育の中で児と関わっている。 特別な支援とまではいかないと思うが、専門の先生に児の行動を見てもらい、保育の中でのアドバイスをもらい、実践している。
  • 担任保育士と加配保育士という形で、生活面での流れや状況をうまくとらえられるよう支援。
  • クラス加配と相談しカリキュラムをつくる(個別的カリキュラム)。
  • 保護者との相談。
  • 保育園内での会議を通して共通認識を持ち、園全体でかかわる。
  • 視覚の手がかりの活用。
  • 応用行動分析を取り入れる。
  • 今やるべきことを短く言葉がけ。
  • 助手をつける。
  • 定期的に巡回指導でアドバイスを得ている。
  • 補助に一人つける。
  • ほめる。自信をつけてあげる。その子につきすぎない。
  • 心理の先生に園に訪問に来ていただきました。
  • 障害児に保育士が配置されている。
  • 1対1の関わりを持ち、見守り。
  • 絵カード等を使った支援。
  • 活動の導入など、その子がわかりやすい方法で個別に対応する。(活用する物を見せたり、動作などで視覚的に具体的に指示する)
  • 午睡がなかなかできないので個別対応する。
  • 1人担当がつき、子どものペースに合った保育をしていた。
  • 巡回相談。
  • 発達センターとの連携など。
  • OTでは感覚統合療法を行っています。

Q6 関わられた方はどのようなことで困りましたか?

  • 年長児であるが排泄ができないので、一日に何回も着替えをする。
  • 専門の知識がないので、指導方法に困った。
  • パニックで噛まれること。
  • 日々の問題を相談し、すぐにアドバイスをもらえないため、児にとって自分の行動が正しいのかどうか判断できない。
  • できないこと、改善させたいことが目立って気になってしまう。
  • 診断名がついていないボーダーラインの子が困った。
  • 他の園に行って受診したら、軽度の知的障害だった子もいた。
  • 他児を傷つける。
  • やめさせたい行動をとった時、叱るとパニックになる。
  • 他の保護者からの理解の求め方。
  • 自信をつけることの難しさ。
  • 他の子どもに対して、たたく・押す・ける等が多い。
  • お集まりで座っていられない。
  • 暴言をはく。
  • 子ども同士のコミュニケーションの援助。
  • 善悪の区別がわからない。
  • 会話が成り立たない。
  • お友達とのコミュニケーション。
  • あまり関わっていない。
  • 他児・他クラスへの影響。
  • 親の気持ち(不安に思っているかなと)。
  • 集団に入っていけない時の関わり、声がけ。
  • 声のかけ方、関わりの度合い、危険の伝え方(否定語を使わないようにするには?)。
  • 感情のコントロールがうまくできず、幼児に対しとっさに手が出てしまう。(すぐ反省するがくりかえす)
  • 発達状態がとらえにくい。
  • 伝え方→どう伝えたら理解できるか?その子に入っていくか?
  • パニック時の対応。
  • 関係のつくり方。
  • OTでは感覚統合療法を行っています。

<結果のまとめと考察>

9割を超える参加者が何らかの形で発達障害について学んでいた。また、85%の参加者が発達障害の診断を受けている子どもに関わっていたが、 その内、特別な支援を行っているのは8割であった。

支援体制として、専任の保育士をつけるなど個別的に対応ができるように工夫したり、 心理職の巡回相談や医療機関などの専門家と連携をしている施設などがみられている。 また、個別の関わりの中で、応用行動分析の手法を用いたり、絵カードを含めた視覚的な手がかりを利用している方もいた。 また、「今やるべきことを短めに言葉かけ」「ほめて自信をつけてあげる」など日常的な関わりの中でできる工夫について記載している方もいた。 発達障害をもつ子どもとの関わりで困ったこととしては、叱った時にパニックになることや、 他の子どもとのコミュニケーション、他の子どもへの乱暴などで、やめさせたい行動 をやめさせることができず、また、子どもへどう言葉掛けをしたらよいのか、苦慮している記載が多かった。 一方、保育士自身が、「できないことに目が行ってしまう」と感じていたり、「自分の関わり方が正しいのか」と自信がもてないでいる方がいた。

発達障害をもつ子どもに関わる機会は多く、これまで障害について学ぶ機会はあったが、 日々の具体的対応について困っている現状がみられた。

また、診断がついていないが気がかりである子どもの対応に困っている方もいて、診断の有無に関わらず、 また専門機関や専門家でなくても可能な、日常的な関わりの中での対応方法の知識やスキルが必要であると思われた。

 

2.保育園において、ペアトレ的保育が子どもの行動改善に有効であるかについて検討する

(1)グループ参加者のこれまでのペアレントトレーニングや、ほめる方法に関する学習の状況についての調査

○ 小グループ

Q ペアレントトレーニングについて聞いたことがありますか
(保育園保育士6名・地域機関2名)
  保育士 地域機関
聞いたことがない
名前だけ聞いたことがある
講習会に参加したことがある
本を読んだことがある

 

Q ほめる方法について学んだことはありますか
(保育園保育士6名・地域機関2名)
  保育士 地域機関
学ぶ機会はない
講習会に参加したことがある
本を読んだことがある
所属機関内で学習会をした

 

○大グループ(水曜日)

Q ペアレントトレーニングについて聞いたことがありますか
(保育園・幼稚園11名・地域機関3名)
  保育士 地域機関
聞いたことがない
名前だけ聞いたことがある
講習会に参加したことがある
本を読んだことがある

 

Q ほめる方法について学んだことはありますか
(保育園・幼稚園11名・地域機関3名)
  保育士 地域機関
学ぶ機会はない
講習会に参加したことがある
本を読んだことがある
所属機関内で学習会をした

 

 

○大グループ(土曜日)

Q ペアレントトレーニングについて聞いたことがありますか
(保育園・幼稚園16名 地域機関8名)
  保育士 地域機関
聞いたことがない
名前だけ聞いたことがある
講習会に参加したことがある
本を読んだことがある

 

Q ほめる方法について学んだことはありますか
(保育園・幼稚園15名・地域機関8名)
  保育士 地域機関
学ぶ機会はない
講習会に参加したことがある
本を読んだことがある
所属機関内で学習会をした

 

<結果のまとめと考察>

保育園、幼稚園の参加者は、ペアレントトレーニングの考え方の基礎のひとつでもある、 ほめることについては、23名(70%)が何らかの形で学習する機会があったが、 ペアレントトレーニングについては知らない方たちがほとんど(30名 90%)であった。

一方、保健センターなどの地域機関の参加者はペアレントトレーニングについて、全員聞いたことがあり、 何らかの形で学習している方が8名(70%)であった。ペアレントトレーニングは発達障害をもつ子どもの支援のひとつとして、 地域の子育て支援機関は必要性を感じてはいるが、より子どもに近いところにある、保育園、幼稚園などの現場には伝わっていないのが現状である。

(2)ペアトレ的保育の実践

─子どもの変化、うまくいったこと、役に立つ内容─

<実施後アンケート結果より>

①小グループ

Q このプログラムが始まってからのお子さんの変化に気づかれたことがありましたら、 お書き下さい。

症例1(4歳 男児)

  • 大人の関わり方で子どもの安定している時間が増しているように思う。

症例2(3歳 女児)

  • 落ち着いて話をきくようになった。友達とのトラブルが減った。

症例3(2歳 女児)

  • 持続すれば変化が大きくあると思うが、子どもの問題行動は減らない。その場、 その場では効果があるように感じている。

症例4(6歳 男児)

  • 表情がかわり自信を持つようになった。先生がみてくれていると子どもが安心す る事によって行動が変わってきた。

症例5(5歳 女児)

  • ほめていく事で好ましくない行動が好ましい行動へとなってきた。自信をもって過ごしているように感じた。

症例6(4歳 男児)

  • こちらが必要以上に叱ることがなくなった。ほめる事で意欲的な行動が見られるようになった。

Q 実施するにあたって、工夫されたこと、うまくいったことがありましたらお書きください

  • 行動を分ける事で、自分の子どもの見方に気づき、どうすれば好ましい行動になるのか、事前の一言や配慮で変化がある。
  • 多くのスタッフに広がるように、まず行動を分けることやほめるということを共通理解できるようにしはじめた。
  • たくさんほめることで子どもが自信を持ち、表情や行動がかわった。
  • なるべくクラス全員を何らかの時にほめることをしている。つい離れたところから声をかけてしまうのを減らし、近くに行って伝える事で伝わる事が増えた。
  • 他の職員にも知らせ、一緒にやっていくことで効果がアップ(特に無視&ほめる)。
  • CCQは子どもに伝わっているなという感覚がある。また自分自身が冷静になれると思う。
  • CCQなど、ものごとを相手に伝えるにはすぐ実践可能。

Q プログラムの中で役立っている、使えている、あるいは使えそうだと思う内容は何でしょうか

プログラムの有用性

 

 

 

 

 

 

 

 

Q 具体的にどのように役立ちましたか?

【行動を3つに分ける】

  • 子どもひとりひとりの関わり方を考えるときに使用できる。子どもの姿を確認できる。
  • その子の対応法を考える時に、自分の中で整理できる。ほめる機会が増えた。ほめる タイミングが分かった。
  • 3つに分け、整理する事でどれが必要か区別ができた。

【ほめる】

  • ほめるタイミング、認められる事から次への行動の変化に気づく。
  • 気になる事をクローズアップせず、ほめることで気になる事が目立たなくなる。
  • とても大切なことだと思った。

【無視とほめる】

  • 無視する難しさを感じるが、その子の対応に必要と思えば実施の方向につなげていきたい。
  • 言葉かけが多かった事で逆効果だったことを知り、わざとしている行動については注目を無視する事で効果あり。
  • 今まではひとつひとつに反応していた。
  • 待つ事は時間もかかり大変ですが、その事によってほめられる事も増えるのだと思いました。

【指示】

  • 子どもによって的確な指示を出す大切さ、指示のあとのほめること。やっぱりつながっていくことだと思う。
  • 生活の区切りの部分でなかなか行動しない場面で効果があった。自分にとって都合の悪いルールは耳に入らないが、くりかえすことで効果があることもある。
  • 具体的に分かりやすい指示が大切だと思いました。
  • CCQが役に立った。
  • 危険な行動に対してCCQで対応している(また同じことをくりかえすが)。

②大グループ

Q 実施されてみて、工夫されたこと、うまくいったこと、お子さんの変化に気づかれたことなどがありましたら、お書きください

  • 新年度より、好ましい行動の記録と、子どもの行動を3つに分ける記録を導入しようと思います。
  • 気持ちが切りかえやすくなった。
  • 問題点がクローズアップして気になるお子さんと思っていたところが、良い所、好ましい行動も沢山あったのだと見直すことができた。
  • 言葉がけ、態度一つで反応もかわり、キリキリイライラしなくても行動につながることが多かった。
  • 発達の遅れている子に対して、指示が難しいと思った。
  • 園児に対してとても効果的で、否定から入らない事を心がけるだけで、子どもだけではなく、保護者や職員に対して対人間関係でとても参考になりました。
  • 視覚の手がかり、して欲しい行動を伝えるetc.している。
  • 具体的にほめる事を意識するようになりました。お片付けをしてほめられる事を子どもが体験できた事で、以後もお片付けをするようになりました。
  • ほめることで自分に対しての反応も変わってきた。ほめることを意識することで、他の子へのほめ意識も出来るようになった。反応が変わった。
  • 小さな事であっても、沢山具体的にほめる。
  • 信頼関係を築く事ができて、本人も笑う事、やる気、出来る事が増えてきた。
  • どんなに小さなことでも誉めると、少しずつ自信をもってくのがわかりました。
  • ほめると子どもも気分がいいみたいで、スッとやる事が多くなってきた。
  • 無視すると、その行動がエスカレートしていく場合もある。
  • ほめると周りの子にも良い影響を与えることができる。
  • できた事をすぐほめるということをすると、子どもの反応もよく、その後の行動もはやくなった。
  • 前回の研修以降、自分なりにとり入れるようにしたら、私も子ども達もおだやかになったように思う。子どもも側によって話してくれるようになった。
  • 指示の後にほめることをしていなかったことに気づいた。ほめるとうれしそうな表情をするようになり、他の子もほめられたい(頭をなでたり、ギュッとしたり)ので同じような行動をした。
  • 子どもの見方の変化→大きなくくりで見ていた中で、どう対応したらいいのか迷っていた部分を、研修を通してひとつひとつ確認することで、対応が具体的なものとなった。
  • ほめることで好ましい行動が増えた。
  • “ほめること”を心がけるようにすると、自分自身の中も落ち着ける。
  • 例えば着替えについて(2才児)…声かけだけではやりださない、「できない」と言ってて自分でやらない…という姿があったが、部分的にも好ましいことがあったら、最後までできなくてもほめるようにしていたら(行動を分けて考える)、意欲がでて、 最後までやろうとするようになった(とりかかろうとしたことをほめたところ、自分でできない所もやろうと挑戦しだした)。
  • 看護師という立場上、日常、子どもたちをほめる場面ばかりで、担任の方々に気が引けることもありましたが、“ほめる人”であっていいと思いました。
  • 行動が荒っぽく、目が合いづらい子が目を見て話してきたり、自分から話しかけてくる機会が増えた。
  • 今までも、ほめたり無視したりを無意識の中でやっていたが、意識的にやってみると、子どものうれしそうな顔や、さらにほめられようとしてがんばる姿に気づくことができた。
  • ほめることで子どもの気持ちがこちらに向いてくるのを感じました。認められることで自信にもつながったようで、おだやかな面が増えたように感じます。

Q プログラムの中で役立っている、使えている、あるいは使えそうだと思うことは何でしょうか。

○大グループ-土曜日
25名(保育園・幼稚園17名・地域機関7名)

プログラムの有用性 保育園・幼稚園

プログラムの有用性 地域機関

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

○大グループ-水曜日
13名(保育園・幼稚園12名 地域機関3名)

プログラムの有用性 保育園・幼稚園

プログラムの有用性 地域機関

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

Q 具体的にどのように役立ちましたか?

【行動を3つに分ける】

  • 使えるが、その場では伝えないので忘れてしまいそう。
  • 自分の中で子どもを見直せた。整理することで目的が明確になった。
  • その子を客観的に見つめることができた。
  • イラっとする事も、しばし待つと思った。
  • 分けることによって、対応が不適切であったかよくわかる。
  • 好ましくない行動、無視する行動がはっきりした。
  • クラスのチームでもやってみました。子どもの見方・ポイントにしてみました。
  • どのような子でも良い所が沢山ある事を再確認できる。
  • 子どもの行動を分けることによって、より子どものことを知る、気づくことができた。
  • 肯定的な注目をしやすくなった。
  • 子どもの行動を冷静にみようと思える。姿がみえてくる。

【ほめる】

  • あたり前のことも誉めると子どもはのびるから、いつでも使える。
  • ほめるが連鎖していった。自分も気分よくすごせた。
  • 着脱や肌着シャツをしまうなど、1人をほめるとまわりもがんばっていた。
  • 改めて、ほめるという事が大切だと思いました。ほめる段階について、やろうとしたらこれは大事だと思いました。できるまでだとなかなかほめられず、ほめることをさ がすことができました。
  • すぐに注意するのではなく、『好ましくない行動』として対応するにはどうしたら良いか考えるようになった。
  • 「えらいね」「すごいね」「かっこいいね」と簡単にほめておわりにしてしまう時もあったと反省し、笑顔でボディタッチなどしながら、わかりやすくほめるようにした。
  • ほめることで子どもが喜び、保育の流れがよくなる。
  • 特に子どもの好ましい行動に目を向けるようになった。
  • ほめると子どもが喜び、プラスの行動につながった。
  • 気持ちにゆとりができてくる。子どもとよい関係がつくれるようになった。

【無視とほめる】

  • 実践してみて、子ども自身が気持ちを切りかえるのが早くなった。
  • 状況により使い分けるとより効果的で、自分から気づかせることができると思いました。
  • 午睡の際、にぎやかでもしばらく無視すると、いつの間にか眠ってしまうようになった。
  • 予測する行動につながらずにすんだ。
  • 無視する事で行動の助長がなくなる。声をかけるとおこるが、無視している事で子どものほうから近寄ってくる。声をかけてくる。
  • 片づけなければならないおしぼりを片づけず、床をふいたりふりまわしたりしていたが、注目せず、片づけようと立った時に声をかけ(ほめる)たところ、片づける片づ けると言っていた日常より、その後の活動にもつながり、よかった。
  • よい行動パターンを増やしていくというのは、とても参考になりました。

【指示】

  • 保育者もひと呼吸してから指示を出してあげるように心がける。
  • シンプルにすることで、自分が何を求めたかったのかも明確になった。
  • より具体的に余計なことをいわない。これは難しいけれど、子どもにとってわかりやすいと思いました。
  • 予告することで、子どもが切りかえが上手にできる様になった。
  • ほめることはたくさんあると感じることができた。
  • 遊んでいてなかなか帰りたがらない子に指示し、予告することで、満足して帰れるようになっている。
  • 伝え方の意識「CCQ」。

地域機関

【行動を3つに分ける】

  • 冷静に子どもの行動を見ることができる。思いの外好ましい行動が多いことに気づき、 子どもに対しての苦手意識を軽減できる。
  • 子どもの行動を注意深く見るようになり、親が思っている以上に親の指示に従っていると気付いた。ただ、スローペースであったことも。スピードのところに親の目がシフト、ほめる言葉がけで改善しつつある。3つに分けるということで、思いこんでいた子どもの行動を正確に把握でき、よさに気付ける。
  • 自分の中で子どもの行動を整理・区分する習慣が身についた。
  • 保護者に説明し易く、子どもを見直すきっかけとなる。
  • 自分は保育士ではないので、自分の子どもにとても使えると思った。
  • 行動を分けることで、なぜその子がこのような行動をしているのかを細かく考えるようになりました。

【ほめる】

  • ほめるところを探すのは大変だというのがスタートだが、やろうとしていることをほめるようになると、少しずつ親も照れずにできるようになる。ほめられて悪い気はしないが、ほめられ体験の少ない親がほめ上手になるのには練習が必要。
  • イヤイヤ期で対応に困っているママたち向けの母親教室で「ほめること」を伝えたところ、子どもへの対応が変わった。ガミガミ怒っていた自分を振り返られたと言われました。
  • 子との関係性はもちろん、保護者の方との信頼度が増す。
  • ほめたことで本人も満足気(こちらはちょっとはがゆい感じ)。
  • ほめていると児からの声かけがくるようになった。

【無視とほめる】

  • ・泣き顔やおこり顔の表情が笑顔に変わっていく場面を、より多く引き出せるようになった。
  • 少し待つことで、違った反応(好ましい行動)に切り替えられるお子さんが多いことに気づきました。
  • 無視はほめるための段階ですることを知れたことがよかった。

【指示】

  • CCQはこれから意識してみたい。
  • よく使います。1対1であれば、この方法がもめ事が少なくて有効だと思います。
  • こだわりと切り替えのむずかしい広汎性発達障害の子の対応がむずかしい。
  • 認識することでパターンが増えた(引き出しの数が増えた)。

(3)ペアトレ的保育の実践

─使いにくい、分かりにくいプログラム、実践して難しかったこと─

<実施後アンケート結果より>

①小グループ

Q プログラムの中で使いにくい、分かりにくい内容がありましたか?

使いにくい、わかりにくいと思う内容

 

 

 

 

 

 

 

 

Q 具体的にどのように使いにくい、あるいは分かりにくかったですか?

【無視とほめる】

  • 集団の中で無視が難しい面もある。職員間の連携も必要。
  • 集団生活の中でその子だけを無視することは大変なこともあったが、それと同時に周りの子どもへの対応を学べました。
  • 分かりにくいのではないのですが、何を無視すべきかの見極めの難しさがある。

【指示】

  • 誰に対しても指示を出す保育にならないようにすべき事を共通理解していくことが難しい。

Q実施するにあたり、やりにくいこと、難しいことがありましたらお書きください。

  • 1対1であれば常に自分の思いで関われるが、保育園という職員集団の場合、共通理解をして実践する難しさがある。
  • 周知しにくい職員への対応。
  • 職員全員で実施できれば、より望ましく、結果も早く明らかに出るような気がします。
  • 他の保育士に伝え、同じ考えや趣旨を統一していく事や、徹底していくことが難しく、これからの課題でもあります。
  • 他の職員の協力が得られず、ほめた後におこごとがついてきてしまうこと。次々と問題行動が他児との間におきて、ついほめられなくなってしまうことがある。
  • 1人が実施するのではなく、どの保育者も同じような関わりができるのが理想なのですが、実際はほめることよりも注意ばかりや叱る事が多くなる保育者もいて、なかなか浸透していかないところが難しいと感じている。

②大グループ

Q プログラムの中で使いにくい、分かりにくい内容がありましたか?

大グループ土曜日

使いにくい、わかりにくいと思う内容 保育園・幼稚園

使いにくい、わかりにくいと思う内容 地域機関

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

大グループ 水曜日

使いにくい、わかりにくいと思う内容 保育園・幼稚園

使いにくい、わかりにくいと思う内容 地域機関

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

Q 具体的にどのように使いにくい、あるいは分かりにくかったですか?

【行動を3つに分ける】

  • その場で伝えないため。
  • 好ましくない行動と危険な行動の区分。
  • 状況を整理するのが苦手。意識づけがまだ習慣となっていない。

【ほめる】

  • タイミングによって、ほめても声をかけたことでおこり出すことがある。

【無視&ほめる】

  • どこまで無視をするか、どこを無視するか、自分の忍耐・考えがまとまらない時、難しかった。
  • 無視していても、目にみえるとイラっとしてしまい、見ていないと危険なので目を離す訳にもいかず、無視って難しいなぁー、さらにイライラしているのにほめるなんて難しいなぁーと思った。
  • 行動を無視。一対一での対応では可能ですが、間に他児が入る場合、難しいこともある。例えば、奇声を発する子、その行為を無視することは出来ても、他児が「うるさーい!!」と言えばエスカレート。長くつき合ううちにまわりも慣れてくるが…。その対象児を出してクールダウンさせたり、奇声を発する前に手を打つようにしています。
  • 無視→無視すると逆に自由な行動を取ってしまう。注目されたいと言うより、自分の世界に入るのが好きな子のため。
  • 無視のタイミングが難しかった。
  • 保育の中で、とことんまで無視することは難しい。
  • 存在そのものを無視するのでないとわかるが、保育士が待ってもらえるように無視したことで、子ども自身は実際どう感じるんだろうと思った。できたらほめることはわすれないが、子どもにあった無視の度合い・段階をふまえなければと感じた。
  • 無視をつらぬけない場面が多い。

【指示】

  • 指示をするようになると、指示ばかりに頼ってしまいそうな気がする。

【行動を3つに分ける】

  • 好ましくない行動と危険な行動の境界線がよく分からない部分がある。

地域機関

【無視とほめる】

  • 無視のしかたのロールプレイをしましたが、「完全な無視」と「適切な無視」のしかたや区別がやや理解しにくかった。
  • 無視をやめるタイミングが難しい。
  • 無視の程度が分かりにくい。普段子どもがエスカレートした時に落ち着かせるため、無視というか放置するのですが、それとも違うのでなじみにくいといったらいいので しょうか。
  • 無視するのは難しいと思いました。
  • 無視をしていると注目を得るためにか好ましくない行動から危険な(親をなぐる、ける、たたく)行動になってしまった時。親の立場として、店や外出先では無視をすることが難しい場面もある。
    エスカレートした時に周りの目も気になる。お友達とその親がいる時の好ましくない行動に対して、注意をしないでいることに他の親の理解が得られないことがある。

Q 実施するにあたり、やりにくいこと、難しいことがありましたら、お書き下さい。

保育園・幼稚園

  • 特にありません。
  • 専属に指導できる教師の配置がとれないこと。
  • 自分のかかわり方を、専門的に客観的に見てもらえないので、先(目標)を見失いやすい。
  • 周りの子とペースが違う時に、タイミングよくかかわれないことがある。
    →上司が発達診断を遠城寺式にばかり頼ろうとするが、ADHDの子には普通の子と発達の違いがみられず、よくわからない。
  • どうしても慌ただしい時などは、感情的に注意してしまうことがあるので、これからは、今日の実践をふまえて子どもに接していこうと思いました(静かにトーンをおさえて伝える)。
  • 大勢の中で注目したり無視したり、この子には無視しているが、この子には注目するべきところ、そのころあいがむすかしかった。
  • 午睡の際、なかなか眠ろうとせず、あそんでいる子に声かけした後、すぐにほめられない(眠ってしまっている為)。
    起きてから「今日早く寝たね」と言われ、ずっとあそんでたのに…と思った。
    言葉のでない子に対し、「ねんねよ」と伝え、寝かしつけていて、どこでほめるのかわからない。
  • ローテーションで信頼関係が築きにくい。自分のやり方でどうか、その日の反応でしか判断できない。
  • 保護者の連携と、どのくらいどの様に伝えたらいいのか。
  • 担任ではないので、ローテーションで組をまわるため、同じ子どもと接するのが数週 間後なので、効果が出ているのか?とか継続して試す事ができない。
  • 保育園において、乳児の場合、無視することはできない。
  • 子どもと対応している時に、口調が強くならないようにすること。
  • 好ましくない行動(スプーンで机を叩く、隣の子もたたき出す)をしている子に賛同して、周りの子も同じように行動すると収集がつかなくなる。
  • 気になるお子さん→気になる保護者、どう伝えていくか。 気づきにつなげていくか。
  • ほめることで、「一番早いでしょ?」「一番上手だったでしょ?」と“一番”に対する こだわりも強くなった。
  • まわりの子ども達も、ほめられたいからその子の物まで片づけ等手を出そうとするので、その子はパニックを起こす。周りの子との兼ね合い。
  • 「~したら~できる」は交換条件のように「~できないなら~しない」になってしまうこともありそう。(ターゲットの子でない子どもで、「~したら~くれる?」等と)
  • 「せんせい!ちょっときいて!!」「○○の話をきいてってば!!」を全体の中でやられた 時、無視しきれない。(話をきいてくれないの?)
  • 無視した場面のみを子どもが保護者へ伝えてしまって、うのみにする保護者だと信頼関係に影響が出てくる。
  • 日々、冷静に行っていけるかは不安ですが、気をつけていきたいです。
  • 「えー、もっと遊びたい」→無視
    おもちゃを投げた→無視
    たまたまカゴに入りました→ほめる
    →保育園では、この行動(おもちゃを投げる)は無視することはできない と思いました。
    しつけ・教育ということを考えると、時には厳しく指導する必要があるのでは?と個人的には思います。
    ADHD・発達障害のお子さんへの対処法と言うことなら、納得できます。
  • 「~したら~できる」という取り決めは、抱っこ等はできるが、物は与えられない。
    ごほうびシール等におきかえるとしても、それ目当てに片付け等をする…というより、どうして片づけが必要かを話していきたい(幼児の場合)。

<結果のまとめと考察>

①子どもの変化

小グループでは、2カ月程度の期間での子どもの変化を評価することになったが、参加者は子どもが落ち着いてきた、子どもが自信をもち意欲的になっている、と感じていた。

大グループは、初回から、アンケートをとった2回目までは1カ月と短く、全プログラムを実践した上での感想ではなかったが、「行動を分類する」、「ほめる」ことの実践を宿題とした中で、参加者の多くが小グループと同様、子どもが自信を持っていっている、やる気が出てきていることを感じていた。また、子どもが自分のそばにくるようになったと、 子どもと保育者との関係性が良くなったと感じている方もいた。

②各プログラムについて

【行動を分類する】

小グループでは100%、大グループでは55%(16名/29名)の参加者が有用だと感じていた。

子どもの問題点がクローズアップされていたが、良いところがあることに気づきやすくなった、という感想や、子どもの見方がかわり、整理され、より理解しやすくなったという 感想が多かった。

小グループでの宿題のふりかえりの際には、初回の「行動を分類する」についての宿題をした時点ですでに、「ほめる」ことにすぐに結びついている参加者が多く、保育士の方 たちが日頃から良い行動に気づくとほめる、ということに慣れている方たちであることが 分かった。そのため、「行動を分類」する段階で、どのように好ましい行動をみつけていくかについての丁寧な説明をすることが重要であると思われた。

【ほめる】

小グループでは100%、大グループでは76%(22名/29名)の参加者が有用だと感じてお り、難しさを感じているのはわずかであった(1名/29名)。

保育士の方たちは普段からほめる機会が多く、ロールプレイでもポイントをつかんだ伝え方をされており、なじみやすかったと思われるが、意識して行うことで、あらためて 「ほめる」効果について認識されている参加者が多かった。 「ほめる」ことでその行動が増えることに気付いた参加者が多かったが、その他にも、 やろうとした時点で「ほめる」ことで次の行動につながることに気付いたり、「ほめる」 ことをみつけやすくなった、という感想や、周りの子もほめられたくて好ましい行動が増えてきたという集団での効果もあげている参加者がいた。

【無視とほめる】

小グループでは100%、大グループでは65%(19名/29名)の参加者が有用だと感じていたが、一方、難しさを感じているのも小グループで44%(3名/7名)、大グループで27% (8名/29名)と比較的多かった。

小グループでは、好ましくない行動一つ一つに反応していて、言葉かけが多かったことが逆効果であったことを感じたり、待つことで「ほめ」られることが増えるということが分かった、などの実践をとおした「無視」の効果があげられていた。

また大グループでは「無視」の実践は宿題ではなかったが、子どもの気持ちのきりかえが早くなった、状況により使い分けることで自分から気づかせることができたり、予測される問題の行動につながらずにすんだ、という効果を感じている参加者もいた。

大勢の子どもに対応する中で、どの子どもの、どの行動を「無視」するのかという見極めの難しさや、「無視」をした時に周囲の子どもが先生は話をきいてくれる人だと思うため 「無視」を続けにくい、「無視」をしているとその間に他の子どもにその行動が広がってい く(例:スプーンで机をたたく)、という集団ならではの難しさがあげられていた。「無視」 のあとにほめることや、ターゲットの子どもだけでなく周囲の子どもも同様に好ましい行動を続けられるように「ほめ」て、好ましくない行動に移行しないようにする、ということを実践してみる中でどのような結果になるのかフォローが必要だと思われた。

自分の世界に入るというような子どもに対してどのように用いるのか、という疑問もあり、発達障害の特徴をもつ子どもでの「無視」の用い方、好ましくない行動の種類による 「無視」の使い分け、「無視」の意味(好ましい行動を減らす目的だけでなく、叱責と反抗などの大人と子どもとの関係の悪循環を防ぎ良好な関係をつくるという目的)についても 時間をかけて説明することが必要だと思われた。

一方、子どもが保護者に「無視」されたことだけを伝えるのではないかという心配もあげられていたが、必ず「無視」のあとに「ほめる」ことを行い、こどもが好ましくない行 動をやめてよかった、大人がそれを認めてくれた、と思えるように対応することが「無視」 のポイントであることをしっかり伝えていく必要があり、このことは実践する中で子ども の反応を感じてもらうことによって理解が深まっていくのではないかと思われた。 「無視」の難しさを感じている参加者は、大グループでは、土曜日グループで41%(7 名/17名)、水曜日グループで9%(1名/12名)と差がみられた。原因としては、一つ目 に、水曜日グループは初回には「無視」の一部のみの紹介であったが、土曜日グループで は初回に「無視」を全て説明したため実践してみた参加者が多く、その結果難しいと感じ た方がいたこと、二つ目に土曜日グループのロールプレイの設定(「先生話きいて」と子どもがしつこく先生に要求する場面)が十分でなく、「無視」から要求をやめた時点で 「ほめる」ことにきりかえるタイミングが分かりにくかったこと、三つ目に水曜日グルー プは「無視」が2回にわたったために、ロールプレイを2種類体験してもらうことになり、 土曜日よりも説明時間が十分にとれたこと、などがあげられる。

【指示】

小グループでは、実践を通して、具体的に指示すること、くりかえすこと、CCQ、そ して「指示」のあとに「ほめる」ことが大事であると感じられていた。

大グループでは、2回目に説明したのだが、日頃の保育の中で予告の効果を感じている 感想がみられた。また、CCQや具体的なシンプルな指示が、使えそうだという感想がみられた。

【全体を通して】

「行動を分類」し、「ほめる」ことで、こどもの好ましい行動が増えること、子どもが 自信や意欲をもてること、こどもと保育者との関係がよくなり、保育者自身もおだやかな 気持ちになれること、を多くの参加者が感じていた。

「無視」は親のペアレントトレーニングでの指導の際にも、難しいプログラムであるが、 実践をとおしながら、理解していく必要があると思われた。

小グループでは、ぺアトレ的保育の実践の難しさとして、職員間の子どもへの統一した対応や共通理解の難しさをあげている参加者が多かった。同一施設から複数の参加者がいた施設では、「無視」が連係プレーで成功した、という実践結果も報告されており、多くのスタッフにぺアトレ的保育を知っていただける工夫が今後必要だと思われる。

(4)参加者自身の気持ちの変化について

保育士、児童館職員の計7名(A~Gの7名。Fは事前アンケート結果なし) 10段階で自己評価(0自信がない 5どちらともいえない  10絶対自信がある)

①1日1回以上、本人をほめる
A8→7/B10→9/C10→10/D8→8/E6→9/F?→8/G8→9

1日1回以上、本人をほめる

 

 

 

 

 

 

 

 

②本人の行動、考えが理解できる
A8→8/B7→7/C5→7/D3→6/E5→8/F?→8/G5→6

本人の行動、考えが理解できる

 

 

 

 

 

 

 

 

③本人と一緒にいて楽しい
A8→9/B8→7/C4→6/D5→10/E9→9/F?→10/G5→8

本人と一緒にいて楽しい

 

 

 

 

 

 

 

 

<結果のまとめと考察>

8以上は自信があると判断し、事前→事後 2以上の変化を有意な変化と考える。 ターゲットの子どもの行動の理解については、自信があるとはいえなかった参加者がいた が、皆自信がある範囲に変化している。行動を丁寧にみることで子どもの理解が深まっていると思われる。

ターゲットの子どもと一緒にいて楽しいかについても自信があるとはいえなかった参加者も、自信がある範囲に変化している。

ぺアトレ的保育は、子どもだけでなく、職員の子どもの理解や関わり方について自信を深めることが可能であった。

<参考 肢体不自由児施設長期入園病棟での取りくみ>

我々は肢体不自由児施設での不適応行動をする子どもたちの対応にもペアレントトレーニングの手法を用いてきたが、 職員(看護師、保育士、指導員)の子どもへの対応についての自信やストレス緩和に有効であったことをすでに報告している。(2008年12月 こども虐待防止学会発表)

肢体不自由児施設長期入園病棟における環境療法

肢体施設長期病棟の職員の構成

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