分担研究者 佐々木清子(心身障害児総合医療療育センター
リハビリテーション科(作業療法士))
研修会 「感覚統合療法」の概要とポイント指導
①2008年12月16日(火)18:30~20:00 19名参加
②2009年1月10日(土)14:00~15:30 14名参加
③2009年1月13日(火)18:30~20:00 13名参加
④2009年2月14日(土)14:00~15:30 7名参加
⑤2009年2月25日(水)17:30~19:00 約30名参加
<現状について>
実際に発達障害のお子さんに関わっていた人が多く参加した。 幼稚園や発達相談所の人など子どもと直接かかわっているところや家族との相談を中心にいている所であった。
参加施設の状況;適応指導教室、教育相談室、教育センター、健康福祉センター、福祉事務所、おとしより保健福祉センター、 家庭児童相談室、療育センター、児童館、小学校、学童、区役所(健康福祉センター)、心身障害児総合 医療療育センターなどであった。
感覚統合について知っているかについては感覚統合について聞いたことのない人もいたが、 なんらかの形で聞いている人が大半をしめていた。その手段は、インターネット、園児の様子の見学、保護者からの情報であった。
聞いたことのある診断名については、それぞれの診断名を約半数の人が聞いていた。
図1 発達障害について
図2 聞いたことのある診断名について
図3 感覚統合療法について
図4 発達障害のお子さんとの関わりについて
図5 職場について
直接関わっている施設に勤務している参加者から運動系、触覚系、手の巧緻的な遊びについて調査を行った。
【運動系の遊び】
大半はよくしていた。しかし、園庭がなく行うのが難しい(ホールのみ)ところもあった。 内容的には、体をひきつける遊び、両手の協調的な遊び、口を使った遊び、上肢を支持する遊び、同時収縮を促す遊びは、半数が行っている状況で、 大半が行っていたのは、 ゆれる遊び、リズム遊び、ボール遊びなどであった。
今後取り入れたいのは、全般的に見られていたが、特に、体をひきつける遊び、両手の協調的な遊び、上肢を支持する遊び、同時収縮を促す遊び、 ゆれのある遊びであった。子どもは、喜んで遊んでいる状況であったが、しようとしない子もいて、時々参加する、しようとしないが、好きなものは行うようであった。
図6 運動系の遊びについて
図7 運動系の遊び
【触覚系の遊び】
十分にしている、半分位しているが大半であった。 大半が取り入れていたのは、砂遊び、 粘土、水遊びなどで、やや少ないのが枝や葉と遊ぶ、料理、泥んこ遊び、少なかったのが、 スライム、園芸であった。
今後取り入れたいのは、全般的にみられていた。 今まで取り入れていない遊びの中で今後取り入れたい遊びでは、スライム、園芸がやや多かった。子どもは喜んで遊べていたが、 しようとしない子もいた。
園の方針として、汚れることはしないところがあった。しようとしない子では、料理だけは行う、粘土、砂遊びはたまに行うなど特定の遊びを行う傾向があった。
図8 触覚系の遊びについて
図9 触覚系の遊び
【手の巧緻的な遊び】
ほとんどしていない所が、数名みられた。他は半分、十分していたという回答であり、運動系と触覚系の遊びに比べて行っている施設は少なかった。
内容では、のりを使った遊び、描画が多かった。はさみ、折紙、工作、つまみの遊びは 半数くらいで、モールやあやとりなどの遊びは少なかった。 取り入れたいものは、モールやあやとりなどの手の分離的な遊びが多く、他は、工作、描画、折紙であった。 子どもは誘えば行うのが多かった。危ないとの理由でできていないところもあった。
図10 手の巧緻的遊びについて
図11 手の巧緻的遊び
挙げられた項目は以下のようであった。
【運動系】
多かったもの(15以上)は;ボールを投げる、リズムがとりにくい、椅子の座る姿勢が 悪い、全体的に不器用である
図12 運動系について
【触覚系】
多かったもの;はさみや工作が苦手、全体的に不器用
図13 触覚系について
【発達面】
図14 発達について
【食事】
図15 味覚・嗅覚について
【トイレ】
【視覚や聴覚】
図16 視覚・聴覚について
《考察》ほとんどの人が子どもの行動について気になっており、なんらかの形での支援が重要であった。
【ほめるようにしている】
【手伝わずに自分で経験できるようにしているについて】
【待つようにしているについて】
【その他】
図17 お子さんと関わる時に気をつけていること
<地域へどう支援できたかについて>
研修会後の感想からは以下の点について支援できた。感想は以下のようであった。
①子どもの行動を理解してもらえた
②具体的でわかりやすかった
③保育に生かせることがあった
④楽しく行うことの大切さを理解してもらえた
⑤感覚統合療法について理解をしてもらえた
⑥保護者の方にかかわりのヒントになった
<今後について>
感想には以下のような意見があった。
《考察》
今回の研修会は、板橋地域の保育関連の職種の人たちであった。東京都内でも感覚統合療法を行っているところは少なく、また、あまり知られていないと感じていた。 今回の、参加者の多くは感覚統合療法についてなんらかの形で理解できていた点は、ほかの地域よりも比較的広く知られていたと思われた。 しかし、感想から具体的に保育にどういかせるものか、実際にどのようなものかなどは、研修会に参加して知った人がほとんどであった。 今後もこういった研修会への希望もあり、継続して行う必要を感じた。
発達障害児に対する支援に感覚統合は必要であり、豊かな遊びを幼児期から提供していくことは必要不可欠であると考える。 アンケートにより現状を調査してみると、多様な遊びが十分に行われている状況ではなかった。 しかし、講義を聴いて遊びを取り入れる方向で考える人が見られており、研修会は有効であった。 そして、感覚統合療法は、保育の中で生かされるものであること、具体的にどうかかわるか、楽しみながら行うことの大切さ、 おもちゃをどう使うかについても理解してもらえた。また、研修会に参加する以前から、 ほとんどの人が、ほめるようにしたり、 手伝わずに自分で経験できるようにしたり、待つようにし、かかわり方の基本的なことを十分に理解できていた。 その上で、参加者がより 具体的に、実践的な方法を学ぶことができた。
幼稚園、保育園など施設に来て支援をしてほしいなどの要望も出ており、現場をどう支援できるかを今後考えて行く必要がある。 また、用具やおもちゃの展示や貸し出しを行ったことで、実際使ってその子どもにとって本当に子どもに有用なものを提案でき、 地域で 活用してもらえるようになったと思われる。
また、今回作成した小冊子は、地域で活用してもらえるものになると思われる。 研修実施後、どのように取り入れられたかについては十分な意見を集約できなかったが、一部、人員が足りないことで十分に取り入れにくいという意見があった。 実際、鋏を使うことや、屋外の遊びでは危険がないように配慮する必要がある。 また、保護者への理解も必要になるため、簡単に豊かな遊びを提供する状況ではないことがわかった。この点は、 今後、施設の充実に関して考えていく必要がある。