1.現状
○発達障害は、人口に占める割合は高いにもかかわらず、法制度もなく、制度の谷間になっており、従来の施策では十分な対応がなされていない
○発達障害に関する専門家は少なく、地域における関係者の連携も不十分で支援体制が整っていない
○家族は、地域での支援がなく大きな不安を抱えている
2.発達障害者支援法のねらい
○発達障害の定義と法的な位置づけの確立
○乳幼児期から成人期までの地域における一貫した支援の促進
○専門家の確保と関係者の緊密な連携の確保
○子育てに対する国民の不安の軽減
(定義):「発達障害」とは、自閉症、アスペルガー症候群その他の広汎性発達障害、 学習障害、注意欠陥多動性障害その他これに類する脳機能の障害であってその症状が通常低年齢において発現するものとして政令で定めるものをいう。
目次
第一章 総則(第一条―第四条)
第二章 児童の発達障害の早期発見及び発達障害者の支援のための施策(第五条―第十三条)
第三章 発達障害者支援センター等(第十四条―第十九条)
第四章 補則(第二十条―第二十五条)
附則
(目的)
第一条 この法律は、発達障害者の心理機能の適正な発達及び円滑な社会生活の促進のために発達障害の症状の発現後できるだけ早期に発達支援を行うことが
特に重要であることにかんがみ、発達障害を早期に発見し、発達支援を行うことに関する国及び地方公共団体の責務を明らかにするとともに、
学校教育における発達障害者への支援、発達障害者の就労の支援、発達障害者支援センターの指定等について定めることにより、
発達障害者の自立及び社会参加に資するようその生活全般にわたる支援を図り、もってその福祉の増進に寄与することを目的とする。
(定義)
第二条 この法律において「発達障害」とは、自閉症、アスペルガー症候群その他の広汎性発達障害、学習障害、 注意欠陥多動性障害その他これに類する脳機能の障害であってその症状が通常低年齢において発現するものとして政令で定めるものをいう。
2 この法律において「発達障害者」とは、発達障害を有するために日常生活又は社会生活に制限を受ける者をいい、 「発達障害児」とは、発達障害者のうち十八歳未満のものをいう。
3 この法律において「発達支援」とは、発達障害者に対し、その心理機能の適正な発達を支援し、及び円滑な社会生活を促進するため行う 発達障害の特性に対応した医療的、福祉的及び教育的援助をいう。
(国及び地方公共団体の責務)
第三条 国及び地方公共団体は、発達障害者の心理機能の適正な発達及び円滑な社会生活の促進のために発達障害の症状の発現後できるだけ早期に発達支援を行うことが特に重要であることにかんがみ、 発達障害の早期発見のため必要な措置を講じるものとする。
2 国及び地方公共団体は、発達障害児に対し、発達障害の症状の発現後できるだけ早期に、その者の状況に応じて適切に、就学前の発達支援、 学校における発達支援その他の発達支援が行われるとともに、発達障害者に対する就労、地域における生活等に関する支援及び発達障害者の家族に対する支援が行われるよう、 必要な措置を講じるものとする。
3 発達障害者の支援等の施策が講じられるに当たっては、発達障害者及び発達障害児の保護者(親権を行う者、 未成年後見人その他の者で、児童を現に監護するものをいう。以下同じ。)の意思ができる限り尊重されなければならないものとする。
4 国及び地方公共団体は、発達障害者の支援等の施策を講じるに当たっては、医療、保健、福祉、教育及び労働に関する業務を担当する 部局の相互の緊密な連携を確保するとともに、犯罪等により発達障害者が被害を受けること等を防止するため、 これらの部局と消費生活に関する業務を担当する部局その他の関係機関との必要な協力体制の整備を行うものとする。
(国民の責務)
第四条 国民は、発達障害者の福祉について理解を深めるとともに、社会連帯の理念に基づき、発達障害者が社会経済活動に参加しようとする努力に対し、 協力するように努めなければならない。
(児童の発達障害の早期発見等)
第五条 市町村は、母子保健法(昭和四十年法律第百四十一号)第十二条及び第十三条に規定する健康診査を行うに当たり、 発達障害の早期発見に十分留意しなければならない。
2 市町村の教育委員会は、学校保健法(昭和三十三年法律第五十六号)第四条に規定する健康診断を行うに当たり、 発達障害の早期発見に十分留意しなければならない。
3 市町村は、児童に発達障害の疑いがある場合には、適切に支援を行うため、当該児童についての継続的な相談を行うよう努めるとともに、 必要に応じ、当該児童が早期に医学的又は心理学的判定を受けることができるよう、当該児童の保護者に対し、 第十四条第一項の発達障害者支援センター、第十九条の規定により都道府県が確保した医療機関その他の機関 (次条第一項において「センター等」という。)を紹介し、又は助言を行うものとする。
4 市町村は、前三項の措置を講じるに当たっては、当該措置の対象となる児童及び保護者の意思を尊重するとともに、必要な配慮をしなければならない。
5 都道府県は、市町村の求めに応じ、児童の発達障害の早期発見に関する技術的事項についての指導、助言その他の市町村に対する必要な技術的援助を行うものとする。
(早期の発達支援)
第六条 市町村は、発達障害児が早期の発達支援を受けることができるよう、発達障害児の保護者に対し、その相談に応じ、センター等を紹介し、 又は助言を行い、その他適切な措置を講じるものとする。
2 前条第四項の規定は、前項の措置を講じる場合について準用する。
3 都道府県は、発達障害児の早期の発達支援のために必要な体制の整備を行うとともに、 発達障害児に対して行われる発達支援の専門性を確保するため必要な措置を講じるものとする。
(保育)
第七条 市町村は、保育の実施に当たっては、発達障害児の健全な発達が他の児童と共に生活することを通じて図られるよう適切な配慮をするものとする。
(教育)
第八条 国及び地方公共団体は、発達障害児(十八歳以上の発達障害者であって高等学校、中等教育学校、盲学校、聾(ろう)学校及び養護学校に在学する者を含む。) がその障害の状態に応じ、十分な教育を受けられるようにするため、適切な教育的支援、支援体制の整備その他必要な措置を講じるものとする。
2 大学及び高等専門学校は、発達障害者の障害の状態に応じ、適切な教育上の配慮をするものとする。
(放課後児童健全育成事業の利用)
第九条 市町村は、放課後児童健全育成事業について、発達障害児の利用の機会の確保を図るため、適切な配慮をするものとする。
(就労の支援)
第十条 都道府県は、発達障害者の就労を支援するため必要な体制の整備に努めるとともに、 公共職業安定所、地域障害者職業センター(障害者の雇用の促進等に関する法律(昭和三十五年法律第百二十三号) 第十九条第一項第三号の地域障害者職業センターをいう。)、障害者就業・生活支援センター(同法第三十三条の指定を受けた者をいう。)、 社会福祉協議会、教育委員会その他の関係機関及び民間団体相互の連携を確保しつつ、発達障害者の特性に応じた適切な就労の機会の確保に努めなければならない。
2 都道府県及び市町村は、必要に応じ、発達障害者が就労のための準備を適切に行えるようにするための支援が学校において行われるよう 必要な措置を講じるものとする。
(地域での生活支援)
第十一条 市町村は、発達障害者が、その希望に応じて、地域において自立した生活を営むことができるようにするため、 発達障害者に対し、社会生活への適応のために必要な訓練を受ける機会の確保、共同生活を営むべき住居その他の地域において生活を営むべき住居の確保 その他必要な支援に努めなければならない。
(権利擁護)
第十二条 国及び地方公共団体は、発達障害者が、その発達障害のために差別されること等権利利益を害されることがないようにするため、 権利擁護のために必要な支援を行うものとする。
(発達障害者の家族への支援)
第十三条 都道府県及び市町村は、発達障害児の保護者が適切な監護をすることができるようにすること等を通じて発達障害者の福祉の増進に寄与するため、 児童相談所等関係機関と連携を図りつつ、発達障害者の家族に対し、相談及び助言その他の支援を適切に行うよう努めなければならない。
(発達障害者支援センター等)
第十四条 都道府県知事は、次に掲げる業務を、社会福祉法人その他の政令で定める法人であって当該業務を適正かつ確実に行うことができると 認めて指定した者 (以下「発達障害者支援センター」という。)に行わせ、又は自ら行うことができる。
1 発達障害の早期発見、早期の発達支援等に資するよう、発達障害者及びその家族に対し、専門的に、その相談に応じ、又は助言を行うこと。
2 発達障害者に対し、専門的な発達支援及び就労の支援を行うこと。
3 医療、保健、福祉、教育等に関する業務(次号において「医療等の業務」という。)を行う関係機関及び民間団体並びに これに従事する者に対し発達障害についての情報提供及び研修を行うこと。
4 発達障害に関して、医療等の業務を行う関係機関及び民間団体との連絡調整を行うこと。
5 前各号に掲げる業務に附帯する業務
2 前項の規定による指定は、当該指定を受けようとする者の申請により行う。
(秘密保持義務)
第十五条 発達障害者支援センターの役員若しくは職員又はこれらの職にあった者は、職務上知ることのできた個人の秘密を漏らしてはならない。
(報告の徴収等)
第十六条 都道府県知事は、発達障害者支援センターの第十四条第一項に規定する業務の適正な運営を確保するため必要があると認めるときは、 当該発達障害者支援センターに対し、その業務の状況に関し必要な報告を求め、又はその職員に、 当該発達障害者支援センターの事業所若しくは事務所に立ち入り、その業務の状況に関し必要な調査若しくは質問をさせることができる。
2 前項の規定により立入調査又は質問をする職員は、その身分を示す証明書を携帯し、関係者の請求があるときは、これを提示しなければならない。
3 第一項の規定による立入調査及び質問の権限は、犯罪捜査のために認められたものと解釈してはならない。
(改善命令)
第十七条 都道府県知事は、発達障害者支援センターの第十四条第一項に規定する業務の適正な運営を確保するため必要があると認めるときは、
当該発達障害者支援センターに対し、その改善のために必要な措置をとるべきことを命ずることができる。
(指定の取消し)
第十八条 都道府県知事は、発達障害者支援センターが第十六条第一項の規定による報告をせず、若しくは虚偽の報告をし、
若しくは同項の規定による立入調査を拒み、妨げ、若しくは忌避し、若しくは質問に対して答弁をせず、
若しくは虚偽の答弁をした場合において、その業務の状況の把握に著しい支障が生じたとき、
又は発達障害者支援センターが前条の規定による命令に違反したときは、その指定を取り消すことができる。
(専門的な医療機関の確保等)
第十九条 都道府県は、専門的に発達障害の診断及び発達支援を行うことができると認める病院又は診療所を確保しなければならない。
2 国及び地方公共団体は、前項の医療機関の相互協力を推進するとともに、同項の医療機関に対し、 発達障害者の発達支援等に関する情報の提供その他必要な援助を行うものとする。
(民間団体への支援)
第二十条 国及び地方公共団体は、発達障害者を支援するために行う民間団体の活動の活性化を図るよう配慮するものとする。
(国民に対する普及及び啓発)
第二十一条 国及び地方公共団体は、発達障害に関する国民の理解を深めるため、必要な広報その他の啓発活動を行うものとする。
(医療又は保健の業務に従事する者に対する知識の普及及び啓発)
第二十二条 国及び地方公共団体は、医療又は保健の業務に従事する者に対し、発達障害の発見のため必要な知識の普及及び啓発に努めなければならない。
(専門的知識を有する人材の確保等)
第二十三条 国及び地方公共団体は、発達障害者に対する支援を適切に行うことができるよう、医療、保健、福祉、教育等に関する業務に従事する職員について、 発達障害に関する専門的知識を有する人材を確保するよう努めるとともに、 発達障害に対する理解を深め、及び専門性を高めるため研修等必要な措置を講じるものとする。
(調査研究)
第二十四条 国は、発達障害者の実態の把握に努めるとともに、発達障害の原因の究明、発達障害の診断及び治療、 発達支援の方法等に関する必要な調査研究を行うものとする。
(大都市等の特例)
第二十五条 この法律中都道府県が処理することとされている事務で政令で定めるものは、 地方自治法(昭和二十二年法律第六十七号)第二百五十二条の十九第一 項の指定都市(以下「指定都市」という。)においては、 政令で定めるところにより、指定都市が処理するものとする。 この場合においては、この法律中都道府県に関する規定は、指定都市に関する規定として指定都市に適用があるものとする。
附則
(施行期日)
1 この法律は、平成十七年四月一日から施行する。
(見直し)
2 政府は、この法律の施行後三年を経過した場合において、この法律の施行の状況について検討を加え、その結果に基づいて必要な見直しを行うものとする。
政令第百五十号 発達障害者支援法施行令
内閣は、発達障害者支援法(平成十六年法律第百六十七号)第二条第一項、第十四条第一項及び第二十五条の規定に基づき、この政令を制定する。
(発達障害の定義)
第一条 発達障害者支援法(以下「法」という。)第二条第一項の政令で定める障害は、 脳機能の障害であってその症状が通常低年齢において発現するもののうち、 言語の障害、協調運動の障害その他厚生労働省令で定める障害とする。
(法第十四条第一項の政令で定める法人)
第二条 法第十四条第一項の政令で定める法人は、発達障害者の福祉の増進を目的として設立された民法(明治二十九年法律第八十九号)第三十四条の法人、 社会福祉法(昭和二十六年法律第四十五号)第二十二条に規定する社会福祉法人又は特定非営利活動促進法(平成十年法律第七号) 第二条第二項に規定する特定非営利活動法人とする。
(大都市等の特例)
第三条 地方自治法(昭和二十二年法律第六十七号)第二百五十二条の十九第一項の指 定都市(以下「指定都市」という。)において、 法第二十五条の規定により、指定都市が処理する事務については、地方自治法施行令(昭和二十二年政令第十六号)第百七十四条の三十六の二に定めるところによる。
附則
(施行期日)
第一条 この政令は、公布の日から施行する。 (地方自治法施行令の一部改正)
第二条 地方自治法施行令の一部を次のように改正する。
第百七十四条の三十六の二第一項中「(昭和二十五年政令第百五十五号)」の下に「並びに発達障害者支援法(平成十六年法律第百六十七号)」を加え、 「同法第十九条の七」を「精神保健及び精神障害者福祉に関する法律第十九条の七」に改め、 「停止の命令」の下に「並びに発達障害者支援法第十条第二項の規定による就労のための準備に係る措置」を加え、 「同法及び同令」を「精神保健及び精神障害者福祉に関する法律及び同令並びに発達障害者支援法」に改め、 同条第五項中「第十条の二第二項」の下に「並びに発達障害者支援法第五条第五項」を加える。
○厚生労働省令第八十一号
発達障害者支援法施行令(平成十七年政令第百五十号)第一条の規定に基づき、発達障害者支援法施行規則を次のように定める。
平成十七年四月一日 厚生労働大臣 尾辻 秀久
発達障害者支援法施行規則
発達障害者支援法施行令第一条の厚生労働省令で定める障害は、心理的発達の障害並び に行動及び情緒の障害(自閉症、アスペルガー症候群その他の広汎性発達障害、学習障害、 注意欠陥多動性障害、言語の障害及び協調運動の障害を除く。)とする。
附則
この省令は、公布の日から施行する。
17文科初第16号 厚生労働省発障第0401008号
平成17年4月1日
各都道府県知事 各指定都市市長
各都道府県教育委員会教育長殿 各指定都市教育委員会教育長 各国公私立大学長
各国公私立高等専門学校長
文部科学事務次官
結城 章夫 厚生労働事務次官
戸苅 利和
発達障害者支援法の施行について
「発達障害者支援法(平成16年法律第167号)」(以下、「法」という。)は平成16年12月10日に公布された。 また、本日、法に基づき「発達障害者支援法施行令(平成17年政令第150号)」(以下、「令」という。)が、 令に基づき「発達障害者支援法施行規則(平成17年 厚生労働省令第81号)」(以下、「規則」という。)が公布され、いずれも本日から施行されるところである。
法の趣旨及び概要は下記のとおりですので、管下区市町村・教育委員会・関係団体等にその周知徹底を図るとともに、必要な指導、助言又は援助を行い、 本法の運用に遺憾のないようにご配意願いたい。
なお、法の施行に基づいて新たに発出される関係通知については、別途通知することとする。
記
第1 法の趣旨
発達障害の症状の発現後、できるだけ早期に発達支援を行うことが特に重要であることにかんがみ、 発達障害を早期に発見し、発達支援を行うことに関する国及び地方公共 団体の責務を明らかにするとともに、学校教育における発達障害者への支援、 発達障害者の就労の支援、発達障害者支援センターの指定等について定めることにより、発達障害者の自立及び社会参加に資するようその生活全般にわたる支援を図り、 もってその福祉の増進に寄与することを目的とするものであること。(法第1条関係)
第2 法の概要
「発達障害」の定義については、法第2条第1項において「自閉症、アスペルガー 症候群その他の広汎性発達障害、学習障害、注意欠陥多動性障害 その他これに類する脳機能の障害であってその症状が通常低年齢において発現するものとして政令で定めるものをいう」とされていること。 また、法第2条第1項の政令で定める障害は、令第1条において「脳機能の障害であってその症状が通常低年齢において発現するもののうち、 言語の障害、協調運動の障害その他厚生労働省令で定める障害」とされていること。 さらに、令第1条の規則で定める障害は、「心理的発達の障害並びに行動及び情緒の障害(自閉症、アスペルガー症候群その他の広汎性発達障害、 学習障害、注意欠陥多動性障害、言語の障害及び協調運動の障害を除く。)」とされていること。
これらの規定により想定される、法の対象となる障害は、脳機能の障害であってその症状が通常低年齢において発現するもののうち、 ICD−10(疾病及び関連保健問題の国際統計分類)における「心理的発達の障害(F80−F89)」 及び「小児<児童>期及び青年期に通常発症する行動及び情緒の障害(F90−F98)」に含まれる障害であること。
なお、てんかんなどの中枢神経系の疾患、脳外傷や脳血管障害の後遺症が、上記の障害を伴うものである場合においても、法の対象とするものである。 (法第2条 関係)
国、都道府県及び市町村は、発達障害児に対しては、発達障害の症状の発現後できるだけ早期に発達支援を行うことが重要であることから、 発達障害の早期発見のため必要な措置を講じること。 また、その者の状況に応じて適切に、就学前の発達支援、学校における発達支援その他の発達支援、発達障害者に対する就労、 地域における生活等に関する支援及び発達障害者の家族に対する支援が行われるよう、必要な措置を講じること。 発達障害を早期に発見することは、その後の支援を効果的・継続的に行っていくためのものであること。
(法第3条第1項・第2項関係) 支援等の施策を講じるに当たっては、発達障害者及び発達障害児の保護者 (親権を行う者、未成年後見人その他の者で、児童を現に監護するものをいう。以下同じ。) の意思ができる限り尊重されなければならないこと。その際、本人や保護者に対して支援の内容等について十分な説明を行い、理解を得ることが重要であること。
(法第3条第3項関係)
発達障害者の支援等の施策を講じるに当たっては、医療、保健、福祉、教育及び労働に関する業務を担当する部局の相互の緊密な連携を確保するとともに、 犯罪等により発達障害者が被害を受けること等を防止するため、これらの部局と消費生活に関する業務を担当する部局その他の関係機関との 必要な協力体制の整備を行うこと。(法第3条第4項関係)
国民は、発達障害者の福祉について理解を深めるとともに、社会連帯の理念に基づき、発達障害者が社会経済活動に参加しようとする努力に対し、 協力するように努めなければならないこと。(法第4条)
児童の発達障害の早期発見のために、市町村は、母子保健法(昭和40年法律第141号)第12条及び第13条に規定する健康診査及び学校保健法(昭和33年法律第56号) 第4条に規定する健康診断を行うにあたり十分留意するとともに、発達障害の疑いのある児童に対し、継続的な相談を行うよう努め、当該児童の保護者に対し、 医療機関等の紹介、助言を行うこと。
また、発達障害児が早期の発達支援を受けることができるよう、発達障害児の保護者に対し、相談、助言その他適切な措置を講じること。
都道府県において、発達障害児の早期の発達支援のために必要な体制の整備を行うとともに、 発達障害児に対して行われる発達支援の専門性を確保するため必要な措置を講じること。(法第5条・第6条関係)
市町村が、保育、放課後児童健全育成事業の利用、地域での生活支援のために適切な配慮、必要な支援等を行うものとすること。(法第7条・第9条・第11条関係)
国、都道府県及び市町村が、発達障害児(18歳以上の発達障害者であって高等学校、中等教育学校、盲学校、聾学校及び養護学校に在学する者を含む。) がその障害の状態に応じ、十分な教育を受けられるようにするため、適切な教育的支援、支援体制の整備その他の必要な措置を講じるものとすること。
また、大学及び高等専門学校は、発達障害者の障害の状態に応じ、適切な教育上の配慮をするものとすること。(法第8条関係)
都道府県は、発達障害者の就労を支援するため必要な体制の整備に努めるとともに、公共職業安定所等の相互の連携を確保しつつ、 発達障害者の特性に応じた適切な就労の機会の確保に努めるものとすること。
また、都道府県及び市町村は、必要に応じ、発達障害者が就労のための準備を適切に行えるようにするための支援が学校において行われるよう 必要な措置を講じるものとすること。(法第10条関係)
国、都道府県及び市町村は、発達障害者が、その発達障害のために差別されること等権利利益を害されることがないようにするため、 権利擁護のために必要な支援を行うものとすること。(法第12条関係)
都道府県及び市町村は、発達障害者の支援に際しては、家族も重要な援助者であるという観点から、 発達障害者の家族を支援していくことが重要である。 特に、 家族の障害受容、発達支援の方法などについては、相談及び助言など、十分配慮された支援を行うこと。 また、家族に対する支援に際しては、父母のみならず兄弟姉妹、祖父母等の支援も重要であることに配慮すること。(法第13条関係)
平成14年度より、「自閉症・発達障害支援センター運営事業(平成14年9月10日 障発第0910001号厚生労働省社会・援護局障害保健福祉部長通知)」 が実施されてきたところである。今般、法の成立により発達障害者支援センターが本法に位置づけられ、 都道府県等は「自閉症・発達障害支援センター」を「発達障害者支援センター」として指定することとなる。
発達障害者支援センターの業務内容については、従来の「自閉症・発達障害支援センター」と同一のものであるが、センターにおける支援の対象者については、 法における発達障害の範囲が学習障害や注意欠陥多動性障害なども含み、これまでよりも拡大することとなることから、その十分な対応を行うこと。(法第14条関係)
また、発達障害者支援センターは、都道府県知事等により指定されるところとなり、職員の秘密保持、業務状況に関する報告の徴収、業務の改善に関する必要な措置、 指定の取り消しが定められているため、その責務について十分認識の上、支援にあたること。(法第15・16・17・18条関係)
国、都道府県及び市町村は、発達障害の専門的な診断及び発達支援を行うことのできる病院又は診療所を地域に確保し、 日頃から地域の住民に情報提供を行うこと等により、医療機関による支援体制の整備に努めること。(法第19条関係)
国、都道府県及び市町村は、発達障害者を支援するためのさまざまな団体の活動の活性化を図ることは重要であり、 その際、家族のみならず発達障害者当事者の団体の活動が活性化されるよう配慮すること。(法第20条関係)
国、都道府県及び市町村は、発達障害については、障害を有していることが理解されずに困難を抱えている場合が多いことなどから、 発達障害者についての理解を深めることなどを国民の責務(第4条関係)と規定していることと併せて、 具体的に発達障害に関する国民の理解を深めるための必要な広報及びその他の啓発活動を行うこと。(法第21条関係)
国、都道府県及び市町村は、医療又は保健の業務に従事する者に対し、発達障害の発見のため必要な知識の普及及び啓発に努めなければならないこと。 (法第22 条関係)
国、都道府県及び市町村は、発達障害者への適切な支援を確保していくため、 医療、保健、福祉、教育、労働等の分野において発達障害に関する専門的知識を有する人材を確保することが重要な課題であること。
そのため、国においては医師については国立精神・神経センターにおいて、また、行政担当者、保健師、保育士等については国立秩父学園において、 教員等については、独立行政法人国立特殊教育総合研究所において、研修を実施することとしており、 都道府県等においても専門的知識を有する人材の確保に積極的に努めること。(法第23条関係)
国は、発達障害者の実態の把握に努めるとともに、発達障害の原因の究明、発達障害の診断及び治療、発達支援の方法等に関する必要な調査研究を行うものとすること。
そのため、独立行政法人国立特殊教育総合研究所においては、学校における発達支援の方法等に関する調査研究活動を行っている。(法第24条関係)
法において、都道府県が処理することとされている事務のうち、法第6条第3項、法第10条第1項及び第2項、法第13条、法第14条第1項、法第16条、 法第17 条、法第18条並びに法第19条第1項の事務については、令第3条に定めるとおり、 地方自治法(昭和22年法律第67号) 第252条の19第1項により指定都市(以下「指定都市」という。)が処理するものとすること。(法第25条関係)
以上