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パネルディスカッション

司会●それでは先ほど、研究分担者の方から個別のテーマに沿った研究報告、それから研究代表者の総括の報告をさせていただきました。その発表を受けて、このパネルディスカッションでさらにこの研究を深めてまいりたいと思います。それではコーディネーターを田島研究代表のほうでよろしくお願いいたします。

田島●それでは、90分ありますので、1時間ぐらいを、分担研究していただきました皆さんのほうでコメントしていただきたいと思います。あと30分の間、質問の時間を取りたいと思いますので、会場の皆さんのほうで、ここはこの研究者に聞きたいということがあれば、質問していただければと思います。

最後の質疑応答ということになると、最後の5分ぐらいからワーッと意見が出るんです。時間通りに終わりますので、ぜひ今からにらまれて、これだけは質問しなければということがあれば、早めにお願いします。

ではまず30分のうちで、ここをやっていきたいと思いますけれども、先ほど5人がそれぞれ20分でということで、酒井研究分担者だけ25分になっちゃったみたいですけど、本当は20分間の時間厳守でやりました。多分、一番言い足りなかったのが山本譲司さんだろうと思いますので、まずそこから。山本先生から。

山本●最初にご指名をいただきまして、ありがとうございます。先ほど、最近の刑事裁判に関わっていて、障害のある人に限らずなんですけど、やはり貧困だとか生活苦の中から窃盗だとか詐欺。詐欺というより無銭飲食とか、そういう話なんですけど、本来だったら実刑になるほどでもないのが、実はその人の社会に置かれた環境によって容易に厳しい判決になってしまう。刑務所内で保護されてしまうというようなお話をしましたけれど、逆に言うと、ある認知的な障害があって療育手帳を持っている、こういう人が多少うまくいって、この中にも書いてなかったですかね、実は、3年ほど前なんですけど、現住建造物等放火罪、この罪によって一審で実刑判。これは死刑もあり得る重大な罪でございますから。現住建造物等放火は。一審でかなり長期の実刑判決が出された。

そこで、その弁護を担った国選弁護士の方から、刑務所に入ることになると。しかし刑務所に入った中でも、出所後の引受先、これが例えば福祉関係者が引受人になるということで出所後の目処をつけていれば、刑務所内処遇でなくてもかまわないんじゃないかなということで、実は私が関係をする、ある社会福祉法人の、入所更生施設なんですけれども、そこの施設長に引受人になってもらった。

しかし彼だって、まだ控訴期限が残っているんですね。それで控訴してみたんですけども、その福祉関係者が引受人ということで控訴してみました。そうしたら1日半の裁判でしたね。非常に短い裁判であっさりと執行猶予に変わってしまった。

ですから、裁判所の見方も、障害のある人に関しては、何が何でも刑務所内処遇ということは考えていない。より福祉施設のほうがある意味再犯防止だとか、その人の立ち直りということを考えたら、そのほうがいいかもという判断があったという、これは1つの例なんですけど、実は同じような例がたくさんあるんですね。

そういう意味では、今回のいろんな制度。非常に前進もしてきたんですけど、それは刑務所内で受刑生活を送った人の出口というものだったのですが、やはり刑務所に入らないんだったら入らないに越したことはないのでございます。やはりそういう刑事司法の入口の部分にも、多くの福祉関係者の皆さんが、目を向けていただくことによって、有罪になったとしても社会内処遇、執行猶予、保護観察がつくという可能性も高くなるのではないかと思います。

そこでやはり、どちらかと言うと、刑事司法全体で言うと、私自身、幸か不幸か、刑事被告人、そして受刑者、さらには保護観察対象者という立場を経験をさせていただいたんですが、ある意味、これ、マスコミだとか社会の皆さん、社会の中の皆さんが思われていることとは逆の感覚なんですね。一番しんどい時期、一番不安な時期というのが保護観察対象者で、その次が受刑者でした。そして刑事被告人だったとき。まあ刑事被告人のときは、あれよあれよという間に終わってしまいます。しかしその重要な、何て言うか、保護観察。それぞれ当然のことながら、法律によってコントロール・管理される立場なんですけど、それぞれ保護観察対象者、あるいは受刑者を、ある意味、その人たちを処遇するための法律というのが、ここ何年かで、非常にドラスティックに変わったんです。しかし刑事司法全体を考えるのでしたら、その入口まで含めた三位一体の改革。その3つがつながりをもった1本の線としてつながっていかなくては、やはりその人の、罪を犯した人の更生だとか社会復帰というものにはつながらないだろうと思います。

そこで、実はこれ、法務省の更生審議会の中で2006年から諮問をされて、最近よく新聞等でチラホラと出てきます、「社会奉仕命令」という法律。要は刑事司法の入口、このバリエーションを増やしていこうと。禁固刑あるいは懲役刑。ほとんど懲役刑ですよ、実態としては。なるべく社会内処遇も進めていこう、これは刑務所内の受刑者が増えているという現状、過剰収容状態の解消ということもあるかもしれませんけど、実際問題として、それは先月、警察庁から発表された数字では、6年連続刑法犯は減っていると。その結果、そろそろ受刑者も頭打ちと言うか右肩下がりになりつつある。そんな中でなぜこんな法律か?と言うと、これは世界全体の刑事司法の流れの中で、これは確か2005年から、社会内処遇の拡大というものを、きちんと各国考えましょうと。これは国連の犯罪防止会議というもので採択をされ、日本政府も当然、そういう方針に則って、よりその部分で社会奉仕に関わることによって、刑務所内受刑ではなくて、ある意味施設外受刑ということ、社会内受刑ということになりますけど、そういう選択肢も増やそうとしています。

私はこれは1つ突破口として、福祉の分野。この問題に関しても、入口のところできちっと福祉とつながっていれば、これは社会内処遇でもいいんじゃないかなと。そういう刑事司法の入口の部分も、もしかして変わる。その議論の中に、ぜひこれも乗っけていくと、非常に効果的な、彼らの、なるべく早い段階での支援ということにつながっていくのではないかと考えております。時間もないので、これは問題提起ということでお話をさせていただきました。

田島●ありがとうございました。山本さん、具体的に、そうやって今新しい仕組みなんかも提案をして、それから実践的にもという場合の検証なんかも、相当下の方を積み上げてきています。私、昔はあなたに「山本先生」って言ったことは一度もないけど、この頃は本当に敬意を「山本先生」にしています。ご本人は「何で言われるんだ」っておっしゃるけれど、本当にすごいなあと思いますよ。自分の、まあ確かにある意味体験をされてきて、それを自分で感じながら、感性っていうのはすごいなあ。本当の意味で言われている政治家という。バッチはないですね。バッチはないけどすごいと思います。ぜひそうやって進んでいただきたい。

次に地道に、こつこつと、かつて私の部下でありましたけど、追いまくられて泣く泣く船形コロニー解体を進めています。

高橋●隣におります田島理事長が、宮城に来たのが平成8年でしたかね。我々はその当時、新しい風というのをやってきていなかったものですから、いわばペリーが浦賀沖に来たような、そういう印象を受けながら田島理事長のもとで仕事をしていて、宮城県の船形コロニー解体宣言という、当時ではセンセーショナルな、新聞にも取り上げられましたけれども、そういう宣言をして、いわゆる入所施設に入っている利用者の人たちを地域へ出して、地域で当たり前に生活をしていただく。それが結果、施設に住む人がいなくなれば、空の建物が出てくる。それが結果として解体だというようなことで、今でもその取り組みを進めているところでございます。

ただ、今、非常に障害の重い人たちが、多く残っていますので、そういう方々についてどのようにするかというようなことで頭を悩ましながら、でもやはりノーマライゼーションの理念ももちろんですが、今、一人ひとりの幸せを考えるときに、もはや施設ではないと。つまり本人が望んで施設を利用しただろうかということが非常に大事になるということもありまして、取り組んでおるということでございます。

そういう話をすると5分で終わらなくなりますので、それは置いておきまして。実は非常に早足で先ほど説明して申し訳なかったのですが、我々の研究はどちらかと言うと、アンケート調査を中心にして研究をしてまいりました。その中でもやはり救護施設の実態を調べたら、知的障害者をたくさん救護施設で入所させて生活を支援しているという実態が分かったんです。つまり我々の入所、知的障害者の入所施設よりも、救護施設が早くから、そういう意味ではセーフティネットとして、その機能を発揮してきたということがよく分かりました。その中で、罪を犯した障害者も受け入れて支援をしてきているという実態もよく分かりまして、本当に大変だというふうに、アンケートの中から読み取ることができました。

その中で先ほどちょっとお話ししましたけれども、そういう方々を受け入れて支援するときに、やはり情報がないということが職員にとっては一番困ったことだということで、アンケートの中でも、その項目が一番高い数字だったのです。やっぱり情報については、個人情報ですので、本当にすべてが施設側に提供されるかと言うと決してそうではないのですが、やはり共有できる情報、必要な情報、施設でここが分かれば支援ができるという、そういう情報というのは、やはり必要だと私は思います。それはやはり救護施設でも、そういうことがないので職員が非常に困っておられる。どう支援していいか分からない。そして不安になっているということが分かりました。

ですから、この研究が進められてから、そういった情報については何とかいただけるような仕組みに、そういう関係性がつくられてきていますので、これからは多分、こういう情報を下さいと言うと、おそらく教えてくれるのではないかと思いますので、これからも取り組んでいかなければいけないと思っておるところでございます。

これは相談支援事業所で実際その人の相談をするにあたっても、やはり本人に関するそれなりの情報がなければ支援が難しいと20年度の研究結果でも、そのようなことが言われていますので、情報ということについては大変必要なことだと思います。ただプライバシーの問題ですとか個人情報の問題ですとか、いろいろ難しい問題はあると思いますので、そういったところを整理しながら、必要な情報を共有しながら支援していければというふうに思っております。

田島●はい。救護施設が本当に努力をしておられたということ、これまた本当に皆さん知らなかったんじゃないでしょうかね。実は私も、宮城県の県立の救護施設をお預かりしていたんですけれども、100人中95人ぐらいは、何らかのハンディキャップをもった人です。それからやっぱり刑務所からここに来たという人も相当数いました。これは本当によく分からなかった。全国の救護施設が非常にそういう人たちを実はしっかり受け止めていただいていたということが、高橋研究分担者がやってきて、大分見えてきましたね。ここは、他にもこうやって福祉施設で非常に地道に受け止めていただいているところがあるんじゃないかと。そういうところにどうやって、さらにお力添えをいただくかということが課題ですね。

それではわが国の犯罪学と言うか、犯罪学博士号なんてものがあるというのを知らなかったんですけど、日本でただ1人の博士号を持つ藤本先生は、実はもう私たちがあまりそばにも寄れないぐらい偉い先生なんですよ。私は非常に厚かましく接していたのは、実は藤本先生は長崎県の五島出身なんです。郷里を同じくするものですから、「先輩、お願いします!」と言って、無理矢理。他にも主任で、研究をやっておられる。特に法務省のほうでは第一人者ですから、主任でやっておられるところを、私どもの分担をやっていただき、非常に大きな力添えをいただいた藤本先生。すみません、5分ぐらいですけれども。

藤本●豚もおだてりゃ木に登るといいますので、おだてられたのかもしれませんが、実を言いますと、今の実態調査というのは、法務省で初めての経験なんです。そしてサンプル調査ですけれども、実はこの知的障害者の実態調査を分析して、当面の課題を整理していくときに驚きましたのは、知的障害者に対して法務サイドと福祉サイドが、それぞれが連携のないままに施策を展開していらっしゃる。かくして知的障害者が出所した後で生活環境の改善とか支援体制とか、まったくないままに知的障害者が置かれている。これでは再犯を犯すのは当然だろうと思われる状態なんですね。

言い換えれば、知的障害者が各政策間の中で見捨てられた存在である。そのことに非常に愕然といたしまして、これは何とかしなくちゃいけないというのが最初の問題意識だったわけです。もちろんこちらの皆さまのお手元にあるデータをご覧になりましても、皆さまも同じことを読み取られると思うんですが。

ただもう1つ気になりますのは、今、我々は罪を犯した知的障害者を問題にしているんですが、その前に我々やることがあるのではないか。これは問題提起なんですが、この調査が終わった後に考えましたのは、データを探したかどうかは分かりませんので、後で知っている方はチェックしていただきたいと思いますが、もし我々の会った、いわゆるオーストラリアとかニュージーランド、そしてイギリス、アメリカ等の諸外国の文献調査を見てみますと、大体知的障害者というのは人口の2%から3%。言い換えれば、わが国の人口が1億4,700万とすると、250万人の知的障害者がいてもおかしくはないという推測ができるんですが、しかし厚生労働省が把握していますのは約57万。言い換えれば我々が犯罪予防という我々の観点から見ますと、知的障害者に対して今は潜在的に57万以外に障害者が我々の社会にいるとしたら、それを早く厚生労働省が把握して、人としての尊厳を持った生活ができるようなセーフティネットを敷いてあげることである。犯罪予防というのは目に見えませんけれども、これこそが国家としてなすべき意味のある施策であって、犯罪を犯した後にどうするかという話ではないと私は思うんです。

そうしますと、今、刑務所の中について、我々はデータを整理いたしましたが、警察、刑務所に入れるよりも裁判段階で福祉が介入すればいい。裁判よりもっと前に検察段階で福祉が介入すればいい。それはもっと早い段階で警察段階で福祉が介入すればいい。もっと早い段階では、福祉政策そのもので介入すればいい。そうすれば、知的障害者が犯罪に陥って、刑務所でどう対応するかというのも、更生保護でどう対応するかという問題が、福祉のほうでできますので、私が気を使うならば、なぜそういう対策をとらないのでしょうかというのが大きな疑問なんですね。

言い換えれば、我々はもっと真剣に知的障害者の現状というものを把握して、どれだけ厚生労働省が社会福祉の面から対応できるかというのがまず先決の問題であって、それが不幸にも犯罪を犯した場合で刑務所に来た場合、それは我々、裁判制度としてどうするかということを考えているわけですから、言い換えれば、できるだけ刑務所は触らずに刑務所というのは最後の手段なんですね。ところが知的障害者に対して最後の手段になっているか、なっていないだろうと思うんですよ。普通の犯罪者に対して、皆さんご存じのように、年間平均にしますと、大体200万人以上の人が犯罪を犯していて、刑務所に行くのは幸せな人じゃないかと言われますが、刑務所に来られる人は3万人しかいないんです。200万人も犯罪を犯して3万人しか刑務所に来ない。という現状を考えますと、知的障害者はその比率で考えていくと、かなりの高い比率で刑務所に行っているなあと。こういうふうな推測をしますと、やはり知的障害者の問題というものを、実は法務省や厚生労働省だけではなくて国全体で考えて、人として、健常者も障害のある人も、私自身も目が見えないという障害を持っているわけですが、そういう障害のある人も同じように人間としての尊厳のある生活を出来るためにはどうしたらいいか。我々犯罪法と言いますか、その側面からもう一度見直すべきである。というのが今回の3年間の調査を経て得た、結論ということになります。

田島●ありがとうございました。その通りなんです。本当に200万人ぐらい行方不明なんです。ということは、本当に私ども相当長い間言ってきています。今、厚生労働省が把握しております知的障害者の数は、平成18年の調査でいきますと54万7千人、55万人弱というところになっております。これは何かというと、療育手帳すなわち知的障害者という認定を受けた人をベースにしております。これは申請主義なものですから、「あなたは知的障害者でしょ?」とあまりうかつに言えないというようなところもあることはご理解いただければと思います。

ただご指摘の通り、非常にこれは大きな問題で、改めて研究をきっかけに、もう一度知的障害者はどういう人たちなんですかということを、福祉サイドでも改めて考えなければいけないのではないかと。ありがとうございました。

続きまして、特に更生保護のところで、実は我々の研究するときに一番の、何て言うか、いろいろ指南役をこっそりしていただいたのが清水先生なんです。もともと法務省のお役人だったそうですけど、どう見ても役人には見えなかったですね。私、役人嫌いで、あまり近寄りたくない感じだったんですけど、清水先生は大好きでした。すごく最初から頼って頼って、お兄様みたいに頼っている。

清水●私は、本当にこの研究は、田島さんの支援がありましたが、単なる調査研究ではなくて戦略的研究というふうになるのかなという実感をこの3年間もってきました。そういう実践なり問題をいただく、オペレーターという意味で、非常に学ばさせていただきました。また、普段ですと隣に座っているわけにはいかないという藤本先生の隣で、こういう研究の中だけでは勝手なことを言わせていただいて、調査させていただきました。

戦略的研究という言い方で申し上げたんですけれども、その一番のテーマは、いろいろありますけれども、私はひと言で言えば「つなぐ」ということだと思っています。つなぐということをいくつか具体的に申し上げますと、1つは、さっきからお話で出てきていますけれど、知的障害を有する受刑者の人たち、刑務所に2回以上入られた人の前回の出所事由が80%が満期釈放だったと。つまりどこにもつながらないままに着の身着のままの中で刑務所の門を出る。そういう人たちにとっては、地域社会というのは本当にタダの荒野だと。そういう人たちをどういうふうにつなぐかということで、ひと言で言うと、できるだけ仮釈放でつなぐ。仮釈放で出すということで、福祉と更生がどれだけ連携していくかということを、これから福祉につなぐということで、それを実現していくということ。そういうつなぎ方を、仮釈放と、生活・環境調整等々、色々な手続があるんですけれども、それを具体的にどういうふうに進めるのかということだと思います。

もう1つは、福祉と刑事司法が、何かベルトでガチッというんじゃなくて、そういうつながり方ではなくて、もっと歩み寄る、重なり合うことでつながるということだと思うんです。重なり合うということは、我々刑事司法なり更生、矯正を含めて、福祉に渡すというのではなくて、やっぱり地域福祉につなぐわけですから、地域という顔を持った福祉の方々のノウハウなり考え方が我々の中に入ってきていただくという、それで初めて本当の意味でつながるんだというふうに思うんです。

やっぱりお互い重なり合って、そこに何か役割、考え方、さっきも合同支援会議のように、刑務所に支援を必要とする人が入ってきた段階で、福祉の専門家の方、地域生活定着支援センターの人なりが、やっぱり中に入ってきて、そこで初めて一緒に問題を把握したり、本人の意向を引き出したり、ケアプランを立てたりと、そういうつながり方でなければいけなと思います。

そういうことを踏まえて、この「つなぐ」というので一番大事なのは、つなぐ先がどこか。さっきから法務省と厚生労働省という話になっているんですけれども、つなぐというのは、本当に自治体とのつながり。実施者は自治体であるわけでして、自治体と私どもがどういうふうにつながるかということが一番具体的な課題だと思います。

そこの自治体にどういうふうにつないでいくか、そこの入口のところが、今まではなかなか住所が定まらない等でつながってなかった、入口が閉ざされていたというところが、個々には大変いろんなご努力をしているんですけれども、制度として、そこがなかなか入口がつながらなかった。自治体と私どもがどういうふうに、それぞれたくさんの違いがある中でつながっていくかということ。そういう意味ではこれは、今回の定着支援センターがスタートしたということが到達点ではなくて、これからがスタート地点だというふうに思っております。そのための一番大事なのは手帳の交付です。そのための判定とか、実施権者がどこにあるかという、住所の設定を含めて実施権者がどこにあるかというふうな制度設計を、ある程度全国的な基準と言いますか、考え方、要綱みたいなものがやっぱりつくられていく必要があるのかなというふうに思ったりしております。

もう1つ、長野県では、さっきの報告書の中に入っているので見ていただきたいんですけれども、今回、私どものグループでやっぱり痛感したのは、特に少年院からの仮釈放の人たちもそうなんですけれども、やはり知的障害を有する人たちが成人して罪を犯すという人たちを、発達段階から支援がつながっていなければいけないんじゃないかということを非常に感じました。

発達段階で親が気づかない、周囲の方もなかなか知らせない、あるいは困ったときだけ相談支援があるということで、それが成長にともなって、その支援がつながっていない。そういう人たちが、どこかで社会に1人で出た段階で、やっぱり生きにくさが障害となって、生活状態が悪くなっていろいろ出てきて犯罪にもつながっていくという、そういうことがやっぱり非常に大きいのではないかと。そういう意味で、発達段階からずっと時間をつないでいくという、支援をつないでいくということまで遡る問題ではないかという気がいたしました。

1つだけ最後に申し上げたいんですけれども、今、田島さんが、私も役人だったってお話しいただいたんですけれども、私が法務省の保護局の課長だった時に、当時、社会福祉基礎構造改革がなされているときで、厚生省社会援護局の企画課長の河さん、2人でお願いをして社会福祉法の制定のときに覚え書きを交わさせていただきました。私は法務省の保護局の課長で、河さんは社会援護局の課長だったんです。それで覚え書きの中に、「社会福祉を目的とする事業では、更生保護事業その他、更生保護を目的とする事業が含まれており、厚生省はその旨を各都道府関係者に周知すること」という、これだけのことで、何も具体的なことはない、こんな覚え書きを交わすなどと、お互いにあまり役人らしくないことを役人としてやってしまって申し訳ないんですけれども、でもやはりつながるという、私ども、刑事司法あるいは矯正等が福祉とつながるということは、やはり地域の中で社会復帰をしていく支援のためにつながるということは、今申し上げた通り、何か違うものがどこかで接点があってつながるのではなくて、地域の中に入るのは、社会福祉という大きな世界の中で更生保護というものが機能していく、生きていくというか、そういう大きな考え方の中でつながっていくと言うか、社会福祉の中に私どもが入っていく、含まれていくという、そういう発想の中でつながらないといけないなという、非常に何となく考え方という話を、思想的と言うか、お話をさせていただいて、それが12年、ずっと同じことを考え続けてきたんですけれども、今、こういうものが設けられてスタートするということで、非常に感慨深いものがあります。ありがとうございました。

田島●ありがとうございました。河幹夫さんの話が出てきましたけれども、厚生省にも、すごい人がいます。基礎構造改革の時の役人ですけど。そういう、人と人との出会いみたいなものが、すごく大切だと思います。今回は、この研究のことについて法務省にも、それから厚生労働省にも、本当に、非常に魅力的な人たちが、実は参加をしていただきました。今日、来ておりませんけれども、例えば法務省、パッと目をつぶると、パッと顔浮かぶ人が、椿さんですね。矯正局の補佐官で、藤本先生の特別研究をやった時の指揮官は、かわいらしい女性だったんです。女性の指揮官で。この人が指揮をふって、刑務所の皆さんたちの指揮を執ったんですから、すごいなあと思いました。ああ、こういう役人がいるんだって思いました。今、彼女は念願の、青葉学園の園長さんです。すごく楽しい生活をしているということですけれどもそういう人がやっぱり、それぞれ、役所のところも、民間のところでも、人が出会って、そこで志を同じくして、そして激しく活動する。そういう中からいろんなものが生まれてくるんだということをすごく思いました。

それから、最後になり失礼しました。酒井はしゃべるの下手なんですが、実はこの間も旧労働省の関係の皆さんから、「酒井さんをちょっと今の、罪を犯した人たちの問題から解放してもらえませんか」と。で、何でかと言ったら、障害者雇用のところが止まってしまっていると言われました。実は私たちは障害者の雇用のところで、本当にモデル的なものをずっとこの20年間ぐらいやってきたのが酒井研究分担者で、本当はそっちが専門です。障害者の雇用、働くこと、就労の問題なんです。しかし今回は、随分一生懸命やってくれて。初代の長崎県の定着支援センターの所長に今なっています。

酒井●今、何が専門だかよく分からなくなってきていますけれども、ちょっと何点か報告をさせていただければと思います。満期出所の方の、行き場のない方を仮出所に持っていくためには、帰住地の設定、あと身元引受人の確定、あと療育手帳の取得。あと所得保障のところでは年金の支給。年金がすぐにもらえませんので生活保護というのがある。生活保護を取得すれば、その地元の市町村の費用負担のほうが多くなってくるのではないかという意見も一方ではあります。ただ、南高愛隣会で受けさせていただいた方については、ほとんどが県・国が費用負担をしている。これはどういうことかと言いますと、法律のほうに決まっていて、浮浪者、刑務所等出所をして帰住地がないこと、あるいは住所不定だとか、それが帰住地が明らかでない者についても、その現在地をもって保護を実施するということで、その現在地の、その市町村ではなくて、県がその費用を負担をするということが法律で書かれています。ただそこには身内の財産も調べられたりとか、福祉事務所も動きます。ただもともと家族環境が非常に劣悪ですので、そういった財産等もあまり考えられないということで、ほとんどの方が生活保護になっております。

あともう1つが、福祉の手だてが刑務所入所中にどうしても間に合わないと。これ、県によっては療育手帳が福祉サービスのパスポート、そこを頑として頑なに守るという県、市町村があります。ただ、療育手帳がなくても、障害の程度ということは待ってということがあるから、認定区分までは療育手帳がなくても大丈夫ですよという県、市町村もあります。ただ、それは市町村、県によってのばらつきがあるわけなんですけれども、どうしてもその入所中に福祉の手だてが間に合わなかったという方があって、私どもが3か月間法人でその費用の負担をしたという方がいました。

定着支援センターが支援をしていく上では、こういった方、何らかの不具合、支障があって、手だてが間に合わないということ、こういうケースが出てくると思います。こういったときに、緊急避難と言いますかシェルター的な役割、一旦は福祉のほうに置いて、福祉サービスにつなげていくという、そういった意味では、更生保護施設の支援が、今度体制が強化されるということで、受け入れの福祉施設と更生保護施設とをつなぐ連携というのが非常に色濃くなってくるのではないのかなと。

シェルター的な役割をどこが果たすのか。そこからいろんなサービスにつなげていく。福祉の手だてもその間、整えていくというところが重要になってくるのではないかと思います。

あともう1つ、個人情報の取り扱いというのが、定着支援センターが進んでいく上で、非常に重要なポイントだろうと思います。今も福岡矯正管区の方と協議をさせていただいています。入所中に、矯正施設のほうで本人さんの合意をもらうわけですが、それは定着支援センターあるいは関係機関に、あなたの情報を開示しますよと。それから今度、民間施設のときに、またもっと出てくるわけです。そこに開示をするときに、本人の同意、あるいは受け入れ施設、法人との取り決め、取り扱いルールづくりというのが必要になってくるだろうと。ただこれがあまりにも複雑すぎると実際に適用できないというのがあって、この方法などについては、個人情報の取り扱いについては、包括的に法務省と厚労省とで、何らかリードをしていっていただく必要があるのかなと思います。実際柔軟に対応できるような簡易なルールを。ただ、法人にとっては、この取り扱いについては、これはもう言うまでもなく、守秘義務をしっかり守るというルールづくりももう一方で必要になってきます。

あと、アンケート調査で出ていますが、相談を受けた施設、これが民間法人のほうが圧倒的に、80%以上が民間施設に相談が来ていると。公設の施設・法人は20%以下ということがアンケートで明らかになっています。これはやはり、公設の施設がある意味でのセーフティネットになっていない。民間法人に頼らざるを得ないということ。実際の受け入れも圧倒的に民間法人が多い。公設施設の役割というのも検証してみる必要があるのかなと思います。

あと、今回は定着支援センターの出口のところだけです。入口はまだですね。今後は、やはりこの出口が大きくならないように、入口のところ、司法のところ、裁判のところをしっかりと、またもう一方できちっと検証をして研究をしていく必要があるのではないのかと思います。事後対策だけではなくて予防というのをどうするのか。出口に行かないように入口のところでどうするのかという議論も、今後必要になってくるだろうと思います。以上です。

田島●以上、大体皆さん一回りしました。それで、今、酒井が言いましたことで、ちょっと補足をしておきたいと思いますが、平成18年ぐらいの研究がスタートしたころに出ていますものが、我々、お話ししているところから少し変わっているところがありますので、訂正をさせていただきたいと思います。

1点目はシェルター機能です。すなわち定着支援センターが緊急に保護する時に、どこがシェルター機能であるかというと我々は社会福祉施設が手を出そう。すなわち、コロニー雲仙の場合は、社会福祉施設ですので、そこから引き受けますということで、シェルターの機能を社会福祉施設でやろうということでしたが、実際いろいろやってみて不都合が出てきました。それは、シェルター機能で緊急に受ける、今、お話ししたように、その費用をどこから出すかというときに法人が被らなければいけないというものが相当出てきます。すなわちいろんな手続きをする間の期間、特に満期で出てきた人たちなんかは準備期間が必要ですから、そこの間は、雲仙の場合ですと、作成とか、何人か分を背負ってやったんですけど、これを一般的にやる、受けるというのは非常に難しいことです。そこは更生保護施設でシェルター機能をやっていただきましょうということです。更生保護施設が、非常に強化されましたもので、シェルター機能は一旦、定着支援センターは自分の配下に持っている福祉施設で、何かやるわけではなくて、近くの更生保護施設でシェルター機能をやっていただく。ここを訂正をしておきます。

それから入所型施設で、ある程度受ける、例えば半年から1年ぐらい受けて、次にステップを踏ませるという考え方も、平成18年度のときには必要ではないかということを言っておりましたけれども、まったく必要ありませんので、特に注意をしていただきたい。入所型施設では半年も、1年だろうが、できるだけ受け入れないということを考えてもらいたい。なぜかというと、入所型施設のところで受け入れるところというのは、更生保護施設のところで直でやっても、受けられます。だから更生保護施設でもできない、あるいは色々な問題があるので特例として受けてもらいたいときに入所型施設をお願いしたいということになる。原則として罪をつぐなって出てくる人です。罪をつぐなって出てくる人たちを、入所型施設みたいな、言うなればどこかの山の中の施設で受けるということはいけない。何でこれがいけないか。人権に関わることです。ですから、いろんな言い訳をして、半年ぐらいならいいだろう、1年ぐらいならいいだろうというのは、相当その人権に配慮した上でも、なおどこかで1回受けないといけないというような人という事例だと思います。絶対数から言うと、およそ1割あるかないかというところだと思います。

ここはしっかり皆さん注意して考えていただきたいんです。さっきから言うように、罪をつぐなって出てきた人たちに対して福祉サイドがするサービスというのは、本人の幸せをつくるためのお手伝いです。そのためにサービスを提供する。犯罪、再犯防止のために必要なんだとか、それから人権を侵してでもとにかくこの人たちを隔離しなければいけないというように、もし考えるのであれば、それは福祉施設ではやらないでほしい。福祉施設と名乗るからには、福祉は人の幸せをつくるための施設である。ここだけは訂正をさせていただきたい。平成18年に、この研究がスタートしたころには、そういう漠としたところがあったものですから、そういうことを私も申し上げているところがありましたが、これはもう明らかに私が間違いでした。ですから訂正させていただきます。

今回の場合ですと、罪をつぐなって出てきた人、それから範囲もある程度限られる。非常に皆さんの期待は大きいんですけれども、あれもこれもという期待が非常に大きいんですけど、実は今回作った、いわゆる架け橋はまだ吊り橋なんです。何か本当に細いロープで編んだ吊り橋ぐらいなものであるとお考えいただければありがたい。ここを両岸をしっかり強化をしようとしておりますけれども、これも、まだ今スタートしたばかりです。ですから渡れる方は、本当に申し訳ないんだけど、ある限られたところからしかやっていけないんです。できましたら時間を少しずつかけまして、そしてこれは鉄橋にして、やがて鉄筋コンクリートの橋みたいにしてですね、ダンプカーが走っても大丈夫な様な、そういうものに仕上げられれば、定着支援センターの話ですが。ということであります。

清水●シェルター機能を更生保護施設の役割とおっしゃっていただいたんですけれども、私としても、ひと言だけコメントしたいと思いますので、いいでしょうか。更生保護施設の方々、たくさんいらっしゃっていますけれども、それはちゃんとできるから大丈夫だって言っても、「そんなこと言っていいの?」って言われるそうな気もします。逆に、いや出来ないと言ってしまうと、いや、俺たちは実際にこういうシェルター機能を背負わされてきたんだと。今、田島さんがおっしゃった通り、やっぱり正当性と言うか、仕組みができたからと言っても、あまりお互いに過度の期待をしすぎてはいけない。やっぱりいかに一人ひとりの支援を丁寧に積み上げて、それを積み重ねて検証していくことで、この制度の成果とか、いろんなことが分かって動き出すのだと思います。更生保護施設の場合は、今回の予算が通って制度が動き出すと、つなぎが設計されていく中で、つなぎ的な役割をそれなりに果たそうとは考えているんですけれども、たださっきもご報告申し上げたんですけれども、ヒアリングでは、やっぱりいろいろな、薬物の人とか、アルコールの人だとか、いろんな人、高齢者とか抱えている中で、知的障害者の方も受け入れて、やっぱりその中で支援、つなぐまで支援できていくのは、今の現状では1か月がせいぜいだなという話もしました。この前も3か月ぐらいまでという話も出て、考えられているんですけれども。

たとえて言えば、すぐつなぎのほうの船が行くかと言うと沈んでしまうという例もまだまだあります。しかしながらやっぱり福祉の支援というものを私ども学びながら、どういうふうにつなげていくかという出口を見ながらやっているということだろうと思います。

過度の負担感を持たず、しかし福祉へのつなぐということを、一人ひとりをどうやってつないでいくかということだろうと思っています。余計なことなんですが一言だけ言わせていただきました。

山本●実はこれに関連をして、先ほどいくつかの提案の中で、矯正施設内で療育手帳を取得をしやすくすると。そのための環境整備等のお話がありましたけど、実は田島さんからさっきお話があったように、私も今、PFI 刑務所、いわゆる半官半民の、社会復帰促進センターという名称ですね。そこの民間側の運営に携わっている。特に「特化ユニット」と呼ばれる、知的な、あるいは精神に障害のある受刑者の処遇とか、社会復帰に携わっているんですけど例えば少年院で、わりと少年院にいる間に療育手帳を取得するというケースもある。ただしこれ、本当に少年院、大変なんですよ。少年院の場合は帰住先が確定しないと外に出すわけにはいかない。一方、刑務所はと言うと、刑期満了というのがありますから、刑期満了になったらもうそれは出さざるを得なくなるわけですね。

そこで福祉が支援をする。先ほど来、福祉の支援を受けるためのパスポートという表現がありました。これは選択肢を広げる上でのパスポートということだと私は理解したいんですが、療育手帳を刑務所内の、成人矯正施設内でとらせるということは非常にやっぱり悩ましいところもあるんです。例えば特化ユニットというのをやってますけど、そこでは、特に彼らが、「あなたは知的障害者ですよ」なんて告知はしないわけです。私が関わっている2つの施設、大体見てみますと10人に1人ぐらい療育手帳を所持している。過去に所持していた人もいました。しかし軽度の人の場合は放り投げる。自分から放棄していると。申請どころじゃなくて自分から逃げている、福祉から、という人たちもいるわけです。軽度の人たちにとっては、果たして彼らの支援、彼らが望むニーズに合った、いろんな支援のバリエーションがあるのかと言うと決してそうではない。逆に知的障害ということでのレッテル、ある意味ラベリングにつながってしまうというところもあります。今の福祉の現状においては。あるいは、世間の意識というものにおいては。

したがって、これ、矯正施設というのは、これは矯めて正す、と書きますけど、もう一方で、強いて制するという強制ということもあるわけですね。知的障害、ある意味、矯正施設の中で、あなたは知的障害者ですよ、療育手帳を取りなさいと言ったら、言われたら断れないかもしれない。断れないでしょう。そうしたらあなたをつなぎますからと。それも新たな人権問題かもしれない。このへんはやっぱり非常に気を付けなければならないと思います。本人は知的障害者にはなりたくない。刑務所から出た後、療育手帳を持たされると、私は矯正施設の中でこういう人にさせられてしまったという訴訟だって起こりかねないわけです。やっぱりだからそのへんは気を付けなければならないといった中で、この更生保護施設のシェルター的な機能として、これから全国57の施設で専門職が置かれるということなので、多少住所を持って留まる資格、いわばシェルターというのができたわけで、ここでしっかりと本人の意思を確認した上でその人の生活、その人の人生の中で選択肢が広がるのでしたら療育手帳を取得したらとか、そういう、私は田島先生が言われるように、まさに更生保護施設がシェルターとして機能することが、先ほどの矯正施設内での療育手帳取得の問題なんかも解決する一つの道筋ができたなと期待をしているんですが、本当に大変ですよね。矯正、更生保護。何だかんだ言って、法務省の保護局とかなんて200億とかそれぐらいですよね。そこに何でもかんでもおっかぶせる。またマンパワー不足も否めないわけで、そこをどう、社会がきちんと注目し、そこに予算を付けて、制度設計なことをどうしていくかというのは非常に大きな課題になってくると思います。

田島●更生保護施設のところ、保護局というところは、今まであまり日のあたらない所なんですよね。今、研究委員会のほうもやっていただいているみたいですが。

藤本●今の部分で、対応しているんですが、特に既存の110施設ですね。どうしても収容率、70%、75%ぐらいに押さえているんです。これはいろいろとそれなりの理由があるようです。私は定額給付をすべきであると主張しているんですが、そうすると、安定的に供給しますので、2,300名位しかキャパシティがあまりありませんので、延べにしますと1万ぐらいになるんですけれども、いずれにしても、今の更生保護施設ですべてをまかなうことは難しいでしょう。

今回たまたま予算が通りましたのは、高齢者と知的障害者に対する1,000人に対するものなんです。さらにどうしても更生保護施設も、来ない人が1,700人いるんですよ。これをどうするかという問題がありまして。後の800人から1,000人の者たちは、これは我々で対応できますので、そのままにしておくとしましても、1,700人を何とかしなくてはいけないというのがありまして。

一般の更生保護施設の中はご存じのように、やはりどうしても性犯罪であるとか、あるいは暴力犯といったものを収容したがらない。だからぜひお願いしたいと思って、ハーフウェイハウス構想という中間処遇施設構想の話を今議論しているところで、ハーフウェイハウスという場合には、刑務所から来て、社会内処遇をするワンステップとして何らかの制度をここに設けようということなんですが。

自立更生促進センターを福島につくろうとしましたら大反対にあいまして、今、これが頓挫している状況です。就業支援センター、成人の方はうまく行きますでしょうし、それから北海道・沼田町の少年の就業支援センターもうまくいくんですが、後の自立更生促進センターについては、やはり反対が強い。福岡はダメですし、また京都もダメです。そうすると、これも北九州に持っていくという案もあるんですが、そのあたり、もう一度、ハーフウェイハウス、中間処遇制度とか、更生保護施設のことを、何かもう1回、2年次に見直しておこうと。そういうことが今、実際、法務省保護局のほうで、更生保護施設検討会議のほうで、私が委員長をしていますけれども、今ディスカッションしていますので、今少しお待ちいただきたいと思いますが、少なくとも中間答申で今回お願いした、高齢者と知的障害者に対する予算、2億7千万ぐらいは認められたので、次のステップとして、仮釈放して、その後で保護につなげるのが一番いいいわけですね。新聞紙上でご存じのように、一部執行猶予制度と言っていますが、それを全国に設けて仮釈放につなげていくのか、それとも、現行刑法28条によりますと、刑期の3分の1を経過した場合には仮釈放してよろしい。あるいは無期刑の場合には10年たったら仮釈放してよろしいとこうなっているんですが、つまりこれに対して3分の1は任意的な仮釈放ですから、3分の2になれば強制的に仮釈放する。そうするとこれは保護につながるわけですね。こういう制度設計をするのかどうか、これはまだたくさんのディスカッションが必要ですので、簡単には制度を変えられません。現行制度の中だけで仮釈放と、これはあくまでも今は私が地方更生保護委員会をやっていますので。これは施設から所長が持ってくる場合には地方更生保護委員会を設けますから、その委員会の推薦によってやることが可能ですね。そういうことがどこまで現行でやれるのか。あるいは制度を変えることでやるのか、そのあたりディスカッションしていますので。ある程度皆さんに、出たものを全部更生保護施設で、シェルターで受け入れるという話にすれば、今、100ずつある団体に、更生保護施設の経営者の方たちは多分、ちょっと受け皿がと思います。もうしばらく待っていただければ、こちらにもトップがいますので、多分私どもがいるとしゃべれないでしょうから、私が勝手にしゃべっているんで。これはある程度秘密事項をしゃべっていますので。清水さんはしゃべれないでしょうから。というふうになっているので、もう少し待っていただいて、今のシェルター機能とかいうのは十分考えておりますので、しばらく猶予していただければと今考えています。

田島●ありがとうございました。今から先がちょっと面白いですけれども、時間がありませんので、すみません。お約束の30分は質問を。それでは質問。