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平成19年度厚生労働科学研究費補助金障害保健福祉総合研究推進事業報告書

【ジョージ・パレルモ博士 招へい報告】

保崎 秀夫
社団法人 日本精神保健福祉連盟

Ⅰ 招へい理由

現在我が国においては、「精神保健医療福祉の改革ビジョン」の実現に向け、国、都道府県、市町村、関係団体等の連携による普及啓発の組織的・戦略的推進の方法を明らかにし効果的な手法を開発するとともに、普及啓発の効果測定の方法を明らかにすることが求められている。

受け入れ機関「日本精神保健福祉連盟」では、精神障害者の正しい理解を図る取り組みの組織的推進に関する研究に重要課題として取り組んでいるが、当該研究を促進するうえでは、精神疾患や精神障害者についての普及啓発に積極的に取り組んでいる諸外国の研究者とのネットワーキングを行うことが不可欠となっている。

Ⅱ 共同研究の報告

本共同研究においては、米国ウィスコンシン州における、主に地域精神保健における介入に関する精神医学的・心理学的介入に関する報告を行った。さらにミルウォーキー州における犯罪精神障害者への治療技法、社会的コンフリクトに関する研究を行った。(資料1)これらは、米国各州の保健局、精神科医療機関等とのネットワークにおいて、精神障害者への偏見除去に寄与したものであり、医療制度改革や普及啓発にかかるワーキンググループにおいて重要な位置を占めていることが明らかになった。

これらの報告によって、我が国における普及啓発の組織的・戦略的推進に関する示唆が得られた。また、中長期的課題である普及啓発の効果測定に向けた展望を得られた。さらに、地方自治体や精神保健医療福祉関係団体において普及啓発に関する事業に取り組む担当者等に、先行的に取り組まれている米国での実践を紹介し、その行政現場等での活動を一層促進することができた。

Ⅲ 受け入れ期間での活動

受け入れ期間では、以下の施設において、各種セミナー・シンポジウム(資料2)を行ったほか、共同研究にあたっては、精神疾患や精神障害者についての多面的な理解を図るため、リハビリテーション・薬物乱用・司法精神医学といった各分野での普及啓発の専門家との意見交換を行った。

  • 国立精神・神経センター武蔵病院
  • 国立精神・神経センター精神保健研究所
  • 筑波大学大学院人間総合科学研究科
  • 国際医療福祉大学大学院臨床心理学専攻科
  • 常磐大学国際被害者学研究所
  • 上智大学法学研究科

これによって、普及啓発の対象に応じた研究活動を行うことで、最も効果的な取り組みの組織的・戦略的推進に資することができたと考えられる。

Ⅳ 事業の成果と今後の計画

外国人研究者と検討・考察を行った研究課題は、精神障害者の正しい理解を図る取り組みの組織的推進に関する研究であった。ここでは、「精神保健医療福祉の改革ビジョン」実現に向け、国、都道府県、市町村、関係諸団体等の連携による普及啓発の組織的・戦略的推進の方法を明らかにするとともに、普及啓発の効果評価の方法を明らかにすることを目的とした。

事業の成果としては、外国人研究者と共同での研究会の開催、先行的な取り組みに関する情報収集、研究において収集した普及啓発に関連する情報の分析、関係諸団体へのスーパービジョン、普及啓発の効果評価に関する意見聴取等を実施した。具体的には、以下の活動について外国人研究者と共同で実施することができた。

1)「普及啓発の組織的・戦略的推進に関するガイドライン」作成について、研究協力者とのデルファイミーティングを実施した。

2)精神保健福祉関連団体におけるヒアリング調査を実施し、普及啓発の効果評価の妥当性について検討した。

3)精神保健福祉関連団体の担当者に対するワークショップやセミナーでの情報提供を通し、普及啓発の組織的推進に寄与した。

4)外国人研究者による先行的な取り組みとの比較により、当該研究の標準化を図るうえで必要となる要件を検討し、主任研究者の研究課題において取り組む方向を示した。

これによって、これまで作成を進めてきた「普及啓発の組織的・戦略的推進に関するガイドライン」の再構築を行うことができたと考える。特に、「普及啓発の組織的・戦略的推進に関するガイドライン」作成の進捗に合わせた、普及啓発の実態を評価・分析する方法の検討・考察は、受け入れ機関の研究課題において成果となった。

今後さらに、外国人研究者と共同で実施した研究活動で得られた知見や情報は、地方自治体や精神保健福祉関連団体等に報告され、普及啓発の実践に活用されるものである。これによって、精神疾患や精神障害者についての普及啓発を、目標や戦略を明確にした組織的な取り組みにより行い、精神障害者の正しい理解に大きな影響をもたらすものとなるであろう。

謝辞:
本共同研究を実施するにあたり、George Palermo教授の招へいを実現していただいた財団法人日本障害者リハビリテーション協会に感謝申し上げる。