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シンポジウムI
1.精神障害者の住居確保の手引きについて

竹島 正
(国立精神・神経センター 精神保健研究所 精神保健計画部長(研究代表))

司会●ではシンポジウムⅠ、(1)精神障害者の住居確保の手引きについて。国立精神・神経研究センター精神保健研究所、竹島先生よりお願いいたします。

竹島●精神保健研究所の竹島でございます。貴重な時間をいただきまして、「精神障害者の住居確保・居留支援の手引き」を紹介させていただきたいと思います。私の役割は全体のイントロでありますので、中身について詳しく紹介することは避けたいと思います。ごく簡単にお話をします。

まずこの冊子を作った目的ということでございますが、実は私、精神障害者の退院促進と地域移行の研究で蓑輪先生にはいろいろお世話になったのですが、精神障害者の住居確保の問題を研究する機会がございまして、実はいろいろな方にヒアリングを行いました。そうするといろんなことが出てくるのですが、例えば地域の方の精神障害者に対する偏見の問題であるとか、挙げていくといろんなものがございます。だけど、詰めていくと二点しかないのではないか。二点が解決すればいいのではないかと考えました。

その二点というのは、家賃がちゃんと支払われることということと、それから何か具合の悪いこと、困ったことがあったときに誰かが飛んで来てくれること。この二点に結局は集約されるのではないだろうかということなんです。

それから蓑輪先生の紹介で、例えば建築会社の方だとか不動産会社の方だとか、あるいはいろんな方にお会いしました。そうするとだんだん見えてきたのが、はじめは精神障害者の自立支援・住居確保という視点で行ったのですけど、高齢者の方であるとか外国人の方であるとか、さまざまな方がいる。いろんな方ではあるが、そこにはある共通の住居のニーズというものがあるのだろうと。その物件というのは、民間の賃貸を活用するという視点なくしては突破できないだろうと。

よく、推進の住居確保の表の中で、公営住宅の活用ということが言われ始めますけど、やはりそれも一つの視点ではあるけれど、物件の量とか柔軟性ということで考えてみると、やっぱり民間賃貸より上のものはないのではないか。精神障害者の方も地域の方も、そこの利用者として、ここで地域の経済に参加するという仕組みの中に入っていくということを考えてみても、やはり民間賃貸をうまく活用していく。その結果、民間賃貸を実際に市場に出している方々からもいろんな叡知を得ることができるし、一番ベストなのではないだろうかと考えた。この研究につきましては、先ほど蓑輪先生にご紹介いただきましたけれども、基本的には貸す側と借りる側とでお互いの意見を情報交換していけるものを成果物にしたいと考えました。

それと目次のところを紹介させていただきたいのですが、「手引き編」と書いてございまして、1番に、「精神保健福祉との住居施策、民間賃貸住宅の概況」ということで、2つの方向から書いてあります。精神保健福祉の動向はどうか、これをわかりやすく書くということと、もう一つは、住居施策、民間の賃貸住宅の状況はどうか。つまりこの冊子の中では、すべて貸す側と借りる側の視点の両方を交錯させるという視点で作ってあります。

手引き編の2番が住居確保。探す側です。探す側が知っておかなければならないことということです。不動産会社や家主がどんなことを望むのかということを知っていく必要があるだろう。

それから今度は、住居の確保。貸す側ということですね。不動産会社あるいは大家さんの側に、精神障害者とはどういう人なのか、住みやすい状況や特徴はということが書いてあります。ただ精神障害は実にさまざまでございますので、ここの中では統合失調症、いわゆる患者総数が一番多い、長期入院の中で一番多いものですね、統合失調症の人たちを想定して、かつ身体介護があまり要らないという条件を設定して作ってあります。条件設定しないとすべてを網羅する手引きというのは書けないという事情がございます。逆にそれがあれば、別の条件のものも出てくるだろうという考え方によります。

それからその次に、「住み続けるために」ということです。つまり借りるだけではダメです。住み続けるためにはお互いの努力というのが必要だし、大家さんとか不動産会社が支援しやすくする、こういう条件があれば支援しやすいということも、明らかにしていく必要があるだろう。

その後、事例集と資料集とワンポイントまとめです。最後のワンポイントまとめのところは、54~55ページに書いてございますけれども、これはこの冊子に書いてあることをわかりやすくまとめております。まとめを作ってもらったのは、この研究に協力していただいた行政の職員の方で、行政の職員の目で見てここはポイントではないかというところを短くまとめています。何事もそうですけれども、冊子は厚ければいいというわけではないので、要するに何が書いてあるのかとなったときに、そこを見てもらいやすくしたということです。

最後の56ページのところで、作成者一覧という形で書いてございます。今日のシンポジウムⅠと関係するのですけれども、先ほど、蓑輪先生におっしゃっていただいたのですけど、この冊子の作成に当たっては一番後ろに書いてあるように蓑輪先生と、蓑輪先生にご協力いただいた松戸を中心とした千葉の方が書かれています。執筆協力者ということでご協力いただいた方が挙がっています。それから作成協力者ということで何名かの名前が挙がってございますけれども、これは実際にこの手引きの案を作った後、それについての意見をいろいろ出していただいた方です。そんなふうにしてこの冊子ができました。

今、この冊子ですけれども、私どもの精神保健研究所のホームページにアップしてございます。誰でもこれをダウンロードすることができます。

今後、我々がこれに望むことは、この冊子をもとにして、ホームページにはPDFであがっているので加工はしにくいですけれども、それぞれでこれをもとにしていろんな地域で勉強会とかをやっていただいて、それで地域版の手引きを作っていってもらいたい。そういうことが私どもの目的であります。その入り口でこれを使っていただきたい。

今日のシンポジウムIは、その内容を少し紹介して、その中で皆様方に中身をまず知っていただく。それから実際、書かれた方がどんなご努力をしてきたかということを知っていただくことが一番重要なことです。導入ということで私のお話は終わらせていただきます。ありがとうございました。