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シンポジウムI
地域生活の支援

藤田 真人
(中核地域生活支援センターまつど ほっとねっと)

司会●次は中核地域生活支援センターまつど ほっとねっとの藤田様より、「地域生活の支援」についてご報告をお願いいたします。

藤田●中核地域生活支援センターほっとねっとでコーディネーターをしております藤田と申します。よろしくお願いいたします。

まず中核地域生活支援センターとはというところをご説明したいと思いますが、その前に一つだけ例を挙げます。どんなことをしているかというと、昨日の夕方頃にある女性の方からお電話があって、1ヶ月ぐらい前に精神障害の方で民間のアパート暮らしを始めたばかりの方で、家の前で工事をしていてその音がすごく気になって寝れないと。眠る前に日中のガンガンという音が気になって、ここ最近睡眠不足でイライラしていてとても落ち着かないと。自分なりに、工事の方に何時から何時までとか、いつまでの期間工事をしているのかとか聞きにいったらしいですが、うまく話ができずに、結局何時からやるのかがわからずに帰ってきて、もう一度聞こうにも聞きづらいと。本当に睡眠不足でイライラするので何とかしてほしいですというようなご相談をお受けして、「わかりました、明日の朝早速行きますから」ということで、今日の午前中、我孫子の方まで行ってきました。実際に工事現場の方に確認をして、工事が行われている時間と期間、それから工事をやらない曜日を確認して、本人に説明したところ、そしたらその時間を避けてなるべく家にいないように外で過ごしたりします、安心しましたと。そういうようなことを今日の午前中やってきたのですけれども、そんなこともうちのセンターではしていると、一つ例を挙げさせていただきました。

早速、資料の方ですけれども、これはスタッフの写真です。ここにあるように、「誰もが、ありのままに」と書いてあるのですけれども、これがうちの中核地域生活支援センターの理念でもあります。この中核地域生活支援センターというのは一言で言うと、福祉の総合相談窓口で、千葉県の単独事業で、千葉県にしかありません。各保健所の圏域に1ヶ所ずつあって、県内に13ヶ所あります。

ほっとねっとというのは愛称ですけれども、うちのほっとねっとは、松戸市、流山市、我孫子市の3市を対象にして相談事業を行っています。

具体的なところとして、対象者は問いません。赤ちゃんであったり年配の方であったり、対象を問わずに24時間365日対応します。その他にも、不当な扱いを受けたとか差別を受けたとかという権利侵害の対応活動もしています。

いろんな相談の事例がありますが、働くことであったり、今日のテーマにあるように病院から退院して地域で生活するとか、お金のこととか、いろんなご相談をいただいています。

これは相談件数をデータとして挙げたものですが、大体月に平均すると700件くらいの相談をいただいています。その中でも特徴的なのが、精神障害者の方のご相談が圧倒的に多いということです。

すみません、これは月に1回、うちの方で行っている食事会の様子です。

実際に退院後の生活支援について、具体的なお話をさせていただきます。

関わる上での目標として、「その人らしく、意欲を持って日常生活を営むことができる」ように支援していくという目的を持って活動させていただいています。これは支援を行っていく上での目的であって、かつ終結とするときの基準にもさせていただいています。

そのためには、うちのセンターでは、可能な限り寄り添って、楽しみを混ぜながら支援を行っています。ただ仕事はないかとか、日中の居場所を探してほしいとか、こんなところがありますよとか、そんなふうに言葉だけの情報提供で終わるのではなくて、可能な限りお会いして、本人と一緒に考えていくということを中心に活動しています。

その中で、なかなか本人がベストチョイスできないかもしれないですけれども、なるべく時間はかかっても本人の意思決定を待つことを心がけています。

具体的に退院時に対応していることとして、住居の確保までの支援ですね。一緒に物件を探しに行ったりとか、物件を見たりとか。物件が確保できたその次に生活用品、冷蔵庫だとかベッドだとか、そういったものの買い物にも同行したりしています。適宜、必要なサービスがあれば結びつけるようなところまで支援させていただいています。その後も、実際に利用者サービスや日中活動が定着して、本人が安心して利用できるまで継続的な関わりをさせていただいています。

実際に事例を一つ挙げさせていただきます。20歳代の女性なのですけれども、全く初めての一人暮らしを体験する方ですが、本人としては身の回りのことが全くできず、金銭管理もできず。近くにご家族はいますが、ほとんど協力が得られない。自分で物事の判断が全くできない。こういう方が退院して一人暮らしを希望しているけれどもと病院の方から連絡がありまして、うちのセンターで関わらせていただきました。実際に退院する前にきちんと病院とうちのセンターと関係者、市役所の方であったり退院する前に何がこの方が一人暮らしする上で必要になってくるかということで、食事を作らなきゃいけないということで、ヘルパーの方を手配したりとか、あと、金銭管理が本人はなかなかできないので、社会福祉協議会の方にご相談したり。それぞれ役割分担を決めてやっていこうというふうにチームを編成して、実際に退院を迎えられました。

そしたら最初に退院されて1ヶ月は、慣れない一人暮らしの生活のためか、不安の内容で電話も日によっては数分後にすぐ何件もかかってくるとか、本当に不安が募ってどうしようもないと混乱してしまって、部屋の中でいきなり走り出してベランダから飛び降りようとしたときに私たちがしがみついて止めたりとか、そんなこともあったんですけれども。徐々に時間が経過するにしたがって、最初の1ヶ月は大変でしたが、関係者がしっかりと月に1回、本人の情報を把握しながら継続的に見回っていくことで3ヶ月ぐらいには、本当に大きなトラブルはなくなり、電話も減りました。半年を過ぎる頃には、ヘルパーさんの手をあまり借りることなく自分で食事を作ったり、外出することがだんだん増えてきて、ちょうど1年たつ頃には、自分で自炊することが多くなって、最初、ヘルパーさんが週に2回くらい通っていたが、今では週に1回利用するかしないか程度。金銭管理も少しずつ、今度は自分でやってみたいですと自発的になってきましたので、毎週入っていた金銭管理の方も今では2週間に一度というようになっています。

今後の課題としては、就労を視野にした日中活動を考えていますが、ちょうど1年後で大分本人の生活も上がってきたので、新たに土日に過ごせる場所を最近ご紹介しました。さらに全体の管理をするケアマネージャーの方もご本人に紹介して、全体管理をお願いしようと思っていて、新たに居場所と仲間が、この方は増えました。

就労を視野に入れた日中活動を今後も考えていこうとは思っているけれども、働くことだけじゃなくて、時間があるときに趣味や楽しみを見つけられたり、時には関係機関だけでなく、もっと身近なお友達とか仲間がこの方にも少しずつできていけばいいのかなと思っています。

ここまででの考察ですけれども、大事なことは、家族以外の生活全体を考える人、支援者の必要性。今日のお話の中にもあったと思いますが、何かあったときに何とかしてくれる人、大きなトラブルにならないように事前に相談ができる人、こういった方がやはり必要なのかなと思います。そういった方が継続的に関わっていれば、本人も安心もできると思いますし、何かあったときに最小限にとどめることもできるのではないかと思います。あとは一つひとつ生活の中でご本人が達成できたものは、家族だけが「よくやったね」とか褒めることだけじゃなくて、第三者、関係者や専門機関が評価することで、より本人も安心感と、さらには自信がついていくのかなと思います。

それから、さっきのお話にもありましたが、孤立させない環境づくりです。例えば仕事は見つかりました。日常生活はまずまず落ち着いています。日中、作業所など行くところが見つかりましたと。はいよかったですね、だけではなくて、やはり趣味とか楽しみとか、友達や仲間と一緒に、他の人と同じように楽しみを持って過ごすこともすごく大事な事だと思っています。

それから、チームで対応することが非常に大事なのかなと思っています。うちのセンターだけでできるようなことも限られますし、なるべくご相談があったときには、複数の機関と連携をしながら相談に対応していくことを、うちのセンターでも心がけています。もちろんチームで連携して本人を支えていけば何でもうまくいくというわけではないですけれども、もちろんうまくいかない場合もありますが、適切な関係者と関係機関がしっかりと関わっていけば、病気や障害がある方でも地域の中で十分暮らしていくことは可能だと思っています。以上です。ありがとうございました。