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平成12年度厚生科学研究 障害保健福祉総合研究事業外国人研究者招へい報告書
ディヴィッド・ルコントレポート

病院削減・コスト戦略

  1. 各エピソード(入院)毎の支払い。
  2. 診断に基づく支払い--診断関連グループ(DRGS)を指し、症状の重さに基づく。
  3. 退院後にはそのベッドを閉鎖し、予算はその人に従って地域へ移行する。
  4. 入院許可期間枠の特定。
  5. 療養ケアへの支払い削減。
  6. 職員の地域への再配置。
  7. 退院後の病棟と病床の閉鎖。
  8. 入院の代わりに地域ベースの治療に予算が向けられる、地域オプションプログラムの充実。
  9. 長期的だと判断された人々は精神科スタッフもいるナーシングホームに必要に応じて入所することも可能。

病院転換/削減:入口(入院に関する決定)

  1. 照会があった際に、最も制約の少ない環境という原則を守ること
  2. 入院させることが現在の症状に効果的な治療であること
  3. 主として急性症状を安定化させるための入院であること
  4. 入院の前に、地域の選択肢全てを考慮すること
  5. 病院の代わりに地域の機関が入院か否かを判断すること。社会的コントロールは入院の理由として認められない。
  6. 地域の機関は入院が許可されている期間、入院のコストを書面に記すこと
  7. アフターケアの計画を入院時に策定すること
  8. 家族、重要な関係者と共に、地域の代表も入院手続きに関与すること。任意でない入院の場合は代理人が立ち会い、公正な手続きが遵守されることが望ましい。
  9. 入院許可の後に、地域の機関は見直し・許可機関として動き、病院内の本人、職員と毎日連絡を取り、退院に向けての進展を見る。
  10. 進行状態報告は定期的に書面にされ、退院に向けての記述がなければならない。
  11. 病院で治療に当たっている医者と地域の機関で退院に関して意見の相違がある場合、病院の医者は主たる治療の責任を地域で治療に当たる医者に引き渡さなければならない。

病院転換:出口(既に入院している人について)

  1. 地区の当局から指定された機関は担当地域内の入院者、入院理由、治療の進展状況、プロフィール、予定入院日数の情報を持っていなければならない。
  2. 病院、地域のスタッフは誰が退院可能か判定し、退院を可能にするために必要な地域の資源が何かを判断しなければならない。こうしたプランは書面にされなければならない。
  3. 判定は入院患者が治療に対して反応しているかを問わなければならない。すなわち、入院が現在の症状に対して有効な治療となっているのかということである。もし入院が適切でないということであれば、早急に、アフターケアのためのプランが検討され、地域で必要な資源、関係に意味をもたらす人や機関、時間の枠、そして各段階をどのように進めるのかを具体的に確認する必要がある。

退院を促進させる理由

  1. 入院が適切でない(例えば社会的理由)
  2. 入院が有効でない、例えば本人が治療に対して反応していない、もしくは症状の軽減以上の治療(性格的問題点を変えようと試みるなど)への参加意欲がない
  3. 症状が安定した場合、地域生活が早急に実現されなければならない。心理社会的リハビリテーションのために入院していることは避けられねばならない。
  4. 療養ケアは退院のための理由の一つである。もし本人が放っておかれた場合、重要な関係者が指名され、本人の権利擁護のために指名されなければならない。地域のリソース機関がこの役割を果たすことができる。

退院に関する一般的戦略

  1. 最も容易な入院患者から始め、それから最もむずかしい人にさかのぼる(社会的理由の人を最初にする。準備ができているかどうか、症状のコントロール、家族・地域の態勢・受容等)
  2. 長年にわたって施設収容されていた人も判定を受けるべきだが、一部の人にとって地域はとらえどころがないかもしれない。言い換えれば、地域への移行は施設化の度合いによっては現実的でないかもしれない。しかし、やどかりの里に35年の入院後に退院し、現在は順調な方がいた。しかし悲しいことに長期入院の人の多くは、地域への移行が決してできなくなってしまった「失われた世代」の一部であるかもしれない。

病院の利用法:痴呆症関連

 アルツハイマー症や他の痴呆の人に対して病院、ナーシングホームの利用は適切である。在宅、デイサービスが必要なレベルのケアを提供できなくなる後期においては特にそうである。ナーシングホームがこの機能を果たせず、病院が基本的ニーズに応え、毎日のプログラムを費用効果の良い形で提供できるならばなおさらそうである。病院は既にこうしたサービスを提供しているし、人口の高齢化が続くにつれてニーズはさらに増大する。これは脳機能の著しい減退をこうむっている人で治療的効果がほとんどない人である。こうした段階では、毎日の活動と良好な環境で基本的ニーズを満たすことが非常に大切となる。心理社会リハビリテーションと急性期対応の治療は限定された治療的意義を持つ。

帯広パイロットプロジェクト:コミュニティを中心とするケアシステムのモデル

 日本のどこでも地域ベースの治療に関する多くの関心が示されたことを踏まえ、帯広でパイロットプロジェクトを開始し、地域ベースの治療のモデルに関するデモンストレーションを行うことを提案する。このパイロットプロジェクトは総合的で、全体のバランスが取れたケアのシステムで、マディソンと似たものであり、本報告書が示している地域での取り組みの原則に従って実施されるのである。帯広はおおむね規模はマディソン並である。居住、就労機会、生活支援、それぞれの基礎的なものは既に地域に存在している。理解ある職員・専門家のコアグループ、地域での治療に非常に関心のあるコンシューマーがいる。さらに重要なのは、巧みで革新的な専門家、地域のオーガナイザーである門屋氏、数人の地域指向の精神科医が存在する事実は、このパイロットプロジェクトを成功に導く可能性を大きくしている。門屋氏が指揮する精神保健関連の機関は、このプロジェクトの中心的調整機関となることが可能である。このプロジェクトは地域での優れた取り組み例として日本で全国的なモデルとなることが可能である。この地域精神保健ケアシステムがうまく発展した後には、このモデルを全国的に広めるための、国によって承認されたトレーニングサイトとなることも可能である。私は地域の原則・取り組みがきちんとなされていること、実施過程でもその精神が尊重されていることを確認するために、このプロジェクトに喜んで協力したい。目的は包括的なケアシステムを作ることであり、最も重度でむずかしい精神病の人に対するバランスの取れたサービスを隙間なく提供することである。以上の原則、戦略に加え、次の管理運営に関するサービスも組み込まれる。

  • プロジェクトの計画、準備、実施、評価に責任を持つ中心的な調整機関。
  • サービスへの窓口となるのは中心的な調整機関であり、サービスは可能な限りニーズのレベル、コンシューマーの選択に基づいて承認される。
  • 中心的機関は入院と地域でのサービス両方に責任を持つ。
  • 最も制約の少ない環境・治療というアプローチが強調され、コンシューマー中心の回復指向のアプローチが実践される。
  • 入院は主に短期間だけ主に急性期の症状を安定させるために用いられる。長期の入院を必要とするのは治療に反応しない症状のある少数の人だけである。
  • このプロジェクトは総合的で、統合され、バランスが取れた地域ベースのサービス提供のシステムであり、ケアは広範囲のニーズに切れ目なく対応する。提供されるサービスのメニューは本報告書を通して提示されている。