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平成12年度厚生科学研究 障害保健福祉総合研究事業外国人研究者招へい報告書
ディヴィッド・ルコントレポート

結論

 専門家、コンシューマーの地域ベースの新たな選択肢を吟味し、進めようという熱意には心打たれた。施設収容ケアと比べて地域ベースのプログラムが格段に有効であるという理解が明確にあった。収容施設に長くいればいるほど、治療の妨げになり、入院者が自らのことができなくなってしまうということがおおむね理解された。また、最も重度の精神保健面の問題のある人も、地域で支援を得て生活できなければならないという理解があった。その方が完全で早い回復を可能にし、貢献する市民となれるという理解でもある。サービスの構成(デザイン)は自然な地域の環境の中で準備、策定、設定されなければならないという理解もあった。しかし、こうした動きを多数の人に可能にする変革が困難であるというフラストレーションの意識が見られた。中央官庁、権力に関するフラストレーションはマスタープラン、政策、方向性、予算戦略、タイムリーな変革を可能にするトレーニングそれぞれについても明らかだった。

 日本が全土での総合的な精神病院を発展させて実績を見れば、この産業を創造し、作り上げた同じ文化はリソースを優れた地域指向の治療に再配分する可能性を持っている。施設収容型のサービスは地域に移行が可能である。病院は主に一時的な治療のためのものとなる。そうすることでモデルができて実施され、公式に広まり、全国的に普及することになる。

 私たちの目前の課題は、害を与えず、全ての人が尊厳を保てるよう敬意を払い、人権を守るための私たちの能力に関係している。私たちが強調しなければならないのは、コンシューマー主体で回復指向の、最も制約の少ない環境・治療であり、障害のみではなく、能力に基づいて地域でみんなと同じように暮らせる機会を提供することである。また、私たちは人間の力に着目し、誰もが自らの可能性を最大限に発揮できる機会を与える必要がある。私たちはコンシューマーの権利のために声をあげ、可能性を引き出し、変革を進めるための力にならねばならない。パワーを与え(エンパワメント)、障害のある人を受けとめることで、私たちは障害のある人が帰属感を持つことができるようにし、夢が実現できる機会を作り出すための手助けができる。日本には33万5千人の人が精神病院で生活し、私たちが人間としての価値と原則を支えるのを待っている。精神病はWHOの2001年の重点施策である。まさに重点施策として、日本が精神保健システムに関する重要な変革を行うべき、エキサイティングな転換点である。日本には世界でも最良の精神保健システムを構築できる可能性があると私は確信している。

参考文献
Allness, D.J. & Knoedler, W.H.(1998). The PACT Model of community-based treatment for persons with severe and persistent mental illness. NAMI Anti Stigma Foundation: A Manual for PACT Start-Up. NAMI (National Alliance of the Mentally Ill), Campaign to End Discrimination. Arlington, Virginia.

木村真理子(2000).重症の精神病を持つ人々を支える地域を拠点とした包括的な治療モデル マディソンモデル:ウィスコンシン州デーン郡の「PACT」と「デーン郡精神保健センター」のサービスシステム,『響き合う街で』14,64-78.

LeCount, D. (2000). Keeping the treatment focus in the community: Madison Model. Paper Presented in Japan (With Power Point).

LeCount, D. (1998). “The city of Madison, U.S.A. The Madison Model, keeping the focus of treatment in the community.” (In D. Goldberg and G. Thornicroft Eds, Mental health in our future cities, pp 147-172.). Psychology Press: Filey, North Yorkshire.