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平成12年度厚生科学研究 障害保健福祉総合研究事業外国人研究者招へい報告書
ディヴィッド・ルコントレポート

課題

 上記の情報をもとに引き出される最も重要な課題は次の通りである。

  • 入院を加速度的に減らすために必要な地域の受け入れ体制をどのようにして整備するのか。
  • 病院産業と、必要である地域でのサービス両方に同時にどのように予算を確保するのか。
  • 病院の新たな活用法。
  • 専門家、一般市民の態度、認識、対応を変えるためにトレーニング、広報活動をどう行えばよいのか。
  • 地域へのインクルージョンと自然な支援を促進するよう、地域の文脈でサービスを提供する方法。
  • コンシューマーをサービス提供者(職員)として採用し、ピアサポートにお金を払うことをはじめとして、コンシューマーの関与をサービス提供システムの全ての要素に盛り込むこと。
  • コンシューマー中心で回復指向の取り組みであること。

提言

 本報告書の第一の目的は入院を減らすという方向性を促進、加速し、地域での精神保健サービスを増加し、多数の人を対象としたケアのシステムを展開することにある。この地域のシステムは包括的であり、連絡調整がなされたもので、多岐にわたるニーズ、多様なケアレベルに対して連続性があり、隙間のないサービスの連続体でなければならない。こうしたサービス全ては既存のシステムが内包する力の上に築かれなければならない。その立案、準備、実施は各地で行われねばならず、地域でのサービスと入院サービス両方に責任を持つ単一の機関が地域に対する全体的権限を持たねばならない。政府、自治体の全てのレベルがこの新しい構造を促進し、マスタープランに盛り込まれるべき法律、政策、手続き、任務、予算、トレーニングを通じて変革を起こさねばならない。

地域で暮らすために必要で、従来実現していないサービス、手法をここで提案する。それは次の通りである。

  • 24時間の機動性のある危機介入体制。危機介入サービス提供のみならず、この機関は入院を許可し、モニターする他、アフターケアの準備の促進、地域生活への移行をタイムリーに行うものとする。
  • 職員によってケアを提供する居住形態を多様な形で準備する。
  • 包括的、また多職種が相互に働く積極的なチームアプローチによって、24時間対応が可能で、コンシューマーがいる地域のどの場所にでもサービスが提供できること。
  • 各プログラム内でのケースマネジメントと、複数の機関、プログラムが関係する場合のシステムケースマネージメントの指名
  • ライフサポートセンター、クラブハウス等のようなデイサービス、つまり(就労も含む)心理社会的リハビリテーション、ピアサポートが抗精神病薬と共に提供されること。
  • 仕事がコンシューマーの関心、技術、能力に基づき、統合され、自然な地域の仕事の場所で、適切な配慮と指導のもとに提供されること。
  • 服薬管理やケースマネジメントサービスが、これらのサービスが提供されている場所に出向くことができるコンシューマーに対しても提供されること。
  • 地域指向の精神医療は、チームメンバー一人一人の役割・貢献を理解し、プラスに評価すると共に、各専門分野の取り組み・専門性を支援する能力を理解し、お互いをコンサルタントとして活用すべき時と活用の方法を知っていること。

 以上が日本での変化の過程を一層促進できる項目、考え方の一部である。ここで地域ベースの治療の基本的原理を要約する。