修正議長草案と議長草案の比較
川島聡・長瀬修 仮訳
(2006年4月4日付)
第26条 ハビリテーション及びリハビリテーション
- 締約国は、障害のある人が、その最大限の自立と、
十分な身体的、精神的、社会的及び職業的な能力と、生活のあらゆる側面への完全なインクルージョン及び参加とを達成
しかつ維持することを可能とするための効果的かつ適当な措置
(ピアサポートを通じたものを含む。)をとる。このため、締約国は、特に保健、雇用、教育及び社会サービスの分野において、次のような方法で、包括的なハビリテーション及びリハビリテーションのサービスを組織し、強化し及び拡張する 。
124
- 締約国は、ハビリテーション及びリハビリテーションのサービスに従事する専門家及び職員に対する初期訓練及び継続訓練を充実させることを促進する
(原注5:特別委員会の構成員は、草案第4条の訓練に関する一般的義務を討議した後に、この第2パラグラフを削除するか否かを検討することを望むかもしれない) 。
127
第27条 労働及び雇用
- 締約国は、他の者との平等を基礎として、障害のある人の労働の権利を認める。 この権利には、障害のある人にとって開かれたインクルーシブでアクセシブルな労働市場及び労働環境において、障害のある人が自由に選択し又は引き受けた労働を通じて生計を立てる機会についての権利を含む。
締約国は、特に次のことのための適当な行動(立法を通じたものを含む。)をとることにより、雇用の過程で障害を持った者を含む障害のある人のために労働の権利の実現を保障し及び促進する 。
128
-
締約国は、障害のある人が奴隷状態又は隷属状態に置かれず、かつ、強制的又は義務的労働から他の者との平等を基礎として保護されることを確保する 。
140
第28条 十分な生活水準及び社会
[保護
]
141
(原注6:特別委員会は、社会開発委員会第39会期への事務総長報告(E/CN.5/2001/2)に含まれているように、社会保護が広範な解釈を有するという理解に基づいて、この言葉を用いた。)
- 締約国は、自己及びその家族の十分な生活水準(十分な食料、衣類及び住居を含む。)についての並びに生活条件の不断の改善(清浄な水の入手を含む。)についての障害のある人の権利を認め、また、この権利を障害に基づく差別なしに実現することを保障し及び促進するための適当な行動をとる 。
142
- 締約国は、社会
[保護
]についての障害のある人の権利及びこの権利を障害に基づく差別なしに享有することについての障害のある人の権利を認め、また、その権利の実現を保障し及び促進するための適当な行動をとる。これには次の措置を含む 。
143
第29条 政治的及び公的活動への参加
締約国は、障害のある人に対して政治的権利及びこの権利を他の者との平等を基礎として享有する機会を保障するものとし、また、次のことを約束する。
第30条 文化的な生活、レクリエーション、余暇及びスポーツへの参加
- 締約国は、障害のある人が他の者との平等を基礎として文化的な生活に参加する権利を認め、また、次のことを確保するためのすべての適当な措置をとる。
- 締約国は、障害のある人が、自己の利益のためばかりではなく社会を豊かにするために、創造的、芸術的及び知的な潜在能力を育成し及び活用する機会を有することを可能とするための適当な措置をとる。
- 締約国は、
国際法に従い、知的財産権を保護する法令が文化的作品への障害のある人のアクセスを妨げる不合理な又は差別的な障壁とならないことを確保するためのすべての適当な行動をとる 。
152
- 障害のある人は、他の者との平等を基礎として、その独自の文化的及び言語的なアイデンティティ(手話及びろう文化を含む。)の承認及び支持を受ける権利を有する。
- 障害のある人が、他の者との平等を基礎として、レクリエーション、余暇及びスポーツの活動に参加することを可能とするため、締約国は次のことのための適当な措置をとる。
(a) 障害のある人が、あらゆる段階における主流のスポーツ活動に可能な最大限の範囲内で参加することを奨励し及び促進すること。 (b) 障害のある人が障害独自のスポーツ活動及びレクリエーション活動を組織し、発展させ及びそれに参加する機会を有することを確保すること、並びにこのため適当な指導、訓練及び資源が他の者との平等を基礎として提供されることを奨励すること。 (c) 障害のある人が、スポーツ、レクリエーション及び観光の場所にアクセスすることができることを確保すること。 (d) 障害のある子どもが、遊び、レクリエーション、余暇及びスポーツの活動(学校制度におけるこれらの活動を含む。)への参加に平等にアクセスすることができることを確保すること。 (e) 障害のある人が、レクリエーション、観光、余暇及びスポーツ活動の組織に携わる者によるサービスにアクセスすることができることを確保すること。
- 「最大限のfullest」を「十分なfull」に修正。「達成するattain」を「達成しかつ維持するattain and maintain」に修正。「適当な措置」の後に「(ピアサポートを通じたものを含む。)including through peer support」を挿入。
- 「ニーズ」の後に「及び長所and strengths」を挿入。
- 「かつ」の前に「自発的なものでありare voluntary」を挿入。
- 「原注5」を追加。
- 「締約国は、公的部門における障害のある人の雇用を通じて模範を示すものとし、また、労働の権利の実現を保障し及び促進するための他の適当な行動をとる。これには次の措置を含むincluding measures to:。」を「締約国は、特に次のことのための適当な行動(立法を通じたものを含む。)をとることによりby taking appropriate steps, including through legislation, inter alia:、雇用の過程で障害を持った者を含む障害のある人の ために労働の権利の実現を保障し及び促進する。」に修正。
- 「募集、採用及び雇用の条件、職務継続、昇進、労働条件(平等な機会及び同一価値の労働についての同一報酬を含む。)、安全かつ健康的な作業条件並びに苦情処理に関し、法律を通じて障害のある人を保護するための措置」を「雇用に係るすべての事項(募集、採用及び雇用の条件、職務継続、昇進並びに労働条件を含む。)に関し、障害に基づく差別を禁止すること。」に修正。
- 議長草案27条(a)と同条(b)の要素を盛り込んだ内容。
- 議長草案27条(b)の要素を盛り込み、それを次のように修正。「一般法令から成る国内法に従いnational laws of general legislation」を「[他の者との平等を基礎として、かつ、一般に適用のある国内法に従い、][on an equal basis with others and in accordance with national laws of general application]」に修正。「確保するための措置」を「確保すること」に修正。
- 議長草案27条(c)とほぼ同様。「するための措置」を「すること」に修正。
- 議長草案27条(d)とほぼ同様。「するための措置」を「すること」に修正。
- 議長草案27条(e)とほぼ同様。「するための措置」を「すること」に修正。
- 議長草案に見られない新たな内容。
- 議長草案27条(f)の要素を盛り込み、それを次のように修正。「使用者が、積極的差別是正措置、奨励制度その他の措置を含むことのある適当な政策及び措置を通じて、障害のある人を雇用することを奨励するための措置」を「積極的差別是正措置、奨励制度その他の措置を含むことのある適当な政策及び措置を通じて、民間部門における障害のある人の雇用を促進すること。」に修正。
- 議長草案27条(g)とほぼ同様。「するための措置」を「すること」に修正。
- 議長草案27条(h)とほぼ同様。「するための措置」を「すること」に修正。
- 議長草案27条(i)とほぼ同様。「するための措置」を「すること」に修正。
- 議長草案に見られない新たなパラグラフ・内容。これは、自由権規約8条の要素を盛り込んだ内容。自由権規約8条の政府訳はforced or compulsory labourを「強制労働」と訳しており、forcedとcompulsoryは訳し分けていないが、ここでは「強制的又は義務的労働」と訳した(宮崎編『解説・国際人権規約』日本評論社(1996年)150頁参照)。
- 「十分な生活水準及び社会保護Adequate standard of living and social protection」(議長草案28条の見出し)は、「保護」の部分に角ブラケットを追加。「保護」の後に「原注6」を挿入。
- この関連規定の政府訳では、an adequate standard of living for himself and his family, including adequate food, clothing and housingを「自己及びその家族のための相当な食糧、衣類及び住居を内容とする相当な生活水準」(社会権規約11条1)と訳し、a standard of living adequate for the child's physical, mental, spiritual, moral and social developmentを「児童の身体的、精神的、道徳的及び社会的な発達のための相当な生活水準」(子どもの権利条約27条1)と訳し、adequate living conditionsを「適当な生活条件」(女性差別撤廃条約14条2(h))と訳しているが、ここでは、an adequate standard of livingを「十分な生活水準」と訳し、foodを「食料」と訳した(宮崎編『解説・国際人権規約』日本評論社(1996年)35, 71-72頁、永井他編『新解説 子どもの権利条約』日本評論社(2000年)158-159頁、波多野『逐条解説 児童の権利条約』有斐閣(1994年)184頁参照)。なお、政府訳では、adequate nutritious foods and clean drinking-waterを「十分に栄養のある食物及び清潔な飲料水」(子どもの権利条約24条2(c))と訳し(永井他編『新解説 子どもの権利条約』日本評論社(2000年)148頁は「十分な栄養価のある食事および清潔な飲料水」と訳している)、adequate nutritionを「適当な栄養」(女性差別撤廃条約12条2)と訳し、have access to adequate health care facilitiesを「適当な保健サービスを享受する」(同条約14条2(b))と訳している。
- 「社会保護」の「保護」の部分に角ブラケットを追加。
- 「社会保護計画」の「保護」の部分に角ブラケットを追加。「貧困削減戦略poverty reduction strategies」を「貧困削減計画poverty reduction programmes」に修正。
- 「を賄うためのto cover disability-related expenses」を「を伴ったwith disability-related expenses」に修正。「(これは、自己を発展させる意欲を阻害するものとなってはならない。)」を削除。
- 議長草案に見られない、角ブラケット付きの新たなサブパラグラフ・内容。
- 「次のことによりby:」を「特に次のことによりinter alia, by:」に修正。「一般に適用のある国内法に従い、他の者との平等を基礎として」の部分に角ブラケットを追加。
- 「公職に就き及びすべての公務を遂行する」の前に「効果的に」を挿入。「保護すること」を「保護し、適当な場合には支援技術及び新技術の使用を容易にすること」に修正。
- 「…(政党の活動及び運営を含む。)に参加すること。Participation in …, including the activities and administration of political parties」を「…に参加し並びに政党の活動及び運営に参加することParticipation in…, and in the activities and administration of political parties」に修正。
- 「すべてのアクセシブルな」から「すべて」を削除。
- 「すべてのアクセシブルな」から「すべて」を削除。
- 「国際法の規定を尊重すると同時に, while respecting the provisions of international law.」を「国際法に従いin accordance with international law」に修正。