ベトナムの障害者証明書・統計・法律・政策

脳性麻痺の成人の会プログラム開発リーダー
ヒョウ・ティー・ルー
(翻訳:河野宣之)

ベトナムは、「障害者の権利に関する条約(国連障害者権利条約)」を批准しました。批准は、2014年にアジア太平洋障害フォーラム(APDF)がハノイで開催された際に行われました。これは、ベトナム政府がすべての市民のためのバリアフリー社会を構築しようとする動機となっています。しかしながら、「障害者法」があっても、各政府機関が連携し障害者の権利を保証するべき効果的な政策が欠如しているため、障害者の生活は、依然として多くの課題に直面しています。本稿では、障害者証明書、障害統計、障害関連法についてご紹介します。

障害者証明書は、障害者の権利を認めた最初の文書です。

2010年に「障害者法」が公布され、障害者の権利は障害者証明書を手にすることで認められました。障害者は地方自治体に行き、障害者証明書を取得するための登録をします。証明書交付の決定は、現地の障害度確定評議会を通じて、直接の観察とアンケートによって行われます。法務省によると、2019年末までに300万人近くの障害者に障害者証明書が交付されました(65歳未満の障害者の26%が認定され、そのうち20%が特別重度障害者であり、66%が重度の障害者です)。

障害者証明書はベトナム語で「Giấy chứng nhận khuyết tật」と書かれた青い紙で、名前、性別、生年月日、住所、障害の種類、障害のレベル、そして登録場所が記載されています。(写真)

障害者法によると、障害者は、軽度、重度、そして特別重度の3つの異なる程度の障害に分類されます。

  • a)特別重度障害のある人は、障害のために個人的な日常生活活動を自力で行うことができない人です。
  • b)重度障害のある人は、障害のために個人的な日常生活活動の一部を行うことができない人です。
  • c)軽度障害者とは、この項のaおよびbで定義されたケースに該当しない人です。

障害者が障害者証明書(カード)を持つことによって受けられる公的補助は、障害の程度によって異なります。特別重度障害者には、月々の手当と介護手当が支給されます。重度障害者には月々の手当が支給されます。補助には、障害者が美術館を訪れたり、航空券や電車の切符、その他の公共交通機関を利用したりする際の割引も含まれます。ハノイ在住の障害者は、公共バスを無料で利用できるカードを取得することもできます。しかし、すべてのバスが車椅子で利用できるわけではありません。その結果、障害者は、本来受けるべき特典を最大限に活用するためには、依然として多くの課題に直面しています。

障害者証明書

障害者証明書の写真

ベトナムの障害統計

障害者法(LPD、2010年制定)は、障害者を「身体の一つまたは複数の部分に障害があるか、障害の形で表れる機能低下をきたし、仕事や日常生活、学習に困難をきたす人」と定義しています。この定義は、身体障害と相互作用して障害を形成する社会的障壁を考慮せずに、障害者の生活に困難をもたらすとみなされる身体障害のみを強調しているため、国際的に受け入れられている定義の概念との対応を完全には網羅していません。

統計総局(GSO)がワシントングループの拡張設問を使用して実施した2016年の全国障害者調査により、家庭や介護センターに住んでいる人々を含め、ベトナムには約620万人の障害者がいることがわかりました。これは人口の7%に相当します。そのうちの58%が女性で、11%が2歳から17歳の児童です。障害のある児童は、政府によって国の配慮と支援が必要な、非常に困難な状況にある14の児童グループの1つとして特定されています。

調査によると、国内の多くの障害者が複数の障害を持っており、4%以上が二つ以上の機能領域で多くの困難を抱えています。最も一般的なタイプの障害は、下半身の運動障害です(3,566,854人)。続いて認知障害(2,622,578人)、上半身の運動障害(2,158,988人)、精神障害(1,097,629人)およびコミュニケーション障害(836,247人)です。

障害者率は年齢とともに上昇する傾向があり、男性より女性の方に障害者率が高い。2019年にワシントングループの短い設問を使い統計総局(GSO)によって実施された全国人口・住宅国勢調査によると、ベトナムの6つの社会経済地域の中で、障害者率が最も高い地域は北中部および中央海岸(7.6%)であり、最低率は中央高地(4.1%)でした。農村部の障害者率は、都市部の1.5倍です。

ベトナムの障害統計

障害者法(LPD、2010年制定)は、障害者を「身体の一つまたは複数の部分に障害があるか、障害の形で表れる機能低下をきたし、仕事や日常生活、学習に困難をきたす人」と定義しています。この定義は、身体障害と相互作用して障害を形成する社会的障壁を考慮せずに、障害者の生活に困難をもたらすとみなされる身体障害のみを強調しているため、国際的に受け入れられている定義の概念との対応を完全には網羅していません。

統計総局(GSO)がワシントングループの拡張設問を使用して実施した2016年の全国障害者調査により、家庭や介護センターに住んでいる人々を含め、ベトナムには約620万人の障害者がいることがわかりました。これは人口の7%に相当します。そのうちの58%が女性で、11%が2歳から17歳の児童です。障害のある児童は、政府によって国の配慮と支援が必要な、非常に困難な状況にある14の児童グループの1つとして特定されています。

調査によると、国内の多くの障害者が複数の障害を持っており、4%以上が二つ以上の機能領域で多くの困難を抱えています。最も一般的なタイプの障害は、下半身の運動障害です(3,566,854人)。続いて認知障害(2,622,578人)、上半身の運動障害(2,158,988人)、精神障害(1,097,629人)およびコミュニケーション障害(836,247人)です。

障害者率は年齢とともに上昇する傾向があり、男性より女性の方に障害者率が高い。2019年にワシントングループの短い設問を使い統計総局(GSO)によって実施された全国人口・住宅国勢調査によると、ベトナムの6つの社会経済地域の中で、障害者率が最も高い地域は北中部および中央海岸(7.6%)であり、最低率は中央高地(4.1%)でした。農村部の障害者率は、都市部の1.5倍です。

ベトナムは、障害の問題に対処し、障害者を支援するために、部門間の調整構造とメカニズムを確立しました。政府内では、労働・傷病兵・社会省(MOLISA)、保健省(MOH)、教育訓練省(MOET)が主導的な役割を果たしています。労働・傷病兵・社会省(MOLISA)は、法律文書/プログラム/計画の公布を含む、障害問題に関する全体的な国家管理に責任を負っています。障害者に直接関連する政策、国家計画、プログラムの実施、障害問題に取り組んでいる他の省庁、省庁レベルの機関、および省政府の人民委員会との調整も行なっています。同省(MOLISA)内では、社会保護局が中心機関であり、国家障害委員会(NCD)が運営されています。

保健省(MOH)は、障害者のための医療の提供を担当しています。保健省は労働・傷病兵・社会省(MOLISA)と協力して、障害者の機能リハビリテーションを指定、関連するトレーニングを提供し、地域に根ざした機能リハビリテーションを指導しています。教育訓練省(MOET)は、教師の訓練、カリキュラム、文書、シラバス、および障害のある生徒のための教科書の編集を含む、障害者のための教育の提供を担当しています。他の省庁は、それぞれの分野の障害問題に焦点を当てています。

また、障害問題に取り組んでいる二つの統括国家機関があり、国家障害委員会(NCD)とベトナム障害者連合(VFD)といいます。国家障害委員会(NCD)は当初、2005年に労働・傷病兵・社会省(MOLISA)の下で障害に関する国家調整協議会(NCCD)として設立されました。障害者に関する法律と政策の実施を調整、促進、監視する任務を負い、障害者を支援するための国家行動戦略2012-2020を策定しました。2015年に国家調整協議会(NCCD)は国家障害委員会(NCD)になりました。国家障害委員会(NCD)は現在63省のうち 34省に地方委員会を持っており、障害者支援活動について首相が関連省庁、政府機関、および地方自治体に指示を出し、調整することを補佐する信任を与えられています。国家障害委員会(NCD)は労働・傷病兵・社会省(MOLISA)の大臣が議長を務めます。現在、委員会には12名の関係省庁の次官と6つの中央障害者団体の代表を含む18名の委員がいます。ベトナム障害者連合(VFD)はベトナム市民と障害者団体(DPO)による任意の社会組織であり、労働・傷病兵・社会省(MOLISA)の下に置かれています。ベトナム障害者連合(VFD)の使命は、ベトナム共産党の政策・指針、障害に関する国の法律および政策の策定と実施を草の根レベルで支援することです。ベトナム障害者連合(VFD)はまた、障害者の地位と役割を高めることを提唱し、国際フォーラムにおいて障害者団体(DPO)および障害者を代表します。ベトナム障害者連合(VFD)は、障害者の声を国家障害委員会(NCD)および関連する政府機関に伝えることを目指しています。また、ベトナム障害者連合(VFD)を通じて、障害者団体(DPO)と障害者は、障害関連の政策の実施を監視する権限を持つことになっています。ベトナム障害者連合(VFD)の会長は障害者ではありませんが、現在のベトナム障害者連合(VFD)執行委員会は全国からの62名の委員で構成されており、そのうち51名が障害者であり、うち17名が女性です。常設委員会には17名の委員がおり、そのうち14名が障害者であり、うち6名が女性です。

国レベルでは、国会(NA)が、障害関連の法律や政策、ならびに障害者権利条約(CRPD)の実施を監督する最高の独立した監督機関として政府が定めています。国会は、障害者の権利を保護するための法律を制定、修正する任務を負っており、障害者に関する統計データは、国会の年次監視レポートを通じて配布されています。現在の 国会議員で障害があることが公に知られている人はいません。

障害者法(LPD)の下、省や県、村では、人民評議会が政策の実施を監督する権限を持っています。ベトナム祖国戦線とそのメンバー組織は、国の機関・組織による障害政策とプログラムの開発、実施の監視・監督に参加する責任があります。人民評議会およびベトナム祖国戦線のメンバーである障害者の数に関するデータはありません。

障害者法(LPD)で定義されているように、障害者団体(DPO)は「障害者であるメンバーの正当な権利と利益を代表し、障害関連の法律と政策の策定に参加し、その実施を監督するために法律の下で設立され、運営されている社会組織です。省レベルの障害者団体(DPO)は、63の省と市のうち21で正式に設立されています。他にも多くの非公式の障害者団体(DPO)が全国に存在し、さまざまなグループを代表し、障害者のさまざまなニーズに焦点を当てています。障害者団体(DPO)は、障害関連の政策の策定に参加し、障害者のエンパワメントを促進し、カウンセリング、生計創出、社会的保護などのサービスを提供してきました。

参考文献
ベトナム全国障害者調査2016 https://www.gso.gov.vn/en/data-and-statistics/2019/03/vietnam-national-survey-on-people-with-disabilities-2016/
障害者法は2010年に公布。https://dredf.org/wp-content/uploads/2012/08/Vietnam-the-law-on-persons-with-disabilities.pdf
国会。2015。ベトナムの法律文書の公布に関する法律。https://thuvienphapluat.vn/van-ban/Bo-may-hanh-chinh/Luat-ban-hanh-van-ban-quy-pham-phap-luat-2015-282382.aspx. 2021年8月29日にアクセス。
全国委員会。2019年。2019 年障害者に関連する作業に関する報告。
http://www.molisa.gov.vn/Pages/tintuc/chitiet.aspx?tintucID=222183. 2021年8月25日にアクセス。
法務省。2017。障害者権利条約(CRPD) の実施に関する報告。
https://www.globaldisabilityrightsnow.org/sites/default/files/related-files/258/2017%20Vietnam%20Initial%20State%20Implementation%20Report.pdf. 2021年8月25日にアクセス。

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