[法務省]精神障害を有する者等の性犯罪被害に関する研究報告書を公表

令和7(2024)年3月26日、法務省法務総合研究所は、「精神障害を有する者等の性犯罪被害に関する研究」という研究報告書を公表しました。

令和3年3月に閣議決定された「第4次犯罪被害者等基本計画」において、法務省は、「性犯罪被害者、障害者等の犯罪被害者の特性に応じた被害実態の調査・分析を実施する方向での検討も含め、犯罪被害の動向及び犯罪被害者等施策に関する調査を実施する。」としたことから、同研究所は、性犯罪被害者のうち、特に被害が潜在化しやすいとされる精神障害者の実情を明らかにすることにより、被害を防止し被害者支援策等を検討するための基礎資料を提供することを目的として本研究を実施したとのことです。

研究では、統計調査、特別調査、施策調査の3つの調査が実施されています。

統計調査は、性犯罪被害に関する各種統計資料を用いて、検挙件数・検挙人員数、起訴・不起訴人員数、有罪人員数等について調査しています。

特別調査では、精神障害を有する者を主な対象として刑事確定記録の精査を中心として調査が実施されています。

施策調査では、警察、検察・裁判、矯正、更生保護、法テラス、性犯罪・性暴力被害者のためのワンストップ支援センターの①被害者等に配慮した制度、②被害者等施策推進のための取組、③被害者等に対応する職員の育成という3つの観点から調査を行っています。

調査結果を少し紹介しますと次のようになっています。

  • 被害者の属性別では、精神障害を有する者のうち7割以上が知的障害に該当した。
  • 最初に受けた被害の態様は、「強制わいせつ等」が7割を超えていた。
  • 最初の被害の場所は、精神障害あり群では、学校・就労先・療養所・デイケア施設等が最も多かった。
  • 加害者はほぼ全員が男性であり、同種前歴を有している者は1~2割程度にとどまるという傾向であった。
  • 被害当時の被害認識について、精神障害あり群は、加害者から行われた行為の意味内容を理解できていなかったり、同行為が犯罪行為の被害であると明確に認識できていなかったりする傾向があった。
  • 精神障害あり群については、比較的高い割合で司法面接的手法による取調べが実施されていた。
  • 発達障害又は軽度の知的障害を有する被害者においては、加害者から犯罪行為の被害を受けたことを認識できている場合が多かった一方で、認知症、重度又は最重度の知的障害を有する被害者においては、加害者から行われた行為自体を認識できていない場合や、その行為の意味内容をほとんど理解できていない場合が多く、被害申告がないケースも多いなどの傾向が見られ、より被害が潜在化しやすい可能性が示唆された。

詳しくは下のサイトをご覧ください。(寺島)
https://www.moj.go.jp/housouken/housouken03_00138.html

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