NPO法人月と風と 代表
清田仁之(きよたまさゆき)
NPO法人月と風とは、兵庫県尼崎市で主にしょうがいのある方へのヘルパー派遣をしています。支援者と利用者だけではない関係性をつくるという実践の中で、しょうがいのある人が働く場として古着を寄付していただき販売する『チャリティショップふくる』を運営しています。
月と風とのヘルパー利用者の車いす男性(25歳)の作業所での時給が20円でした。「僕の1時間20円なんですかね?」「これやらんといかん仕事ですかね?」「僕って社会に必要ですかね?」。下がる自己肯定感を前に、お金だけではないけれど、前向きに生きる上でお金も必要で、彼の魅力をいろんな人に知ってほしい!と、強く思いました。
知り合いが神戸でチャリティショップをやっていたこともあり、地域のみなさんの寄付・ボランティアで成り立つ新しい価値を持ったお店をつくりたいと思っていました。その人の発案でクラウドファンディングをして車いすの男性と共にロンドンにチャリティショップ見学&研修に行きました。帰国後、しょうがいのある人もない人まぜこぜでどんなお店がいいかを考えるワークショップを半年間行い、その中で仲間になっていただいたコープこうべさんと協働で2019年4月に『チャリティショップふくる』をオープンしました。
ふくるはどんなしょうがいがある方でも最低賃金(現在1,001円)を支払い、日本では80%が燃やされているという古着のリユースをすすめ環境にも寄与しています。服の提供、車いす店員の販売の手伝い、服の購入など、すべてが寄付・ボランティアで成り立っています。このような運営システムが、福祉やしょうがいのある人に興味がない地域の人にもかかわりやすいのだと感じています。これがチャリティショップの醍醐味です。
お店のオープン以来、年間300万円の売り上げがあり、車いすの店員を3名雇用、月平均30名のボランティアによって運営しています。店員は寄付された古着(月に2トン!)の仕分け作業(売り物になるものとならないもの)、値付け、納品、ハンガーかけ、接客、販売、レジ操作、開店閉店作業、「AI(あんた!いいやん!)コーデ」(寄付金額により、車いす店員がその方の写真をもとに服を勝手にコーディネートして発送するサービス)などを行っています。ボランティアは、高いところにある服を取ったり、お金を数える手伝いや言語障害のある店員の発語の通訳などをしています。
その他、年間10校ほど地域の学校で講演活動も行っています。また、SDGsを実践しているお店として、テレビや新聞、教育機関に取り上げていただき、福祉分野以外の人たちにも知られるようになりました。
今後は、チャリティショップの仕組みをもっと尼崎市内に流行らせることを目指しています。現在市内に4店舗(ふくる以外の店舗も含めて)あります。チャリティショップ発祥の国イギリスには16,000店舗ありました。その数は日本でいう青いコンビニの数と同じです。イギリスは、寄付する間口が広く、助け合いが当たり前であり、それが文化になって根付いています。
尼崎市にある青いコンビニの数とチャリティショップの数が同じになったら、尼崎は寄付文化の醸成という点で、ロンドンになったと言っても過言ではありません!みんなで尼崎をロンドンに!!(すいません取り乱しました…)
尼崎が日本のロンドンになる。それは、助け合い、支え合い、違いのおもしろがりが溢れるまちになるということです。そんなバリアフリーなまちづくりに貢献したいと思い、日々自転車をこいで市内を駆け回っています。