放送大学教養学科情報コース
遊佐一弥(ゆさかずや)
私は幼少期に突発性発疹の熱けいれんによる脳症後遺症になりました。今も左半身を中心に麻痺が残っていて、移動は車椅子です。電動車椅子は操作が上手くできないため、手動車椅子で押してもらっています。また、会話は聞き取りはできるものの、発語が上手にできないため、会話補助装置も使いながらコミュニケーションをとっています。食事やトイレは一人ではできず、介助が必要です。こうして書くとできないことばかりのように聞こえるかもしれませんが、リハビリは発病後からずっと続けていて、体の動かし方を訓練して鍛えています。少しずつですが、できることが増えるとうれしいです。
私はわりと好奇心旺盛なほうで「やりたいこと」「やってみたいこと」を見つけるのですが、体が上手に動かせなかったり、その場への移動が難しかったりして「しょうがない」「これでいいや」とあきらめることが少なからずあります。もちろん、人のサポートを借りてできることもあるのですが、自分ひとりでできるようになると、もっと自由に動いて、考えて、やってみたいということが広がると思っています。
今の世の中はシステムで操作や管理をしていることが多いです。特にAIなどはうまく活用すれば「できるけど大変なこと」や「できていないこと」のサポートができると考えています。私は、もともと情報系の分野に興味があったこともあり、高等部卒業後は放送大学の情報コースと東京コロニーという社会福祉法人のIT技術者在宅養成講座を受講して、システム開発の勉強をすることにしました。こうした勉強は、以前は通学か独学でしかできなかったと聞いていますが、今はシステム環境が整ってオンラインや在宅で学ぶ機会が増えました。特に、IT技術者在宅養成講座では、資格取得支援のみならず、一人では行き詰まったりするような点も相談することができるので、ありがたいです。
将来、システム開発ができるようになったら、まずは車椅子の自動運転と発語解析のシステムを作りたいと考えています。自動車の自動運転はすでに実現化していますが、高齢化もあって車椅子に乗る方は増えるので、安全に自分で移動できる手段が増えるのは望ましいと思います。発語解析は、私のように発語が上手にできない人ばかりでなく、なまりや方言のある方も活用できると思います。
世の中の「できないこと」は、システムだけでは解決しないことも多いですが、できないことができるようになる一部は担えると考えているので、システムの勉強は楽しみです。勉強は難しい箇所もありますが、サポートしてくださる方も応援してくださる方もいますし、頑張りたいと思っています。
ただ正直なところ、システム開発の勉強をして、大学卒業後に、こうした夢を具体化するにはどうしたらよいのだろうかという不安はあります。いずれは起業したいと考えていますが、起業するにはお金が足りないし、一緒に開発をしてくれる方を探すのも大変そうです。しかし、「やらなければ誰かが実現してくれるの?」「やらないまま誰かが実現してくれるのを待っていていつになるの?」とも思います。すぐには実現できないかもしれませんが、私なりに自分のやるべきことに向き合って、知識を積み重ねて、相談できる人の輪を広げていくしかないと考えています。できないことができるようになる未来に繋がることを期待して、一歩ずつ夢に近づけるように頑張ります。