地域発~人をつなぐ地域をつなぐ-子どもたちも一緒に地域づくり

「新ノーマライゼーション」2024年5月号

NPO法人カムイ大雪バリアフリー研究所 代表理事
五十嵐真幸(いがらしまさゆき)

はじめに

私たちは、NPO法人カムイ大雪バリアフリー研究所で就労継続支援施設チーム紅蓮を運営しています。私自身も車いすを利用しているほか、スタッフや利用メンバーも障がい当事者が多い法人です。

地域の役に立ちたいけど、障がいにより、環境が整わず就職することができない、仕事を解雇されてしまった、という当事者はいったいどうすればいいのだろうかと悩んでいた中、自分たちが「働きやすい環境」を整えては?と地元企業の代表からアドバイスと協力をいただき、2011年に法人の設立に至りました。

私たちがチーム紅蓮で実践していることは、至って普通です。働いたお金で生活し、趣味やスポーツ、余暇活動でリフレッシュ、また明日も頑張ろう!と、誰もが生活するサイクルをつくっていくことを目標とし、仕事やパラスポーツ、イベント参画など地域との交流を進めています。

幼少期から活動できる環境が少ない

約25年ほど前、インクルーシブな環境も整っていない頃、北海道の冬には恒例のスキー授業があります。みんなと同じように授業が受けられず、見学するしか方法がない学生時代でした。

今のように地域で、「障がい者スポーツ」に取り組んでいる人や指導者も周りにはいない。障がい当事者が参加しやすいよう考えられたイベント情報もないことから、外出する当事者が少なく、障がい理解も不十分でした。

障がいがあることが諦めに繋がってしまい、体験、経験する機会が少ない環境でした。私自身そうだったように周りの当事者も同じ気持ちだったのではないでしょうか。

地域の環境づくり

障がい当事者が活発に動くことが、最も早く環境づくりに繋がっていくのではないだろうか。環境を整えてもらうのを待つのではなく、自ら地域で活動し、一緒に取り組むことから始まると感じます。

毎年8月に開催される旭川の夏祭りでは、10基以上の神輿練行で最終日を盛り上げます。その中の1基が「誰にも担げるUDみこし」です。この神輿は、本体を車輪付きの台座に乗せ、前後に揺らすことで担ぐ動きを演出することができます。この工夫により車いすユーザーだけではなく、子どもから大人、観光客、さまざまな障がいがある人でも安全に神輿を担ぐことができ、一緒に楽しめるようになりました。その他さまざまなイベントでも、誰もが参加できるように工夫を実践してきました。

「障がい当事者がリードする優しいまちづくり」をモットーに共生社会をめざし、障がい当事者がプロデュースするふれ合いイベントの企画運営が評価されて、2018年にグッドデザイン賞を受賞しました。

これまで、諦めていたことに力を貸してくれる仲間、障がいを理解してくれる地域の方が増え、地域の環境づくりが一歩一歩進んでいます。

障がい児や家族の参加

私たちが取り組んできたUDみこしやキャンプ、雪遊び、パラスポーツなど、子どもたちも一緒にチャレンジしてきた結果、私たちと同じように地域交流ができ、意欲の向上やコミュニケーションスキル向上に繋がり、SST(ソーシャルスキルトレーニング)として医療関係者との連携も進みました。

地域への影響

この活動が2022年のグッドデザイン賞の受賞に繋がりました。障がいがある子どもたちが当たり前のようにイベントに関われる。これまで見学だったスキー授業も協力してくれる地元スキー団体によりバイスキーで一緒に授業が受けられるなど、地域全体が応援しチャレンジできる環境へと変わってきました。時代の流れもありますが、障がいの有無にかかわらず「誰にもやさしいまちづくり」が進んでいると感じます。

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