快適生活・暮らしのヒント-重複障害者(高次脳機能障害と頸髄損傷)が一人暮らしをするための工夫

「新ノーマライゼーション」2024年5月号

兵庫頸髄損傷者連絡会
伊藤靖幸(いとうやすゆき)

私は、交通事故で高次脳機能障害(記憶障害と注意障害)とC4,5の頸髄損傷(四肢麻痺)の重複障害をもっています。2014年から一人暮らしをしています。ヘルパーを使って生活していますが、今回は高次脳機能障害に対して一人暮らしをするための工夫を紹介していきます。

まず、記憶障害に対する1つ目の工夫です。頸髄損傷で身体を動かすことができなくて自分でメモをすることが難しいです。そのため「予定表」を1か月分ごとに作成してヘルパーに予定を記入してもらい生活を送っています。

予定表
予定表拡大図・テキスト

予定表をヘルパーと確認しあってその日何をするのかを忘れないようにしています。予定が変わったり追記された時は、その都度予定表に記入します。

生活しているとたくさんの人と出会い話をします。そんな時にお願いされることもあります。例えば○月○日までに○○についての原稿をお願いします、などです。そんな時に「TODO用紙」を使って忘れないようにしています。このTODO用紙が2つ目の工夫です。

TODO用紙
TODO用紙拡大図・テキスト

予定表のTODO欄に印(123……)をつけてTODO用紙を参照します。TODO用紙にはやることを記入して、結果がどうなったのかを記入します。TODO用紙を使うことでお願いされたことを忘れたり、違うことをしてしまい、信頼関係が崩れることもありません。

また、TODO用紙は忘れないための道具でもあり買い物メモとしても使っています。電話をする時にも使っていて、相手に伝える内容をTODO用紙に記入してから電話しています。そして、特に大事な話をする時はICレコーダーで音声を録音します。相手が話していることがすぐに理解ができなかったり間違えていないか、後で確認できるようにするためです。電話は相手からかかってくることもあります。そんな時にICレコーダーがすぐに準備できなくてこちらからかけ直すこともあります。電話でも会話でも時には内容を間違えて解釈してしまい失敗する時もありますが、めげない性格なので立ち直りが早いです。というか失敗を忘れたりします。

重複障害があると障害それぞれの工夫が必要になり一人暮らしすることが大変です。生活の中で不便なことをどうやって工夫して快適に暮らせるかはその人によって違います。また、工夫を考えて試して実践するなど時間がかかる場合があります。しかし、工夫を考えて自分に合ったサポートをしてもらえれば自分らしく楽しく生きていくことができると思います。

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