福島健介(ふくしまけんすけ)
私は小さい頃から要領が悪い部分がありました。忘れ物や落とし物が多く、コミュニケーションが上手にできないため、大人になったら大変になるかもしれないという思いがありました。
大学を卒業して派遣会社に就職しましたが、派遣先で仕事がうまく覚えられず契約解除を告げられました。しばらくしてから会社を辞め、そのあと短期で何社も転職を繰り返しました。その中で、発達障害の専門外来がある、昭和大学附属烏山病院の新聞記事を見かけ、その病院でASD(自閉スペクトラム症)の診断を受けました。
診断を受けて、やはり発達障害だったのだと一安心し、障害者手帳の申請と病院のデイケアで行っている発達障害向けのプログラムを受けました。
プログラムでは、発達障害のメンバーで集まり、コミュニケーションの勉強などを行います。例えば、物事の伝え方や感情のコントロール、制度の勉強、ソーシャルスキルトレーニング(SST)やピアサポート(相互扶助)など。現役プログラムでは月2回、3年間くらい受けました。
不器用なりに勉強していく中で、自分の特性やプログラムの勉強の大切さが少しずつ理解できるようになりました。学んで成長して活躍される人、うまくいかなくても勉強を続ける人、途中で退会される人など、いろいろいらっしゃるようでした。
私自身はプログラムを卒業後、病院内のサークルに加入し、悩みごとや対処法の話し合いなどをメインに行っています。
プログラムや勉強会を通して学んだことは、発達障害や工夫の本を勉強、実践、継続することの大切さです。
例えば忘れ物がないか毎回確認する、夜ふかしをしない、わかりやすい伝え方をする、怒りの感情を抑える、失礼なことを言わないなどです。活動を通して、自分の特性を知って対処方法を見つけやすくなり、仲間ができて相談できる環境になるなどの変化がありました。
また障害者制度を学び、就労移行支援事業所で訓練し、特例子会社に就職しました。
特例子会社は障害のある人が多く働いている会社で、障害に合わせて適切なサポートを受けやすい仕組みが整っています。人によると思いますが、私には一般就労は難しく、特例子会社や障害者枠で働くのが良いのかなと思っています。仕事でうまくいかないこともありますが、長い目で見てできることを少しずつ増やしていき、協力して充実して働くことができていると思っています。
今までの経験を通して、皆様に2つ伝えたいことがあります。
1つ目は、つらい思いをされている場合、どうしたらそれを軽減できるか、ということを考えていただきたいと思っています。診断を受ける、障害者手帳を交付してもらう、障害者枠の仕事に就く、日々の工夫でできないものはないか調べてみる、などです。
人によって合う、合わないことがあるので、いろいろなことを試してみることで、きっと良い方向に進んでいけると思います。私自身、何年もかけてですが、体調が良くなり、仕事では何年間もほぼ欠勤なく、落ち着いて行動できるようになってきた実感があります。友人も増え、休日も以前より外に出る機会が増えました。
2つ目は、自分の特性を知り、付き合っていくこと。特性によっていろいろな困難があると思います。課題や困りごとは減らしていけますが、ゼロにすることは難しいと思います。障害とともに生きることは、課題がつきものです。課題への対処に向き合っていくことが大切なのではないでしょうか。