地域発~人をつなぐ地域をつなぐ-国立市公民館「コーヒーハウス」へようこそ!~しょうがいの有無を超えともに楽しみ学ぶ~

「新ノーマライゼーション」2024年6月号

国立市公民館
針山和佳菜(はりやまわかな)

公民館に入ると、ときどきふわりとコーヒーの香りが漂います。半地下のロビー横にある「喫茶わいがや」・その奥にある「青年室」。この2つを拠点として、国立市公民館の「コーヒーハウス」の活動は展開されています。見渡すと、ハンドドリップコーヒーを淹れるわいがやのスタッフ。青年室には、コーヒーを片手に誰かとおしゃべりをするしょうがいのある若者。傍らにはパソコンに向かい課題にいそしむ大学生……。この一角はいつも、いろいろな背景のある若者たちが集い、語らい、わいわい・がやがやで溢れています。

1980年、公民館が主催する「障害者青年学級」(のちに「しょうがいしゃ青年教室」)が開講、しょうがいのある人とない人がともに活動する「コーヒーハウス」がスタートしました。当時の広報には、このように記載されています。「はたらきながら、コーヒーをのみながら、たくさんの人とともだちになれたらと思います」(『くにたち公民館だより』第244号/1980年6月5日)。しょうがいのある、なしを超えて1人の人間として地域で出会い、関わり、関係性を深めていく。活動をするなかでともに楽しみ、ともに学んでいく。40年以上の長きにわたり、ずっと大切にされてきたことです。

コーヒーハウスの日常的な活動は、大きく2つに分かれます。1つ目の「喫茶わいがや」は、市民団体が運営を担う喫茶店。2つ目の「しょうがいしゃ青年教室」は、公民館主催のしょうがいのあるメンバーのレクリエーション活動。スポーツ、クラフト、料理、リトミック、YYW(やりたいことを話し合い実践する講座)、喫茶わいがやでの喫茶実習の6つのコースに分かれ、それぞれ月1回ずつ活動しています。参加しているのは、18歳以上の学卒後のしょうがいのあるメンバーと、大学生を中心とした20代・30代の若者たちによるボランティアのスタッフです。スタッフのほとんどは、しょうがいのあるメンバーと活動するのは初めて。「自分は何をすればいいのだろう」「どのような配慮が必要なんだろう」などの不安を抱えていた大学生たちが、「しょうがいのある方に声をかけてもらって緊張がほぐれた」と、支え・支えられる相互の関係に気付いていきます。

ふだんコースに分かれて活動している参加者が一緒に活動できるように、コーヒーハウスに関わる人たちが一堂に会するイベントも実施しています。初夏のバーベキュー、クリスマス会、年度末の1泊2日の宿泊研修などなど。これらのイベントの企画・運営は、しょうがいのあるメンバーとボランティアのスタッフの有志による実行委員によって担われています。毎年実行委員を決めるとき、しょうがいのあるメンバーはとても積極的に立候補します。「クイズを出してみんなを楽しませたい」「ツアーコンダクターにずっと憧れていて、宿泊に関わることで活躍してみたい」……。それぞれのやってみたい気持ちを持ち寄って、侃々諤々(かんかんがくがく)、イベントの企画が練られていきます。時には意見がぶつかり合うこともありますが、話し合いを重ねて折り合いをつけていくこと、お互いの大切にしたいことを知ることも学びとなり、またしょうがいのあるメンバーにとってやりがいとなっています。

今まで関わったことのない人と出会い、多様な価値観に触れ、自分の世界が広がっていく。これからも、この活動の魅力を大切にしながら「たくさんの人とともだちになれたら」と思います。

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