快適生活・暮らしのヒント-専用の浴室で安心・安全に入浴

「新ノーマライゼーション」2024年6月号

北村恵梨子(きたむらえりこ)
バクバクの会山梨県支部

2011年3月、県の助成制度(在宅重度心身障害者居室整備補助)を利用し念願の息子専用の浴室をつくりました。

息子は重度障害があり、24時間介助が必要です。当初は家族と同じ風呂に入っていました。入浴方法は母とヘルパーさんが息子を抱きかかえ、訪問看護師さんがアンビューバックを押しながら風呂まで移動し、浴槽に入るというスタイルでした。浴室までの動線が長く、体重も増え、抱きかかえるのも困難な状況でした。そんな時、母が浴槽の縁で足を滑らせ息子を落としそうになり、このことがきっかけで安心・安全な入浴方法を真剣に考えるようになりました。訪問入浴も体験しましたが、自宅が山間部で道路から離れた場所にあり、浴槽や機材を運ぶのが大変で入浴のたびにこの動作を繰り返すのは困難と考え訪問入浴は中止。また、デイサービスでの入浴は週に2回利用です。とにかくできる限り、毎日風呂に入れてあげたいという思いから、専用の浴室をつくることに決めました。専用浴室、浴槽により、本人と介護者の負担を減らし、安心・安全に入れること。本人が寝ている部屋の壁を開口して浴室をつくり、入り口はベッドが横向きで出入りできるよう特注のスライドドアにしました。

入浴は、安全に行えるようにスライディングボードを使っています。手順と注意点は次のとおりです。

1.ベッド上で防水シートを体の下に敷き、呼吸器をつけたままベッドで浴室まで移動

2.移乗する側を低くしベッドと浴槽の隙間がないようセット(ベッドも浴槽も高さ調節ができます)

3.スライディングボードはシートの下で体の半分の位置に挿入し、持ち上げず滑らせながらベッドから浴槽へ

4.移乗、ボードを引き抜き、シートも左右の側臥位で取り外す

5.ベッドを居室に戻す

6.転落防止のため、素早く浴槽の周りを高くし、湯が張れるようにする

7.呼吸器からアンビューバックに切り替える

8.体温調節が難しいので常に体全体にシャワーをかけ続ける。

専用の浴室ができる前は、母が抱きかかえ自宅の風呂に入っていたので、ほぼ体全体が湯に浸かることができて、体温が下がることはありませんでした。しかし、専用浴槽は水深が15cmと浅いので、体温調整が難しい息子は特に冬期は体温が下がるので、ベッドに戻ってからは、湯たんぽや電気毛布を使い、居室の温度を上げるなどをして、体温を上げるための対応をしています。

入浴の目的は体を清潔に保つことですが、加湿に伴い痰の量が多くなり吸引の回数も増え、また、リラックスして体の拘縮も和らぎ、体はしなやかで本人の表情も穏やかです。

※参考までに諸経費を記載します。(円)

シャワールーム増築工事2,740,500
電動シャワーストレッチャー1,083,600
補助金交付額831,000
自己負担額2,993,100
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