ひと~マイライフ-発達障害の私が感じる<希望>

「新ノーマライゼーション」2024年6月号

藤原千奈(ふじわらちな)

大人になってから発達障害の診断を受けた。二次障害で精神障害をもつ。2024年4月に発達障害や依存症等生きづらさをモチーフにした童話ファンタジー『バラの咲く日に 生きづらさの庭で」を文芸社より刊行。発達障害当事者会「わ」の会代表。ASK認定依存症予防教育アドバイザー。ASK認定飲酒運転防止インストラクター。

「自分には生きる価値がない」

発達障害がある私は、青春まっただ中の若い頃、友達とうまく関係を築けませんでした。親との関係も当時はよくなかったです。家庭にも学校にも心の居場所がない私は、発達障害からの二次障害を背負いました。何をやってもうまくいかず、物事が悪い方に進みました。

いつからか私の心に住みつくようになった「死にたい気持ち」は、暗闇の中をさまよう亡霊さながらに、いつでも私を脅し、憎み、自分自身をむしばんでいきました。人とうまく関係を築けない自分。そんな自分に価値はない。私はずっと自分を責めていたのです。

あれから何年もの時が経ちました。私はいくつもの夢を叶えました。結婚し、子どもを授かり、資格を取得、発達障害や依存症等生きづらさの物語の本を出版しました。

頑張ったぶん、反動もありました。子育てなど多くの責任を背負ったストレスで、医師から処方されるお薬の量は増え、疲れがたまると幻聴も聞こえるようになりました。

でもそれでも挑戦してきたことに悔いはないです。自分で選択し、自分で決めたことだからです。何もかもに絶望していた私ですが、さまざまな出会いや居場所をもつことで、試行錯誤しながらもダメな自分、弱い自分、発達障害である自分を少しずつ受け入れられるようになりました。時間はかかったけれど、生きていてもいいと思うことができるようになりました。

そして私が夢を叶えることができたのは、私の努力だけではなく、他の人々の力も大きかったです。私はずっと、精神的に一人で生きている気持ちでいました。けれども、今周りを見渡せば、私はいろんな人―夫、親、義両親、支援者、友達、仲間たちから、多くの応援を受けていたのです。本の出版でいっそうその思いを強くしました。私は一人ではなかった。私だけじゃなく、本当は誰もが一人ではない、一人にしてはいけないのだと思っています。

孤独にさいなまれ泣きながらタオルで自分の首を絞めていた私は、今もなお私自身の内側に住んでいます。うまくいかないことがあったときや悲しい気持ちになったときに、ふっと顔を出しては「お前には生きる価値がない」とささやきます。

けれども私はおそらくもう、自ら死を選びません。はっきりと気付いてしまったのです―私は生きたい、のだと。

これからの人生の中で、泥にまみれてさらなる底つきを味わったとしても、打ちひしがれるような苦しみの波にのみこまれたとしても、人と全く違った人生だったとしても。それでも私は生きていたい。自分を大切にして、周りの人々を大切にしたい。命ある者として、優しくて小さな足跡をこの世界に残したいのです。

私はもしかしたら失った青春を取り戻したいだけなのかもしれません。けれども過去に戻ってやり直すことはできないです。だから、今を生きるのです。一瞬一瞬を、大切に、必死で生きるのです。その先にきっと未来が、見えてくる景色があるはず。過去は黒歴史ではなく、これからの私を生きる道しるべです。

私は、できることなら、これからも作品を書いていきたいと思っています。私の発信する言葉たちを、たくさんの人に読んでもらいたいです。ひいては社会をより良く変える一助でありたいです。欲張りでしょうか。でも、それが私の本当の気持ちです。

私には、私たちには、今がある。そしてきっと未来は私たちの手で変えていける。それが今の私にとっての、希望です。

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