地域発~人をつなぐ地域をつなぐ-元気を届けるチンドン楽団トンカラポンガの活動

「新ノーマライゼーション」2024年7月号

就労継続支援B型事業所ポルテク 施設長
奥野亮平(おくのりょうへい)

この活動は約10年前、就労継続支援B型事業所で始まりました。アートや音楽などの表現をして働く作業所の立ち上げメンバーとして関わり始めたのは、近所を自転車で走る自閉症の人を見たのがキッカケです。

笑ったり、怒ったり、喋ったり、叫んだり……。

誰の目も気にせず自分がその世界の主人公であるかのように毎日自転車をこぐ姿に興味を持ちました。福祉の勉強も経験も全くない私たちでしたが、元々アートや音楽など表現活動をしてきたので、思いきって作業所で働くことを決意したのです。

まず利用者を集めるのに、どこの作業所も合わなくて辞めてしまった人たちに「チンドン太鼓を作ろう」と声をかけワークショップを開催。内職仕事や掃除などは得意ではないが、何かを作ったり音を出して踊ったりするのは「やっていけそう」というメンバー数人でスタートしました。

その中の利用者でストレス発散の方法がわからなくて、爆発していわゆる問題行動を起こしてしまう人が「踊ったりするとスッキリする」と言うので、レクリエーションとしてチンドンを始めたのです。

そのまま続けていると話題になり、福祉施設や保育園などから出演依頼も来るようになりました。初めはボランティアで行っていましたが、クオリティも高まってきたので、ある日「これは仕事になる」と感じ、活動の幅を広げていきます。

活動の拠点は和歌山県紀の川市ですが、呼ばれるのは大阪や奈良など関西が中心で東京や愛知でも行いました。そして2023年4月に独立、就労継続支援B型事業所ポルテクを立ち上げ、活動の一つとして「トンカラポンガ」という名前でチンドン活動をしています。

踊るの大好き、とにかく目立つの大好きな職員と利用者で活動する中で一番大事にしていることは自分たちが楽しむこと。週に2回楽しく厳しく練習に励んでいます。

好きなことを自由に自分勝手にするだけではショーとして成り立たないので、「決めるところは決める」の合言葉で体調や気分のバランスを見ながら取り組んでいます。

メンバーの中には若い頃につらいことがあり10年ほど引きこもっていた時期もある知的障害のある人もいますが、この活動には積極的に参加し「緊張するけど楽しい」と話してくれます。引きこもっていた時のことを考えると「まさか自分が人前に出てパフォーマンスをするとは夢にも思っていなかった」と自信につながっているようです。

この仕事をしていて感じるのは活動内容よりも自分たちが楽しんで、障害の有無に関係なく、隣にいる人に「心を寄せる」行為が大事なのだと感じます。観てくれた方が感動してくれたりすることはもちろん素敵なことですが、それは利用者、スタッフ関係なく毎日穏やかに過ごし、得意だったり好きなことにきちんと向き合い、その人なりの努力をしてもっと夢中になることの副産物なのだと思っています。

記述上、「障害者」と書いたりすることが多いのですが、選択肢を増やしてあげ、何をするにしても、一人ひとりの気持ちになってサポートすることで彼らはゆっくりでも前に進むことができ、行く手を阻む障害はなくなっていくのではないでしょうか。

これからも出会ったことのない人や行ったことのない場所に行き、元気を与えたり、与えられたりしながら価値観の幅を広げられるような活動にしていきたいです。

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