道草くん
NPO法人脳損傷友の会高知青い空/中土佐町高次脳機能障害ミーティング
私は、17歳の時に交通事故に遭いました。突然のことで、急性期病院入院中に目覚めても、それが現実とは思えず、現実に戻るために死にたいという気持ちがありました。回復期リハビリテーション病院から自宅に退院して、少しずつ今が現実と分かってきたと思います。
事故による高次脳機能障害を抱えています(※)。身体の麻痺はほとんどわからなくなりましたが、構音障害があるので疲れた時には滑舌が悪くなり聞き返されることが増えます。
この5年で成長したなと思うのですが、時々不安定になります。知らない人と目が合ったり、他人の話し声が聞こえると自分のことを言っていると思ったり、大きい怒鳴り声が聞こえた時は怖いと感じます。そのような不安な気持ちでいる時に、周囲に理解してもらえないのが一番つらいことです。自分の何を信用していいかわからなくなったり、現実逃避したくなったり。一人でどうにもならない時は支援者に連絡していました。
入院中から日記を書くように言われましたが、なかなか続きませんでした。ある支援者に紹介された『マインドマップ』という手法は、そういえば高校時代に取り組んだことがあり、「以前やっていたことなら取り組みやすい」と思いました。支援者との面談の時には話し合った内容を確認しながら書きます。一人の時には自分の中に思い浮かぶことを順に書きます。書きながら、いろいろと気づきがあります。思考の整理とともに気持ちが落ち着くことがわかりました。『思考ノート』と名付けて、使いやすい筆記具と一緒に持ち歩くようにしました。不安を感じたら、一旦『思考ノート』に向き合います。自分の行動や気持ちを振り返って、安心と自分への信頼を取り戻す時間になります。
支援者に相談する回数やネガティブになる時間が減っている、自分で気分の切り替えを図れている、自分の行動を選択できている、など、自分ではわかりにくい変化を、支援者と『思考ノート』が教えてくれます。今の私にとって、一番の安心グッズです。
※高次脳機能障害:病気やケガによって脳が損傷され、話す、思い出す、考えるなどの脳機能が障害された状態のことです。それによって日常及び社会生活への適応が難しくなることがあります。見た目は何も変わらないので『見えない障害』といわれます。
※道草くんが抱えている症状は、自分や周囲の状態に気づきにくく、集中を持続することが難しい(注意障害)。新しいことを覚えるのが苦手(記憶障害)。計画を立てたり、優先順位を考えたり、決断することが苦手(遂行機能障害)。脳が疲れやすく(易疲労)、気になったらこだわる(固執傾向)。イライラや不安な気持ちが起こると、誰か何かに当たってしまう(感情と行動の調整困難)、などです。しんどいこともあるけど、なんとか現状と折り合いをつけながら過ごしています。