快適生活・暮らしのヒント-弱視難聴の盲ろう者の暮らしの工夫

「新ノーマライゼーション」2024年10月号

小林功治(こばやしこうじ)
社会福祉法人全国盲ろう者協会 制度・政策委員会委員

みなさん、こんにちは! 40代、弱視難聴の盲ろう者で、少し見えて少し聞こえます。言い換えれば、あまり見えずあまり聞こえていません。

今年(2024年)の5月末に生まれ育った名古屋から東京に引っ越してきました。私の場合、目と耳両方に障害があるため、まず、住まい確保が大変でした。不動産屋では、スタッフの方と対面で障害のことをお話ししますので理解を得られるのですが、その場にいない大家さんに部屋を貸してもらうようにすることはなかなか難しく、何度も断られました。改正障害者差別解消法では民間事業者も合理的配慮の提供が義務化されましたが、個人としての大家さんへの理解を得るのは本当に大変でした。多くの障害のある方々が住まいを得るのに労苦されているだろうと身をもって感じました。

さて、弱視難聴の盲ろう者である私の生活の工夫をいくつかご紹介いたします。まず、私の部屋は基本的には昼夜問わず、カーテンを閉めて真っ暗にしています。これは私の目がまぶしさを強く感じるためであることと、パソコンの画面を見やすくするためです(写真1)。私の目ではパソコンの文字は見にくいため、文字を音声に変えて耳で聞いています。一般的な白い背景黒い文字はまぶしくて目を開けていられませんので、白黒反転させ、文字は大きくして、少しでも見えるようにしています。
※掲載者注:写真の著作権等の関係で写真1はウェブには掲載しておりません。

次にキッチンに関してですが、私は自炊をしています。なにやら自立してそうですが、結婚できていないだけです(苦笑)。ここでもまぶしさを避けるためまな板は黒い色のものを使っています(裏面は白色です)。これを使えば食材を切ることができます。例えば、キャベツなどの色が薄いものはまな板の黒い面で、なすなどの色が濃いものは白い面を使っています。コントラストを考えてやっています(写真2)。
※掲載者注:写真の著作権等の関係で写真2はウェブには掲載しておりません。

キッチンのことでもう一つ、水が流しっぱなしになっていても見えにくく聞こえにくいため、それに気づくことができません。水が流れていないか意識して蛇口からの水の出具合を手で確認するようにしています。

そして最後に、現在の天気の確認方法です。見えて聞こえていれば、明るさや雲の色、雨音などで確認することができますが、私はそれができないので、ベランダに出たり、窓から手をだしたりして確認します(写真3)。
※掲載者注:写真の著作権等の関係で写真3はウェブには掲載しておりません。

このようにして、モノを私の視覚と聴覚の機能で受け取れるように加工したり、調整したり、触覚も駆使して、日々の生活を過ごしています。何事も時間がかかることが盲ろう障害の特性ですが、ゆるやかに時間が流れていくことに心地よさを感じています。

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