岐阜大学団体ゆにぃんくる 代表
増田遥(ますだはるか)
「ユニバーサルシート(大型ベッド)」をご存じでしょうか? ユニバーサルシートとは、主に多目的トイレに設置されている大きめのサイズのベッドのことです。使用用途はオムツ交換や服の着脱など、利用者は子どもから大人とさまざまです。また、今回私たちの団体の活動を掲載していただけることで、新たにユニバーサルシートを知ってくださる方が増えることを大変嬉しく思います。
2023年に岐阜大学公認団体「ゆにぃんくる」は創設しました。きっかけは創設者である加藤みのりさんが、ユニバーサルシートの存在を知り、設置されていないために外出できない方がいる現状に衝撃を受けたことでした。必要不可欠なものであるにもかかわらずどこにあるか行ってみないと分からない、という課題からユニバーサルシートマップを作る目的でメンバーが集いました。
まずは岐阜県の岐阜地区、西濃地区の多目的トイレ設置施設を手当たり次第、電話調査後、許可を得て実地調査および写真撮影を集約しました。電話調査では、設置してあると返事をいただいたにもかかわらず、訪問すると設置していなかったことで、まだ周知されていない現実を痛感しました。マップ作成にはたくさんのこだわりがあります。具体的には写真撮影の際は車いすメンバーも写ることで、スペースや使い勝手がイメージしやすくなっています。そして、紙媒体と電子媒体の両方を作成しました。冊子は持ち運びがしやすいサイズであること、ユニバーサルカラーや書体であること、多目的トイレ内の設備をアイコンで分かりやすく表示することなどです。電子媒体ではグーグルマップを利用して、二次元バーコードを読み込むだけで簡単に素早く設置場所が分かります。マップ完成後はより多くの人に知っていただくために、公共施設やスーパーなどでマップを配布しています。実際に必要としている当事者の方にお渡しすると喜びの声がたくさん届きます。さらに、インクルーシブなイベントも開催しています。車いす体験会やバリアフリーの視点から散歩するごちゃまぜピクニックなどです。医療福祉に関心がある人だけでなく、地域に暮らす人々も含めた企画にしています。障害や疾病の有無にかかわらず、皆が暮らしやすいまちづくりをみんなで考えて、まさしくインクルーシブを体現できていると感じます。マップ配布によりユニバーサルシートの認知が着実に広がっていることと、インクルーシブな活動を重ねていくことで、いろいろな人や団体とつながっていきました。
そして、2024年10月には、「医療的ケア児者が安心して暮らせる地域を目指す医療的ケア児者を応援する市区町村長ネットワーク」が主催する「第1回スペシャルニーズ応援アワード やさしいまちづくり部門(団体)」にて私たちの活動を表彰していただきました。大学生団体でありながら、実際の現場に立ち社会貢献できていることを実感し、大変嬉しかったです。
これらの経験から今後の活動の意義を再認識して、新たな活動を行っています。目標は全国の多目的トイレにユニバーサルシートが設置されることです。ユニバーサルシートおよび多目的トイレを利用する方にとって、さまざまな整備がどのように設置されるといいか、この思いを念頭に使いやすく快適な環境を学生ならではの視点を活かして追及していきます。そして、これからもゆにぃんくるメンバー全員が他人事ではなく自分事として捉え、誰もが安心して外出できる社会の実現に向け活動していきます。