エンジョイ・ディジー 私らしい方法で読む、わかる! 

ENJOY・DAISY Digital Accessible Information SYstem 読めるって楽しい! 全ての人が同じ情報をシェアすることが出来ます。

DAISYとは?
  DAISYトップ > DAISYコンソーシアム [ ニュース・アーカイブ ]   > 2001
メニューはここから
本文はここから

DAISYオンラインニュースレター

2001年8月15日

DAISY NEWS
Issue 1 - 2001.08
Published by
DAISY Consortium
Editor, and Co-ordinator of Production and Distribution
William Jolley
Secretary General of the DAISY Consortium
20 Wadham Parade Mount Waverley 3149 AUSTRALIA
Phone/Fax: 613 9807 5137
wjolley@bigpond.com http://www.daisy.org/

Copyright: DAISY News is the intellectual property of the DAISY Consortium. It is hereby placed in the public domain. DAISY News may be freely copied as an eText document or reproduced in accessible formats for people who are blind or print-disabled. Individual articles may be republished for non-profit purposes; but full attribution should be given to the DAISY Consortium, DAISY News and the article's author.

目次

標準規格概要

George Kerscher
国際プロジェクトマネージャー

DAISYコンソーシアムは、既存の国際基準を基にデジタル録音図書の標準規格を作成している。このため、また将来のIT技術の発展方向に影響を与えるために効果的かつ重要な標準規格推進活動に、DAISYコンソーシアムは照準を定めなければならない。この論文では、現在の標準規格に関する情報提供と、関連する規格設定団体等についての説明、さらにコンソーシアムがどのように標準規格の発展に関わってきたか解説をする。

標準規格開発におけるDAISYコンソーシアムの役割

http://www.daisy.org/

DAISYの基本的な役割はデジタル録音図書の画一化された国際標準規格を制定することである。現在、DAISY2.02が推薦仕様となっており、DAISY2.x仕様は広く採用され、DAISYコンソーシアムはデジタル録音図書に関する世界的権威とみなされている。世界規模の統一標準規格設定に向けた戦略の一環として、コンソーシアムは競合する可能性のある他のデジタル録音図書標準規格開発機関とも協力し、常に進歩しつつあるIT技術の統一規格設定を実現するために研究の成果をまとめている。

DAISYコンソーシアムによる標準規格開発の第二の役割は、DAISYの規格をIT開発の主流に位置づけるよう売り込むことである。多くのIT専門家達はDAISY仕様の的確さを認めており、各分野へのDAISY技術の導入によってDAISYを主流にしていくことは十分可能である。デジタル録音図書のDAISY標準規格は視覚障害者や普通の印刷物を読むのに障害のある人々にとって最も利用しやすい形になっているが、さらに改善すれば、商業性の面でも大変魅力あるものにできるであろう。もし業界で主流の仕様にユニバーサルデザインの原則が採用されれば、それは健常者だけでなく、障害者も同様に使用できる製品となるのであるから。もちろん、我々の夢はすべての情報がすべての人々に開かれることだ。

標準規格開発の動き

ここで参考までに国際標準規格の開発がどのように行われるかを説明しよう。多くの場合、まず作業チームが標準規格設定団体に提出する仕様を作成する。提出された仕様は審査を受けた後、何度か改訂されてから認可される。認可の過程は規格設定団体の方針や方法によって若干異なるが、作業チームの構成はどれも驚くほどよく似ている。そこでこの作業チームの力を利用することにより、DAISYコンソーシアムを始めとする各組織がその影響力を最大限発揮することができる。

世界中に広がっている作業チームの間では密にコミュニケーションを図ることが必要であり、Eメールのやりとりや絶え間ない電話会議、また一般の会議など、仕様を開発するためにあらゆることが行われている。仕様に必要な機能のリストは作業チームが開発を進める上での指針となるもので、このリストに載っている条件こそ、DAISYコンソーシアムおよび普通の印刷物を読むのに障害のある人々が標準規格に求めているものを確実に仕様に盛り込むためには欠かすことができない。

作業チームは多くのことを考慮して仕様に取り入れる機能を決定するが、この時最も重要な影響を与えるのは、チームの中で自分が求める機能を盛り込むようはっきりと主張する声である。そのような強い主張がなければ、おそらく作業チームは本来必要な機能よりももっとお金になることを優先させてしまうか、あるいはアクセシビリティそのものすら放棄してしまうであろう。DAISYコンソーシアムの代表者が声高に訴えることによってこそ、アクセシビリティや、マルチメディアまたはナビゲーションの要素が確実に仕様に取り入れられるのである。

NISO (National Information Standards Organization)

http://www.niso.org/

デジタル録音図書に関するNISOの会議には、DAISYの会員となっている多くの組織に加え、まだDAISYグループに参加していない少数の組織も出席しており、NLS (National Library Service for the Blind and Physically Handicapped )のMichael Moodie 氏の下で全員が協力して活動している。

NLSは、アメリカ合衆国で正式に認可された標準規格のみを受け入れるという見解を常に示していて、そのデジタル録音図書標準規格の開発に関しては、以前ともに作業した経験から、定評のあるNISOを採用している。これを受けてDAISYコンソーシアムは以下の2点を決定した。

  1. 世界規模の単一の標準規格を作成する
  2. DAISY3の開発に向けた専門技術と経験をNISOの標準規格開発にも応用し、共同開発を進める

我々はMichael Moodie 氏が標準規格開発の成功をDAISYコンソーシアムの協力によるものと考えていることを大変嬉しく思っている。デジタル録音図書のDAISY/NISO標準規格として知られるようになった新規格は、まだ改善の余地があるが、今年(2001年)の終わりまでにはNISOの会員によって採択されることになるだろう。そしてDAISYコンソーシアムもこれをDAISY3として採用することが期待される。

W3C (World Wide Web Consortium)

http://www.w3.org/

W3Cはインターネット用の標準規格を設定する団体で、DAISYコンソーシアムはW3Cの決議権をもった会員である。多くのDAISY会員はW3Cの四大部門の一つ、WAI(Web Accessibility Initiative)の開設に力を貸した。WAIはウェブをアクセスしやすくするために重要な役割を果たしており、さらにW3Cが開発する仕様にウェブへのアクセスを阻む要素が何も設定されないよう、慎重に審査している。

DAISYコンソーシアムはW3Cの標準規格をDAISY仕様の開発に使用してきた。HTMLをはじめ、現在使われているXHTML、XML、SMILそしてCSSはすべてW3Cが開発したデジタル録音図書用標準規格である。DAISY/NISOグループはSMIL2を使って作業しており、2001年8月末までにはこれがW3Cの標準規格となることが期待される。SMIL2が公式な推薦仕様となれば、DAISY3開発に向けた作業もさらに先へと続けられるであろう。

Open eBook Forum (OeBF)

http://www.openebook.org/

電子図書産業の発展に伴い、OeBFにより標準規格が設定された。OeBFは電子図書の標準規格設定と商業取引を行う団体で、DAISYはその会員となっている。DAISYの基本的なデジタル録音図書にはOeBFが対象とするフルテキストは必要ないが、点訳図書や、フルテキストを備えた完全版デジタル録音図書、またネットに接続せずに使用する電子図書にとってはフルテキストが重要であることを鑑み、DAISYはフォーラムへの参加を決定した。

OeBF仕様の1.0.1バージョンにはアクセシビリティが盛り込まれていて、今年度末までにはリリースされる予定の2.0バージョンの開発においてはDAISYナビゲーションモデルの導入がすすめられている。

OeBFではそのほかにも電子図書の著作権侵害を防ぐというきわめて重要な役割も担っている。発展しつつある電子図書業界は音楽業界が抱えているような著作権の問題に苦しみたくないのである。著者、出版社、図書館そして末端消費者を含むすべての利害関係者の権利を総合的に扱うことをDRM (Digital Rights Management デジタル著作権管理)というが、これは複雑でかつ非常に論議を呼ぶ問題である。現在スクリーンリーダー(音声化ソフト)が電子図書製品に利用できないのは、デジタル著作権の侵害を防ぐためであるが、そこにはアクセシビリティなどの標準規格に見られる機能への配慮は全くされていない。たとえば、マイクロソフト社は2001年秋に予定しているマイクロソフトリーダー(電子書籍閲覧ソフト)の次のバージョンは内蔵音声によってテキストを読み上げるシステムとなると発表した。この仕組みによってスクリーンリーダーをはじめとする他のアプリケーションソフトの使用を認めずにすむため、DRMの問題を解決できるからである。しかしその反面、アクセシビリティの低下は避けられない。DAISYコンソーシアムは、電子図書技術によって利用できるようになった情報が、視覚障害者や普通の印刷物を読むのに障害のある人々にとって、新たな障壁をもたらすものではなく利益となるよう保証するために、OeBFのDRM活動に参加している。

Moving Picture Experts Group (MPEG)

http://www.mpeg.org/

MPEG委員会は音楽、音声、画像に使われる圧縮ソフトの標準規格の設定にあたっている。MPEGはISO (International Standards Organization)の下に組織された委員会で、デジタルメディアに必要な標準規格を作成し続けており、最近ではその普及活動も始めた。ここにおいても、知的所有権を著作権侵害から守ることが最も重要な課題となっている。現在MPEGのもとでDRMに関する方法が開発されつつあり、OeBFはMPEGとの協力関係を樹立した。今後2つの組織は互いに協力して、電子図書用DRM技術の開発に成功するよう懸命な努力を試みるであろう。

DAISYコンソーシアムは主にOeBFを通してMPEGに参加している。しかし、MPEG委員会は圧縮ソフトの標準規格設定と普及については対象となるコンテンツを問わない(MPEGではすべてのデジタルコンテンツを扱っている)としていることから、DAISYコンソーシアムはその国際標準規格開発に影響を与える可能性のある分野におけるMEPGの研究開発成果を追跡する重要性を強く認識している。DAISYコンソーシアムは、これら多方面の標準規格開発の動きに影響を与える必要がある一方で、他組織が開発した技術をDAISY自身の目的のために活用していかなければならない。

結論

標準規格の開発プロセスは増加し続け、関係各組織の協力が必要となっている。デジタル録音図書のDAISY標準規格の制定には、消費者のニーズを理解し、知力を駆使して困難な開発を進め、さらに録音図書を扱う図書館同士の協力体制を確立することが求められ、これまでに大きな成果を上げた。しかし、今や我々は標準規格開発の新しい局面に達している。今後はデジタル録音図書のDAISY標準規格を改善し、さらに他の主流の標準規格設定団体と協力していくことに焦点を合わせていかなければならない。具体的には、インターネット用にはW3Cの標準規格を基にしなければならず、またOeBFやMPEGのマルチメディアドキュメントの標準規格に、視覚障害者や普通の印刷物を読むのに障害のある人々用のアクセシビリティとナビゲーション機能が確実に取り入れられるよう訴えていかなければならない。

スウェーデンにおけるDAISYの導入

Kjell Hansson, スウェーデン国立点字録音図書館

序論 スウェーデン国立点字録音図書館(TPB)はスウェーデン各地の図書館と協力し、視覚障害者や普通の印刷物を読むのに障害のある人々に文学に親しむ機会を提供している。TPBは運営資金のすべてを国によってまかなわれており、録音図書、点字図書および電子図書の製作と貸し出しを目的として開設された。さらにTPBは録音図書や点字図書に関する助言や情報も提供しており、また、スウェーデンの大学生への文学研究コースも設置している。

昨年末の時点で、TPBは合計64,300タイトルのアナログ図書を所蔵していた。2000年度に新たに入手した図書は2982タイトルにのぼり、そのうち2305タイトルはTPBにおいて製作されたもので、残りは他の製作団体によるものである。また813タイトルのDAISY図書はアナログテープからデジタル録音へと変換されたものである。

デジタル化

新製品

2000年11月からTPBの録音図書製作はすべてDAISYフォーマットによるデジタル録音となった。この動きは2000年のはじめにTPBがデジタル録音図書の製作に関して入札を呼びかけたときから始まった。TPBには定期的に録音図書を製作する部門がなく、国の機関として入札によって外部の製作団体を選ばなければならず、これはアナログ製作からデジタル製作へと変換する際には本当に難しい問題である。

デジタル化の進んだ新時代に備えて、まずTPBはスタッフの研修や新しい技術者の採用、付属スタジオの建設、アナログ/デジタル変換への取り組み、ソフトウェア製作に関わる国際コンソーシアムへの参加などを通し、知識ベースを確立することから始めた。また、将来のデジタル録音図書製作者にとって役立つガイドライン(下記)も作成した。

  • DAISYによるデジタル録音図書の編集
  • DAISYによるデジタル録音図書の製作
  • DAISYによるデジタル録音図書および技術仕様書の保存

昨年、TPBは4つの録音図書製作団体と、2003年12月までの38ヶ月間、年間にして約27000時間の録音をする契約を結んだ。これは一年に2600タイトルの図書を製作するに等しい。すべての図書は次のような形で製作される予定である。

DLTテープ、またはユーザーの希望に応じたその他の手段により保存された、圧縮されていないマスターコピー一部

  • CD-ROMに保存された圧縮されたマスターコピー一部
  • ラベル付きのケースに入ったCD-ROMに保存された一部または複数のコピー
  • 小型カセットテープにアナログ録音された一部または複数のコピー

今回契約した製作団体はLpStudio/ProとLpStudio/Plusを使用することを決定した。 これらの製作ツールはともにスウェーデンのソフトウェアハウス、ラビリンテン社の製品で、Proの方はTPB用の録音の時にだけ使うことができる。最初の2,3ヶ月間は、製作団体に対し、TPBが研修や現場でのサポートをした。製作団体は新製品の扱いに不慣れなため、またソフトウェア自体が不安定であるため、いくつかの困難に直面した。

校正

TPB用に製作された録音図書はすべて校正されなければならない。以前はアナログ録音されたものの校正はオープンリール式のテープレコーダーを使って行っていたが、DAISYによる録音図書については、TPBが独自の校正用ソフトウェアを開発しなければならなかった。この校正用ソフトウェアの最初のバージョンは12月にできあがり製作団体に渡された。その後さらに改訂され、いくつかのバージョンがリリースされている。

アナログ/デジタル変換

以前アナログテープに録音された図書をTPBでDAISY1.0フォーマットによるデジタル録音図書に変換する作業は1996年から始まった。TPBは1999年にはラビリンテン社(www.labyrinten.se/english/tips.html) とともに、TIPS(Tape Input Production System)と呼ばれるさらに専門的なアナログ/デジタル変換システムの開発を発表し、出資も行った。TPBが2000年半ばにTIPSを使った大規模なアナログ/デジタル変換を始めると、製作能力は著しく高まった。また2000年6月から外部製作団体と、年間約1555タイトル、時間にして14000時間分のアナログ/デジタル変換を行う契約を新たに結んだ。

デジタル/アナログ変換

TPBは今後3年間は、デジタル録音図書のアナログコピーを製作して他図書館および末端消費者に提供することを決定した。唯一の例外は、スウェーデンの大学生を対象とした図書のアナログ版は製作しないということである。アナログコピーを製作する理由は、デジタル録音図書の末端消費者すべてが、再生機器を入手するまでにはまだ数年を要するであろうからだ。

2000年夏の終わりに、TPBはラビリンテン社(www.labyrinten.se/english/tops.html) とともにTOPS(Tapes Output Production System) の開発を発表、および出資を行った。このシステムは圧縮されたCD-ROMのマスターコピーからアナログのマスターコピーを作成するもので、TPBは今年の6月、予定より数ヶ月遅れたものの、これまでに配布されたデジタル録音図書のデジタル/アナログ変換を始めた。またこの秋からはTPBと契約しているレジャー本やデータブックの製作団体が、通常製作しているデジタル録音図書を変換したアナログコピーを作成することになっている。

複製品

DAISYによる図書が増加するにつれて、複製品を作る必要が生じてきた。CD-ROMのマスターコピーは、CDそのものがTPBで保管されていたり、あるいはTPBのサーバーのRAIDディスク上に保管されていたりするため、最近ではすべての複製品はTPB内で作られている。TPBが将来目指しているのは、複製本を作る権利を持った人なら誰でも、どこででも利用できる、ディスクベースのアーカイヴの実現である。

専用ケース

DAISYによるデジタル録音図書を郵送により配布するには専用のケースが必要である。これまで唯一手に入る専用ケースは、日本で開発された、本を入れる小箱のようなケースだけだった。そこでTPBとBTJ(the Swedish Library Agency)は、2枚のCD-ROMディスクが収容でき、さらにインクと点字ラベルを入れる部分もある新しいケースの開発に取りかかった。新ケースは、最近製造業者が配布し始めたばかりで、TPBは現在、これまで使用していた販売用宝石箱からこの新ケースへと移行しているところである。

その他

DAISYの導入により、当然のことながらTPBのあらゆる部門およびすべてのスタッフが影響を受けた。いくつかの新しいルーティンワークが作られ、コンピューター化された図書館システムは新しい製作手順に見合うよう強化されてきた。

再生システム

PCの使用

スウェーデンにおけるDAISYの開発は、障害を持つ大学生に、情報を得るためのより優れた手段を提供するために始められた。現在ではすべての学生がPCを日常的に学習に利用するようになったため、TPBはPCを使用した再生用ソフトウェアを開発し、それを無料で利用できるようにすることを決定した。開発にはTPBが出資し、ラビリンテン社と共同でまずPlayback for Windows とPlayback 2000が作られた。昨年、ソフトウェアの館内製作が始まった際に、TPB独自の再生用ソフトウェアの製作が決定され、8月にはテスト用のTPB Reader 1.0が最初のバージョンとして出される予定である。その後、さまざまな特徴や機能を追加したセカンドバージョンも開発されることになっている。これらの再生用ソフトウェアは末端消費者に無料で提供される。

専用再生機器

DAISYによる図書の大規模なアーカイヴができあがるまでにはまだ長い時間がかかることと思われるが、にもかかわらず、ここ数年の間に日本のプレクスター社やカナダのVisuAide IncがさまざまなタイプのDAISY専用再生機器を製作した。これらの勇気ある会社はDAISYコンソーシアムが設立された1996年以来、常によき支援者であり続けている。

TPBは主に下記の2つの理由から、既に1000以上もの専用再生機器を購入した。

  • 各地方図書館や録音図書使用者が、TPBから録音図書や再生機器を借りて、録音図書を読む新しいテクニックを習得できるようにする
  • すべての大学生に、在学中再生機器とソフトウェアを提供する

再生機器キャンペーン

DAISY導入のような巨大プロジェクトには画期的なイベントはつきものである。既にいくつかは終わっているが、まだこれから行われることもある。たとえば、今年の5月から始まった再生機器キャンペーンはその一例である

このキャンペーンの目的はアナログからデジタルへの変換をより簡単にすることで、社会全体、すなわち、地方自治体、地方議会、政府、各種団体そして個人に至るまでがデジタル再生機器かPCを購入することを強く唱えている。末端消費者は、新しい録音図書を読めるようになって、デジタル改革の一端を担わなくてはならないのだ!このキャンペーンのゴールは読者の間にDAISYによる図書を定着させることである。なぜならDAISYはカセットテープに録音された図書に比べて読みやすいからだ。

TPBが製作するすべての新しい録音図書はDAISYフォーマットによるもので、DAISYによる図書はここで定着しつつある。DAISYは世界における新しい録音図書標準規格で、TPBはその第一人者である。政府は、アナログ図書をDAISYフォーマットへ変換するために、年間200万スウェーデンクローネ($200,000)の追加予算を計上した。 今日TPBは2500以上のDAISYによる図書を所蔵しており、その数は2001年末までには6000に増える予定である。この急激な図書の増加により、DAISY再生機器の需要も増加している。キャンペーンは2001年5月から2004年12月まで行われ、TPBはその後DAISYによる図書のみを貸し出すことを計画している。

結論

DAISYの導入はコンソーシアムのスタッフを始め、図書館のスタッフ、録音図書製制作団体、朗読者、末端消費者などにとって、一生に一度の大事業として今後も続いて行くであろう。誰もいつすべてが軌道に乗るのか、またそれが可能なのかをはっきりと知ることはできない。しかし、変化をためらってはならない。やらなければならないことは膨大な量に上るが、末端消費者からの大変好意的な反応により、国内および国際的なレベルの両方において、この改革に関わる多くの人々が、この仕事をやりがいがあるものと実感している。DAISYコンソーシアム内での国際的な協力体制もきわめてうまくいっており、会員や賛助会員の数も増えつつある。

現在直面している新たな問題は、この膨大な量のデータをまとめてアーカイヴを作り、図書を配布する新しい方法を見つけ、テキストと画像を音声とシンクロナイズ(同期化)させるということだ。さらに今後、音声図書の販売や新聞の製作の際に、DAISYの標準規格が採用され、フィリップスやソニーのような大会社が再生機器の製作を始めることで価格が下がり、すべての末端消費者にハードウェアが利用しやすくなることが期待される。

DAISYを主流に

George Kerscher
国際プロジェクトディレクター

DAISYコンソーシアムは、DAISY標準規格をオーディオ出版をはじめとする出版業界全般において主流に位置づけることを目標に策を練っている。今年、DAISYコンソーシアムの理事会は初めて、今こそこの分野に力を入れる時期であると認識し、オーディオ出版業界をその最初のターゲットとした。

2001年3月16日から18日までロサンゼルスで開かれたDAISY技術会議に先立ち、DAISYコンソーシアムはアメリカ合衆国のAPA(Audio Publishers Association)にコンタクトした。APAはコンソーシアムに対し、APAのニュースレターに短いレポートを発表することと、DAISY技術会議に現在主流の出版社を招待することを依頼した。その結果、Random House Audio、Time Warner、Audible、Brillianceなどのオーディオ出版業者が会議に出席してくれた。Brillianceはその上、賛助会員としてDAISYコンソーシアムに加わってくれたのだ!DAISYコンソーシアムのスタッフはこれらの出版社と非公式な会議を何回か持ち、各社がDAISYに興味を持っていることを確信した。さらにDAISYコンソーシアムは6月にシカゴで開かれたAPAの会議においても強い影響力を発揮した。

オーディオ出版業者および製造業者はマイクロソフト社がマイクロソフトリーダーにおいてDAISYの標準規格を支持することをはっきりと約束したのを耳にしている。この方針は、今も尚マイクロソフト社のビジネス計画に含まれていると思われるが、そのような製品のリリースがいつになるのかは発表されていない。2001年後半にリリースされる次のマイクロソフトリーダーではDAISYによるテキストと音声のシンクロ(同期化)については全くふれられていない。

このように主流のオーディオ出版業者は一般に入手できるブラウザやオープンイーブックリーディングシステムでDAISYの再生ができるようになることを待っているのだ。また特別製ではない一般のMP3再生機器を使ってDAISYの再生ができる日も待ち望んでおり、そのためのさまざまな支援・協力が望まれている。

DAISY CALENDAR

  • August 13-15, 2001; Washington, DC, USA:
    Pre-Conference Event hosted by the IFLA Section on Libraries for the Blind
  • August 18-22, 2001; Boston, USA:
    Technology Exhibition, in association with the 67th Annual Conference of IFLA (International Federation of Library Associations and Institutions)
  • August 20-24, 2001; Misoulla, USA:
    Writing party (George, Lynn and Markus) to revise lpStudio/Pro Basic Training Course Manual
  • August 27-31, 2001; Washington DC, USA:
    Meeting of NISO Committee to finalise the DAISY/NISO DTBook3 Standard
  • September 4-8, 2001; Toronto, Canada:
    Joint Meeting of Committees V and VI (Formatting and Rules) for the Unified English Braille Code
  • September 10-12, 2001; Chicago, USA:
    Work Group Summit 5 of the Open eBook Forum
  • September 17-19, 2001; Peterborough, England:
    lpStudio/PRO Basic Training Course hosted by Royal National Institute for the Blind
  • September 21-27, 2001; Bangkok, Thailand:
    East Asia Pacific Regional Assembly of World Blind Union, incorporating DAISY Seminar and DAISY Recording Training Course for Blind Technicians
  • October 7-11, 2001; Singapore:
    DAISY Recording Training Course for East Asian Countries
  • November 5-7, 2001; Washington, DC; USA:
    NIST/NISO eBook-2001 Conference
  • November 27-28, 2001; Birmingham, England:
    Techshare Conference
  • November 29-30, 2001; Burmingham, England:
    DAISY Board Meeting
  • March 18-24, 2002; Los Angeles, USA:
    CSUN Conference on Technology and Persons with Disabilities, and associated events including W3C/WAI meetings
  • April 16-19, 2001; Copenhagen, Denmark:
    Braille in the Age of Digitisation: an International Braille Symposium on the Development of Individual and Institutional Needs and Solutions; Institute for the Blind and Partially Sighted of Denmark
  • July 15-20, 2002; Linz, Austria:
    8th International Conference on Computers Helping People with Special Needs (ICHP '02); hosted by the University of Linz, Austria
  • July 27 - August 2, 2002; The Netherlands:
    11th ICEVI World Conference (50th anniversary) (International Council for the education of People who are Visually Impaired
  • August 18-24, 2002; Glasgow, Scotland:
    68th Annual Conference of IFLA (International Federation of Library Associations and Institutions)

CONTACT ADDRESSES AND WEBSITES