IFLAダーバン大会参加者・SAPESI意見交換会 報告要旨1
SAPESIの活動を始めたきっかけ
蓮沼●
私自身は南アフリカに9年おりまして、最初の6年間がソニーの子会社、ソニー南アフリカの社長をやっていました。定年退職して日本に帰国するように言われたのですが、南アフリカの教育問題が気にかかっていました。アパルトヘイトの影響で、黒人は教育を受けることができず、読み書きが全然できていません。そのために、町で物乞いをするしかない人たちがいるのです。
仕事の関係で文部省ともいろいろ付き合いがあったので、たまたま図書館車を知る機会がありました。南アフリカでも本を持って巡回すればいいのかと思い立ち、3年前からはじめました。それが図書館車プロジェクトなのです。
日本から中古の図書館車をいただいて、こちらに送っていただいて、州政府に渡して巡回しています。スラム地域だとか、田舎のほうの学校に持っていってもらっています。
南アフリカについて
蓮沼●
まずは、南アフリカについてお話します。(配布資料-「1.南アフリカ」、報告資料-「序.南アフリカの現状について」参照)
これが南アフリカです。日本のだいたい3倍半くらい、人口は4,400万。ですから日本のだいたい3分の1。人口密度だと10分の1くらいでしょうかね。4,400万の人口のうち、黒人、これは連合ネーションと私達は言うのですが、いろんな人たちがいますね。国旗も、いろんな色が入っているじゃないですか。あれはそれぞれの民族を表しているんですよ。黒人が7割5分、白人が14%。白人というのは、オランダから移植してきたアフリカーンスといいますけれども、大昔、江戸時代にオランダ人が長崎の出島まで行ったじゃないですか。そのときにここで水を積んだり、それから野菜を積まないと壊血病に罹ったりしますから、そういうことでこのケープタウンに基地を作って、オランダからここまで来て、ここからバタビアまで行って、それから長崎へ行ったんです。そこでケープタウンを開発したんですね。1624年ですね。東インド会社を作ったんです。そのあと内陸部で金やダイヤモンドが見つかったので、日本から、江戸時代の日本との交易でオランダがうまくやっているのを見てイギリス人がやっかみましてですね、そのあとを追いかけてきて全部これを取り上げたというのが経緯です。
白人はオランダ人とオランダ人の末裔、アフリカーンスといいますけれども、あるいはボーア人、それからイギリス人です。それからカラード。主にこのへんに住んでいるのですけれども、このケープタウンを中心にしたオランダ人やイギリス人、あとは現地の混血ですね。それから、インド人だとかアジア系、これが約3%。特にインド人は、このへんが、ここにダーバンですけれども、ここはサトウキビがたくさん採れる気候温暖なところなんですね。イギリス人はサトウキビのレイバーとしてインド人をインドから連れてきた、というふうになる。いろんな民族が一緒になっているので、連合ネーションといいます。
これだけ民族が違うと、言葉がたくさんあります。全部で言語が11です。英語、それからアフリカーンス。これは先ほど言いました、オランダ人の末裔だけが喋る言葉。教育は、全部英語で、インドみたいなんですね。そのかわり現地の人の言葉が、ズールー、コーザ、これがリンガーフランカというのですが、皆さんの専門用語で言うと。リンガーフランカというのは日本でいうと、主要な言語ですね。一番よく通じる、皆さんこれを喋るとだいたい通用するというのをリンガーフランカと図書館の方はおっしゃるのではないかと思うのですけれども。よく通用する言葉がズールー語、コーザ語。ズールー語というのはここらへんの言葉ですね。コーザというのはここらへんです。今、マンデラさんだとか、今の大統領のムベキさんというのは、コーザ語ですね。それ以外に、ベンダ、ンデベレ、ペディ、スワジ、ツォンガ、ツワナ、スォトとあります。
これについて、地図を見せながら。皆さんに手伝いをしていただきますが。
武藤●
では、パワーポイントで資料を用意させていただきましたので、こちらで説明させていただきます。(報告資料-「序.南アフリカの現状について (1)概要」参照)
南アフリカの現状についてということで、先ほどの蓮沼の話にありました通り、11の公用語があります。一番、南アフリカの国民で母国語として多いのがズールー語になります。次に多いのがスォト語。次がアフリカーンス、あとはそれぞれ少数言語という形になっています。
皆さん、南アフリカに到着されたときに、まずこちらのヨハネスブルグから入ったかと思います。ヨハネスブルグが入っているところ、あとは行政の首都があるプレトリアというのが、ハウテング州と呼ばれている州です。今私達のいる州は、こちらからさらに南東のほうに入ったところ、クワズールー・ナタール州と呼ばれているところです。このダーバンはアフリカ大陸で一番大きな港町だと聞いていますので、このダーバンに今皆さん滞在されています。
こちらの資料で、行政の首都、司法の首都、立法の首都と書いてあるのですが、南アフリカの特徴としまして、首都が三権分立でそれぞれ街が分かれているところが大きな特徴であるかなと思います。ですので、国会が行われているところはケープタウン、喜望峰とか東インド会社が一番最初に作った街なのですが、ここで国会が行われています。大統領、ネルソン・マンデラさん、ターボ・ムベキさんが住んでいる、実際に大統領として行政を行っているところはプレトリアの街です。皆さん、プレカンファレンスで参加されたところがこちらの街になります。
司法の首都ブルームフォンテンという街がちょうど真ん中にあるのですが、こちらが最高裁判所のある街になっています。皆さん、ヨハネスブルグの街が首都だと思われていたのですが、ニューヨークの街と同じように考えていただければいいかなと思います。経済の中心地で、南部アフリカ大陸一番の経済、情報の発信の中心になります。
よく日本の教科書に書かれている首都は、プレトリアで紹介しています。ただ実質はプレトリア、ブルームフォンテン、ケープタウン、3つの街でそれぞれ首都の機能が形成されているという状況です。
南アフリカの現状についてなのですが、先ほど蓮沼から話がありましたとおり、まさにリッチ&プア、富裕層と貧困層がまさに共存している社会です。(報告資料-「序.南アフリカの現状について (2)超格差社会、Rich & Poor」参照)
失業率ですが、約40%。特に若年男性層に失業率が高い。日本も一時期かなり失業率が問題になっていましたが、比べ物にならない数字になっています。
また、所得格差なのですが、具体的な数字はわからなかったのですが、単純に数百倍の所得格差があります。要するに大金持ちの人は1年間で利息だけでも十分生活できる人もいますし、また本当に貧困層の人は一日それこそジュース買い、あとはパンのお金を稼ぐくらいでいっぱいという人達もいるというのが現状です。
また、富裕層と貧困層の層別は、やはり圧倒的に貧困層のほうが高いという現状があります。
なぜここまで貧困層が激しいかという背景、特徴としまして、実際に南アフリカでこういう高級住宅街のところも実際にあります。有刺鉄線が張ってあって、それぞれ広い庭、プール付きの一戸建て、そういう住宅で高級住宅街が形成されているところもありますけれども、そのすぐ壁を隔てた向かい側は、こちらの右側の地図の通り、ちょっと見にくいかもしれませんが、バラック小屋で、みんな本当に肩を寄せ合いながら生活している、共同井戸、共同トイレで生活している、そういう人達の生活も現在あるというのが現状です。
都市部ではこういう格差が極めて顕著ですけれども、都会と田舎で、田舎のほうですともうこういう感じで電気、水道もない、だだっ広い丘の上に家がぽつんと建っているという状況もありますので、なかなか、特に郊外、離れたところは就業する機会というのがたいへん難しい、たいへん困難な環境がありますので、そういうことで超格差社会が来ているのではないかと思います。
超格差社会に関連しまして、生活インフラの格差もたいへん激しい。(報告資料-「序.南アフリカの現状について (3) 超格差社会、Urban & Suburb」参照)実際ダーバンの街並みを見ていただいて、本当にここはアフリカなのかと思われたかと思います。実際に近代的なビルも建っています。あと、ICCにたいへん洗練された建物もありますし、また大きなショッピングセンターなどもありますけれども、一方で、ちょっと自動車で30分、または自動車で15分も走ったところは、電気・水道もない本当に牧歌的な、住宅ではないのですが、牛とか羊とかを飼って家畜と一緒に生活している社会もあります。そういうところはなかなか道路も舗装されていませんし、電気・水道もなかなか行き届いていないという現状もあります。
南アフリカの大きな特徴としまして、たいへん犯罪の多発している社会です。(報告資料-「序.南アフリカの現状について (5) 犯罪多発社会」参照)実際、所得格差がたいへん厳しい状況ですので、やはり犯罪に手を染めてしまう人達が増えてくるというのは必然的に付きまとってくるのですけれども。こちらは、私はトヨタ自動車に勤務していて、こういう説明を毎回出張して来る方に説明しているのですが、ダーバン地区で1年間に5,000件以上の殺人事件が、実際統計上出ていました。あくまでも南アフリカの警察の統計ですので、当てにしないほうがいいと思います。実際はもっと多いと思います。
殺人事件が5,000件というのもちょっとおかしいと思うのですが、実際に物盗り犯罪、これは10件以上、1日に100件、1,000件は当たり前という世界ですので、ですので警察の人も事務的に処理してしまうという背景があるかなと思います。
小さく書いてあるんですが、ヨハネスブルグ、プレトリアの地区はもっとひどいということで、あまりちょっと数字は示したくないので、控え目に紹介させていただきます。
どういうところで犯罪が起きているかという状況ですけれども、どこでも起こり得るというのが現状です。今皆さんの滞在されているダーバンの中心部でも、実際に見た限りはビルも建っています。そんなに危ない、怪しい人が歩いているとちょっと危ないかなと思いますけれど、ICCはああいう建物で、なにか犯罪が起きそうな雰囲気というのはないかなと思うのですが、実際ICCの周りもたいへんたくさんホームレスがいますので、そういう意味でかなり危ない。たぶん今回、こういう企画がありますので、周りはセキュリティの人が入ってある程度治安が保たれているのかなという背景はあるかと思いますけれども、実際ダーバンの中心部もたいへん犯罪が多く起きています。特に中心部での犯罪が多いのは、麻薬関係の犯罪、あとは強盗・窃盗犯罪ですね。あとは売春の問題ですね。その問題がたいへん多い。
一方、右側の写真は、ダーバンの近郊の居住区の中でもたいへん犯罪が多く起きています。皆さん肩を寄せ合って生活しているのですが、その居住区の中でも残念ながら格差社会というのは大きくありまして、そこでいろいろ派閥争いとか、ヤクザの対立抗争みたいなものも残念ながらありまして、そこで殺人や窃盗がたいへん多く起きているというのが現状です。ですので、安心なところはほとんどないんじゃないかというのが現状だと思います。
ここまでで、一応南アフリカの概略ですけれど、何かご質問とかありましたら。
女性●
ジンバブエからかなり流入してきていますよね。どのへんに一番たくさん来ているのですか。北のほう?
武藤●
そうですね。ジンバブエがこの矢印のところなのですが、ここから国境を越えて入ってきます。特に北部のエリアですね。ここがヨハネスブルグの街ですが、ここまで流入してくるケースも多くあります。
あとはジンバブエ以外にも、残念ながら難民ではないのですが不法就労者がどんどん都市部に流入してくるケースというのはあります。特にタンザニアとかナイジェリアとかからけっこう不法流入、多く入ってきているのが残念ながら現状です。
蓮沼●
アフリカのなかで、唯一金持ちの国じゃない。ナイジェリアはちょっと別としてね。だからやっぱり、ここに来ると仕事があるしお金があるからって、みんな来ちゃうんですよね。南アフリカ政府は今度は逆に、受け入れなきゃいいじゃないかという意見が出てくるんですけど、ANCが解放闘争をやっていた時に、周りの国に逃げて行ってそこで匿ってもらったりなんかしたのがあるんですよ。ジンバブエなんかまさにそうですよ。ザンビアだとか。だから、やっぱりその時の恩返しがあるから、なんとなく受け入れるわけです。たとえば、ジンバブエは今混乱状況にあるでしょう。川を越えて入ってくるのだけれど、そこの近くの白人農場主、大規模農場主というのはパトロール隊でつかまえたいんですよ。だけど、黒人の警察官は真剣につかまえようとしないんですよね。そういうふうな、微妙なところがあるようですね。